今回は、株式会社LuupでCTOを務める岡田 直道さんのインタビュー記事をお届けします。大学の同級生である岡井さん、牧田さんとLuupを創業された岡田さん。そんな岡田さんがプログラミングを本格的に始めたのは、大学4年生と、Luupの創業に至るわずか2年前だそうです。今では街中で見かけない日はないサービスとなったLUUPの成長過程を、岡田さんのキャリアとともに語っていただきました。
インタビュー概要
お話を伺った企業さま
会社名 :株式会社Luup
設立 :2018年7月
代表者 :岡井 大輝
所在地 :東京都千代田区
ミッション:街じゅうを「駅前化」するインフラをつくる
事業内容 :電動マイクロモビリティのシェアリングサービス「LUUP(ループ)」の提供
URL :https://luup.sc/
お話を伺ったご担当者さま
部署 / 役職:CTO
氏名 :岡田 直道
東京大学工学部卒業後、同大学院在学中より株式会社AppBrew、株式会社リクルートライフスタイル、Sansan株式会社など複数社で主にサーバーサイド・iOSアプリ開発業務を経験。株式会社Luup創業後はCTOとして、エンジニア組織の構築やLUUPのアプリケーション開発・社内システム整備を管掌。
キャリアについて
世の中に大きな影響を与える手段として、プログラミングを始める
中学生時代にPC好きの父親からもらったお下がりのパソコンをさわったことが、私のエンジニアとしての原体験です。ゲームが好きだったこともあり、ゲームを作れるツールを使ってみたり、ゲームの周辺機器を少しいじってみたりしてみました。高校2年生の時にはゲーム制作のためにC#を勉強したことがあったものの、Web・アプリ開発の経験はありませんでした。そんな私が初めてサービス開発に取り組んだのは、大学4年のタイミングです。大学では化学を専攻していたので、プログラミングをする機会はほとんどありませんでした。しかし、将来を考えた時に、ITエンジニアの道もありだなと思ったんです。当時から、「世の中全体に影響があることをやりたい」と考えており、プログラミングであればそれが実現できるなと。高校生までゲームづくりをやっていたこともあって、もともと興味はあった分野なので、プログラミングを学び始めてみることにしました。
インターンでフルスタック開発を経験し、在学中にLuupを創業
最初は、当時流行っていたRailsから勉強し始めました。しばらく独学でやっていたのですが、より効率的に学びを進めたいと思い、AppBrew創業者の深澤さんに相談してみました。彼は高校の同級生で、以前からプログラミングをやっていたので、どこから学ぶのが良いか聞いてみたんです。すると、「うち(AppBrew)の開発手伝ってよ」と言われ、AppBrewでインターン生として働き始めることになりました。AppBrewが提供するコスメのクチコミサービス「LIPS」は、今でこそ多くの人に利用されるサービスになりましたが、私が参画した当時は開発メンバー4人の完全なスタートアップフェーズ。全員がフルスタックエンジニアとして、Web・モバイル・バックエンド・インフラを担当していました。私は最初、RailsでのWebアプリ開発を主に担当し、その後にモバイルやiOSの開発を経験させていただきました。Swiftを用いたiOS開発が一番得意でおもしろかったですね。その後複数社で長期インターンやアルバイトを経験したのち、在学中の2018年に、大学時代の同級生である現CEOの岡井、現COOの牧田とLuupを創業しました。
電動マイクロモビリティ事業で生活の根本である「移動」の課題を解決
岡井と牧田とは大学時代から「いずれ集まって起業できたら良いね」と話していました。しかし、私自身がプログラミングを学んである程度作りたいものを作れるようになったので、「30歳くらいで集まって」と悠長なことを言わず、今からでも起業して良いんじゃないかという話になったんです。岡井がビジネスアイディアを持っていたので、最初はLuupとしてではなく、個人としてプロダクトづくりに着手しました。実は、現在Luupで展開している電動マイクロモビリティ事業に至るまでに何度かピボットをしています。数回のピボットの後、訪問介護領域の課題解決をするマッチングサービスを作っていましたが、訪問となるとどうしても人の移動にコストがかかってしまい、事業として成立させるには厳しかったです。その経験から、そもそもあらゆる産業の根本に「移動」という課題があることに気づき、現在の電動マイクロモビリティ事業にピボットしました。
ハードウェア開発経験0でスタート:技術に関わることは何でもやった創業期
創業メンバーで技術のことがわかるのは私だけだったので、当初はソフトウェア・ハードウェア開発と開発領域全てを担当しました。特に、ハードウェア開発については全く経験がなかったので、専門の方を採用するまでは、独学をベースに外部の方の話を聞いて取り組みました。ローンチ前のプロトタイプづくりの経験が、技術的に1番成長できたと感じています。ハードウェアの仕様や通信のプロトコルなど、わからないことが多い状況で、とにかく動くものをなるべく早く作り上げなければなりませんでした。例えば、車両とアプリをBluetoothを用いてつなぎ込み、正常に動作するかの検証を繰り返しながらものづくりを進める過程は、とてもハードでしたがおもしろかったです。創業から2〜3年は人が少なかったので、私も現場でガッツリコードを書いていましたが、それ以降は経営課題の解決や技術戦略の策定、組織マネジメント、採用活動に重きを置いています。
Luupのミッションを実現するために、何でもする
今後の目標としてまず第一に、“街じゅうを「駅前化」するインフラをつくる” というLuupのミッションを実現するために、何でもするつもりです。これまでのところLuupをやめることを考えたことはないですが、人生を通して「人々の生活が変わるもの」に関わり続けたいと思っています。例えば、電子メールやLINEの登場で人々のコミュニケーションは電子化され空間を超え、生活のあり方は大きく変わりました。私も、世の中のあらゆる活動をITを用いて効率化し、IT技術がなかった頃には考えらなかった世界を作っていきたいです。また個人的には、その根底にある計算機科学や、更に基底にある自然科学を再度深く学びたいと思っています。今でこそIT領域の人間になっていますが、もともとは地球の成り立ちなど自然科学に興味がありました。将来的には、そういったアカデミック寄りの領域の仕事をしていくのもありだなと思っています。
考え方・マインドについて
スピーディーに意思決定をし、世の中から求められている価値を提供する
私が仕事をする上で大事にしていることは、「スピーディーな意思決定をすること」です。スタートアップだからというのもありますが、情報が揃っていない不確実な状況では、どれだけ早く意思決定をして、実行、検証できるかが事業成長の鍵だと考えています。そのような状況下では、完全な正解はないので、スピードを担保しつつも一定確からしい意思決定を繰り返していかなければなりません。その際に大切なことが、「世の中が何を求めているか」を考えることです。自分たちの思う最上のサービスを作ることも大事ですが、世の中から求められているものを形作ることが、真の価値提供だと思います。自分たちが世界一の技術者でない限り、自分たちが作るプロダクトは他の人も模倣可能です。だからこそ、当社が電動マイクロモビリティ事業をやる意味を深く考えて、スピーディーに意思決定をしながら世の中が求めている価値を提供していきたいです。
「自分の技術」を「ユーザーが求める価値」に変換できるエンジニアは強い
私が考える価値あるエンジニアは、「ユーザーが求める価値を提供できる人」です。こちらも前段同様、スタートアップかつ事業会社だからという背景もあります。会社として利益を出すことは重要ですが、そのためには、ユーザーがお金を払ってでも使いたいサービスを作らなければなりません。その過程で手段を柔軟に選択し、素早く意思決定しながらユーザーへの価値提供を目指します。エンジニアであれば、自分の技術をどのようにアウトプットして、どのようにユーザーに価値を届けるかが重要だと考えています。
ITフリーランスを活用し、開発組織の「専門性」と「柔軟性」を向上
当社のエンジニアは、正社員だけではなく、フリーランスの方も多数入っていただいています。ハードウェアが関わっているということもあって、当社の開発はピュアなWebアプリ・モバイルアプリ開発ではありません。そういった専門性のある人材を全て正社員で採用していくのは至難の業なので、フリーランスの方々にフルタイムやパートタイムで入ってもらっています。事業を深く理解し、ユーザーへの価値提供にコミットする領域に関しては正社員メンバーが多いですが、働き方の特徴に合わせてハイブリッドで組織を回してる状況です。また、事業の特性上法的な制約を受けることも多いので、一時的に多くのリソースが必要になる場合があります。そのような時は、リソースの調整が比較的柔軟なフリーランス人材を重宝させていただいています。
Luupで働きたい方へ
街じゅうを「駅前化」するインフラをつくる
当社は、“街じゅうを「駅前化」するインフラをつくる” をミッションに、電動マイクロモビリティのシェアリングサービス「LUUP」を展開しています。電動かつ小型のモビリティをアプリから予約して利用できるようになっており、新しい短距離移動のインフラを作っています。東京から始まって、現在では全国9都市に展開中。約6,100箇所のポート(車両置場)に計10,000台以上の車両を設置しています。車両は、電動キックボードと電動アシスト自転車の2種類を用意していますが、今後は体が不自由な方も含む幅広い年代に対応できる車両など、様々なユーザーのニーズを満たせるものを提供していくべく研究開発を進めています。駅徒歩20分の距離もLUUPを使えば5分程度で移動可能なので、将来的には「LUUP5分」といったかたちで、街じゅうの「駅前化」を実現していきたいと考えています。
累計資金調達額は約127億円:LUUPを「好き嫌いなく乗る交通手段」にしていく
当社は、昨年の11月に約36億円の資金調達を完了し、累計資金調達額は約127億円となりました。昨年7月に道路交通法が改正され、より多くの人にLUUPの車両に乗っていただけるようになったので、このタイミングでさらに成長していくために資金調達を実施しました。ミッションを実現するためには、ポートの数や密度を上げるなど、まだまだ多くの壁があります。そうした壁を1枚1枚乗り越え、LUUPを「好き嫌いなく乗っていただく交通手段」にしていきたいです。電車やバスは、好き嫌いに関わらず多くの人が利用していますよね。LUUPもゆくゆくは、当たり前のように利用していただけるサービスにしていきたいです。
プロダクトを愛し、ユーザー目線で価値を届けられる人を募集中!
当社の開発チームには、プロダクト好きで、コミュニケーション能力が高いメンバーが多いです。社内には、ソフトウェアエンジニア、ハードウェアエンジニア、事業推進、車両管理、渉外と、様々な担当者が在籍しています。開発メンバーはサービスの開発だけでなく、そんな彼らが使う社内システムを考えたり、時にはコラボをして新しい取り組みをやってみたりと、チームをまたいで様々なチャレンジをしています。また、車両とソフトウェアのつなぎ込みは、技術的に難易度が高く頭を悩ますことも多いですが、非常に面白いです。ハードウェアが関わるので、現実世界に影響を与えられますし、「移動」という日常的な活動で価値提供できるという手触り感も感じられます。このような環境に魅力を感じ、プロダクトを愛してユーザー目線で価値を届けられる人を絶賛募集中です。興味を持っていただけた方は、ぜひ一度お話しましょう!
取材を終えて
LUUPのいちユーザーでもある筆者にとって、岡田さんのお話は大変興味深いものがありました。使いやすいアプリをベースとした便利かつ快適な乗車体験も、岡田さんが大切にされている「ユーザー目線」の賜物なんだと実感し、さらにLUUPのファンになりました。「ユーザー目線でのサービスづくり」と一言にいっても、そう簡単にできるものではありません。しかし、岡田さんはそれを確実に体現し、これまでのLUUPの成長を牽引されてきました。街じゅうが「駅前化」することで「不便な場所」がなくなれば、人々の行動範囲は大きく広がるでしょう。私たちの生活を大きく変えてくれる可能性を秘めたLUUPと岡田さんの今後の挑戦が、非常に楽しみです。