SRE(Site Reliability Engineering)という言葉を耳にする機会が増えました。しかし、「実際にどんな仕事なのか」、「自分のキャリアにどうつながるのか」については、まだ漠然としたイメージしかない方も多いのではないでしょうか?

この記事では、SREの基本概念から具体的な仕事内容、求められるスキル、そして気になる年収やキャリアパスまで、SREについて網羅的に解説します。この記事を読めば、SREがなぜ今重要なのか、そしてあなたがSREとしてどう活躍できるのか、その全体像が見えてくるはずです。

SRE(Site Reliability Engineering)とは

SRE(Site Reliability Engineering)は、Googleが提唱した、サービスの信頼性向上を目指すエンジニアリング手法です。運用業務をエンジニアリング課題として捉え、ソフトウェアの力で解決することを目的とします。開発チームが迅速なリリースを担う一方で、SREチームはサービスの信頼性を確保します。

SREの主な目的は、サービスの可用性、パフォーマンス、応答性といった信頼性の維持です。そのために、SREエンジニアは運用業務の自動化、モニタリングシステムの構築、障害発生時の対応フローの整備などを行います。単なる運用担当者ではなく、コードを通じてシステムの信頼性を高める、ソフトウェアエンジニアの一種と言えます。

SREとDevOpsの違い

SREは、DevOpsと非常によく似ているため混同されがちです。しかし、この2つは異なるものです。

  • DevOps:開発(Development)と運用(Operations)が協力し、より効率的にソフトウェアを開発するための「考え方」や「文化」
  • SRE:DevOpsという考え方をGoogle流に実践するための具体的な「手法」や「職務」

DevOpsが目指すゴールに対して、SREはそれを達成するための具体的な手段を提供する存在です。DevOpsが「開発と運用が協力しよう」というスローガンだとすれば、SREは「開発と運用が協力するための具体的なツールや仕組み」を構築します。このため、SREはDevOpsの実現に欠かせない役割を担っています。
DevOpsエンジニアについては、以下の記事でも解説しています。
【テクフリ】DevOpsエンジニアとは?年収や将来性について詳しく解説します

SREエンジニアの具体的な仕事内容

SREエンジニアの仕事は多岐にわたりますが、そのすべてが「サービスの信頼性向上」という共通の目標に向かっています。以下に、代表的な業務内容を具体的に解説します。

SLI/SLO/SLAを用いたサイト信頼性の測定と管理

SREの業務の中核は、サイトの信頼性を客観的な指標に基づいて管理することです。具体的には、以下の3つの指標を用います。

  • SLI(Service Level Indicator): サービスの信頼性を示す具体的な測定指標
    例:HTTPリクエストの成功率、レスポンスの応答時間
  • SLO(Service Level Objective): SLIに対して設定する目標値
    例:「99.9%のリクエストを成功させる」「応答時間を300ms以下に保つ」
  • SLA(Service Level Agreement): 顧客との間で信頼性について合意した取り決め

SREエンジニアはこれらの指標を常に意識し、SLOが達成されているか確認します。もし目標から遠ざかる場合は、開発チームと連携して原因を特定し、改善策を講じることがSREエンジニアの役割です。

インシデント対応と事後検証

サービスで障害が発生した場合、SREエンジニアには迅速な対応が求められます。具体的には、障害の検知から原因の特定、そして復旧までを主導し、混乱を最小限に抑える役割を担います。
そして、障害復旧後、SREエンジニアが最も重視するのは事後検証です。単に何が起きたかを記録するだけでなく、なぜそれが起きたのか、そして再発防止のためにはどうすればよいのかを分析します。組織やシステムに内在する問題点を見つけ出し、恒久的な改善策へと落とし込むことがSREの重要な職務です。

運用業務の自動化と効率化

SREでは、反復的で手作業による運用業務を「Toil(苦役)」と定義し、その削減を目指します。これは、手作業がミスの原因となることに加え、エンジニアの貴重な時間を無駄にするためです。加えて、サーバーの再起動、デプロイ、パッチ適用といった運用タスクを自動化するスクリプトやツールの開発もSREエンジニアの役割です。PythonやGoなどのプログラミング言語を用いて作業をコード化することで、手作業を排除し、効率性と信頼性の向上を同時に実現していきます。

サイトのパフォーマンス改善とモニタリング

ユーザーに快適さを提供するため、SREエンジニアはサービスのパフォーマンスを継続的に分析します。ボトルネックの特定、データベースのチューニング、キャッシュの最適化などを通じて、サービス全体の応答性を改善し続けます。
この際、PrometheusやGrafanaといったツールを使い、システムのメトリクス(CPU使用率、メモリ、ネットワークトラフィックなど)を収集し、可視化します。これにより、問題の兆候を早期に発見し、事前に対処できるようになります。

新規サービス・機能開発への関与

SREは、サービスの開発初期段階からチームに参加し、新機能の設計レビューを行うこともあります。これにより、将来的な運用課題や信頼性低下のリスクを未然に防ぐことができます。また、開発チームと連携する際、運用性や拡張性に優れたシステム構築のために助言をしたりもします。

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SREエンジニアに必須のスキルセット

SREエンジニアは、非常に広範なスキルセットが求められます。しかし、すべてを完璧にこなす必要はありません。ここでは、特に重要とされるスキルをまとめました。

クラウドとインフラの知識

現在のサービスはクラウド上で稼働していることがほとんどです。そのため、AWS、GCP、Azureといったクラウドサービスの知識は不可欠です。また、DockerやKubernetesといったコンテナ技術、CI/CDツール(Jenkins, GitLab CIなど)の知識も求められます。加えて、Linux OS、ネットワーク、セキュリティに関する基礎知識も重要です。

プログラミング・スクリプトスキル

SREは運用の自動化を担うため、プログラミングスキルは不可欠です。具体的には、Python、Go、Shellスクリプトなどが頻繁に用いられます。単にスクリプト作成だけでなく、アプリケーションやツールの開発経験があればさらに活躍しやすいと言えます。これは、SREが「ソフトウェアエンジニアリングを用いて運用上の課題を解決する」という職務だからです。

監視・ログ分析スキル

システムの異常を早期に発見し、迅速に解決するためには、監視とログ分析のスキルが不可欠です。具体的には、Prometheus、Grafana、Datadogなどの監視ツールや、Fluentd、ELK Stack(Elasticsearch、Logstash、Kibana)といったログ分析ツールを使いこなし、膨大なデータから必要な情報を効率的に抽出する能力が求められます。

コミュニケーションと問題解決能力

SREの仕事は、開発チームだけでなく、プロダクトマネージャーや他部署とも密接に連携します。そのため、複雑な技術課題を非技術者に分かりやすく説明する能力や、チームで協力して問題解決するためのコミュニケーション能力は、技術スキルと同等に重要です。加えて、障害発生時にも冷静に対処し、論理的に原因を特定するといった問題解決能力も不可欠です。

SREの年収相場と年収が決まる要因

SREエンジニアの年収は、経験年数や企業規模、地域によって大きく変動しますが、一般的なWebエンジニアと比較して高い水準にあります。

  • 経験年数・スキル:3年以上の経験を持つ中堅エンジニアの場合、年収600万〜1,100万円程度が相場とされています。専門性が高い場合はさらに高額になることもあります。
  • 企業規模・業種:SREの役割が重要視される大手IT企業やWebサービス企業では、高い年収が提示される傾向にあります。

参考:テクフリ

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SREのキャリアパス

SREは専門性と幅広い知識を活かし、多様なキャリアパスを築くことができる点も魅力です。

  • 技術スペシャリスト: クラウド、セキュリティ、パフォーマンスなどの特定の技術分野を深く追求
  • テックリード/マネージャー: SREチームを率いて技術的な意思決定を行い、メンバーを育成
  • エンジニアリングマネージャー: 開発組織全体の信頼性向上をより広範な視点からマネジメント

SREで培われるサービス全体像を理解する力は、将来的にCTOなどの経営層を目指す上でも大きな強みとなるでしょう。

企業のDX加速でSREの需要はさらに高まる

デジタルトランスフォーメーション(DX)化によって、ITサービスをビジネスの中心とする企業は多いです。この中で、サービスの信頼性を確保するSREの重要性はますます高まっています。今後もSREエンジニアの需要は伸び続け、高い価値を持つ職種であり続けると言えるでしょう。

SREエンジニアへの転職・キャリアチェンジのステップ

SREエンジニアに興味を持った方が、実際にキャリアチェンジするための具体的なステップを紹介します。
Webエンジニア・インフラエンジニアからのSREへのキャリアチェンジ
SRE(Site Reliability Engineering)への転身を考えているWebエンジニアとインフラエンジニア向けに、キャリアチェンジを成功させるための具体的なステップと、求められる資質について解説します。

WebエンジニアがSREになるには

  • 自動化の知識と実践を強化する
    • CI/CD
    • スクリプト言語
    • 構成管理ツール
    • IaCツール
  • インフラに関する深い知識を習得する
    • クラウドプラットフォーム
    • コンテナ技術
    • ネットワーク
    • データベース
    • オブザーバビリティ

インフラエンジニアがSREになるには

  • プログラミングスキルを強化する
    • Python, Go, Rubyなどの主要言語
    • データ構造とアルゴリズム
  • 自動化の実務経験を積む
    • 構成管理ツール
    • オーケストレーションツール
    • DevOpsとの連携
    • 監視とアラートの自動化

SREの求人情報を見る際のポイント

求人情報を確認する際は、「SRE」「信頼性」「自動化」「運用改善」といったキーワードが募集要項に含まれているかを確認してください。加えて、使用されている技術スタック(クラウド、プログラミング言語、監視ツールなど)が自身のスキルと合致しているかも重要なポイントです。

まとめ

SREエンジニアは、単なる運用担当者ではなく、ソフトウェアの力で運用の課題に変革をもたらすスペシャリストです。サービスの信頼性という本質的な課題を解決する、創造的でやりがいのある仕事と言えるでしょう。SREエンジニアは、サービス全体を見通す力、多様な技術スキル、そして課題解決能力を身につけることができます。エンジニアとして確実に成長できる、素晴らしい選択肢の一つです。

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