フリーランスになって考えなければならない問題の一つに「年金」があります。多くの場合、これまで会社で加入していた厚生年金から脱退して、国民年金に加入することになると思います。
この国民年金には、所得が低い人向けの免除・猶予制度が用意されています。独立当初で収入が少なく、年金が払えないという場合に役立つ制度ですので、この記事でしっかりと理解して無理なく支払えるようにしましょう。
フリーランスの年金 国民年金とは?
日本には全国民が加入しなければならない「国民年金」と、会社員が加入する「厚生年金」、公務員が加入する「共済年金」があります。フリーランスは会社員でも公務員でもない個人事業主に該当しますので、加入できるのは国民年金のみとなります。
厚生年金や共済年金に加入する人に比べて、フリーランスは将来もらえる年金額が減少してしまうという性質を持っています。ただし会社や自治体によって毎月の給料から天引きされていた厚生年金・共済年金の保険料を自分の手元に残しておけるという意味では、実質的な収入は増えると考えることもできます。
年金というと、「将来もらえるかわからない」「高額すぎて支払えない」など、ネガティブなイメージばかりが先行してしまいます。しかし国民年金を支払っておくことにより、1年間に支払った保険料を所得から控除(節税)できたり、自分が働けなくなった時に収入を保障してくれる障害基礎年金、自分が死んでしまった後の家族のために遺族基礎年金が支給されるなど、見逃せない大きなメリットが存在します。
確かに「自分が支払った年金が、将来返ってくるかわからないんだから支払うのは損だ」と考える気持ちはわかりますが、ここはあえて「年金とは税金の一種だ」と考えると気持ちが楽になります。
私たちは消費税や住民税を毎年支払っていますが、「消費税が戻ってこない!」「住民税が返ってこない!」と困ることはありませんよね。なぜなら税金というのは、国民全員が支払って、公共工事や公務員のために支払うものだからです。
国民年金も、国に収める税金の一種であり、70歳くらいになってから戻ってきてくれたらラッキーくらいに考えておくと、悩む時間を減らせるかもしれません。
こんなに怖い! 未納の現実
とはいえ、「やっぱり国民年金は払いたくない!」という場合、支払いの催促を無視してしまおうと考える人もいるかもしれません。国民年金を払わなくても、強制的に支払わされることはない…と聞いたこともあるでしょう。
しかし国民年金は本来、日本国民ならすべての人が納付しなければならないものです。仮に未納状態が続いてしまうと、「強制徴収」という形で資産が差し押さえられる可能性があるので注意が必要です。
強制徴収とは、個人の財産が調査され、銀行口座や不動産など、所有している財産の差し押さえを行う措置です。年金事務所から届く納付状や督促状を無視し続けると、最悪の場合、銀行からお金が引き出せないこともありうるのです。
国民年金の未納の状態が続くと、将来もらえる年金の額が減ったり、もしくはゼロになってしまうこともあります。将来年金を受給するためには「受給資格期間」が10年間以上である必要があります。
仮に国民年金を9年間納付していたが、それ以降ずっと未納の状態が続いていたとしたら、年金の受給資格を満たさないことになるのでもらえる年金がゼロになるのです。せっかく支払った9年間の保険料が無駄になってしまうため、絶対に避けなければなりません。
ほかにも、自分がけがをして働けなくなった時に障害基礎年金を受けることができなかったり、自分が死亡した時に残された家族へ遺族基礎年金が支給されなかったりと、大きなリスクが伴います。
安易に未納するという選択を考えるのではなく、まずは国が用意している年金の免除・猶予制度を使うことが賢明なのです。
免除・猶予の対象は? どんな制度?
では、国民年金の免除・猶予制度とはどんなものなのでしょうか?
国民年金の免除・猶予制度は、保険料を支払う意思があるものの、収入が少なく納付したくてもできない状態に陥った人のために用意されているものです。年金事務所による審査を受けて認可が下りれば、全額免除から納付猶予まで、支払いの先送りを選択することができます。
- 全額免除
- 4分の3免除
- 半額免除
- 4分の1免除
- 納付猶予
免除・猶予制度にはこの5つの段階があり、収入が少なく経済的に困窮していればいるほど、上位の免除・猶予制度を利用することができるようになります。それぞれの免除・猶予には一定の収入水準が定められているため、自分の前年の収入がどれくらいだったのかを調べておくとよいでしょう。
なお、免除・猶予制度を利用することで、将来年金を受け取れる受給資格を満たすことが可能になります。免除制度を利用して半額しか年金を支払わなかったとしても、支払った分の保険料は老後に年金として支給されるということですね。
ただし全額納付した場合に比べて、年金の支給額は減少することに注意してください。半額免除になったからといって、全額納付している人と同じ水準の年金を受け取れるわけではないのです。
納付猶予の許可が下りた場合には、支払っていない分の保険料は年金支給額に反映されません。しかし受給資格期間にはカウントされるため、未納するよりも圧倒的に納付猶予を申請したほうがメリットが大きくなります。
なお、免除された年金額は、後から収入に余裕ができた時に「追納」することができます。免除・猶予を受けてから10年以内の保険料に限られるほか、一定の加算金がかかるデメリットはありますが、過去の分をさかのぼって保険料を納付することが可能になります。
これにより将来受け取る年金額を増やすことができますので、経済的な余裕が生まれたらなるべく早めに納付しておくようにしましょう。
免除・猶予の手続きの仕方
それでは、具体的にどのような手続きを行えば国民年金の免除・猶予制度を利用できるのかについても見ていきましょう。
まずフリーランスが国民年金の免除・猶予制度を利用したいとなった場合、足を運ぶべきなのは住んでいる市区町村の役所です。市役所や区役所の中の国民年金担当窓口に相談することで、免除・猶予制度に関する案内を受けることができます。
もし手元に国民年金保険料の納付書があるのであれば、その封筒の中に「国民年金保険料免除・納付猶予申請書」という書類が入っているはずです。これを記入して持参することで、スムーズに免除・猶予制度に申し込むことが可能です。
この書類を市役所や区役所の窓口に持っていくと、「国民年金受付票」を渡してもらえます。これが免除・猶予制度を申請したことの証明になります。あとは2〜3か月ほどで審査結果が自宅に送られてきますので、それを待てばOK。
なお、国民年金の免除・猶予制度は、1年ごとに申請が必要な仕組みです。なので翌年も免除・猶予制度を利用したいと考えるのであれば、また同じように申請する必要があるのでご注意ください。
まとめ:手続きを取って老後に備える
独立したばかりのフリーランスにとって、国民年金保険料は大きな負担に感じられることでしょう。お金がないために仕方なく未納という選択肢を取っている人もいるかもしれませんが、未納状態は確実に損をしてしまう方法です。
国民年金には免除・猶予制度がしっかりと用意されていますので、めんどうだからといって督促状を無視するのではなく、しかるべき手続きを取って老後に備えましょう。