今回は、株式会社ゲームエイトにてCTOを務める伊林 義博さんのインタビュー記事をお届けします。2014年創業の同社は、ゲーム攻略情報サイト「Game8.jp」を中心に月間最大 5 億 PV/4,200 万 UUを誇り、国内外の多くのゲームファンから愛されるサービスを提供しています。そんなグローバルサービスの開発部門を統括しているのが、CTOの伊林さんです。そんな伊林さんが仕事をするうえで大切にされていることが「信念は曲げずに、柔軟に変化をしていくこと」。変化を恐れず多くのチャレンジをされてきた伊林さんのキャリアと価値観に迫ります。

インタビュー概要

お話を伺った企業さま

会社名   :株式会社ゲームエイト

設立    :2014年8月

資本金   :9,879千円

上場市場  :東証プライム上場の株式会社Gunosyの100%子会社

代表者   :沢村 俊介

所在地   :東京都渋谷区

事業内容  :ゲームに関連するインターネットサービスの提供

URL    :https://game8.co.jp

お話を伺ったご担当者さま

部署 / 役職  :CTO

氏名    :伊林 義博

ソニーイーエムシーエス株式会社へ入社後、制御システムやヘッドマウントディスプレイの制御システムの設計・実装に携わる。インターネット業界へ転身後、主にRailsを使ったWebサービスの開発に従事。グローバルアストロラインズ株式会社、株式会社mgramのVPoEを経て、ゲームエイトへ入社。CTO 兼 開発部長として、エンジニアリング全般を統括している。

キャリアについて

パソコンに没頭し、高専に進学

私が初めてパソコンに触れたのは、小学生の頃でした。親がパソコンを購入したんです。約30年前なので、とても大きなパソコンでした。細かいことは記憶にないのですが、当時からパソコンを触るのが得意で、中学生の頃には学校から帰宅すると毎日触っていました。そんなこともあり、中学卒業後は高専に進学します。1年の冬からプログラミングの授業が始まり、最初はC言語を学びました。タイピングゲームやホームページを自分で作ってみたりと、興味の赴くままにいろんなものを作りました。

ソニーの子会社で制御系システムを開発

高専卒業後は、ソニーの子会社にエンジニアとして就職しました。ソニーは当時から先進的なことをやっており、私にとっては「未来を見せてくれる会社」だったんです。そんなソニーで働いてみたいと思い、入社を決めました。

最初に担当した業務は、実装機の制御開発です。大きな機械を高速に正確に動かすためのプログラムを書いていたのですが、これが1ミリ秒でもタイミングがずれると大事故に繋がってしまうという世界で、リアルタイム制御とはなにか、マルチスレッドとはなにかというのを強く体に叩き込まれました。また、3年目の頃には現場をリードする役割を任せてもらいました。チームメンバーは価値観も技術力もバラバラで多種多様だったので、当時23歳の私にとっては難しい部分もありましたが、チームでプロジェクトを動かすことを学べた良い経験になりました。技術とマネジメント両面において、とにかくインプットを大量に入れて、更に実地でも多数のトライをすることが出来たこのときの経験が今の私を形成しているといっても過言ではありません。

その後はVRのはしりになるような、ヘッドマウントディスプレイの開発を担当。マイコンといったハードウェアとソフトウェアのつなぎこみ部分を作っていました。マイコンに限らずですが、精密かつ大量生産する商品というのは制約の塊なんです。一例を上げると、私が担当していたマイコンはチップは小さく搭載されるROMの容量もごくわずかなので、数バイト単位で容量を切り詰めないといけない。アセンブラの出番がついに来たか、と燃えましたね。デバッグではアセンブラは日常茶飯事だったのと、趣味の世界ではアセンブラで遊んでいたのですが、まさか実際に使うことになろうとは。私はドラクエの最初の島でレベル99まで育てるなど、制約のある中でやりきるのが好きなタイプだったこともあり、この仕事はやりがいがありました。

インターネット業界へ転身:ユーザーの近くに身を置きたい

ソニーでの日々も非常に充実していたのですが、当時は「もっとユーザーに近いところで開発がしたい」という思いと、ちょっと自信もついていた時期だったので、自分の力がどこまで通用するのか試してみたいという思いがありました。どちらかというと後者のほうが強かったと思います。そんな中、教育系サービスを提供するベンチャー企業を立ち上げた先輩から誘いがあり、インターネット業界へ飛び込むことにしたんです。主には、英語学習者向けのサービス開発を担当しました。その一環で、Facebookマーケティング用にアプリを開発したのですが、これが今でも年末年始には風物詩になるほどの大流行となったんです。ここに至るまでにひたすらアイディアを出しながら手を動かし、寝る間も惜しんで取り組み続け、インターネットの世界で自分の力でユーザーに届けるという目標を達成することが出来たので、大変良い経験が出来ました。

その後、この教育系のベンチャー企業に誘ってくれた先輩が立ち上げたmgramという会社に転職します。性格診断テストを提供しており、私はVPoE兼テックリードとして開発業務全般を担いました。mgramは順調に成長していたのですが、組織をより大きくしていこうというより、少数精鋭でやっていこうという方針でした。一方で私は、マネジメントとして組織を大きくしていくことに興味が湧いていたんです。また、ちょうど子どもが生まれたこともあって今後の人生を見つめ直すことにしました。当時の自分の選択肢は、「技術のスペシャリスト」「事業を作る事業責任者」「マネジメント・経営」の3つ。最終的には、「マネジメント・経営」の道が一番自分のこれまでの経験にレバレッジをかけられると考えていました。そんな中、ゲームエイトCEO(現会長)の西尾さんに、「CTOとして、開発領域の一部ではなく全てまるっと任せたい」と言われたんです。ゲームエイトの雰囲気も好きだったこともあり、入社を決めました。

ゲームエイトのCTOに就任

私がゲームエイトに入社した頃は、開発部がありませんでした。当時は業務が人に集中し属人化していたので、これをチームとして開発ができる体制に変更し、開発スピードがぐっと上がりました。特にインフラについてマネージドサービスを積極的に利用したことは、今振り返っても良い判断だったと感じています。トラフィックが大きくなりがちなサービスなのでインフラ管理は肝なのですが、弊社としてはインフラ管理は可能な限り監視・冗長化を前提とした自動化運用として、一人ひとりがユーザーに向き合う組織の方が向いていると感じ、それがゲームエイトの成長を支えていると思います。

次に、海外向けのゲームエイトの開発にも着手しました。日本版とソースコードを共存せず別リポジトリにし、国内向けチームと海外向けチームにわけてそれぞれが管理するようにしました。違う事業部が同じサービスを見ると責任の所在が曖昧になり、スピード感を持って事業を成長させられなくなる可能性があるからなのですが、この判断は有効だったと考えています。

その他、ゲームエイトでは様々な業務に取り組んで来ましたが、私がCTOとして大切にしていることは、「判断の背景を伝えること」です。そうすることで、組織全体が納得感を持って業務に当たることができます。また、単に一方的に伝えるだけでなく、日頃から気になることがあれば遠慮せず聞いて欲しいと伝えています。しかし、ただ聞いて欲しいといっても聞きづらいものは聞きづらいですよね。そのため、心理的安全性の高い環境づくりにはかなり力を入れています。私が日頃からフランクにメンバーに質問するのもその一環です。実際に弊社には誰もが意見しやすい雰囲気があり、役職問わず意見を交わして方向性を合わせながら仕事ができています。

考え方・マインドについて

AI時代に大切なのは、変化すること

私が仕事をするうえで大切にしていることは、3つあります。まず1つ目は、「変化には柔軟であるべき一方、信念を曲げることはしない」です。変化の激しいAI時代の現代においては、特に重要だと考えています。エンジニアにおいて、今後はAIベースでの開発が当たり前になることは間違いありません。そのため、そもそもAIを積極的に取り入れていかないと生き残れないと思います。私は昔から変化が好きで、求められれば何でもやりたいと思う性分です。しかし、本当に何でもやるわけではなく正しいと思えないものはやりません。例えば私は「Enjoy」というキーワードを昔から大切にしているのですが、自分の周りを幸せにしたいという思いが強いです。現在は、メンバーを幸せにする=キャリアに責任を持つと捉えており、変化をしながらも、いかにこの「信念」を貫けるかが大切だと考えています。

2つ目は、「神は細部に宿る」です。例えば、UIの確認をする時は1ピクセル単位でずれがないかを確認します。リアルな定規を使って確かめることもあるくらいです。なぜここまでこだわるかと言うと、「ずれ」という違和感があると、本当に伝えたいことが伝わらない可能性があるからです。しかし、この問題はこちらが気をつければ解消できます。やり切らずに負けたくはないので、細部までこだわって仕事をすることを心がけています。

3つ目は、「大局を把握することを怠らない」です。細かい仕事をただこなすのではなく、「何のためにやるのか」を考えて仕事をする必要があると考えています。この大局をつかめていないと、時間が経つにつれて本来の目的とのずれが発生してしまいます。多少ずれることは許容しつつも、いかに早く軌道修正できるかが重要です。

エンジニアは「コミュニケーション」こそ大事

仕事は結局のところ、人と人とのコミュニケーションによって成り立っています。AI技術が進化し、多くの業務が自動化される中、人間に求められるのは高度な言語化や共感力です。また、リモートワークの環境では対面でのやりとりが減り、非言語的なコミュニケーションが難しくなるため、相手がどう感じ、どのように受け取るかを意識した丁寧なコミュニケーションが不可欠となります。それが結局開発生産性にも跳ね返ってきますしね。エンジニアとして技術を追求することはもちろん大切ですが、それと同時に、相手の視点に立ったコミュニケーション力が今後ますます重要になってくると私は考えています。

開発チームでのITフリーランス活用

弊社では、多くの IT フリーランスの方に業務委託(準委任)契約で参画いただいています。稼働日数や時間帯は契約ごとにさまざまですが、進捗共有を円滑にするため可能な範囲で社内エンジニアと近い時間帯で作業いただくことを推奨しています。連続したコミットがある方がコミュニケーションコストを下げられ、仕様確認やレビューを迅速に行えるためです。

また、IT フリーランスの視点では、AI を活用した開発スキルがないと今後は案件獲得が難しくなると考えています。弊社でもすでに Copilot や Cursor、Claude などのツールを活用し、生産性が飛躍的に高まっています。これらを使いこなせない場合、チームの開発スピードについていけなくなるため、今後は必須になると考えられます。

ゲームエイトで働きたい方へ

「More Fun, More Gaming」なサービスを提供

弊社は、ゲーム領域で複数のサービスを展開しています。1つ目は、ゲームの攻略情報メディアサイトの「Game8.jp」です。弊社にゲームをプレイする社員がいて、実際にプレイをして掲載をしています。ゲームを進める中で行き詰まったときに見てもらい、各ユーザーがゲームを長く楽しめることを目標としています。

2つ目は、Game8.jpの海外版である「Game8.co」です。海外拠点を構え、現地で採用をして運営をしています。先述の通り、これはGame8.jpの翻訳版ではなく、別の独立したサービスとして運営しています。ゲームによっては日本語と英語で全然呼び方が違ったりするので、翻訳には限界があります。また、日本と海外でプレイの仕方が違うこともあるので、現地のマインドを最大限するためには別サービスにする必要があったんです。Game8.coは直近かなり伸びており、非常に成長性の高いサービスです。

3つ目は、

「Game8」内でゲーム内アイテムやゲームダウンロードキーなどを販売できるECサービス「Game8 Store」です。弊社は国内最大級のゲーム総合情報サイトの運営を通じて培ったゲームユーザーへの深い理解やノウハウを活かし、ユーザー目線に立った独自のサービスを提供します。「Game8 Store」は、ゲーム会社と協力してそれぞれのゲームが持つ魅力や世界観を最大限に引き出し、ユーザーがさらに深く、そして長くゲームを楽しめる環境作りを支援することを目指しています。ユーザーとゲーム会社の双方にとって新たな価値を生み出し、ゲーム業界のさらなる成長をリードしていくサービスとして注力しています。

4つ目は、クリエイター事務所「Honey Studio(ハニスタ)」の運営です。クリエイターのマネジメントやサポートを行いながら、ゲーム系をはじめとした商材に関する動画を作成していただいています。

ビジネスサイドと同じ視点で開発ができる環境で働いてみませんか?

弊社では、1チーム3〜4名の少人数でチームを組み事業部の一員としてサービスを担当しています。そのため、開発部の意思もサービスに乗せてユーザーへ届けることができるという点が面白いポイントの1つです。また、Game8の場合は一定のトラフィックがあるサービスの開発を経験できます。その中で、広告とどのように向き合っていくかも重要で、広告を入れることによるパフォーマンス低下と収益のバランスを取ることが求められます。

環境としては、ゲーム好きなメンバーが多いですね。全体的に裁量が大きいのも特徴です。答えがないものに答えを出していかないといけないので、その分責任も重いですが、やりがいを持って働いていただけるかと思います。プロダクトの一面を持ちながらもビジネスサイドと同じ視点で開発したい人や、1つ1つの背景を考えながら開発ができる人は弊社の環境に非常にあっています。そういった方々で弊社にご興味をお持ちいただけた方は、ぜひ一度お話しさせてください!

株式会社ゲームエイトの募集ページ

取材を終えて

インタビューを通して、伊林さんは「人の声が聞けるCTO」だと感じました。社内においては、メンバーの心理的安全性をすごく大切にされており、メンバーにも相手目線でのコミュニケーションを心がけるよう促されております。また、神は細部に宿るという精神のもとユーザー目線でのプロダクト開発にもこだわられています。そんな伊林さんだからこそ、これまで多くのマネジメントの役割を任されてきたのだと感じました。日本のゲーム人気は世界でもとどまることを知りません。そんな世界中で愛されているゲーム領域で、人々の生活をより豊かにしているのが伊林さんをはじめとしたゲームエイトのみなさんです。これからどんな面白いサービスを提供してくれるのか楽しみでなりません。

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