株式会社アイデンティティーは、弊社サービス「テクフリ」に登録されている方や現在フリーランスエンジニアとして活躍されている方を対象に、日頃の感謝を込めたイベントとして「テクフリAWARD2022〜フリーランスに贈る冬の感謝祭〜」を開催いたしました。
本記事では、イベント内の企画である「CTO対談〜多様化するフリーランスの働き方に対する意識の変化/今後求められるエンジニアとは?〜」の模様を公開いたします。
株式会社LayerX 執行役員の名村 卓 氏、株式会社アンチパターン 取締役CTO兼COOの矢ヶ崎 哲宏 氏をお迎えして、CTOから見た働き方の変化や、今後求められるエンジニアについて本音を語っていただきました。ぜひ最後までご覧ください!
登壇者紹介
島田:本日、モデレータを務めさせていただきます株式会社アイデンティティーの島田と申します。本日はよろしくお願いします。それでは、自己紹介をお願いいたします。
名村 卓 氏(以下、名村):名村 卓と申します。現在は、LayerXという会社で執行役員に就いていますが、ソフトウェアエンジニアとして働いています。
以前はメルカリやメルカリの子会社でCTOをやっていました。ずっとソフトウェアエンジニアをやっていて、少しCTOをやっていたみたいな感じなのですが、本日はそういった立場からお話しできればいいなと思っています。よろしくお願いします。
矢ヶ崎 哲宏 氏(以下、矢ヶ崎):矢ヶ崎と申します。現在は、株式会社アンチパターンで取締役CTO兼COOという変わった役職に就いています。前職は、AWSジャパンやSaaSの企業にいました。私もずっとソフトウェアエンジニアとしてやっています。AWSジャパンにいたということもあり、クラウドが強みです。よろしくお願いします。
島田:よろしくお願いします。では、早速テーマに入っていきましょう。大きく3つのテーマをご用意しております。1つ目が「働き方」、2つ目が「今後エンジニアに求められるスキル」、最後に「今注目している技術」についてお話しいただきたいと思います。
自由度の高い働き方を企業側はどう考えているのか
・ハイスキル人材を求めて業務委託・複業人材を採用している
島田:最初に、複業や海外参画など自由度の高い働き方について、現場ではどう捉えられているのかお話しいただきます。あわせて、業務委託の活用についてもお伺いしたいです。
名村:コロナによってリモートワークが増えましたが、若干落ち着いてきてリモートを継続する企業と出社に戻す企業に分かれていると思います。
複業に関しては、社会的にも増えていますが、特にエンジニアでは増えているのではないでしょうか。実際LayerXも、他の会社で働いている方に複業で依頼しているケースもあります。社内での解決が難しいものや、戦力的にプラスになると判断すれば、厳選したコストの中で本当に価値のある人に複業で入ってもらうと考えている会社が多いのではないでしょうか。
島田:「業務委託は、ハイスキルを持っている方が多い」というご認識で、社内で解決できないものを解決するために採用するといった感じでしょうか?
名村:そうですね。いろいろな会社で経験した方の知見を得るためであったり、技術的な面で尖った方、より進んだ能力を持っている方が正社員にいない場合には、業務委託の方に依頼するケースもあります。
島田:ありがとうございます。矢ヶ崎様はいかがでしょうか?
矢ヶ崎:弊社ではコロナの前からリモートワークを採用していました。また、オフィスがないので、出社したい時にはコワーキングスペースを使っていますが、基本的にはリモートです。
リモートワークが基本となっているので、業務委託や複業の方に依頼がしやすいなと思っています。ただ、複業の方に関しては業務時間がずれてきたりするので、なるべく非同期で働けるような環境を作っています。
個人的には同じ時間に働く方が効率がいいとは思いますが、よりスキルの高い人材を獲得するために、なるべく働く人の要望に応えられるようにしようと試みていますね。
また、自分自身が兼業をしている立場ではあるので、参画する側の気持ちも鑑みて、現在はこのような形をとっています。
・エンジニアの希望と企業の考えの相違による矛盾
島田:ありがとうございます。働き方という観点でもう一点ご質問です。私はエンジニアの働く場所はどこでもいいのではないかと思うのですが、企業によっては対面で働いた方がいいという考えのところもあり、制限がかけられることもあります。このことについて、エンジニア・企業の観点からどのようにお考えでしょうか?
名村:前職とか今のLayerXはリモートが多くて、出社してもエンジニアはいないという環境ですが、Slackが活発に動いていたり、バーチャルオフィスで顔は見ているので、出社に比べてロスがあるかと言われるとそんなことはないと思います。とはいえ、「直接会わないと」という考えもあるので、週1で「この日に行けばみんないる」みたいな日はあったりしますね。
エンジニアにとって出社時間がなくなり、他のことに活用できるというだけでリモート可能な会社は魅力的だと思います。ただ、冒頭に言ったように出社に戻している会社もあって、そういった会社は「その場にいる熱狂的な瞬間」を大事にしているのだと思います。
自分もリモートでいいと思っている側ではあるんですけど、不確実なものに突き進んでいくときは顔を合わせてやった方が早いですし、プロジェクトが進めやすくなるので、場合によっては出社した方がいいのかなと思います。
・リモートによって生じるセキュリティ問題
島田:そうですよね、その場の雰囲気みたいなものはフルリモートではわからない場面もありますよね。このテーマで最後の質問ですが、雇う側としてフルリモートにしてしまうとセキュリティの面で不安になったりすると思うのですが、どうお考えでしょうか?
矢ヶ崎:今インターネットが当たり前の時代なので、リモート関係なく自分達のデータはインターネットを通るんですよね。そのため、全てセキュリティをしっかりするというのは難しいので、場所に関係なく管理していく必要があると思います。また、技術は日進月歩で、今日100%守れていたとしても明日は守れているとは限らないので、予防よりもいかに素早く対応できるかが大事なのではないでしょうか。
今後需要の高まるスキル・減少するスキル
・セキュリティエンジニアの需要が高まる
島田:では、次のテーマに移ります。まずは、今後需要の高まるスキル、減少するスキルについてお伺いします。名村様はどうお考えでしょうか?
名村:ここ1年くらいでAIがまた一歩前進しているので、AI・機械学習の領域は需要がますます高くなっていくのかなと思います。単純にモデルを作るだけでなくて、活用したり組み合わせることができる人材が重宝されるのではないでしょうか。
また、技術がどんどん複雑化してきて、色々な攻撃もあるし、オープンソースを使っていると脆弱性があるので、セキュリティエンジニアの需要は上がってくるのかなと思います。一昔前みたいにデータをディスクで管理する時代ではなく、今はクラウドに重要なデータを保存している。クラウドにある以上、誰かしらがアクセスできて、攻撃も増えてくるので、セキュリティエンジニアのようにどう守るか考える人は必要になってくる。
一方で、サーバーをラッキングして、配置して…といった作業をするネットワークエンジニアの需要は落ちてくるのかなと思います。
また、最近は技術のローレイヤーを知らなくてもできるようになってきているのに対して、エンジニアの特性として中身を知りたがる、コントロールしたがる欲求があると思うんですが、そこは今後抑えていく必要があると感じます。エンジニアとしてその欲求は理解できるんですけど、マネージドに任せていい部分を作っていかなければならないので、任せることが出来ない人は需要が減ってきますかね。
もちろんそういう人たちも活躍する場所はあると思うんですけど、その場所自体は減っていくんじゃないでしょうか。
・ビジネスの目線を持ったエンジニア
矢ヶ崎:個人的にエンジニアに持っていてほしいスキルは、事業会社としては、ビジネスの目線を持っている人がいたら嬉しいなと思います。プロダクトマネージャーとかの指示を受けて作る、ではなく、本当にユーザーにとって必要なんですか?といった意見みたいなものを出してほしいです。
エンジニアは、仕事としてやってる人と技術が好きな人に分かれていて、どちらも凄くいいのですが、それらが曖昧だと結構微妙だなと思います。どちらにいるかによって需要が減少するスキルが異なって、私は仕事としてやってほしいと思っているのでこちら側で話すんですけど、技術の積み重ねで出来ているものの上の方を活用すれば出来るのに、下の方から進めていく人は要らないかなと感じます。
例えば、クラウドを使えばすぐにサーバーを立ち上げられるのに、物理的なスイッチを繋いだりする人です。そういった深掘りはクラウドを作る人に任せればいいことで、事業会社ではあまり必要がなくなります。逆に、クラウドを作る人であれば、元となっている下層の方まで遡った方がいいです。
島田:ありがとうございます。事前のお話で、日本のエンジニアは職人気質だと矢ヶ崎様がおっしゃっていましたが、良し悪しはさておき、今後、日本のエンジニアはどのような趣向に変えていく必要があると思われますか?
矢ヶ崎:職人気質は素晴らしいと思います。職人気質でしか出来ないことやアートとしても価値があるとは思うのですが、仕事としてやっている以上、それが会社の利益にならないと生きていけないので、職人気質なエンジニアだと活躍できる場所は限られるのかなと思います。ただ難しいのが、触るのをやめてしまうと一気に置いていかれてしまうので、趣味としては触り続けた方がいいのかなと思っています。
・120%の20%を考える
島田:次のテーマに行く前に参加者から、「ビジネスサイドの考えを理解する上で特に重要な資質などはございますでしょうか?」という質問があったのですが、名村様はいかがお考えでしょうか?
名村:エンジニアはエンジニアの立場で話すので、ビジネスサイドと同じ目線で話すのは難しいんですけど、会社がエンジニアを特別扱いしないというのは大事かなと思います。エンジニア、という見方をせずに、一社員として見る必要がある。
また、僕は求められているものよりちょっといいものを作りたいと思っているので、リクエストに対して100%でなく120%で返そうとすると「その20%は何を求めているのか」「本質はなんなのか」というところまで考えられて、相手の理解が進むのでいいと思います。
今注目している技術とは
・ブロックチェーンの活用方法に注目
島田:ありがとうございます。次のテーマに移りますが、エンジニアの皆様はここが一番興味深いのではないでしょうか。「CTOのお二方が今注目している技術について」ということで、事前にお伺いしております。矢ヶ崎様は「ブロックチェーンの今後」が気になっているということですが、ずばりどのような点に期待しているのでしょうか。
矢ヶ崎:最近ブロックチェーンという言葉自体は聞かなくなってきて、Web3やNFTの方が耳にする機会が増えていると思うのですが、ブロックチェーンの使い方はその限りではなく、より意味のあるものに使われるといいと思っています。
ブロックチェーンを最初に知った時は度肝を抜かれて、私も勉強したんですけど、実際は色々な障壁があってなかなか実用化までは至っていません。その結果、Web3やNFTの方向に流れていったんですけど、個人的にはBtoBに使うなど、別の方向に活用されるといいなと思っていて、法の整備なども進んでいってほしいという意味で注目しています。
島田:先ほどのエンジニアの需要の話に戻りますが、ブロックチェーンの知識や経験は、実務的な需要としては伸びてくるのでしょうか?
矢ヶ崎:出てくるプロダクト次第かなと思います。ブロックチェーンを活用した有用なプロダクトが出て来れば需要も高まりますが、技術レベルで現状の延長線にとどまってしまうと厳しい気がします。
・高機能なサーバレスデータベースに注目
島田:ありがとうございます。名村様は「PlanetscaleDB Serverless」ということですが…?
名村:最新というわけではないんですが、Planetscaleという技術があって、最近いろいろな機能が追加されていて面白いです。サーバレスDBが最近流行ってきている中で、パブリッククラウドが直接やっていないものとして、PlanetscaleDBやCockroachDBがあるんですけど、管理が大変なデータベースがサーバレスになっているのでとても楽になったと思います。それがどんどん高機能になってきているので最近気になっているというか、使ってみたいなという感じです。
島田:それではここからは、皆さんからいただいた質問に回答する時間を取っていきたいと思います。
質疑応答
質疑応答はSlidoを使用し、リアルタイムで登壇CTOへの質問を受け付け、お答えいただきました。
・質問1:リモートによるコミュニケーションロスについて
島田:一つ目の質問は、「リモート社会になってコミュニケーションロスが話題ですが、解消する方法があれば教えてください」とのことです。LayerXさんとアンチパターンさんで何か取り組まれていることはございますか?
矢ヶ崎:雑談の時間を作る必要があるということで、弊社の場合はまだ人数が少ないためオンラインで毎週1回定例会を開催しています。発言する機会や堅苦しくないコーナーを用意することで、双方向のコミュニケーションができるようにはしていますが、やったからどう変わったという効果は測れていないです。
名村:目新しいことはやっていないんですけど、24時間オープンになっているバーチャルオフィスがあって、そこに入れば誰かしらいるとか、Slackが活発に動いているので、コミュニケーションロスになっていると感じることはあまりないです。
ただ学んだこととして、毎日顔を合わせなくてもいいなとは思いました。全く顔を合わせないのはどうかとは思いますが、月1くらいで十分な気がします。
・質問2:スキルのキャッチアップ方法について
島田:2つ目の質問です。「お二人のエンジニアとしてのキャリアを振り返った時に、これをやっとくとよかったなという経験や勉強、習得スキルなどはありますか?」ということで、少し質問を変えて、スキルのキャッチアップ方法についてお伺いしてもよろしいでしょうか。
名村:使ってみるのが一番いいと思います。使うに足る技術を選定する方法に関しては、これまでの経験やセンスになってしまうのですが、使わないと良し悪しはわからないので。
島田:技術の情報収集というのは、何でやっているのでしょうか?
名村:一番手っ取り早いのはGitHubのTrendingですね。
島田:矢ヶ崎様はいかがでしょうか。
矢ヶ崎:あまり心がけていることはないのですが、技術が好きだと色々なところで目に入ってきて気になったものを使っています。昨今だとSNSで凄い人の話を見たり、アップしている勉強会の資料を見て面白そうだなと思ったものを触ってみるのが重要かなと思います。
・質問3:海外のエンジニアについて
島田:次は、「企業側から考えると海外からエンジニアが入ってくることについてはどのようにお考えでしょうか?やりとりも大変だし、できる海外エンジニアより、そこそこの日本人の方が使いやすいこともあるのでしょうか?」というご質問です。矢ヶ崎様は冒頭で海外の方とのやりとりもあるとおっしゃっていましたが、何か不便に感じることはございますか?
矢ヶ崎:現状だと、海外にいる日本人や日本語が堪能な方とやりとりをしているので、言語的に困ることはないです。一番困るのは、やはりタイムゾーンが違うので、時間が合わずにミーティングの際どちらかがつらい思いをする点です。
島田:名村様は海外での就業経験もあると思いますが、いかがでしょうか。
名村:日本人だから、とか、海外の人だから、という見方をしていないので一概には言えませんが、自分の慣れ親しんだ国を離れてわざわざ日本で働いてみようと考えている人は基本的に優秀だなとは思います。
前職で日本語を話せない人まで採用の幅を広げた時に、こんなに幅が広がるのかと思いましたね。そこそこの日本人でも採用するのが難しい時代に、これだけの人材がいるのであれば、企業としては採用するしかないだろうと感じました。
ただ、当然日本語で話している会社だとそこそこの日本人の方が使いやすいでしょうし、会社によりますね。日本語を使えない人を採用できる会社は、すごい強みになるのではないでしょうか。
島田:エンジニアの採用をされている企業の90%は日本語を強く求めているということもあって、その辺りを変えていけると母集団も形成できるのかなと思います。
以上で本日のCTO対談は終わりとなります。本日はありがとうございました。
[特別協力]一般社団法人 日本CTO協会