8年で5社のスタートアップを経験したGftd Japan株式会社 CEO河﨑 純真さんにインタビューしました。中学卒業後にエンジニアの世界に入り、文系の大学に進み「哲学×エンジニア」を今なお追求している河崎さんに、新しく生きやすい社会システムをつくる想いについて語っていただきました。“いい感じ”の社会をつくるべく奮闘するポップな天才のストーリーに迫ります。

大手Web会社の内定を蹴って数々のスタートアップにジョイン

―エンジニアの原体験を教えてください

きっかけはシンプルに、ゲームが作りたかったんです。兄のスーパーファミコンで遊んでいるうちにゲームに惹かれていきました。

それから、これは最近になって聞かされたのですが、実はおじがエンジニアで、九州電力と関西電力のシステムの接続をしたすごい人だったんですよ。今思えば、当時数百万円するPCが家にたくさんあったんですね。どうやらおじが、これで遊んでいいよと、僕たちに譲ってくれていたらしいんですよ。なので、いつでもPCに触れられる環境ではありました。そのおじに会ったことはないんですけどね(笑)。

―高校に行かずにバイトで受託開発のようなことをやっていたそうですが、詳しく聞かせてください

家庭が貧乏で、高校に行くお金がなかったので、中学卒業後は働こうという考えがありました。アルバイトをしながら趣味で掲示板を作ったり、オープンソースを使って遊んでいたんですね。ある時、HPの作成をする仕事で働く人を募集しているサイトを見つけて、興味本位でやってみたんです。HPを1件制作すると10万円ももらえるんです。当時の僕には大金でした。それからHPを作って報酬をもらうということを趣味としてやっていましたね(笑)。

色々なアルバイトをしながらも、趣味でエンジニアとしての経験を積んでいくうちに、エンジニアが1番楽しいと感じ、これで食べて行けるスキルを身に付けたいと思い、当時流行っていたウェブサービスでエンジニア募集のバナーに応募し、1社目のQ&Aなうにジョインしました。

―大学入学前に、エンジニアの世界に入っていますが、なぜ文系に進学されたのでしょうか?河﨑さんは文系大学のご出身ですが、理系の分野も把握されているので文理を繋ぐ架け橋になりそうですね

僕は中学卒業後に文系・理系というレールから外れたので、そもそもそのくくりは意識していませんでした。大学時代は文学部哲学科科学哲学を専攻しており、人間とはなにかという研究をしていました。なぜ哲学を勉強したかというと、「神はいない」ということを証明したかったからなんです(笑)。結局、神の存在は証明できないと言うのが結論です。大学に2年しか在学しなかった理由は、科学では「神はいない」と結論づけることはできないと気がついてしまったからです(笑)。

―ずっとスタートアップでの経験を積まれていますが、大きい会社に行ってみようという気持ちは無かったのですか?

大手Web会社からの内定をもらったこともあるのですが、このままスタートアップに行ってしまおうかなと、ほぼ勢いで突っ走りました(笑)。今思えば、大手に行っていれば良かったかな〜とも思いますが…。スキルのあるエンジニアがたくさんいるので。

僕はどちらかというと、お金を儲けたいというより社会課題を解決したいという想いの方が強かったんですね。スタートアップ会社の方がそういう”想い”を重視している印象があったので、選んだっていうのもあります。それで、スタートアップを5社経験しています。

今の社会システムを“変えていく”のではなく“新しくつくる”

―21歳でGftd Japan株式会社の前身となる会社を起業していますが、どのような想いがありましたか?

母がアスペルガー症候群だったんです。兄弟も発達障害があって、障害があるから”ダメ”とレッテルを貼られるんですよ。なんて生きづらい社会なんだと思っていました。しかしエンジニアをやっていると、「人が悪いんじゃない、システムが悪い」という考え方をもつようになって、「障害を持っている人たちは悪くない、生きづらくしている社会が悪いんだ!」と考えるようになっていましたね。エンジニアチックな考え方ですが(笑)。そういう社会の仕組みを変えたいと思いました。

例えるなら、今の社会はCOBOLで書かれた社会です。俺は「RustとTypescriptで新しい社会を書きたいんだ!」と思っています(笑)。今ある社会システムをアップデートしたって意味がないんです。根本から、アーキテクチャをまるっと変えるしかないんですよ。

―起業への熱い想いをうかがいましたが、実現のために会社として取り組んでいることはなんですか?

電子政府システムをつくっています。社会をつくる仕組みを作るという感じですね。それを使って、社会の枠組みから外れてしまっている障害を持った子たちが生きやすい社会を構築していくことが目標です。

教育事業として、小学校高学年・中学生を対象にテクノロジーフリースクールを開講しています。カリキュラムが決まっているわけではなく、自分の関心や疑問から学習を始めることができる、個性や特性を生かす学びの場を提供しています。

ブランド事業としては、ハイリーセンシティブ(感覚過敏)をはじめとした全ての人を対象に、満足できる「着心地」と「ファッション性」を兼ね備えた服を販売しています。

―電子政府となるとものすごい大きな構想かなと思うのですが、現時点ではどんなことをやっているのでしょうか?

具体的に言うと、海外に独自通貨を発行して暗号資産取引所を運営したり経済圏を作っています。CtoCマーケットプレイスを作ったりもしていますよ。それから、ブロックチェーンを使った、新しい家族のあり方の仕組みもつくっています。ちなみに僕はブロックチェーン婚です。ブロックチェーンを使った結婚サービスがあって、ブロックチェーン上に結婚証明書や婚姻届を記録することができるんですよ。

とにかく、たくさんの組合、コミュニティやコンテンツを作っていますね。

対象は障害を持つ人のみではありません。生きづらい人たちからまずは助けたい、生きづらい人が生きやすくなったら、生きやすい人はもっと生きやすい、という想いがあります。

「未来をつくっているのはエンジニア」オープンソースに救われた過去

―河﨑さんが思う、これからあるべきエンジニア像はなんでしょうか?

未来を提示するエンジニアであってほしいです。僕自身オープンソースに救われました。フリーで使っていいよという世界観に生かされています。世の中を見ても、エンジニアたちが作ってきたものに社会は守られているんです。僕らは未来を提示するエンジニアが、”実現した未来”に生かされています。「自分たちが未来を作っていく!」という意識を持ったエンジニアが増えれば、救われる人は多いと思うんです。 未来を作っていくのはエンジニアです。

―これからあるべきエンジニア像を見据えて、勉強したほうがよいものはありますか?

勉強ではありませんが、「恋人を作った方がいい」これを社員にも言っています(笑)。特に発達障害がある子たちはコミュニケーションが苦手な傾向にあるので、人と関わりを持つことで、人間関係を学んでほしいと思っています。“いい感じ”の社会をつくるためにも、恋人を作って、ハッピーになってほしいですね!
エンジニア間でのコミュニケーションもそうだし、夫婦間だって理屈じゃないって思いますね。世の中のほとんどの人は理屈ではなく、感覚でとらえていると思います。理屈ではない世界でものづくりがしたいですね。

「いい感じ」の社会をつくる

―信念や価値観、大事にしてることはありますか?

企業理念でもある「いい感じ」を大事にしています。英訳すると
“Good  Vibes”となるのですが、最近は「Well Being」を使っています。

言語化すると、身体的、精神的、社会的に満たされている状態をいい感じというと思います。WHOの健康の定義と同じで、単に病気や障害を持っていないということではなくて、それらを持っていても、満たされていればWell Beingなんです。

―ご自身の目標や野望を教えてください

やはり、“いい感じ”の社会をつくることを目標にしています。具体的には、障害を持っている子たちの雇用率を増やすこと。それから、自分は健康であると主観的に認識できる子を増やすことです。コミュニティをつくっていくことで家族的な関係意識を高めていき、健康や幸福を感じる子が世の中に多くなってほしいと思っています。

―会社とエンジニア、それぞれの視点でアピールしたいことはありますか?

会社として、障害を抱えている方の課題を解決するということがベースにあります。障害のある方を我々はGFTD.(ギフテッド)と呼んでいるのですが、GFTD.が生きやすい社会を作る取り組みをしています。

エンジニアとしては、エンジニアは社会の在り方や未来を人々に指し示す必要があると考えています。世の中はエンジニアによって作られているので、彼もしくは彼女らが社会を導いていってほしいです。

―最後にお知らせしたいことがあったら教えてください

Gftd Japanが目指す未来
『いい感じの社会をつくる』を企業理念に、世の中に生きづらさを感じている人が生きやすい社会を構築するために福祉、受託開発、教育、アパレルブランド、電子政府開発など、様々な事業を展開して社会課題解決に取り組んでいます。
福祉事業の「Gftd Works(ギフテッドワークス)」では、発達障害を対象に『偏りを障害ではなく才能だと確信したとき あなたはGFTD.(突出した才能を持った人)だ』を施設の理念として、『プログラミング』と『デザイン』に特化した仕事の創出と技術取得を提供しています。
プログラマーやデザイナーとして、世界で活躍できる案件に入ると共にスキルを学び、経済的な自立、精神的な自律を目指し、理想の働き方を見つける場所を創っています。
「最先端技術を駆使すれば新しい社会はつくれる」そんな想いから、一緒に社会課題解決に取り組んでくれる仲間を募集しています。
エンジニアのみなさん、一緒に「いい感じの社会」をつくりましょう!

取材を終えて

生きづらい社会に疑問を感じ、「社会システムを新しくつくる」という河﨑さんの情熱に感銘を受けました。また、エンジニアには学歴や文系・理系という枠組みは必要ないということを、河﨑さんが身を持って示してくれていると感じます。また、本編では記載しませんでしたが、河﨑さんが考えるエンジニアと”GFTD.”を以下に記載したので読んでみてください。

河﨑さん:「エンジニアとGFTD.は根深い関係にあります。これは脳の構造上の問題で、エンジニアには共感性に問題がある人が多い傾向にあるんです。”幸せ”というものは共感性に依存すると、研究もされています。脳の構造と実際にやっている仕事のシステムが不一致では幸せになれませんよね。まずはこういう人たちから幸せにしてあげたいと思っています。」

生きやすい社会を作るという信念があるからこそのお考えだと感じることができます。人はそれぞれ素晴らしい偏りを持っていて、それが人間の魅力であるという河﨑さんの想いを、孤独を感じている多くの人に伝えていきたいですね。

プロフィール:河﨑 純真

15歳からエンジニアとして働きはじめ、Tokyo Otaku Modeなど8年で5つのITベンチャー・スタートアップの立ち上げ、事業売却、役員業務などを経験。現在はGftd Japan株式会社にて「いい感じの社会」を作るべく、コミュニティやコンテンツ作りに取り組んでいる。

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