「Kotlinのフリーランスって実際どれくらい稼げるの?」「どんな案件が多いの?」と気になるエンジニアの方も多いでしょう。
この記事では、Kotlinフリーランスの単価相場・案件例・将来性について詳しく解説します。
Kotlinとは?

Kotlinは、チェコのソフトウェア企業 JetBrains が開発した静的型付けの汎用プログラミング言語です。2011年に発表され、2016年にバージョン1.0が正式リリースされました。Javaとの高い互換性を保ちながら、より簡潔で表現力の高いコードを書けるよう設計されたことから、モダンな言語として急速に注目を集めました。
Kotlinの普及を支えた大きな特徴のひとつが、Java Virtual Machine(JVM)上で動作する点です。これにより、既存のJavaライブラリやフレームワークをそのまま利用でき、企業は既存資産を活かしつつ段階的にKotlinへ移行できます。また、JavaとKotlinを同じプロジェクト内で併用できるため、導入のハードルが非常に低く、モダン化の手段として採用が進みました。
2017年には、Google が Kotlin を Android アプリ開発の公式サポート言語として採用したことで、その人気は決定的なものとなりました。簡潔で読みやすい文法、Null安全などの安全性向上機能、そしてJavaとの互換性は、Androidアプリ開発に求められる高い生産性と安定性にフィットしていたためです。現在では多くのAndroidプロジェクトでKotlinが標準選択肢となっており、Google自身も新規プロジェクトではKotlinファーストの方針をとっています。
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Kotlinフリーランスの単価相場
Kotlinフリーランスの月額平均単価は70万円前後で推移しており、60万円〜70万円がボリュームゾーンとなっています。単価は案件の質や求められるスキル、そして担当する工程によって大きく変動しますが、エンジニアとして経験を積み実力をつけていくことで高単価の案件を受注できるようになります。
下のグラフはテクフリに掲載されている単価別案件比率を示しています。

平均単価
テクフリの案件データに基づくと、Kotlin案件の月額平均単価は約70万円となっています。
この金額は、年収に換算すると約843万円となります。正社員エンジニアの場合、Kotlin経験者の平均年収は450万円〜700万円程度であるため、経験やスキル、担当領域によっては、フリーランスに転向することで年収が大きく向上するケースも珍しくありません。
フリーランスが高額な報酬を得られる主な理由は大きく二つあります。一つは、企業が求める即戦力としての高度な専門性や豊富な経験に対し、相応の対価が支払われるためです。もう一つは、報酬に含まれるコスト構造の違いです。正社員の場合、企業が負担する社会保険料の会社負担分や福利厚生費といった人件費が発生しますが、フリーランスではこれらを企業が負担する必要がありません。その分が報酬に上乗せされるため、結果的に提示される単価が高くなるのです。
他のスキルとの単価・案件数比較
ここでは、Kotlin案件を他の主要言語と比較します。テクフリのデータによると、Kotlinフリーランスの平均年収は約843万円で、単価水準は主要なトレンド言語と比べるとやや低めです。
また、Kotlin案件はテクフリ全体の約2.0%にとどまり、JavaやPythonなどの汎用言語ほどの案件ボリュームはありません。
一方、モバイル開発領域では、iOS向けのSwiftが競合となります。しかしKotlinには、Javaとの高い互換性を活かしてサーバーサイド開発にも応用しやすいという強みがあります。そのため、モバイルにとどまらず、システム全体を横断して活用できる技術として、一定の市場価値と安定した需要を確保し続けています。
Kotlin案件の特徴

ここでは、Kotlinエンジニアのフリーランス市場の具体的な特徴を詳しく見ていきます。
リモートワークの可否
テクフリのデータによると、Kotlin案件の約67%がリモートワークに対応可能となっています。フリーランスの場合は、自身のライフスタイルに合わせて常駐案件やリモート導入案件など幅広い選択肢を持つことができます。
需要が高い業界・分野
Kotlinの需要が最も高い領域は、言うまでもなくAndroidアプリ開発です。近年ではモバイルにとどまらず、サーバーサイド開発でもKotlinの採用が進んでおり、活躍できるフィールドは確実に広がっています。
特に需要が高いビジネス領域としては、モバイル先行型SaaS、ECプラットフォーム、キャッシュレス決済、フィンテック、大規模コンシューマー向けメディアサービスが代表例です。これらの業界では、アプリの品質と開発効率が事業成長を左右するため、Kotlinの高い生産性やNull安全性による品質担保は欠かせない要素となっています。
さらに、Kotlin Multiplatform Mobile(KMM)の普及により、クライアントアプリとバックエンドの両方をKotlinで統一する企業が増えています。技術基盤をKotlinに一本化することで開発効率を最大化できるため、この動きはサーバーサイド領域も含めたKotlinエンジニアの需要拡大を後押ししています。
高単価案件で求められるスキルセット
Kotlinフリーランスとして市場で最高水準の報酬を獲得するためには、Kotlinの基本的な開発能力を超えた、戦略的なスキルセットが必須となります。
- モダンなモバイル技術
モダンなモバイル技術として、Jetpack ComposeとCoroutines/Flowの実務経験は必須級です。Jetpack Composeは、従来のXMLベースから脱却し、宣言的UIを提供する現代のAndroid開発の主軸です。そのため、Jetpack Composeの実務経験は高単価案件の応募条件となるケースが増えています。さらに、大規模アプリケーションにおける複雑な非同期処理を安全かつ効率的に実装するためには、CoroutinesとFlowの深い知識と経験が求められます。バックグラウンド処理やリアルタイムデータフローを最適に扱う能力は、アプリのパフォーマンスと安定性に直結し、堅牢なアプリケーション開発において不可欠なスキルです。
- サーバーサイド/フルスタック能力
モバイル技術に加えて、サーバーサイドまたはフルスタックの能力を持つことは、市場価値を大きく向上させます。Spring BootまたはKtorなどのサーバーサイドフレームワークを用いたWeb APIの開発経験は、報酬の最大化に直結します。クライアントとバックエンドをKotlinで統一できるフルスタックエンジニアは、技術的な一貫性を保ち、プロジェクト全体の工数を削減できるためです。また、多くのエンタープライズ領域で必要とされる、既存のJavaを用いた大規模システム開発の知識や、レガシーシステムをKotlinへ段階的にモダナイゼーションできる能力も、特に高い評価を受ける重要なスキルです。
- アーキテクト・リードスキル
最高水準の報酬を獲得するための条件の中でも特に大切なのが、アーキテクトおよび技術リードのスキルです。DDDやClean Architectureといったソフトウェアアーキテクチャの設計原則を深く理解し、実際に大規模な方式設計や技術選定を主導できる能力が求められます。さらに、高単価案件では、単なるアプリの機能開発を超え、Kubernetes、Docker、AWSやGCPなどのクラウドインフラ環境での開発・運用経験が必須となります。高単価案件では、インフラ連携、スケーラビリティの確保、パフォーマンス最適化まで責任範囲が及びます。加えて、チームメンバーへのメンタリング、質の高いコードレビュー、技術的な意思決定の推進など、チーム全体の技術的な品質向上を担う技術リード・マネジメント経験は、高単価案件受注の鍵となります。
関連記事:Kotlinのおすすめフレームワークを5つ紹介!特徴をわかりやすく解説
Kotlin案件・求人例一覧
| 業務内容 | 動画配信Androidアプリ開発 |
| 単価目安 (月額) | 89万円〜99万円 |
| 働き方 | 常駐 |
| 必要なスキル |
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| 業務内容 | 脆弱性管理クラウドにおけるフルスタック開発 |
| 単価目安 (月額) | 100万円〜110万円 |
| 働き方 | リモート併用 |
| 必要なスキル |
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| 業務内容 | B to Bサービスの開発運用保守 |
| 単価目安 (月額) | 73万円〜83万円 |
| 働き方 | フルリモート |
| 必要なスキル |
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Kotlinフリーランスの将来性

長期的にフリーランスとして市場価値を維持し、単価を上げ続けるには、現在の需要を追うだけでは不十分です。重要なのは、技術・ビジネス両面の将来の変化を予測し、それに合わせて自分のスキルセットと提供価値を戦略的に再設計することです。
以下では、今後の需要がどのように変化するかを予測し、その変化に対応して高単価を維持・実現するための具体的なキャリアパスを提示します。
市場需要の動向
Kotlinエンジニアの市場需要は、今後も長期的に見て堅実に継続し、拡大していくと予測されます。その最大の要因は、Android市場の成長が続く限り、Googleが推進する「Kotlin First」戦略の基盤が揺らがないことです。世界のモバイルOSのシェアはAndroidとiOSが二分しており、GoogleがKotlinを推奨言語として公式化したことで、Android開発におけるKotlinの地位は確固たるものとなりました。そのため、コア市場での需要は継続的に安定しています。
さらに、Kotlinエンジニアの活躍領域は、従来のモバイル開発という枠を超え、システム開発全体へと拡大し続けています。具体的には、サーバーサイドでのSpring Bootとの連携や、軽量なKtorフレームワークの採用が広がっています。また、Kotlin Multiplatform Mobile によるクロスプラットフォーム開発の戦略的採用の広がりも重要です。 KMMは、UI以外のビジネスロジックやデータ層をKotlinで一元化し、iOSとAndroid間でコードを共有できるため、開発効率を重視するスタートアップやSaaS企業にとって非常に魅力的なソリューションとなっています。
今後のキャリアパス展望
フリーランスとして長期的に活躍し、高単価を維持するためのキャリア戦略は、以下の専門性の深化と適用範囲の拡大の2つの軸で構築されます。
- Kotlin Multiplatformの習得
KMMは、開発コストを大幅に削減しつつ、ネイティブに近い品質を実現する、企業にとって最も魅力的なソリューションの一つです。 現在のフリーランス市場においてKMM経験者はまだ希少であり、先行してこのスキルをマスターすることで、高単価で将来性の高い、戦略的なプロジェクトに参画できる可能性が高まります。
- フルスタック化の推進
モバイル開発のスペシャリストに留まらず、サーバーサイドの知識を深め、クライアントからバックエンドまで一貫して設計・開発できる能力を持つことが求められます。これにより、プロジェクト全体を統括できるフルスタックKotlinエンジニアとしての市場価値を確立できます。結果として、より大規模で高報酬の案件にアクセスが可能となり、多様な技術スタックを持つことで、技術トレンドの波に対しても柔軟に対応できる基盤が整います。
- 技術アーキテクトパスの確立
技術リードやアーキテクト技術的な意思決定、大規模な方式設計、チームメンバーの指導、インフラストラクチャの最適化など、開発全体の品質と方向性を決定する役割を担います。このスキルセットと実績を積み重ねることで、単なるコーダーではなく、プロジェクトの成功に責任を持つ技術責任者としての安定したキャリア基盤を築くことができます。
まとめ
Kotlinフリーランスは、Android開発を中心に安定した需要があり、月額平均単価は 約70万円 と高水準です。リモート案件も約67%を占め、働き方の選択肢も広がっています。案件数自体はJavaやPythonに比べると少なめですが、Android市場の成長とGoogleの「Kotlin First」方針により、今後も需要は堅実に継続すると見込まれます。
高単価案件を獲得するには、Kotlin基礎を超えたモダン開発スキル、サーバーサイドとの横断スキル、アーキテクト・リード経験などがカギとなります。また、Kotlin Multiplatform Mobileの普及によって、クライアント〜バックエンドをKotlinで統一する企業が増えており、このスキルは今後の市場価値を押し上げる要素です。
