今回は、9seconds株式会社 取締役CTO/CPOの宇田川 嵩史さんのインタビューをお届けします。28歳で未経験ながらエンジニアにキャリアチェンジした宇田川さん。そこから3年後の今、9secondsでCTO/CPOを担っています。そこまで急成長できた理由は、「難しいタスクを自分でどんどん取っていったから」とのこと。宇田川さんのお話は、エンジニアへのキャリアチェンジを考えていらっしゃる方だけでなく、全てのエンジニアにとって必見の内容になっています。
ゲームの企画職からエンジニアにキャリアチェンジ
ー宇田川さんがエンジニアになったきっかけを教えていただけますか?
私は、新卒でアカツキにゲームディレクター・プランナーとして就職しました。そして、仕事をする中で、ゲームを作っているエンジニアに感銘を受けたんです。そこから、エンジニアリングに興味を持ち始めました。私自身、当時は全くプログラミングをしたことはありませんでした。しかし、繰り返しの作業が嫌いだったので、同期のエンジニアに助けてもらいながら、PythonやGoogle Apps Scriptを使って業務の自動化に挑戦してみることに。すると、大幅な業務の効率化ができたんです。「エンジニアになりたい」と思ったのは、コードを書いて動いた時の感動と、周りのメンバーが喜ぶ顔を見たことが大きなきっかけです。
ーなぜアカツキさんに入社されたのですか?
昔からゲームが好きだったことや、代表の塩田さんの人柄に惹かれて入社しました。就活を始めたばかりの頃は、コンサルや外銀を志望していました。しかし、ハッカソンへの出場を通して、プロダクト作りの面白さを実感したんです。そこからは、プロダクトを作っている企業を中心に見ていました。そんな中、アカツキの最終面接で代表の塩田さんと話す機会がありました。塩田さんの人生観に共感したことと、一番ストレートにものを言ってくれたことが、入社を決める大きなきっかけです。また、楽しく働こうとしているメンバーが多かったことも魅力的でした。
ーアカツキさんでの具体的な業務内容を教えてください。
インターンから企画担当として参加しました。過去に、社外で新卒採用向けのサービスを立ち上げた経験があったことから、人事として同期のエンジニア採用にも関わることに。その後は、ゲームディレクター・プランナーとして、新規ゲームの企画に移りました。そして、エンジニアへのキャリアチェンジを希望し、管理部の社内ツールの開発をさせてもらえることに。プロダクト開発をしたかったのですが、当時はエンジニアとして全くの未経験だったので、力不足でした。その後、Findyに転職し、念願のプロダクト開発に携わることが出来ました。
“企画+プログラミング” の経験を活かして念願のWebエンジニアに
ーFindyさんに入社された経緯を教えていただけますか?
最初は、企画として副業で入っていたんです。当時は、すでにエンジニアとしてキャリアを歩む決意をしていました。しかし、27歳未経験でWebエンジニアとして転職するのは難しい状況でした。そこで、企画の経験を活かしながら、エンジニアとして転職できる機会を伺っていました。Findyでは企画のお手伝いをしながら、コードも少し書けることをアピールし、簡単な修正のプルリクエストを出させてもらうことに。プロダクト開発に携われる機会も多いと感じ、Findyに7人目の正社員として入社しました。中途採用のサービス「Findy」やエンジニア組織支援SaaS「Findy Teams」などの開発全般に関わることができ、実際にコードを書く機会もたくさんありました。
ーほぼ未経験だった中で、苦労されたことはありましたか?
当初は、技術力のギャップを埋められず、かなり苦労しました。正直、足手まといになっていたと思います。しかし、入社から半年ほど経った時に、CTOの佐藤さんからフリーランスエンジニア向けのサービス「Findy Freelance」の開発を全て任されました。佐藤さんが以前に在籍していた会社では、一旦全て任せてみるというカルチャーがあったそうです。業務委託の方のサポートはあったものの、正社員は私1人。企画も全て任され、ビジネスサイドと連携を取りながら、スピードを意識して開発を進めました。自分でどうにかするしかない状況だったので、自然と力をつけることが出来ました。
30歳でシードベンチャーのCPO/CTOを担う
ーエンジニアとして独り立ちした後の、キャリアを教えてください。
Findyでエンジニアとして働きながら、9secondsのプロダクト開発を手伝い始めました。Wantedly経由で、代表の渡邊さんからメッセージを頂いたのがきっかけです。転職意欲はなかったのですが、話を聞いてみると、プロダクトのリリースにかなり時間がかかりそうな状況でした。当時は、プロダクト作りに詳しい人がいなかったんです。そこで、副業として参画し、リリース日に合わせて必要な機能の優先順位をつけて開発を進めることになりました。何とかリリースまでの道筋を立てることができ、渡邊さんから「うちに来てくれ」と熱心に誘われたんです。悩みましたが、30歳でシードベンチャーのCPO/CTOとして参画できる機会はないと思い、チャレンジすることにしました。
ー入社されてからはどのような業務を担当されましたか?
プロダクトの方針策定から設計、実装までと、プロダクト開発全般を担当しました。役割としては、プロダクトマネージャーと開発の両方をやるイメージです。ユーザーからのヒアリングも実施しました。
ーCPO/CTOとしての苦労や、やりがいはありますか?
技術者としての経験が浅いこともあり、技術的な意思決定に不安があるので、スピード感を持って進められない時があります。私自身、技術選定等の知見はまだまだ十分でないので、周囲と相談しながら慎重に進めざるをえません。また、企画とエンジニアの2つのバックグラウンドがあるので、視点の切り替えにも苦労しています。企画側の考えとしては、「一旦早く作ってみるべきだ」と思う時も、エンジニアの視点から考えると、「もっと考えないと負債になるぞ」と思う場合があるんです。一方で、プロダクトを使ってくれるユーザーが増えたり、優秀なメンバーが増えて組織が拡大していくことには、やりがいを感じています。
ー現在CPOとCTOを兼務されていますが、今後分ける予定はありますか?
あります。私がCPOを担当し、良い方がいればCTOをお願いしようと考えています。ただ、コードはずっと書き続けたいですね。エンジニアに依頼するほどでもないレベルの開発もあると思うので、そういった領域を自分自身でスピード感を持って対応していきたいと思っています。
難しいタスクを自ら取りにいくことで急成長を実現
ーこれまでのキャリアで、エンジニアとして大きく成長したと感じたエピソードはありますか?
先述した、Findyで「Findy Freelance」の開発を任された時です。わからないことだらけの状況下で、周囲の助けを借りて開発を進めました。インフラやサーバー、フロントとWeb開発全般のスキルを身につけることができ、エンジニアとして大きく成長できたと感じてます。また、難しいタスクを自分から手を挙げて取りにいったことも成長できた1つの要因だと思います。「何が来てもやるしかない」という状況になるので、無理やり自分を成長させることが出来ました。
ー常にチャレンジされてきていますが、恐怖心はないんですか?
あまりないですね。前提として、飽き性なので、どんどん未知の領域に飛び込みたいと思ってしまいます。チャレンジを楽しめる性格なんです。また、留学経験でメンタルが鍛え上げられたという背景もあります。大学入学前に、アメリカの短大へ1年半留学したのですが、留学初期は現地のネイティブの学生の話すスピードが速すぎて、当初は全くコミュニケーションが取れませんでした。今までの人生の中で、これ以上にきついことはありません。そのため、どんなに大変なことに直面しても、「何とかできる」と思えるようになったんです。
ー宇田川さんが、エンジニアとして大事にしていることは何ですか?
「小さく早く試作する部分」と「取り返しがつかない部分」を見極め、バランスを保ちながら進めることです。スピード感を持って進めることは大切ですが、DB設計などの領域では、慎重に進めないといけないと考えています。間違えた選択をした時の負債が大きいためです。そのため、ビジネスサイドとの交渉では、譲ってはいけないことはしっかりと伝える必要があります。私は、企画と開発の両方の経験があるので、このような交渉の場で力を発揮できることが強みです。
ーCTOにとって必要な3つの要素は何だと考えますか?
1つ目は、「プロダクトを正しい方向に導く力」です。ビジネスサイドからの要求をそのまま鵜呑みにするのではなく、事業目線で考え、時には戦うことも必要だと思います。2つ目は、「エンジニアチームから尊敬されるものを持つこと」です。リーダーとして、チームを引っ張って行くために必要な要素だと考えています。3つ目は、「最後に自分でどうにかできる力」です。組織の責任者として、最後の砦としてみんなが困った時に何とかする力は必要だと思います。
「Quicker」で見込み客とインサイドセールスを10秒で繋げる
ー貴社の事業内容について教えてください。
ランディングページや企業のHPへの訪問者が問い合わせした時に、即座にインサイドセールスに繋げる問い合わせサービス「Quicker」を開発しています。一般的には、問い合わせを行ってから担当者に繋がるまでに、平均42時間もかかると言われています。この課題を解消し、今聞きたい人にすぐに繋げられるサービスが「Quicker」です。ランディングページ上の問い合わせボタンを押すと、インサイドセールスに電話で通知が飛びます。Slackやメールと連携されており、通知を受け取った方は即座に会話を開始できます。
ー今後、貴社で実現したいことは何ですか?
「Quicker」をより良いプロダクトにしていきたいです。具体的には、CRMなどとの連携を強化し、問い合わせを行った企業に応じた適切なコミュニケーションを出来るようにするといったことが挙げられます。クライアント企業のインサイドセールスの方々にヒアリングをすると、「仕事が辛い」と感じられている方が多かったんです。そのような方々が、顧客のために営業することを楽しめる世界を実現したいと思っています。
ー宇田川さん個人としての夢はありますか?
もの作りにずっと関わっていきたいですね。アルゴリズムやOSレイヤーの知識を深め、趣味でも良いので、コードを書き続けたいです。
ともに難題へチャレンジしていけるメンバーを募集
ーどのようなエンジニアさんと一緒に働きたいですか?
技術かプロダクト作り、どちらかが好きな方と働きたいです。その中でも、難しいことにチャレンジしたい方や、HRT(謙虚・尊敬・信頼)を備えた方であれば、9secondsのカルチャーと合うのではないかと思っています。現在、CTO候補や開発エンジニア数名を募集しているので、興味がある方はぜひ一度お話しましょう。
取材を終えて
今回のインタビューを通して、常に笑顔でお話をしていただいた宇田川さんがとても印象的でした。「難しいタスクを自分から取っていったことで大きく成長できた」と仰っていた宇田川さん。しかし、「もの作りが好き」という強い想いが根底にあったからこそ、熱中でき、3年という急速なスピードでCTO/CPOまで登りつめられたのではと感じました。もの作りに対する熱い想いをお持ちの宇田川さんが、世の中を変えるようなプロダクトを生み出してくれるのではと期待が膨らみます。
プロフィール:宇田川 嵩史
1990年生まれ静岡県出身。
ICU(国際基督教大学)在学時に新卒採用向けのサービスを開発。新卒で株式会社アカツキに入社し、オリジナルゲームのプランナー、ディレクターとして従事。
2018年にFindy株式会社にエンジニアとして入社。新規事業のプロダクト開発担当者を経て、2021年3月に9seconds株式会社に取締役CPO / CTOとして入社。