雇用対策法って何? 年齢制限禁止の義務化

IT業界関係者やIT業界に興味を持っている方であれば、一度は耳にしたことがあるかと思いますが、「プログラマー35歳定年説」という言葉があります。

曰く、プログラマーが第一線で活躍できるのは35歳前後までである、という“説”です。

今回は、その説の検証を行う上で、絶対に忘れてはならない法律『雇用対策法』についてご紹介いたしましょう。

『雇用対策法』の正式名称は『労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律』となっています。

名前の通り、労働者が生き生きと働ける社会を目指すため、企業や国・自治体が守るべきルールを定めた法律となっています。

この法律が平成19年(西暦2007年)10月に改正されたことで、労働者を雇用する組織に対して、原則、“労働者の年齢制限禁止”、つまり年齢を理由に採用拒否をしてはならない、ということが法律で明示されました。

つまり、35歳以上であっても、プログラマーとして採用してもらうことは可能となっています。

このように説明すると必ず「募集要項に“キャリア形成のため35歳未満の方”と書いてあるのを見たことあるけど?」と質問されますが、実は“労働者の年齢制限禁止”にはいくつかの例外規定があります。

他にも規定がありますが、特にプログラマーに関わる規定としては次の二つです。

①「定年年齢を上限として、当該上限年齢未満の労働者を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合」

②「長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、若年者等を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合」

解説すると、①は定年のある正社員など無期契約で雇用予定の人(契約期間が決まっているアルバイトや派遣社員などではない人)については、定年年齢以上の年齢の方を採用しても仕方がないので、定年年齢を上限として年齢制限を設けて良い、という意味です。

②は定年のある正社員など無期契約で雇用予定の人(契約期間が決まっているアルバイトや派遣社員などではない人)については、スキルを身に付けてもらう観点から、若い人からの応募だけになるように年齢を限定しても良い、という意味です。

さきほどの「募集要項に“キャリア形成のため35歳未満の方”と書いてある」というのは②の例外規定に則った対応になります。

ちなみに、募集要項に“キャリア形成のため35歳未満の方”の場合、必須条件として「〇〇資格を持っている方」は大丈夫ですが「〇〇業務経験者」と記載すると違法になります。

本題から逸れました。

結局、私が言いたかったこととしては、『雇用対策法』は正社員など無期契約の方については、「原則、年齢制限なし」と言いつつ、いくつかの条件を満たせば年齢制限ができちゃう、ということです。

そして、逆に派遣社員などの有期契約の方は、いかなる場合も年齢制限ができないのです。

さらに、フリーランスの方がクライアント企業と直接、請負契約を結場合、フリーランスは雇用者ではないため、年齢制限という概念自体が成立しない、ということになります。

結論としては、正社員のプログラマーの場合、採用基準や定年という形で年齢制限を受けますが、正社員ではないプログラマーとして働く場合、年齢は関係ない、ということになります。

なお、個人的な考えですが“正当な説明がなく年齢を理由に採用しない会社=法令順守をしていない会社”ですので、そのような会社で働いても仕方がないと思います。

ブラック企業 NO

実際、プログラマーに年齢制限はあるのか?

「プログラマーに年齢制限があるかどうか?」と聞かれると、基本的には「年齢制限はない」と言えると思います。

たしかに“正社員という社会的地位”には定年退職という形で年齢制限があります。

『雇用対策法』にも「定年年齢を上限として、当該上限年齢未満の労働者を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合」は採用条件に年齢制限を付けて良い、ということになっていました。

しかし、プログラマーとして身に付けた技能は定年年齢になった時点で、急に役立たなくなるようなものではありません。

多くの企業で、60歳で定年となった方が65歳まで再雇用されて、後進の育成を含めて現場で業務を続けているのが普通の光景になっていますが、IT企業でも同じです。

60歳になったプログラマーが65歳まで再雇用されて、現場で業務を続けているのも当たり前になっています。

あるいは、65歳を過ぎてなお、フリーランスに転向するなどして、プログラマーとして働いている方も中にはいらっしゃいます。

すでにお伝えした通り、正社員など無期契約の方については年齢制限を設けられる可能性がありますが、契約社員やフリーランスとしてクライアントと契約している方であれば、年齢制限は関係ありません。

ですから、プログラマーとしてクライアントに求められている技術(と体力)があれば、理論上、何歳でもプログラマーとして活躍することが可能だと思います。

企業の採用側は年齢を一般的にどのように考えているか?

採用担当者の考え方、採用戦略によりけりですが、正社員(相当)の人材の採用活動時、年齢を気にしていない会社は絶対にないはずです。

一般的に、社会人経験、人生経験の短い若い人ほど、採用担当者はポテンシャル、つまり応募者の“可能性”を重視して、応募者を評価します。

逆に社会人経験、人生経験の長い高齢の方ほど、経験(実績)を重視して応募者を評価します。

生きてきた年数に応じて、経験(実績)を積んでいるはずですので、年長者ほど経験が重視され、若い人は経験がないため、ポテンシャルで評価する形になるのです。

このポテンシャルと経験のバランスや、それぞれの評価基準・観点が業界や企業によって異なるため、一概に、若い方が有利とも言えないのが現状です。

さらにいえば、昨今のプログラマー求人の状況としては、プログラマーを含めてITエンジニア人材が不足しており、いわゆる売り手市場です。

そのため、「意欲を持って面接に来てくれるだけでありがたい。業界未経験者でも気にしない」という企業が増えているように思います。

結果、プログラマーとしての経験は未経験であっても、社会人経験が長く人付き合いが得意な方や、論理的な思考が得意な方など、プログラマーとして生きていくのに有利な特性を持つ方は、多少、高齢であってもポテンシャルが高いとして、採用されやすいかと思います。

年齢に捉われないプログラマーのキャリアマップとは?

一般的にプログラマーのキャリアは大きく二つに分かれます。

具体的に言うと、そのままプログラマーとしてキャリアアップするパターンと、システムエンジニアなどプログラマーより上流工程に関わるITエンジニアへとキャリアチェンジするパターンです。

どちらの方が上、どっちの方が下というわけではありません。

システムエンジニアの方がプログラマーより平均年収が高いと言われがちですが、プログラマーの中には2000万円近い年収を得ている方がいます。

自分がより魅力を感じるキャリアを選ぶべきです。

一つ言えるのは、どちらのキャリアを選ぶにしても、技術力の向上や対人コミュニケーションスキルなど、より自身の価値を高める努力を怠ってはいけません。

プログラマーだけに限らずチーム行動の多いITエンジニア一般にいえることだと思いますが、高齢になっていくほど、自分で手を動かすというよりは、蓄えた知識を駆使して、PMなど上位者の相談役を務めたり、下位者を育成するなど“知恵袋”的な役割が期待されます。

そういう期待に応えられるキャリア形成が重要だと私は思います。

まとめ:プログラマーはむしろ高齢でもOK?

昨今、長生きされる方が増える中で、自分も一生現役を目指したいと考えている方も多いかと思います。

個人的な意見ですが、「プログラマー35歳定年説」とは裏腹に、プログラマーは、むしろ他の仕事よりも高齢でもできる仕事だと思っています。

なぜならば、プログラマーという仕事は肉体を酷使する肉体系の仕事ではありません。

さらに、パソコンさえあればどこでも業務が可能で、柔軟な働き方ができます。

実際、国連で演説したことで大注目された“おばあちゃんプログラマーのマーちゃん”こと若宮正子さんは80代です。

プログラマーという仕事は技術力さえあれば、何歳でも問題なく働くことが可能なのです。

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