今回は、株式会社ログラフにてCTO兼VPoEを務める丹羽 章文さんのインタビュー記事をお届けします。丹羽さんは、これまでエンジニアとして7社を渡り歩き、現在はログラフ社でCTO兼VPoEとしてご活躍されています。様々な環境で多種多様な経験を積まれた丹羽さんが考える「優秀なエンジニア」は、エンジニアリング以外の領域を含む幅広い経験を持つ「ジェネラリスト」とのことです。丹羽さんのこれまでのご経験と価値観に迫ります。
インタビュー概要
お話を伺った企業さま
会社名 :株式会社ログラフ
設立 :2018年1月
資本金 :34,760,000円
上場市場 :非上場
代表者 :藤本 勝幸
所在地 :東京都新宿区
ミッション:常識にとらわれない新しい取り組みを発見して改革を起こす
事業内容 :マーケティングDX支援サービスの提供次世代マーケティングプラットフォーム「オムニデータバンクの開発・運営
URL :https://lograph.co.jp/
お話を伺ったご担当者さま
部署 / 役職:CTO兼VPoE
氏名 :丹羽 章文
大学卒業後、システム開発会社に入社し、プログラマーとして大手製薬メーカー向けシステムの開発を担当。その後、複数社でPMやECサイト開発を含むWebアプリケーションの開発やチームマネジメントを担当。2022年9月にプロダクトマネージャーとして株式会社ログラフへ入社し、2024年9月にCTOに兼VPoEに就任。
キャリアについて
就職氷河期の影響でエンジニアの道へ
私はもともと、エンジニアになりたくてなったわけではありません。私が就活をしていた時代は就職氷河期まっただ中でした。150社ほどエントリーをして、内定をもらえたのは1社だけ。その企業がSES事業をやっており、エンジニアとして就職することになりました。入社後は、大手SIer直の案件に参画し、製薬メーカー向けの「お客様窓口」「市販直後調査」等のシステム開発を担当。ウォーターフォールで開発を行い、エンドユーザーとの折衝の機会もあったので、大変学びになりました。途中、スピンアウトによる会社創業などのイベントもありましたが、結局、この案件に10年近く入っていました。しかし、その10年間で当時使用していたC言語で開発されたシステムが陳腐化してきており、新卒から1つの案件に10年いて他の世界を見なくて良いのかとして危機感を感じ始めたんです。そこで、モダンな環境で開発ができる自社サービスを持っている会社に転職することにしました。
年収を150万円下げてWebアプリ開発会社に転職
自社サービス会社へ転職できたのは良いものの、結局SES事業部に配属されてしまいます。前職からマネジメントの経験も多く積んでいたこともあり、PMとして治験業務エントリーシステムの開発案件に参画しました。そのため、開発業務に関わることはほとんどなかったです。また、売上を上げるために自社の稼働人数を増やすことにも取り組みました。想定していたキャリアではなかったですが、PMとしてのマネジメント経験や売上向上に努めた経験は、良い経験になったと感じています。それまでずっと社内システムの開発をやってきたので、ToB/ToCなどのアプリケーション開発を経験してみたいと思い、そしてこの案件でも5年という長い期間携わったたので、前職と同様の危機感を覚えWeb系の開発会社に転職をしました。
先ほど申し上げた通り、Webアプリケーションの開発経験は全くなかったので、年収は150万円ほど下がりました。お金よりも経験が大切だと考えたんです。こちらの企業では、自社プラットフォームを基とした携帯キャリア公式サイトや電子コミック配信サイトの開発に携わりました。開発はLAMP環境でした。エンジニアは3名ほどと少なく教育体制も無かったため、ほぼ独学で食らいついていました。そんな中、途中でCTOが入って来て、主に開発チームの組織づくりを担当していただくことになったんです。それを横目で見ていて、「楽しそうだな」と思っていました。自分自身が組織づくりを担当することはありませんでしたが、勉強になることが多かったです。
リーダーとして、組織で成果を出すことにやりがいを感じる
その後、出版社向けのシステム開発会社へ転職しました。基盤システムの開発が主力事業でしたが、私はECサイトなどのWebアプリケーションの開発を担当しました。チームメンバーは、私とほぼ未経験のエンジニア2名です。そのため、前職で学んだチーム作りやメンバーの教育を手探りでやっていきました。また、セールスやプリセールス、クライアントからの問い合わせ対応など、エンジニアリング以外の幅広い業務にも携わりました。その中で意識していたことは、自分がある程度できるようになったものはどんどんメンバーへ移管していくことです。そのうち利益率が改善されたため、会社から事業の責任者を任されることになりました。その結果予算管理も担当することになりました。担当時はかなりの赤字でしたが、退職までの4年間で黒字化寸前まで回復いたしました。
その後、マッチングアプリの開発会社に転職し、主にエンジニアチームの組織づくりを担当しました。1サービス1人で担当ではなく、チームで担当するように変更して属人化を解消するなど、開発パフォーマンスの最大化に取り組みました。そして、友人の紹介で現在のログラフへの入社に至ります。
CTOに就任:組織横断的に業務をこなし、事業拡大に貢献
正直、自分の強みであるマネジメントや組織づくりの経験が生かせる場は少ないと思っていました。しかし、ログラフはその強みに期待をしてくれました。代表の藤本の印象がとても良く、この人のもとだったら楽しく働けそうだと感じ、転職することになったんです。当初は、「コールデータバンク」というサービスのプロダクトマネージャーとして入社しました。開発だけではなく、営業やCSなども担当し、各ステークホルダーを巻き込んでプロダクトのグロースに努めました。
しかし、このプロダクトマネージャー業務は入社後少しの期間しか担当していません。他のサービスのリリースが遅れており、このプロジェクトの立て直しを担当することになったんです。プロジェクトの立て直しがうまくいったこともあり、丹羽にならプロジェクトを任せてもよい、と判断されたのか弊社のプロジェクトが急増し、エンジニア組織も急拡大しました。。そんなことを続けているうちに、今では7つのプロジェクトを見ています(笑)。私が入社した頃は、開発メンバーが6名ほどだったのですが、今では25名まで増えました。その過程で、より組織を広く見る人が必要になり、私がCTOに就任しました。
いずれは自分がいなくても開発が回る組織にしたい
私は基本的に何年も先のことを見据えて日々を過ごすタイプではありません。1年後くらいの近い未来で目標を立てて、その先は大雑把に考えます。現在の目標は、ログラフのエンジニアを育成することです。将来的には、プロパーがマネジメントやリーダーを担ってくれると嬉しいですね。その過程で、プログラミング以外の領域も経験して欲しいと考えています。チームのジョブローテーションを回し、コスト意識やスケジュール意識を持って開発ができる組織にしていきたいです。そうすれば、5年後くらいには私がいなくても開発が回る組織ができているんじゃないかと思います。
考え方・マインドについて
3段階で思考する
私が仕事をする時に大切にしていることは、「長期目標」「中期目標」「直近の目標」の3段階で考えることです。これは一方通行ではなく、行ったり来たりします。開発だとWBSなどのブレイクダウンをして考える手法がありますが、それだけだと重要な視点が抜け落ちてしまうこともあるんです。そのため、単にブレイクダウンをして考えるのではなく、ボトムアップで考えることも重要だと考えています。
目標は“広義なフルスタックエンジニア”
自分がいままでいろいろな経験をしてきたから、メンバーにその経験を伝えることが出来たら良いなと思っています。ただ開発ができる人よりも、要件定義からリリース、運用保守や問い合わせ対応、クライアントとの折衝ができるエンジニアの方がどのような環境でも通用すると考えています。つまり、単にエンジニアリングができるエンジニアではなく、様々な角度からプロダクトの開発、提供ができるエンジニアが理想的だということです。「フロントエンド+バックエンド=フルスタック」ではなくもっと広義なフルスタックエンジニアになって欲しいです。そのため、ログラフのメンバーにはまずは幅広い業務をこなしてもらおうとしています。その中で得意不得意が出てくると思いますが、一通り経験してもらいたいんです。その上で、スペシャリストとしてのキャリアを選択するのは全く問題ありません。
フリーランスを活用し、組織に新たな刺激をもたらす
現在弊社では、フリーランスの方々にもプロジェクトに入っていただいています。会社としては正社員とフリーランスでほぼ区別しておらず、フリーランスの方にも1つのプロジェクトを任せていたりします。理由としては、2つあります。1つ目は、組織にとって良いインプットの機会になるためです。現在プロパーが6名いるのですが、弊社でしか働いたことがないとどうしても開発手法やマネジメントのやり方が画一的なものしか経験できません。しかし、フリーランスに入っていただくことで、他社でのやり方を学ぶ良い機会になります。会社としても「今までの経験を弊社にフィードバックしてください」とフリーランスの方々にはお伝えさせていただいています。2つ目の理由は、フリーランスの方々にも「仕事をするうえで制限がないことで働きやすく参画してよかった」と思ってもらいたいからです。同じ仕事をしているので、お互いに良い思いを共有できると良いですよね。
ログラフで働きたい方へ
データを用いて企業のマーケティング活動にイノベーションを
現在弊社では、3つの事業を展開しております。また1つのサービスのローンチを予定しております。。1つ目が、「コールデータバンク」です。Googleアナリティクスの電話版のようなもので、電話をかけてきた人がどういった経路でその電話番号を知ることができたのかのかを分析・トラッキングすることができます。このデータをリスティング広告やVBB(=Value Based Bidding:広告の最終的な目的である売上にフォーカスした自動入札戦略)に使用することで、パフォーマンスの最大化をしています。
2つ目は、「オムニデータバンク」というファーストパーティデータ(=企業が自社で収集したデータ)を収集・管理・運用するプラットフォームを開発しています。近年、サードパーティークッキーの廃止により、リターゲティング広告の精度が下がっています。そこで、企業自身が顧客の許可を得て収集したファーストパーティデータの活用が注目されているんです。実はこれまで、ファーストパーティデータが広告の最適化に使われることはほとんどありませんでした。オムニデータバンクにファーストパーティデータを入れていただき、そのリストを条件でグルーピングしてセグメントを作成することができます。それをGoogleなどの広告媒体に送信してカスタマーマッチを利用することで広告のパフォーマンスが最大化されるサービスです。
3つ目はLINE公式アカウントの「友だち追加」を正確に計測するエルデータバンクというサービスです。LINEにおけるコンバージョンはランディングページ上での「友だち追加」ボタンのタップ数で計測されていましたが、実際に友だち追加が完了した数値と大きな乖離が生じることが課題とされていました。この課題に対し、「L Data Bank」は、友だち追加が完了した時点でコンバージョン数を計測できるようにしたものとなります。
ローンチ間近のものとしてバリューデータバンクがあります。広告システムの機械学習を最大化させるためには広告クリックからの問い合わせの価値に基づく入札戦略(=Value Based Bidding:広告の最終的な目的である売上にフォーカスした自動入札戦略)が適しているのですが、価値をすぐに集計したり計算することが難しいという課題があります。問い合わせ時点や経過の音声やテキスト情報から、バリューデータバンクのAIにより将来の価値を推定することができるサービスとなります。当然、Google広告等の広告媒体にその価値を送信することができます。
“最新技術” と “歴史ある技術” を学べる環境
弊社で働いていただくことで、広告業界の知見を身につけられます。広告は私たちの生活にとても身近な存在ですが、仕組みを知らない人が多いです。しかしとても多額の予算が割かれています。そのため、システムのパフォーマンスを最大化するために最新技術が使われています。直接その技術を使うことはありませんが、ダイナミックな変化を直に感じることができます。
開発は最新技術を積極的に使っていきたいです。しかし、そうすると情報がないなどの不都合が生じてしまいます。そのため、あえて最先端よりもある程度情報がそろったものを選定をするようにしています。一方で、良いものはどんどん取り入れていく方針です。定期的に技術選定の見直しも行っているので、新しい技術に触れていただける環境もあります。
様々なことに興味を持って取り組めるエンジニアを募集!
弊社の開発チームは、CTO、シニアディベロッパー2名、システムエンジニア、プログラマー2名に加えてフリーランスやパートナー会社さんから10数名に入っていただいている状況です。若手からシニアまで様々なエンジニアがおり、異業種からの転職者もいます。体育会といった感じではないですが、お互いに意見をし合ってより良いものを作っていこうという文化があります。働き方はハイブリッドですが、お話好きが多いので出社時やオンラインミーティングの後によく雑談しているメンバーが多いですね。
そんな弊社ですが、エンジニアを絶賛採用中です。多種多様な業務に関わることができるので、いろんなことに興味を持って前向きにインプットとアウトプットができる人は非常に合っていると思います。弊社に興味を持っていただいた方は、ぜひエントリーをお待ちしています!
取材を終えて
インタビューを通して、ゆっくりとわかりやすくお話されている丹羽さんが印象的でした。インタビュー後にその旨をお伝えさせていただくと、ご本人曰く、「あえてゆっくり話されている」とのことでした。もともと話すのがそれほど得意なタイプではないため、ゆっくり話すことで頭で考える時間を確保するように自分の話し方を変えたんだそうです。この根底には、「他人を変えるのは難しいけれど、自分は変えられる」という考えがあるそうです。このような思いを持って何事も自分事化し、様々な環境で多種多様な業務に取り組まれて取り組まれてきた丹羽さんだからこそ、今やCTOとして組織を率いる存在になったのだと感じました。そんな丹羽さんが率いるログラフに興味がある方は、ぜひ一度お話を聞いてみてはいかがでしょうか?