今回は、WAmazing株式会社CTOの𠮷野哲仁さんのインタビューをお届けします。SIerやヤフーでエンジニアとして活躍されてきた𠮷野さん。アリババへの長期出張も経験し、エンジニアの考え方の違いに衝撃を受けたそうです。その後は、WAmazingへ入社。入社から2週間で、いきなりCTOを任されるなど怒涛の日々を歩まれています。数々の苦境を乗り越え、「今では会社に関わる全てが“自分事”」と仰る𠮷野さんのキャリアや価値観は必見です。

プログラミングの世界に入るきっかけは「仕組みへの興味」

ー𠮷野さんが、エンジニアになろうと思ったきっかけは何ですか?

小学生の時にやったPCゲームを「いつか自分も作ってみたい」と思ったのがきっかけです。当時はちょうどパソコンが出始めた時期で、父親が仕事用に富士通製の大きなパソコンを買ってきました。Windows3.1だったと記憶しています。そこで、父親が私に1つのCDにたくさんゲームが入ったPCゲームを買ってくれたんです。それ以前からファミコンやスーファミなど、ゲーム自体は好きでした。作り手に回りたいと思った私はその後、プログラミングの専門学校に進学。ものづくりの面白さに触れ、これが仕事にできれば楽しいだろうと感じ、エンジニアになろうと決意しました。

ー「ゲームを作りたい」と思ったとのことですが、昔から仕組みなどに興味があったのですか?

そうですね。幼い頃から、機械を分解して「どうやって動いているんだろう」と調べていました。分解して直せなくなり、親に怒られたこともありました(笑)。RPGツクールでゲームを作った経験もあります。昔から、何かを組み立てたり作ったりすることが好きな性格でした。

ー専門学校を卒業後は、エンジニアとして就職されたのですか?

はい。地元の埼玉の小さなSIerに就職しました。この企業の採用面接に行ったのですが、社長と雑談をしただけで内定を頂いたんです。「おもしろそうな会社だな」と感じ、入社することにしました。業務内容としては、客先に常駐して開発を行うといったもの。各現場によって使っている技術が違うので、勉強にもなり、楽しく仕事をしていました。3年ほど働いたタイミングで、別のSIerに転職しました。1社目にいる頃、いろんな会社から優秀なエンジニアが集まってくるプロジェクトに参画していました。ここでお世話になった方に誘われたのが、転職のきっかけです。その方は、エンジニアとして豊富な知識を持ちながら、マネジメントも上手な方でした。私はそれまで1人で開発することが多かったので、自身をマネジメントしてくれる人に出会い、大きな学びを得ました。

ー各SIerでは、どのようなものを開発されていたのでしょうか?

1社目、2社目とも、業務系システムの開発が多かったです。具体的な社名は言えませんが、ごりごりのJavaで書かれた大企業の基幹システムなどを開発していました。2社目で1年ほど働いた後、「大きな会社で働いてみたい」と思い、ヤフーに転職しました。

ヤフー・アリババでエンジニアとして新しい価値観を吸収

ー大きな会社の中でも、事業会社を選んだ理由はあったのでしょうか?

自分が作ったサービスが、誰かに使われているという実感を得たかったからです。それまではSIerで働いていたので、システムやサービスを作って終わりでした。それらが、どのような人達に、どのように使われているかは見えなかったんです。そのため、より手触り感のあるサービスの開発に携わりたいと思いました。

ーヤフーさんでは、どのような開発をされていたんですか?前職、前々職との間で感じた違いも併せて教えてください。

12年間在籍しましたが、ほとんどの期間でヤフーショッピングを担当していました。開発に関しては、考えないといけない範囲が広いなと感じました。事業会社では、サービスをリリースした後の運用面も考えないといけません。トラブル対応やお客様対応など、以前までは意識していなかったことを考慮するようになりました。一方で、それまでに身に着けた技術は活かせました。考え方に違いはあれど、ソースコードを書くという意味では一緒です。働き方に関しては、Web会社の雰囲気を感じました。午後に出社して夜に帰る方や、地べたに座ってミーティングを開催するなど、自由な会社だなと。その分、自分自身でタスクやパフォーマンスをコントロールしないといけませんが、刺激的な毎日でした。

ーヤフーで働かれた12年の中で、印象的なエピソードはありますか?

アリババへの出張が印象に残っています。アリババは、「天猫」や「淘宝」など中国を代表するECサイトを運営しています。「Eコマース事業を伸ばすために、中国で勉強してきて」と上司に言われ、長期間の出張をすることに。そこで、私のEコマースに対する価値観が大きく変わりました。ユーザーへの向き合い方や、データの活用方法に対するこだわりのレベルがすごく高かったんです。データを元にサービスを改良し、ユーザーからのフィードバックを受けてまた改良する、というサイクルを超高速で回していました。ヤフーショッピングでもある程度は出来ていると思っていましたが、アリババは私達の何年も先を進んでいるなと感じました。一番のサービスになるためには、ここまで徹底する必要があるのかと衝撃を受けました。

ー中国と日本のエンジニア傾向に違いはありましたか?

事業に対する向き合い方に違いを感じました。日本のエンジニア間では、技術の話をし合うことが多いと思います。一方で、中国のエンジニアは事業の話をすることが多いです。アリババのメンバーは、「自分たちがマーケットを作っているんだ」とよく口にしていました。このように、事業目線でユーザーを意識して開発を行っていることが、フィードバックを受ける姿勢や改善方法に現れているのだと思います。今でこそ日本でも多くなってきましたが、中国では当時から、エンジニアがPdM等のビジネス寄りのポジションを務めるケースがよくありました。すると、随所にエンジニアリングの知識が活きてくるので、おのずとプロダクトの質も向上するんです。

WAmazingにVPoEとして入社:2週間でCTOに

ーヤフーさんの後は、どのようなキャリアを歩まれましたか?

VPoEとしてWAmazingに入社しました。転職のきっかけは、ヤフーの同僚に「ベンチャーのCTOに向いてるんじゃない」と言われたことです。ヤフー社員としての最後3年間は、ヤフーショッピングのテクニカルディレクターを務めました。役割としては、「サービスのCTO」といったイメージです。当時、3年間やって1区切りだと感じていたこともあり、今後のキャリアのことを考えていました。そんな時に、何人かの同僚から、前述の言葉を言われたんです。その言葉で、私もベンチャーのCTOに興味を持ち始めました。しかし、いきなりCTOになるのは難しいと思ったので、CTOのそばで学べる環境を探すことにしました。そんな中、WAmazingに出会ったんです。当時のCTOだった舘野さんは、業界でも有名な方だったので、多くのことが学べると考えました。もちろん、WAmazingの事業やビジョンへの共感も前提としてあります。

ーその後、どのような経緯でCTOになられたのでしょうか?

実は、入社後2週間でCTOになりました。当時のCTOだった舘野さんが退職されることになり、私に依頼が来たんです。「CTOの近くで学びたい」という想いで入社したので、正直びっくりしましたが、これはチャンスでもあると感じたのでお受けしました。

ーすごいスピード感ですね。いきなりCTOになって苦労されたことはありますか?

最初は、仕事の幅の広さに慣れなかったです。分業化されていたヤフーとは異なり、ベンチャーのCTOは、開発だけでなく会社のあらゆる領域に関わらないといけません。前職までの経験もあり、当時の私には、自分の担当範囲を守ろうとする思考性がありました。慣れるまでは苦労しましたが、今となっては、会社で起こる全ての出来事が「自分事」になるくらい意識が変わりました。

原理原則を踏まえ、「実利」を最も重要な判断材料とする

ー𠮷野さんが考える、「CTOに必要な3つの要素」は何ですか?

1つ目は、「経営や財務、人事評価等の知識」です。CTOとして、会社の状況を自分自身で把握し、意思決定をしないといけません。また、会社の経営メンバーとしてエンジニアリングをビジネスの数字に変換して説明することも必要です。その上で、開発以外の知識を持つことは必須だと考えています。2つ目は、「周囲を巻き込んで動かす力」です。人的リソースが少ないベンチャーでは、特に必要な能力だと思います。リソースの最適分配を行うために、メンバーに納得感を持って動いてもらわないといけませんから。3つ目は、「圧倒的な当事者意識」です。会社として進む方向の意思決定を担う上で、技術領域だけでなく、ビジネス側にも関わっていかないといけません。CTOが、技術領域だけに閉じこもっていると、会社として前に進まなくなると思います。

ーエンジニアとして大事にされていることはありますか?

ヤフーで、テクニカルディレクターに就いた時に、先輩から言われた3つのアドバイスを大切にしています。1つ目は、「判断する時は実利を取る」です。世の中のエンジニアリングには、原理原則が存在します。開発を進める時は、こういった原理原則が1つの指針として参考になります。しかし、それは全ての状況に当てはまるわけではありません。私は、原理原則を重んじる傾向性があったので、「状況に応じてもっと柔軟になれ」という先輩からのメッセージだったんです。2つ目は、「議論で勝ちすぎない」です。以前の私の悪いくせで、議論になると100対0で勝ちにいこうとしてしまっていました。先輩からは、「“正しい”の反対は“間違い”ではなく、“もう1つの正しい”だ。51対49で勝つのがベスト。そうすれば周りといい関係が続けられて、自分に対する評価も上がる」と言われたんです。3つ目は、「プライドを捨てて馬鹿のふりをする」です。役職が上がると、どうしても「わからない」と言いづらくなると思います。当時の私もプライドが高く、素直に認められませんでした。しかし、そうすると自分自身のインプットの量が減ってしまいます。「正直に馬鹿になると、周りが助けてくれる。すると、インプットの量も自然と増える。」と先輩からアドバイスを頂きました。これを実践してみると、実際にインプットの量が何倍にもなったんです。各領域に詳しい人がいたので、彼らから学ぶ機会が増えました。

ーこれまでのキャリアで、エンジニアとして大きく成長したと感じたエピソードはありますか?

ヤフー時代の3つの経験で成長を感じました。1つ目は、アリババへの長期出張です。前述のとおり、事業やユーザーへの向き合い方の意識が大きく変わりました。2つ目は、アスクルへの出向です。中国から帰国後に出向したのですが、そこでECに関わる業務のほとんどを経験。エンジニアリングの業務ではなくEC店舗の運営、物流や倉庫のオペレーション整備などに携わり、ECの全体像を理解できました。現場の泥臭い仕事を経験できたのは、貴重な経験になりました。3つ目は、ヤフーショッピングのテクニカルディレクターに就任した時です。エンジニアとして上位ポジションになり、幅広い業務を経験できました。現ヤフー社長の小澤さんの近くで働けたので、ビジネスの知識も身につけられました。

コロナを乗り越え、インバウンド業界を牽引する存在になるべく邁進

ー貴社の事業内容について教えていただけますか?

訪日外国人向けに、旅行の予約サービスを開発しています。日本に来る外国人の方に日本を楽しみ尽くしてもらうこと、観光によって日本の地方を元気にすることをビジョンに掲げ、ホテルや交通チケット、SIMカードの予約など、旅行に必要なサービスをITの力で一気通貫で提供しています。コロナによって大きな影響を受けましたが、数々の苦境を乗り越えて今は復活の準備を進めているところです。また、外国人をターゲットにしていることもあり、メンバー全体の40%が外国人です。そのため、普段仕事をしている中で、全く国籍を意識しません。多様性がある中でそれぞれの個性があり、その中でWAmazingとしてビジョンの実現に向かっています。

ー今後、WAmazingで実現したいことは何ですか?

日本のインバウンド市場を牽引できるような会社にしていきたいです。コロナの影響もありましたが、会社の根幹である、インバウンド・観光・地方創生というキーワードは変わりません。観光立国は日本の国策でもありますから、その一翼を担う存在になっていきたいです。

ー𠮷野さん個人の夢はありますか?

地方創生に貢献できるようなサービスを作っていきたいです。WAmazingに入ってから、日本の地方には、課題が山積みなことを痛感しました。将来的には、地方を盛り上げるサービスや、日本と世界をシームレスに繋ぐサービスを作りたいですね。

「サービスを育てられるエンジニア」を募集中!

ー最後に、どんなエンジニアと一緒に働きたいか教えてください!

サービスを育てることに貢献してくれるエンジニアと働きたいです。当社は、最先端のテクノロジーを駆使しているというタイプのtech企業ではありません。しかし、いろいろなサービスを多角的に展開しているので、様々なドメインで技術を活かしたサービスを開発することが可能です。さらに、それらのビジネス群全体としての動きを感じられます。そのため、サービスを作って終わりではなく、「どのように成長させていくか」を考えられる人が合うと思います。その中でも、自ら課題を見つけて、解決プロセスを考えられる方に来てほしいです。ヤフー時代もそのようなエンジニアが経営層に重宝されていましたし、世の中的に見ても市場価値が高い人材だと思います。私自身、面接時はエンジニアリングに関する質問よりも、今までどのような考え方や動き方をしてきたのかを聞くことが多いです。当社にご興味を持っていただけた方は、ご応募お待ちしています!

取材を終えて

SIer、ヤフー、アリババ、WAmazingと様々な規模・環境でエンジニアとしてのキャリアを歩まれてきた𠮷野さん。アリババへの長期出張経験などをとおして、技術領域だけでなく、ビジネス視点も意識されてきたからこそ、現在CTOとして活躍されているのだと感じました。エンジニアは「いち技術者」ではなく、「技術を駆使して課題解決をする人」だと再認識させられました。テクノロジー起点ではなく、いちビジネスとしてWAmazingさんの事業に共感された方にとって、𠮷野さんと一緒に働けることは、間違いなく大きな成長の機会になるはずです。観光業界は、コロナで大きなダメージを受けています。しかし、WAmazingさんはその困難を乗り越えてこられました。𠮷野さんが技術をリードするWAmazingさんが、日本と世界を繋ぐ架け橋となるサービスを作ってくれるのではと、期待しています。

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プロフィール:𠮷野 哲仁

SIer数社を経て2007年ヤフー株式会社入社。Yahoo!ショッピングのバックエンドエンジニアを努め、注文システムリニューアルなどのプロジェクトをリード。2013年、中国アリババ社に半年間出張し、淘宝・天猫のシステム/業務を学び、中国ビジネスのスピードと規模の大きさに刺激を受ける。その後、Yahoo!トラベル開発リーダー、アスクル株式会社への出向を経て、2016年に同社テクニカルディレクターに就任。ショッピング・トラベル・ダイニングサービスの技術責任者を務める。2019年、WAmazingのビジョンに共感し、VPoEとしてジョイン。現在はCTOとして「インバウンドx地方事業者」をテクノロジーで繋げるサービス作りに挑戦している。

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