結論から言えば、いわゆる自由業、フリーランスの方でもクレジットカードは取得可能です。しかし、会社員より作りにくいのも確かです。その理由をまずは整理しておきましょう。
突然ですが、財布に現金が入っていなくても支払ったことになる“クレジットカード払い”便利ですよね。
これ実は「利用者が払わなかった代金をクレジットカード会社が肩代わりして払ってくれている(建て替えてくれている)」のです。つまり、“クレジットカード払い”は利用者からすると「借金」ですし、クレジットカード会社からすると、「利用者にお金を貸している」のと同じ状態なのです。
当たり前ですけど、お金を返してくれそうにない人に貸してしまうとビジネスとして成り立ちません。そこで、クレジットカード会社は申込者に対して、お金を貸しても大丈夫な人か、いくらまで貸していい人なのか、全員漏れなく審査します。
その審査をクリアして初めて、利用枠という形でいくらまで貸していい人なのか決められた上で、カードが発行されるのです。
この審査で重要な、「お金を貸しても大丈夫な人かの基準」には大きく分けて三つあります。それが以下の三つです。
一つ目の“今までちゃんと返しているか?”はいわゆるブラックリストに入っているような、お金を返さない人ではないかの確認です。ちなみに、クレジットカード以外の“借金”も見られており、スマホ代の支払い漏れや奨学金の返済忘れなどでブラックリストに入る人が後を絶ちません。
また、ブラックリストに入ってなくても、今回申し込んだ会社で“ブラックリストに載らない程度の延滞経験”がある方も、審査に落ちることがあります。リスクのある人に貸したいと思う企業は少ないので当たり前といえば、当たり前ですよね。
二つ目の“現在、いくら借金しているか?”は貸金業法の総量規制というルールに基づいた確認です。簡単に言うと、住宅や車のローンなどの一部例外は別として、年収の3分の1以上の借金はダメだよ、という法律です。借金に限度を設けることで、カード破産を防ぐ意味もあります。
三つ目の“返済能力はあるか?”は「結局、この人、いくら稼いでるの?」というところです。この「いくら稼いでいるの?」は自由業の方でも会社員の方でも申込時に自己申告しますが、はっきり言ってしまうと、クレジットカード会社はこの自己申告を信頼していません。
ただ、会社員の方の場合、所属会社や役職、勤務年数などを見て、「まぁ、これくらいだよね」という風に判断し、それに基づいた審査が進められます。また、会社員の場合、定年などがあれば別ですが、基本的には年度によって年収が大きく上下するということもありません。「去年一年これくらいだったら、来年も同じくらいだろうね」ということで、カード会社としても安心して与信枠を設定できます。
しかし、自由業、フリーランスの人の場合「これ本当かな? 本当だとしてもここ何年間で一番良かったときの年収じゃないの?」という話になりがちです。カード会社からすると、与信枠の設定はもちろん、本当に貸していい人かどうか、判断するのが難しいのです。
つまり、自由業やフリーランスの方は、年収が安定しないという点などから、カード会社としてもポジティブな審査結果を出しにくいため、落ちやすいというわけです。
フリーランスなりたての方でも、基本的にはクレジットカードの取得は可能です。少々、話は逸れますが、フリーランスの方は、プライベート用のカードとビジネス用のカードの二枚を持つことをおすすめします。
理由としては、確定申告などのために支出を管理する上で、クレジットカード・銀行口座はプライベート用とビジネス用で分けておいた方が楽という点が挙げられます。ビジネス用のクレジットカードを持たない方も多いですが、カード払いであれば、カード明細という形で、いつ・誰に・何のために・いくら払ったのか確認しやすいので、作っておいた方が便利だと思います。
さらに昨今は、クレジットカード会社がシェア拡大のために“新規に事業を始めた人にも審査が優しい法人カード”を登場させています。そういう意味では、フリーランスになって間もない方もクレジットカードを作りやすい環境にはなっていると感じます。
ところで、クレジットカードの申込先を決める際の予備知識として、一つ知っておいていただきたいことがあります。それは、ブラックリストに入っている方や、年収が少ない方でも入れる“審査のないクレジットカード”には裏がある、という点です。
そもそも論として、クレジットカードに審査がないわけがないのです。貸金業法で決まっている総量規制を無視してお金を貸してしまうと、そのクレジットカード会社が行政指導や営業停止処分を受けてしまいます。
“審査のないクレジットカード”は、審査して「ブラックリストに入っている人だ」とか「フリーランスで年収が少ない人だ」と分かったうえで発行されたクレジットカードというのが正しい表現です。
このような経緯で発行されたカードは、クレジットカード会社にとってみると“ハイリスクハイリターン狙いのカード”であることが多いです。例えば、審査の厳しいカードと審査の緩いカードではリボ払いの手数料(実質年率、つまりは利子)が違い、審査の緩いカードの方が高いです。
手数料(利子)のない一括払い以外の返済を行う際は、少し意識しておいた方が良いでしょう。
では、最後に自由業・フリーランスの方がクレジットカードを申し込む際に、気を付けたいところをいくつか確認しておきましょう。
基本的には、気を付けておくべきは勤務先の書き方と年収等の証明についての二点です。
まず勤務先ですが、会社員なら会社名ですが、フリーランスの方の場合は、「自営業」や「個人事業主」で大丈夫です。開業届けを出して屋号を持っている方は、屋号を書くのも当然アリです。
そして、年収の証明ですが、本格的な法人カードの場合、登記簿謄本や決算書の提出を求められることも多いです。そこまで本格的な法人カードではなくても(もっといえば法人カードではなくても)、収入証明書や確定申告書の写しを求められることはよくあります。
さらに、何年分(何期分)の証明を出せばいいかもクレジットカードによって異なります。今年分だけでいいところも多いですが、厳しいところだと、二年分、あるいはそれ以上の年数分の確定申告書の写しの提出を求められることもあります。
ITシステムとクレジットカードってある意味よく似ています。ITシステムにしてもクレジットカードにしても、手に入れるまでに労力がかかりますが、手に入れて終わりではないですよね? 使い始めて、初めて価値が生まれるのです。
審査が緩いカードを探しがちですが、審査が厳しいカードには、「社会的信用度が高まる」「実用度の高いカード特典がある」など、厳しいなりのメリットがあることも忘れはなりません。
そのカードを手に入れて使うと、どういうメリットがあるのか、という観点で申し込み候補をある程度絞り、その後、審査の観点から、最終的な申込先を決める、という二段構えにするのが、結果的に満足のいくカードを手に入れられるように思います。