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sierとweb系の違いとは?Web系エンジニア VS. SIerエンジニア 仁義なき戦い

2021.03.29

フラン健史郎

働き方

目次

    SIer業界やSIeエンジニアに対して、 Web系エンジニアや人材会社によるネガティブな意見や書き込みがインターネット上に散見されます。そして、最終的に「IT業界に行くならば、Web系に限る」といった終わり方をしているサイトが多いのではないでしょうか?

    その手の記事について、「あまりに一方的な情報発信が多い」と感じています。

    それぞれの投稿主がSI(システムインテグレーション)業界を批判する根拠となる体験は事実としてあるでしょうし、SIerを否定するロジックについても、ひどく的外れなものは実際ありません。が、“Web系こそ正義”という前提に立った主義主張ばかりだと感じています。

    そこで今回は、SIer出身で、SIerエンジニアともWebエンジニアとも仕事をしたことがある一人として、SIerだって悪くないよ、と敢えて一石を投じた内容をつらつらと書いてみました。

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    そもそもWeb系? SIerとは?

    まずは、 Web系とSIerの違いから確認しておきましょう。

    より簡単なSIerから解説すると、SIerとは「エンタープライズシステムと呼ばれる、企業や国・自治体などのための比較的規模の大きなシステムを開発し納品しているIT企業」のことを指します。

    エンタープライズシステムの例としてはERP(企業資源計画)、POS(販売時点情報管理)、金融システム、行政システムなどが挙げられます。

    対して、Web系とはWebサービスを運営・提供するIT企業のことです。ショッピングサイトを運営するAmazonや楽天、検索エンジンのGoogle、SNSのTwitterやLINEなどがWeb系に分類されています。

    SIerに対して、Web系は直接エンドカスタマー、つまり「システムの利用料を払う人」に対してビジネスを展開しているのが特徴です。

    そして、世間的にはWeb系で働くエンジニアとSIerで働くエンジニアはお互いをライバル視しており、仲が悪いということになっています。今回のこの記事も、そのイメージに沿ったタイトルにしています。

    ただ、私個人の感覚としては、一部のWeb系エンジニアが強烈に強烈にSIerエンジニアを敵視していますが、その一部の人たちを除くと、あまりSIerだWeb系だと意識していないエンジニアの方が多いように思います。

    特にSIerエンジニアの大半はWeb系エンジニアに敵意もなければ、好意もない、もっというと「転職先を探している時くらいしか、意識しない」というのが実態のように思います。

    だからこそ、インターネット上でも Web系エンジニアや人材会社によるネガティブな意見や書き込みが目に付くのに対して、逆にSIerエンジニアから Web系エンジニアに対する意見や書き込みが少ないのでしょう。

    SIerはレベルが低い?

    SIerエンジニアを下に見ているWeb系エンジニアに「なぜ、SIerエンジニアを馬鹿にしているの?」と尋ねると、「レベルが低い」「技術力がない」という答えが返ってきます。

    さらに、「具体的にどういうところでレベルが低いと思うの?」と尋ねると「ソースコードをコピーして使いまわしている」だとか「新しい技術を使わないから」といった類の答えが返ってくることが多いです。

    たしかに、SIerでは”実績のある雛形ソースコード”が用意されていることが多いです。また、レガシーなシステムを扱っているところも多く、ある意味では”進歩がない”という風に感じるのは否定できないです。

    しかし、”新しいことをする=技術力がある”なのでしょうか? その通りだ、と答える人もいるかもしれませんが、私の感覚では、絶対に違います。

    エンジニアにとって「技術力」とは、クライアントや利用者の要求を解決するための知恵です。レガシーな方法でも、新しい方法でも、システムを使う人をハッピーにできれば、手段は問われないはずです。新しいことにトライして、お客様に不利益を与えるのは、決して技術力があるとは言えません。

    ソースコードのコピーも、システムを使う人をハッピーにするための知恵です。実績のない”僕が考えた最高のソースコード”で、バグが埋め込まれるのを防ぐ意図があります。調子に乗ったエンジニアのせいで、クライアント企業のビジネスを止めてしまったら、誰がどうやって責任を取るのでしょうか?

    一企業の営業活動が止まるくらいならまだ良いですが、SIerが手掛けるシステムの中には、行政システムや金融システムや交通システムなど、ちょっとしたバグから個人情報の流出につながったり、死者が出ることも考えられます。

    事実として私も、ソースコードのコピペに慣れてしまい、一から自分で書けなくなったSIerエンジニアを何人も見たことがあります。しかし、そういうエンジニアは閑職に追いやられているはずです。現場で中心となっているエースメンバーは、ソースコードの読み書きができて当たり前です。

    Web系の方が給与が高い?

    SIerからWeb系に移ったエンジニアの中には、自身の体験をベースに「Web系の方が給与が良い」と言う方がいらっしゃいます。残念ながら、それは、その人が幸運だっただけで、実際はSIerの方が高年収です。

    なぜならば、 Web系は自社サービスが思ったより不評だったり、急に利用者が減って赤字になるリスクが常に付きまといますが、SIerは企業のクリティカルなシステムに関わっているので、景気や人々の趣味嗜好の変化によって、業績が大きく振れることはありません。基本的には、よっぽどのデスマーチ案件でなければ、赤字になることはないのです。

    また、 大企業の系列企業やグループ企業という側面を持つ SIerも多いです。スーツ必須で勤務時間は朝9時から18時と厳格に決まっているなど、普段の勤務ルールはWeb系よりもうるさい反面、福利厚生の面ではWeb系より優れているところの方が多いです。

    昨今、働き方改革が叫ばれていることもあり、定時以降の勤務に制限のあるSIerも多く、ワークライフバランスという意味でも、下手なWeb系よりSIerの方が良いように感じています。

    実は、私のSIer時代の同期の中にWeb系に転職し、さらには、その会社のCTO(最高技術責任者)になった男がいます。たまに助っ人として、彼と一緒に働くのですが、彼曰く「勤務時間が自由になった、というのは実は恐ろしいことで、いつ仕事の連絡が来ても、対応できるように構えておかなくてはならなくなってしまった」そうです。

    挙げ句の果てに「いまでも会社に残っている同期から年収と見込み退職金と一か月の平均勤続時間を教えてもらって、自分とそいつの生涯年収を割り出し、さらに時給換算したら、明らかに転職しないほうが賢い判断だった」と嘆いていました。

    もちろん、自社サービスが思いのほかヒットして、高年収を得ているWeb系エンジニアもいらっしゃるので、一概に、SIerの方が高いと断言できません。が、期待値としては、Web系<SIerです。

    SIerは将来性が低い?

    近年、クラウドの発達によってSIerの収益が悪化してり、SIerの将来に暗い影を落としている、という論調が見られます。

    これはSIerにとって悪いニュースかもしれませんが、視点を変えてみると、世界的に成功しているWeb系企業であるAmazonやGoogleが、クラウドという新たな仕組みで、SIerの世界に入り込んできた、とも言えます。

    もはや、Amazonに至ってはECサイトよりもクラウドサービスであるAWSの方が売り上げは大きいです。やはり、エンタープライズシステムはビジネスとして美味しいのです。

    今後、SIerの役割は変質する可能性はあると思いますし、変質できないSIerは淘汰されていく可能性があります。が、エンタープライズシステムの仕事そのものはなくなることはないでしょう。

    また、エンタープライズシステムを上流工程から担えるSIerはある程度、数が限られています。競合他社との争いや人々の趣味嗜好の変化を受けやすいWeb系の方が、SIerよりよっぽど生き残りが大変です。

    SIerの方が働きやすくて安定企業が多い?

    ここまでは、SIer寄りで、Web系にとっては不利な内容となっていますが、SIer業界の不都合な事実にも目を向けましょう。

    それは、SIer業界は純然たる“階層社会”ということです。所属する会社によって業務の幅や待遇も異なります。

    大規模なエンタープライズシステム案件には大量の人手が必要ですが、クライアント企業から直接受注した元請けSIerだけでは人材が賄えることはまずありません。ですので、下請け企業に人手を借りるための依頼をすることになります。そして、その下請け企業も、さらに下請け企業から人手を借りてくる、ということが当たり前に行われています。

    当然、より階層の低い下請け企業ほど収益も低いですし、結果として、そこで働く人たちの年収や待遇も低いです。

    さらに言えば、“エンタープライズシステムを上流工程から担えるSIerはある程度、数が限られています”と上で書きましたが、企業の経験値的にも上流工程を担えるのは元請けSIerのみです。二次請けくらいであれば、傘下メンバーのマネジメントや元請けメンバーの相談役などの形で上流工程にタッチし、知っている人も多いですが、それ以下の低階層の会社だと絶望的です。

    SIer業界への批判として、たまに聴かれる「ひたすら言われた通りにソースコードをコピペしているだけで、技術力が身につかないし、年収が低いのがSIer」というのは、“三次請け以下の底辺SIerで働くエンジニアから見た現実”なのです。OJTといえば聞こえはいいですが、ろくな教育もされず、単純作業者として現場に放り出される。これは決して偏見ではありません。

    まとめると、三次請け以下の中小零細SIer(SIerと呼ぶことに違和感を感じるけれど)には、これまで見てきたようなWeb系に対する年収などの待遇的アドバンテージは期待できないから、そういうところに行くならば、Web系の方が就職先として良いです。

    が、クライアント企業から直接依頼を受けられる大手・中堅SIerであれば、Web系より就職先として私は断然おススメします。

    まとめ:Web系とSIerの境界線上は曖昧に?

    個人的な感覚ですが、SIerは据え置きゲーム機、Web系はスマホゲームのようなイメージがあります。

    ゲーム専用機はスマホゲームに取って代わられる、と言われつつも、次世代のPlayStationであるPS5が開発中であることが明らかになっているように、一定の支持を得て、開発が続けられています。SIerも、いつかなくなると言われつつも、安定して残り続けていくのではないでしょうか。

    対して、スマホゲームは、年間数百ものタイトルが発表されると同時に、同じくらいの数のタイトルがサービスを終了しています。Web系も仕事自体はなくなりませんが、「一つの会社がどうなるか」を考えたとき、SIerよりも不安定な存在だと感じます。

    また、Web系の筆頭であるAmazonやGoogleがクラウドによってSIerの領域でも影響力を強めていることをご紹介しましたが、その逆もありえます。

    昨今、話題となっているAIやFinTechなどの領域では、資金力があり、調査研究を進めていたSIerが、エンドユーザー向けサービスを展開して、Web系のライバルとなる余地は十分にあります。

    今後、Web系やSIerという仕切り自体がナンセンスなものになるかもしれません。

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