今回は、株式会社Natureで取締役CTOを務める大塚 雅和さんのインタビュー記事をお届けします。大塚さんは、子供の頃からSFやゲームを愛し、パナソニックでカーナビの開発に携わった後、株式会社カヤックで数多くのWebサービスを立ち上げてきました。その後、独立して個人でIoT機器を開発し、現在はNatureのCTOとしてIoTとエネルギーマネジメントの領域で活躍されています。数年前からエストニアへ移住するなど、グローバルな視点を持ちながら「技術で社会課題を解決する」という強い信念をお持ちの大塚さん。エンジニアとしてのキャリアや価値観に迫ります。

インタビュー概要

お話を伺った企業さま

会社名    :Nature株式会社

設立     :2014年12月

上場市場   :未上場

代表者    :塩出 晴海

所在地    :神奈川県横浜市

ミッション  :自然との共生をドライブする

事業内容   :IoT技術を活用した製品の開発・製造・販売、およびエネルギーマネジメント事業

URL     :https://nature.global/

お話を伺ったご担当者さま

部署 / 役職  :CTO

氏名     :大塚 雅和

慶應義塾大学理工学部卒。パナソニックでカーナビゲーションのファームウェア開発、カヤックでWebやスマートフォンアプリの開発を経て独立。個人でスマートリモコンIRKitを開発し販売中に塩出さんに誘われNatureに参画。初代Nature Remoを開発する。現在はソフトウェアエンジニア。エストニア在住。

キャリアについて

SFと宇宙への憧れから、エンジニアの世界へ

私は、子供の頃からSFやゲーム、宇宙が好きでした。当時はアメリカに住んでいたのですが、「スターウォーズ」や「ナイトライダー」が流行りだした時代で、自然と興味が理系科目へと向いていったんです。そういった自然な流れで、大学では理工学部を選択しました。大学ではラジコンにカメラを付けて周囲の空間を認識しながら走る、いわば自動運転の走りのような研究をしました。そこでソフトウェアを書いていたのですが、これがエンジニアとして働くきっかけになります。

パナソニックで社会的インパクトの大きい仕事を経験

大学で取り組んでいた自動運転の研究から、車関連の仕事に興味を持ちました。車メーカーも検討しましたが、最終的に車載機器を開発していたパナソニックに入社しました。担当した業務は、カーナビの開発です。位置情報を検索するファームウェアを書いていて、カーナビ内のジャイロセンサーやGPSなどを使った技術開発をしていました。

パナソニックでは約7年間働きましたが、社会的にインパクトの大きい仕事ができたと感じています。自分が関わった製品が10万円から30万円の価格で販売され、何万人もの人に使ってもらえると思うと、すごくやりがいがありました。

インターネットに魅了され、個人開発を開始

パナソニックで働きながら、インターネットの世界に強く興味を持つようになりました。当時はちょうど革新的な変化が起きていた時期で、iモードでJavaのアプリを作って携帯電話で動かすことができるようになったんです。

好奇心から自分でもいくつかのサービスを作ってみました。例えば、行きたいレストランをメモして自分のウェブサイトで近い順に並べるアプリや、Flickrという画像アップロードサイトを色で検索するウェブサイトなどです。後者は雑誌に取り上げられて多くのトラフィックが集まり、「Webの技術は勉強すれば誰でも使える」ということを実感しました。そこで「他の会社も見てみよう」と思い、面白そうなことをしているカヤックに転職することにしました。

カヤックで1年間に77個の新規サービスを開発

カヤックでは新規事業を作るチームに所属し、「1年で77個の新しいサービスを作る」という目標を掲げて開発に取り組みました。Flash開発者のコミュニティを作ったり、音声を公開するサービスなどを立ち上げ、中にはミクシィで話題になったりヤフーニュースにのって多くのトラフィックを集めるサービスもありました。自分の作ったものが誰かに使われて、フィードバックも直接的に返ってくる。このサイクルを経験したことで、エンジニアとしてさらに成長できたと感じています。

「新しいハードウェアを作る」という思いで独立

カヤックでの仕事は楽しかったのですが、アプリという性質上、AppleやGoogleの制限の中でサービス開発をする必要があります。そんな中で、「ハードウェアを含めた新しいものづくりをしたい」という思いが強くなっていったんです。しかし、そのアイディアを社内で提案してみたものの、同じ考えを持った人があまりいませんでした。そこで「独立して1人で作ろう」と決意します。カヤックで考えていた企画を買い取って、個人事業主としてIoTリモコンデバイスの「IRKit」というサービスを開発しました。様々な工場と交渉しながら製品化していく過程は大変でしたが、良い経験になりました。

代表の塩出さんと出会い、Natureへ参画

IRKitの開発に取り組んでいる頃、ちょうど子どもができました。かねてから、教育のために子育ては日本以外の英語圏でしたいと考えていましたので、アメリカに移住するかどうかを検討していました。そんな時に、Natureの創業者である塩出さんからメールを頂いたんです。

塩出さんは当時、エアコンを使ってデマンドレスポンス(電力需要の調整)をするサービスを構想していました。IRKitがそのサービスに活用できると考えたそうで、「一緒にやらないか」と誘われたんです。Natureはもともとアメリカ市場で電力のコントロールをコンシューマー側からやることを考えていて、Natureでの仕事ならアメリカへの転居も視野に入れられると思いました。

また、塩出さんの「今後自然由来の太陽光や風力などのエネルギーを使う社会では、コンシューマー側のエネルギーコントロールが重要になる。これができると温暖化対策に貢献できる。」という思いに強く共感したのも入社理由の1つです。私はパナソニックでもカヤックでも、会社の理念をとても大切にしてきました。自分の仕事が会社の理念に合致し、社会をより良くすることに繋がるのは素晴らしいことじゃないですか。これらの理由で、NatureにCTOとして参画しました。

エストニアへ移住し、Natureへ復帰

最初は塩出さんと2人だったので、CEOとCTOという関係でものづくりはすべて私が担当していました。途中からメンバーも増え、組織として機能するようになりました。

その後、子育てのためエストニアに移住することになり、一度Natureを離れました。当時はIoTのスタートアップで海外からリモートで働くのは難しいと考えたからです。ただ、子どもが成長し、コロナ禍を経てリモートワークが一般化したこともあり、再びNature戻ってきました。現在はCTOとしてソフトウェア開発全般を担っており、バックエンドエンジニアとしてコードを書きながら、採用活動も行っています。

エンジニアとしての成長のカギは、「挑戦と失敗の繰り返し」

今まで様々な経験をしてきましたが、エンジニアとして一番大きく成長できたと感じた経験は、カヤックで大量のサービスを出したことです。数をこなすことで評価される環境だったので、たくさんのサービスを作り、その過程でたくさんの失敗もしました。時には、「本当にリリースしていいの?」という判断を迫られることもありました。作り手としての「わくわく感」と、ユーザー目線に立った時の「リリースしても問題ないか?」という「冷静な視点」の両方を持つことの重要性を学べたのは、良い経験だったと感じています。

また、リリースしてフィードバックのループを回すことで、よりユーザー目線で開発できるようになり、自分のサービスとしてオーナーシップを持って開発する姿勢が身につきました。一方で、Yahooなどに掲載されると大量のトラフィックが来るので、高トラフィックに耐えられる設計にするといった技術的な視点も養われましたね。

「社会をより良くする技術」を追求していきたい

今後は、自分の仕事が実際に世の中をより良くしていくことを、もっとがっつり体験したいと考えています。Natureの製品は現在70万台出荷されていますが、もっと台数を増やし、製品ラインナップも拡充していきたいです。その先にある電力の問題を解決し、「再生可能エネルギーを増やす」というビジョンの達成に貢献していくことが今の目標です。

考え方・マインドについて

仕事を通して、人生を豊かにする

私が仕事をする上で心がけていることは、「常にフラットで率直なコミュニケーションを取ること」です。変に忖度したり気を使ったりすることはせず、正直に意見を伝えるようにしています。もちろん信頼関係があることが前提ですが、こうすることで物事を速く、正しい方向へ進められるんです。

また、仕事とプライベートをあまり分けて考えていません。1日の中で8時間以上を使う仕事は、人生の大きな部分を占めていますよね。仕事もプライベートも両方充実させることで人生が豊かになると考えているので、メンバーにも仕事の時間を十分に楽しみながら、価値あるものにしてほしいと思っています。その中でも、単にお金を稼ぐためではなく、ビジョンの達成につながる仕事を一緒にしていきたいです。

AI時代のエンジニアに求められる要素は、「リーダーシップ」

私が考える「優秀なエンジニア」は、自分の考えを持ってリーダーシップを発揮し、周囲が放っておいても自ら進んでいく人です。特にAIによって個人の力が強くなる時代では、AIエージェントが「部下」のように動くような世界になります。そのため、指示待ちの人と自走できる人では、成果に大きく差がつくはずです。会社は個人の集団なので、勝手に前に進んでくれる人が組織にとっても大きな力になります。また、現在はまだAIの提案を採用するかどうかは、人間が判断しています。そのため、AIの提案を元に様々な要素を考慮して意思決定ができる人は強いですね。

正社員・フリーランスの垣根がない環境

弊社の開発チームの3割強は、フリーランスです。正社員とほとんど変わらないかたちで働いていただいており、彼らの専門性には大変助られています。現在も新規のフリーランスの募集をしており、特にスマホエンジニアを求めています。IoTサービスなので、Bluetoothを用いてデバイスを動かすスマホアプリの開発は非常に重要なんです。スマホアプリの開発経験がある人にはぜひ来ていただきたいですね。

Natureで働きたい方へ

Natureが目指す未来:スマートホームから始まるエネルギー革命

Natureでは大きく3つの分野でサービスを展開しています。

1つ目は「スマートホーム」で、「Nature Remo」というIoT製品です。デバイスを家に置いて、音声やスマホ経由で家電を操作することができます。

2つ目は「エネルギーマネジメントシステム」の「Nature Remo E」です。EVや蓄電池、エコキュートなどをコントロールして、太陽光発電で発電した電気を効率よく使い、電気代も節約することができます。

3つ目はBtoBの「デマンドレスポンスシステム」で、もともとの理念であるエアコンを束ねて何万台も一気に制御する仮想発電所の仕組みです。個人向けサービスをベースに、集合住宅向けのシステムも提供しています。

コンシューマー向けのサービスを開発するにあたっては、ユーザーである自分自身も感じる「不便さを解消したい」「毎日使うものをストレスなく使いたい」「身の回りには美しいものをおきたい」という思いが強いです。その原点には、スマートフォンを日々使っていて使いやすいUIのアプリを触っているのに、家に帰ったらなぜ不恰好なリモコンなのかという違和感にあります。コンシューマー向けに高いクオリティの製品を提供し評価されてきたことで、法人のお客様にも受け入れられている、と感じていて、その先にある社会全体のエネルギー問題の解決に繋げていけると考えています。

「技術の垣根」を超えて1つのサービスを作り上げる

NatureのIoT製品の製造は委託していますが設計は社内で行っています。ファームウェアチームがあり、エレキや電気のエンジニアも在籍しています。Webサービスだけでなく、ハードウェアも含めた幅広い技術領域で協働している点が面白いところです。AppleやGoogleのような外部の制約ではなく、自分たちで制約を決められる自由さもあります。また、バックエンドだけに閉じこもるのではなく、ユーザー体験なども考慮して、全体をリードしながらみんなで考えてプロダクトを作っています。

そんなNatureの製品・環境に興味を持っていただける方を募集しています。仕事を通して社会に大きなインパクトを与えることに熱くなれる人、私たちのミッションに共感してくれる人と一緒に働きたいと思っています。ぜひ一度お話をさせてください。

Nature株式会社の募集ページ

 

取材を終えて

大塚さんのインタビューからは、技術への深い理解と社会課題への強い問題意識が感じられました。パナソニックからカヤック、そして独立を経て現在のNatureに至るキャリアは、常に「技術で何ができるか」を追求し続けた軌跡と言えるでしょう。IoTとエネルギーマネジメントという未来の暮らしに直結する領域で、理念を大切にしながらも実用的なプロダクトを生み出していく姿勢は、多くのエンジニアにとって参考になるのではないでしょうか。技術を用いて社会に大きなインパクトを与える。こういった働き方に興味がある方は、ぜひNatureさんの門を叩いてみてはいかがでしょうか?

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