「テクノロジーで、経営をアップデートする。」をミッションに、次世代型経営管理クラウド「Loglass」を提供する株式会社ログラスのCTO坂本さんへインタビューを実施しました。文系だったにも関わらず新卒0期生でエンジニアとしてビズリーチ社に入社し、新規事業チームの開発責任者を担当するまで成長。サイバーエージェントでも新規事業の開発に従事し、その後ログラスを共同創業するなど、一貫して新規事業フェーズでのプロダクト開発とビジネスのグロースを経験。CTOというポジションに拘ることなく事業成長を第一に仕事に向き合う坂本さんのお話は必見です。

エンジニアとして起業家の夢の実現をサポートしようと決意

ーエンジニアになったきっかけを教えてください。

学⽣時代に起業家にインタビューをしてブログにする活動をしており、メルカリ創業前の⼭⽥さんや孫泰蔵さんなど錚々たるメンバーにお会いしたのがきっかけです。2011年頃のスタートアップ界隈には、起業したい⼈はたくさんいました。しかし、良いエンジニアのパートナーを見つけられていないという課題がありました。学生の頃はずっと公認会計士の試験を受けていたこともあり、スタートアップのCFOになろうと思っていたんです。しかし、心の底から会計士になりたいと思えるほどの情熱がなく将来への迷いがあったので、それならエンジニア探しに困っている起業家の夢の実現をサポートしようと思い、エンジニアになる決意をしました。

ー就職活動では、エンジニアとしてジョインできる企業を探していたのですか?

いえ、当初は大学院に進学する予定だったのでそもそも就活をそれほどがっつりしていませんでした。ただ、当時観た「ソーシャル・ネットワーク」という映画の影響もあり、スタートアップへの関心がますます強まっていました。そしてこれは偏見ですがスタートアップといえばエンジニア、とも思っていました。多くの学生は、「社会人はおもしろくない」と悲観的な印象を持っていますが、実際にスタートアップで働いている人と話してみると学生よりも楽しんでいる印象を受けたんです。そんな中たまたま良いご縁があり、ビズリーチに新卒0期生のエンジニアとして入社することになりました。本来は翌年から新卒採用を始める予定だったらしいのですが、急に1年早まったので0期生という扱いになっています。

ービズリーチではどのような開発をされていたのですか?

様々な開発に携わりましたね。最初は採用サービス「ビズリーチ」の簡単な開発から始まり、システムのリプレースや「codebreak」という今でいうGitHubのような新規サービスの開発。一時期は、社内SEもやっていましたね。社員数が急激に増加したこともあり、社内SEが圧倒的に不足していたんです。そして、求人検索エンジン「スタンバイ」や、採用業務の一元管理サービス「HRMOS」の立ち上げに携わり、最終的にはテックリードや開発責任者を務めました。

ーすごい成長スピードですね。未経験の状態からどのようにしてキャッチアップされたのですか?

とにかく量をこなしました。当時のビズリーチはまだまだスタートアップだったので、みんな猛烈に働いていました。みんな楽しいから部活のように働くという感じです(笑)。研修体制も整っていなかったので、1ヶ月間の研修期間が終わった後は現場で食らいついていかないといけなかったです。0からのスタートでしたが、1年間がっつり開発したことで学生時代からの経験者にも負けないくらいのレベルになりました。

サイバーエージェントで開発エンジニアとしての限界を知る

ーその後サイバーエージェントに転職されていますが、転職の理由は何ですか?

理由は2つあります。1つ目は、技術の力がよりダイレクトに事業成長に繋がる領域の開発をしたかったためです。ビズリーチで携わっていた事業は、技術力よりもビジネスモデルやマーケティングが事業成長における大きな要因でした。しかしサイバーエージェントの広告サービスは、技術レベルが上がるとターゲティングの質、配信のスピードも向上し売上に繋がります。技術力が事業成長によりダイレクトに影響するのではと考えました。2つ目は、ビズリーチの規模が大きくなるにつれて、自身の会社に対する影響力が希薄になったためです。入社当時は50名くらいの規模だったのですが、退社する頃には1,000人を超える規模になっていました。自分がビズリーチを大きくしてやるんだと思って入社したので嬉しさもあったのですが、手離れした寂しさのような感情があったんです。一方で、これは自分の視座の低さだとも思っています。また、転職サービスを開発しているのに転職したことがないのはダメだとも思っていたので、転職活動中はとにかく面接を受けまくりました。

ー自分が担当している事業領域の理解を、実体験を通して深めることは大切ですもんね。転職後、サイバーエージェントではどのような開発をされていたのですか?

当時の新規事業だったAIチャットボットの開発をしました。企業のマーケティングの一環として、社内のQ&AやLINEのBot、ECなどにおけるチャットボットを半自動化するSaaSです。半自動化というのはAIとオペレーターによる人力を両立していたからです。ビズリーチでは、開発業務の他にマネジメントなどの業務もあったのですが、サイバーエージェントでは開発だけに集中できたので技術力を高める良い機会になりました。

ーサイバーエージェントというメガベンチャーへ行って得たことや気付きはありますか?

学びに対する意欲は強くなりましたね。サイバーエージェントは、全社的に積極的に学んでいこうとするカルチャーがあります。会社レベルや事業部レベルでゼミがあり、私もScalaで機械学習を開発するゼミに参加していました。一方で、エンジニアとして頂点を目指すのは厳しいなと感じました。サイバーエージェントには優秀なエンジニアがたくさんいたので、自分の将来を考えた時にこの土俵で上を目指すのは難しいと思ったんです。そのため、マネジメントの方向などでキャリアを改めて考え直しはじめました。ちょうどそのタイミングで後輩から「起業しようとしている優秀な人がいる」とログラスの現代表である布川を紹介してもらい、彼に魅力を感じたので方向転換してログラスを共同創業することにしました。

布川さんの経営管理に対する課題意識に共感しログラスを共同創業

株式会社ログラスCTO_坂本さん_2

ー布川さんのどういったところに魅力を感じたのですか?

まずは自分の原体験を事業にしようとしていた点ですね。代表自らがサービスの良し悪しを高精度で判断できることは、スタートアップがPDCAを高速に回し成功するために非常に重要だと思っています。彼は元投資銀行出身で、起業するために年収を相当落として上場したばかりのスタートアップに転職し、経営戦略を一人で担っていました。100個くらい事業案を考えたそうなのですが、最終的に自身が担当している経営管理の業務に対してユーザーが満足する良いソリューションがないことに気づき、「それだったら自分で事業を作って解決しよう」と思ったそうです。マーケット、競合、海外事例、資金調達の市況などを踏まえた上で、さらに自分の感覚だけではなく、ベータ版を作って社内や約100社の担当者からフィードバックをもらい確信を持った上で事業化するなど、大きな戦略を描きつつも同時に泥臭いことができる点も布川の凄さですね。

ー貴社の事業内容を詳しく教えていただけますか?

企業の中に複数存在する経営データの収集・⼀元管理・分析を⼀気通貫で実現する次世代型プランニング・クラウドサービス「Loglass」を開発しています。エンジニアさんがイメージしやすいように言い換えると、“予算編成におけるGitHub” や “経営分析に特化したBigQueryやTableauの機能を持ったサービス” といったところでしょうか。「全ての企業に最⾼の経営管理体験を。」というプロダクトビジョンを掲げ、全ての部署が⾼度に連携し、⾼速で業績向上に向けて施策を打てる環境の構築を目指しています。

ー坂本さんはCTOとしてどのような業務に取り組まれていますか?

現在は、採用業務が9割ですね。エンジニア採用だけでなく、ビジネス職の採用も行っています。開発業務に関しては、機能開発ごとにリーダーを置いており優秀なメンバーが揃っているので彼らに任せています。これは、自分よりも優秀なメンバーの採用を実践してきた結果ですね。正直私は、CTOという立場には全く固執していません。ログラスを立ち上げる際に、「ログラスはテクノロジーの会社であり、技術責任者がしっかりいる」ということを社外に説明するために私がCTOに就いたんです。立ち上げ時のCTOとしては結果を出せたと思っていますが、会社のさらなる成長を考えるといずれはCTOを交代する必要があると考えています。私が、得意領域である新規事業のマネジメントや開発に注力したほうが会社の成長を加速させられると思うんです。

技術よりも “お客様への価値提供” を重視

ーエンジニアとして大きく成長した経験はありますか?

2つあります。1つ目は、ビズリーチ社で新規事業の開発責任者を務めた時です。完全にゼロからサービスを⽴ち上げ、チームの組成や⼤⼩様々な判断を行いました。初めての経験も多く、当初は⼼⾝の健康を損ねそうになるくらい順応できませんでした。しかし、ベストプラクティスとされるスクラムの⼿法を改めて学んで取り⼊れることで、納期は遅れつつも想定以上のトラブルなく稼働を開始することができたんです。この経験からは、エンジニアやビジネスを前にすすめる⽴場として⼤量の反省と学びを得ることができました。スタートアップの⽴ち上げにおいても役に⽴つ部分は多々あったので、今思えば良い経験でしたね。2つ目は、Loglassの⽴ち上げ期です。技術選定や開発、エンジニアのリソース確保、プロジェクトマネジメントなど開発に関わる業務をほぼ全て⾏ったため、大きく成⻑できたと感じています。

ースキルアップにおいて、情報収集の面で意識されてきたことはありますか?

話題になっている技術書や記事は⼀通り読むようにしています。主な情報ソースは、Twitterやはてブ、ハッカーニュースですね。また、その領域に詳しい⼈がいれば、SNSでも知⼈経由でも話を聞きに行くこともあります。より詳しく知りたくなれば、ネット上の記事を漁った上で概要を掴み、本でさらに理解を深めます。

ー情報の深堀りを意識されてきたんですね。そのようにスキルアップされてきて、現在エンジニアとして⼤事にしていることはありますか?

道具として技術を使いこなすことですね。もちろん技術に対するこだわりを持つことも悪いことではないですが、技術よりもお客様への価値提供が大切だと思っています。当社のスタイルも同じで、その一例として当社ではサーバーサイドの開発言語にKotlinを使用しています。Javaに比べると非常に優れたモダンな開発言語ですが、一般的なギークな方が喜ぶ技術ではないです。しかし、当社としてはお客様への価値提供を第一と考えているので、実用性に非常に優れ、大規模なシステムを堅牢性と柔軟さ、実装のスピードを持って作り上げるには最高の技術選択だと思っています。先述の通り、事業貢献よりも特定の言語に対する志向性が強い方だと、技術選定も含めて日々変わり得るスタートアップの環境においてはカルチャー的にアンマッチになる可能性が高いです。

ーCTOに必要な要素を3つ挙げるとしたら何がありますか?

・テクノロジーを活⽤して事業拡⼤ができる設計、仕組みづくりを⾏うこと

・⾃社のサービスをテクノロジー的に⾯⽩いものであるとエンジニアに説明し、ワクワクさせられること

・⾃分よりも優秀なエンジニアと話せる、採⽤できること

の3つですね。技術を軸に、企業の成長やエンジニアのモチベーション向上に誰よりも真摯に向き合って取り組めることがCTOに必要な要素だと思います。

テクノロジーを軸に事業成長の好循環を作る

株式会社ログラスCTO_坂本さん_3

ー坂本さんの今後の夢や目標はありますか?

2つあります。1つ目は、テクノロジーを軸に事業成長の好循環を作ることです。事業の成⻑に対してテクノロジーをフルに活⽤してレバレッジをかけ続け、さらに事業が伸び、そこからテクノロジーへの投資が生まれるという環境を作り続けることが大切だと思います。2つ目は、ログラスのメンバーに「今⽇もログラスに出社して、みんなで課題を解くのが楽しい、ワクワクする」と思ってもらえるような組織を作ることです。

ー最後に、貴社ではどのようなエンジニアを募集しているか教えてください。

当社では以下のようなエンジニアを募集しています!

・お客様に喜んでいただけるアウトカムを意識した開発がしたい人

・たくさんの経験と知識がありつつアンラーニングでき、柔軟に思考ができる人

・好奇⼼があり、建設的な議論ができる人

少しでも当てはまる方はぜひ一度お話しましょう!

取材を終えて

インタビューを通して、様々な新規事業の立ち上げや開発に携わってきた坂本さんの “事業成長に対する熱意” がひしひしと伝わってきました。多くのエンジニアさんが目指しているCTOというポジションにも決して固執することなく、会社の成長が加速するのであればCTOのポジションを交代することもいとわない。そのような姿勢で真摯に仕事に向き合う坂本さんだからこそ、数々の新規事業の成長に貢献されてきたのではないでしょうか。私達があっと驚く新しいサービスを、これからも提供し続けてくれるのではないかと期待が膨らみます。

プロフィール:坂本龍太

2013年、株式会社ビズリーチに初の新卒として入社。主に新規事業に関わり、SaaSの面白さの虜に。HR系SaaSの新規事業のテックリード、開発責任者を経験。サイバーエージェントでAIチャットボット開発、2019年、次世代のプランニング・クラウド(SaaS)ログラスを共同創業。

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