エンジニアになりたい人、エンジニアになりたての人が気になるのは、今後のキャリアプランではないでしょうか?

そこで今回は、多くの人がイメージする“ITエンジニア像”と少し異なる、という意味で、少し特殊なインフラエンジニアのキャリアパスについて見ていきましょう。

インフラエンジニアとは?

インフラエンジニアのキャリアパスについて見ていく前に、基幹系エンジニアとも言われるインフラエンジニアの業務について、ご紹介いたしましょう。

ITシステムといえば、みなさん、ソフト面を考えがちだと思いますが、プログラムがプログラムとして動くには、ハード面も必要です。とっても当たり前ですが、パソコンソフトはパソコンがないと動きませんよね?

では、家電量販店に行ってきて、一番安いパソコン、または一番高いパソコンを買ってくれば良いか? というと、必ずしもそうではありません。3DCGでグラフィックスが綺麗な“重たいゲーム”を、3万円のノートパソコンでプレイするのは現実的ではありません。逆に、オフィスソフトのためだけに50万円近いパソコンを用意するのはオーバースペックです。

さらに言えば、用意したオフィスソフトがmacOS専用なのに、買っていたパソコンがWindowsだった場合、ソフトもパソコンもあるのに使えない、という話になります。また、ダウンロード販売用のライセンスを購入したのに、ダウンロードするためのインターネット環境がない、ということになると、お金を払ったに、使えない、ということになってしまいます。

こうした「諸々のシステムが動くための環境」、建物でいえば“縁の下”周りを設計・構築・保守するのが、インフラエンジニアというITエンジニアです。

近年は状況が変わりつつありますが、プログラムが動く環境を作るエンジニアであって、プログラムを作るエンジニアではないため、「業務でソースコードを書いたことがない」というエンジニアも多いです。そのため、多くの人がイメージするITエンジニアと少し異なる、特殊な存在です。

なお、インフラエンジニアは、プログラマーやフロントサイドSEより年収が50万円~100万円ほど高くなるのが一般的です。これは、インフラエンジニアのスキルや技術はプログラミングと違って、自宅などで習得しにくく、そもそもプログラマーよりも圧倒的に志望者が少なく、結果、ニーズに対して優秀なインフラエンジニアが少ないというのが主な理由です。

インフラエンジニアのキャリアパス 第1のコース:スペシャリスト

一番スタンダードなのが、スペシャリストと呼ばれるような、トップクラスのインフラエンジニアとなる道です。

インフラの質は、応答速度や可用性、そしてセキュリティなど、“非機能要件”と言われる、システム要件に大きな影響を与えます。

性能が低いパソコンを使っていると、重たい画像を開けるのに、少し固まることがあります。ウィルスメールを開けてしまっても、適切なアンチウィルスソフトをインストールしておくと、被害を受けずに済むことが可能です。これは、業務サーバーでも同じことが言えます。

ただ、例えば、Webサイトの場合、3層構造や3階層アーキテクチャと呼ばれる、「Webサーバー」「アプリケーションサーバー」「データベースサーバー」の三つのサーバーが連携して動く構成とするのがセオリーです。

ユーザーから、“応答が遅い”という連絡があり、アプリケーションに問題がなさそうだ、という判断になった場合、この三つのサーバーや、その三つのサーバーの通信経路などが被疑個所になります。多くの要素が絡み合う中、真の問題を見抜くには、非常に総合的なシステム構成要素への知識とスキル、そして経験が必要になってきます。

環境設計もしかりです。基本的には一度購入した、ハードを整備すると、短くても2年、長いと5年程度、使い続けることになります。ネットワークの場合、構成要素であるネットワーク機器は、より高性能なものにリプレース(更改)するものの、基本的な構成パターンは、10年以上経っても変わらない、ということ多いです。

中長期を見据えてインフラ構築するためには、ただ作るだけではだめで、しっかりとした設計思想・設計理念が必要になります。それを提示し、設計に落とし込むことができるのがスペシャリストと言われるインフラエンジニアなのです。

なお、大規模なインフラ構築の際、スペシャリストは個々の構成要素の設計は各担当者に任せつつ、全体をレビューし、最適化する役割を担うこともあります。

ちなみに、クラウドや仮想化技術などの登場で、インフラ周りの技術は近年、大きな変化が起きているところもあります。

インフラエンジニアのキャリアパス 第2のコース:PM等の管理職

他の職種と同様に、インフラエンジニアにも現場のエンジニアから、管理職やプロジェクトマネージャー(PM)など、組織運営に関わるポジションへと進むキャリアパスも存在します。

IT業界の花形であるPMですが、フロントサイド出身者だけでなく、インフラエンジニア出身者も数多くいます。

大手SIer勤務のサラリーマンエンジニアの場合、最初はPLとしてインフラチームのマネジメントを経験し、十分な実績を積んだ後、案件全体をマネジメントするPMへとキャリアアップすることも多いです。

インフラエンジニアのキャリアパス 第3のコース:その他(コンサル等)

では、スペシャリストやPMなどの管理職へと進まないインフラエンジニアは、どのようなキャリアパスを歩むのでしょうか?

もっとも考えられるのは、コンサルタントへと進む道です。上でも書きましたが、インフラの質は、応答速度や可用性、そしてセキュリティなど、“非機能要件”と言われる、システム要件に大きな影響を与えます。

近年は、一件のセキュリティ事故が企業の存続を左右するまでの影響を与えるようになっています。「情報処理安全確保支援士(認定セキスペ)」という国家資格も創設されましたが、セキュリティに強いインフラエンジニアがITセキュリティのコンサルタントへとキャリアチェンジするのは容易なことです。

他にもセールスエンジニアというキャリアも考えられます。インフラ、つまりサーバーやネットワーク機器などのハードウェアは高額です。だからこそ、専門的な知識を持つインフラエンジニア出身者とよく相談してから購入機器を決めたい、という企業の担当者も多いのです。

まとめ:将来に備えてコツコツと!

筆者自身、インフラエンジニアですが、サーバー更改や基盤構築など派手な仕事もありますが、 “日々の定例的な保守運用”という地味な仕事がインフラエンジニアのメイン業務であることが多いです。しかし、“昨日と同じような朝”であっても“昨日の朝と今日の朝”は別物です。

例えば、Webサイトのアクセス数が日々増加していけば、サーバーへの負荷もそれに合わせて増加していきます。もし、その増加の度合いを見逃したり、影響を読み間違えると、やがてサーバーの限界を超えてしまいます。すると、レスポンスタイムの悪化や、ひょっとするとサーバーダウンという結果につながるかもしれません。

インフラエンジニアの保守運用は、そうしたシステム環境の悪化の兆候を探し、事前に手を打つことにあります。コツコツと仕事を進める“縁の下の力持ち”であることが求められる仕事であり、そうした日々の経験やスキルの蓄積が、キャリアアップへとつながっていく職種です。

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