世の中にはさまざまなIT系の資格が存在します。難易度もピンからキリまで幅広く、いざIT系の資格を取ろうと思っても迷ってしまうことがしばしばあるでしょう。中でも「Linux技術者認定試験(LPIC)」は、2018年3月から始まった比較的新しい試験のため、情報が少なく受験をためらっている人は多いかもしれません。
そこで今回は、LPICの試験の概要と難易度、取得するメリットについて取り上げていきます。
LPICとは?
LPICという名称は、「Linux Professional Institute Certification(Linux技術者認定試験)」の頭文字からきています。Linux技術者として一定のスキルを身につけていることを認定する資格で、カナダに本部を置く「LPI」の日本支部が運営しています。
日本におけるLPIC試験は、これまでLPI-Japanによって行われてきましたが、2018年8月にLPIの日本支部が設立されたことにより、運営母体が変更になったという経緯があります。
LPICは世界中で受験されている資格の1つで、これまでに53万人以上の受験者がいます。そのうち合格者は18万人以上。公正な試験として国際的にも認められており、200カ国以上のエンジニアが受験しています。
LPICには、レベル1、レベル2、レベル3と3つのグレードが用意されています。グレードが高まるにつれて難易度が高まり、より高度なスキルを持ったエンジニアとして評価されるようになります。
レベル1は101試験と102試験、レベル2は201試験と202試験、レベル3は300試験または303試験または304試験のいずれか1つに合格することで認定されます。レベル1とレベル2の試験は、5年以内に両方の試験に合格して初めて認定を受けられます。
2つの試験を同時に受けてもいいですし、別々に受験しても構いません。試験時間はいずれも90分で、60問ほどの出題数となります。CBT方式でマウスとキーボードを使った試験であり、選択問題と記述式の問題が出題されます。
合格ラインは65~75%程度。およそ7割で正解すれば合格できる水準です。レベル2、レベル3を受験するためには、1つ前のグレードに合格していることが条件となりますので注意しましょう。
なお、LPICには特定の試験日は設けられておらず、申し込みも受験も好きなタイミングで行うことができます。試験は日曜・祝日以外毎日開催されており、試験会場の空きがあれば前日でも申し込むことができます。
試験会場となるのは、全国のピアソンVUE公認試験会場です。全国に100カ所以上あるので会場選びに困ることはないでしょう。合格発表は、試験終了後即時に行われ、試験で使用したPCの画面に結果が表示されます。
試験を受けるためには、まず受験チケット(バウチャー)を購入しなければいけません。受験チケットの価格(受験料)は、レベル1またはレベル2で1科目15,000円、レベル3は1科目30,000円となっています。
レベル1とレベル2では2科目の試験を受ける必要があるため、トータルで支払う受験料はレベル3と同じ。ピアソンVUEホームページから受験チケットを購入することができますが、発行から6ヶ月の有効期間がありますので注意してください。
試験の難易度(合格率)とオススメの勉強方法
レベル1はLinux入門者向けのグレードで、基本的な知識をしっかりと身につけることで合格ラインを目指すことができます。普段からLinuxを扱うインフラエンジニアであっても、実務では登場しない知識が問われることがあるので、勉強なしで合格するというのは困難になります。
単なる暗記だけでは行き詰まってしまうことが多く、実際にLinuxのコマンド操作ができるように訓練することがポイントです。試験問題には記述式の問題も出題されるため、しっかりと操作をマスターしておきましょう。
レベル1合格を目指そうとするなら、まずはLinux環境を構築しておくことがおすすめです。いつでもLinuxに触れられる環境を整えてから、参考書や問題集に進んでいきましょう。
レベル2になると、実務経験者向けのやや専門的な知識が問われることになります。受験者のほとんどが現役のインフラエンジニアで、Linuxのシステム管理、Linuxサーバーの構築といったスキルも問われます。
そしてレベル3が、高度なスキルを持つエンジニア向けの資格となります。高度な知識・実務経験が求められ、独学で合格するのは難しい難易度とされます。LPIが公式に開催されている自習会や、認定校に通って学ぶことが求められます。
それぞれのグレードに合格するまでに必要となる勉強時間は、およそ以下の通り。
- レベル1:1ヶ月〜3ヶ月程度
- レベル2:3ヶ月〜6ヶ月程度
- レベル3:6ヶ月〜12ヶ月程度
1日に勉強時間を多く確保できる学生であれば、もっと短期間で合格できることがあります。一方で働きながら取得を目指す現役のエンジニアだと、もう少し長い時間が必要となるかもしれません。
取得するとどんなメリットが?
LPICを取得することで、Linuxを扱うための高度なスキルを持っていることの証明となります。試験対策を通じて基本的な知識も身につけることができるため、転職では非常に有利な資格となるでしょう。
日本では約7割の企業がLinuxを導入しており、サーバーの半数以上がLinuxであるとされています。それだけLinuxを扱えるエンジニアが重宝されるということでもあり、さまざまな企業からオファーを受けられるようになるでしょう。
LPI公式のアンケートによれば、資格取得後の満足度は約9割にのぼるとのこと。Linuxに少しでも興味があるのであれば、取得して損はないのではないでしょうか。
どの業種・業界で有用となるのか?
Linuxに関する知識は、サーバーに関わる業務では必ず必要になるスキルとなります。主にIT業界におけるLinuxエンジニアやインフラエンジニアとして活躍することになりますので、サーバー構築や組み込みシステムの開発を手がけている企業で有用となるでしょう。
WindowsやMacOSのように、OSに関する知識が問われる試験となるため、インフラエンジニア以外の人であっても、勉強のために受験することが多い資格です。中にはWebデザイナーやWebクリエイターが受験する例もあるほど。
新入社員の研修としてLPICを受験させたり、昇進の条件としてLPIC合格を定めている企業も珍しくないため、早い段階でLPICに合格しておくことで、スムーズにキャリアアップできる可能性も高くなります。
まとめ:グローバルに評価されている試験
LPICは、Linuxに関する基本的な知識を問う国際的な試験です。3つのグレードに分かれており、5年以内に2つの試験に合格すれば認定を受けられるため、自分のペースで勉強を進めていけるメリットがあります。
日本以外でも受験者・合格者が多くグローバルに評価されている試験のため、国内での転職やキャリアアップでも役に立つ資格です。特にインフラエンジニアを目指している人にとっては、基本的なスキルを身につける絶好の機会となるでしょう。
Linuxに興味関心があるのであれば、まずはレベル1の参考書を手にとって勉強を始めてみてはいかがでしょうか?