今回は、株式会社メディカルフォース 取締役CTO 畠中 翔一さんのインタビューをお届けします。起業におけるプロダクト作りの手段として、大学生時代にプログラミングを始められた畠中さん。Word、Excelもまともに使えない状態から、大量のインプット・アウトプットを繰り返すことで、急成長を遂げられたそうです。なんと同時に4社でエンジニアとして働き、様々なスキルを同時進行で磨かれていました。その後、メディカルフォースを共同創業し、CTOとしてARR1億円のプロダクトになるまで成長させてきました。そんな畠中さんが大切にされていることは、「1次情報」。顧客の理解をとことん深め、「本当に価値のあるサービス」を提供しようとする畠中さんのキャリアと価値観に迫ります。

エンジニアとして4社を掛け持った学生時代:起きてる時間はひたすら働く

ー畠中さんがエンジニアを目指されたきっかけを教えてください。

19歳ぐらいから起業をしたいと考えていたのがきっかけです。「自分で事業をやるためには、自分でプロダクトを作れないといけないよね」という動機で始めました。そう考えていると運良く、IT企業に就職した先輩からエンジニアインターンの誘いを受けたので、参加してみることに。当時はプログラミング未経験な上、ExcelやWordもまともに使えない状態でした。

ーインターンではどのような開発を行ったのですか?

未経験だったので、最初は開発環境の立ち上げなど基礎的な経験を積みました。OSのコマンドを調べたり、詳しい人に質問したりしながらなんとか1週間で開発環境の立ち上げに成功。しかし、すぐにリセットされて「次は自分の力だけで立ち上げて来て」と言われるなど、かなりスパルタな環境でしたね。その後は、広告システムの機能改善をメインに担当しました。効果測定やABテストといった領域のシステム開発です。プログラミングは楽しかったのですが、徐々に「何のために作っているんだろう」と思うようになり、約1年で飽きて辞めてしまいました。今思うと、プログラミングの本当の面白さに気づけていませんでした。

ーそこからどのようにして、またプログラミングを再開しようと思われたのですか?

大学は工学部で建築の勉強をしていたこともあり、その後は建築家になろうと勉強を始めました。自分の興味は「もの作り」にあったので、Webアプリではなくても良かったんです。しかし、また1年ほどで「建築も違うかな」と思い始めます。隈研吾さんなどの得意とする意匠設計もありますが、実際の建築は法律の規制がかなり厳しい業界。自由な発想が通用しないんです。ちょうどそのタイミングで、大学の授業でプログラミングに再度触れたことで、興味が蘇えり、スタートアップで再びエンジニアとしてインターンを始めることにしました。バックエンドエンジニアチームは、社員さん2人と私だけだったので、難しいチャレンジをたくさんさせてもらいました。

ー興味が蘇り、どのように技術を磨いていったのですか?

同時進行で複数の種類の仕事をすることにしました。最初のインターン先ではバックエンド開発をメインに担当したのですが、その他にも、フロントエンド開発・画像認識などの機械学習・設計などの上流工程と3つの仕事を掛け持ちしました。意図的に違う種類の仕事をするようにしていたんです。ちょうどコロナ禍にはいったことで、家に引きこもっていたこともあり、起きている時間のほとんどは仕事をしていましたね。確か、月350時間くらい働いていたと思います。同時進行で様々な領域の開発に関われたことは良い経験になりました。その後、メディカルフォースの起業に至ります。

メディカルフォースを起業:泥臭く顧客からフィードバックをもらい続ける

ー起業の経緯を教えていただけますか?

知人経由で代表の大嶋を紹介してもらったのがきっかけです。大嶋が、起業するに当たってエンジニアを探していたんです。最初はカジュアルに話すつもりだったのですが、いざ会ってみると情熱的な彼の人柄に魅力を感じました。「この人は本気だ」と感じた私は、事業売却も経験していた友人の組田を誘って3人でメディカルフォースを創業しました。

ー貴社の事業領域を選ばれた背景を教えてください。

大嶋が最初から「美容クリニック向けのサービスを作りたい」と言っていたんです。そこには、美容クリニックでの彼の実体験が背景にあります。同じ日に同じクリニックで2つの施術を受けた時に、1つ目の施術情報が2つ目の施術担当者に共有されていなかったそうなんです。情報連携や顧客管理に課題があると感じた大嶋は、この領域でビジネスをしようと決めました。それが今のメディカルフォースに繋がっています。

ー創業メンバーの皆様は、美容クリニックのドメイン知識があったのですか?

いえ、3人ともありませんでした。最初の仮説も「これだ」というものはなかったので、とにかくクリニックに足を運んで現場の理解を深めました。課題を整理してMVPを定義し、作成。それを現場に持って行ってフィードバックをもらい、改善してまたフィードバックをもらいに行く。という動きをひたすら繰り返しました。これは今でもずっと続けており、それ以上のことはやっていないと言っても過言ではないですね。

ーどのようにして、フィードバックをもらうクリニックを見つけたのですか?

創業間もない頃は、フィードバックをもらえるクリニックと繋がりを持つことに苦労しました。当初は、TwitterやFacebookでひたすら連絡をしていたのですが、返信が来たのは福岡のクリニック1件だけ。貴重な機会だったので、創業メンバー3人で福岡までインタビューに行きました。その後もこの課題はなかなか解消しなかったので、思い切って完成度が高いと言えない状態でプロダクトをリリースすることを決断。「最初の数院は無料で使えます」と打ち出すと、クリニックと接点を持つことができるようになりました。無料という訴求だけでなく、動くものがあるということも信頼感の醸成に繋がったのではと考えています。

ーその後は順調に拡大したのでしょうか?

いえ、かなり苦労した時期もあります。契約数が増えず、2021年の夏頃はキャッシュフロー的にかなり厳しかったですね。正直「この領域でこのまま突き進んでいいのか」と疑問に思うこともありました。しかし、楽観的かつ猪突猛進タイプの大嶋に引っ張られ、ピボットはせず突き進みました。すると、2021年10月に潮目が変わったんです。あくまでも仮説なのですが、学会への参加で認知が取れたことと、プロダクトの完成度が売れるレベルになったことが要因ではないかと考えています。今ではARR1億円を突破し、拡大を続けています。

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https://note.com/s_hatanaka/n/ne761d924ec71

顧客への価値提供にコミットするために「1次情報」を取る

ー畠中さんがエンジニアとして一番成長したエピソードはありますか?

2回目のインターンです。1つのサービス開発を全て担当するなど、裁量と権限を持たせてくれました。期限も十分に与えてくれたため、まずはインプットを集中的に行い、その後に大量のアウトプットできたことも成長につながったと思っています。また、インプットという意味では、勉強もかなりしました。コロナの影響もあって、インターンを始める前の半年間はずっと家に閉じこもっていたんです。やることもなかったので、その期間はひたすらプログラミングの勉強をしていました。受験勉強よりも頑張りましたね。その後に、インターンを含む4社の掛け持ちを開始。インプットだけでなく大量にアウトプットする機会があったので、大きく成長できたと感じています。

ーエンジニアとして大切にしていることは何ですか?

お客さんに会いに行って1次情報を取ることを心がけています。お客さんとの間に誰かを挟むと、その人の主観が入ってしまう可能性があります。本質的な課題解決を行うためには、お客さんがどのような状況で、どのような課題を解決して欲しいと考えているかを正確に把握しなければいけません。1次情報を取りに行く過程では、ただ一方的に情報をもらうだけでなく、「こういったものはどうですか」とこちらからも提案するなど、双方向のコミュニケーションになるよう心がけています。

ーCTOに必要な3つの要素は何だと思いますか?

1つ目は、「顧客コミット力」です。お客さんのためにサービスを提供している以上、どれだけコミットできるかは非常に重要だと思います。2つ目は、「モデリング力」。サービスの提供価値を高めるために、お客さんからもらった課題をモデル化して整理し、プロダクトに落とし込む力が必要です。3つ目は、「パンクさ」。これは弊社のコアバリューの1つです。開発はどうしても保守的になってしまいがちです。例えば、リファクタリングを検討した際に、デメリットばかり気にして実行できないなど。そんな時こそ、「だめだったら作り変えたら良い」「今よりも絶対よくなることは間違いない」とパンクさを持って踏み出してみることが大切だと思います。CTOは保守的な雰囲気を打破できる立場にいるので、そういった推進力も求められるのではないでしょうか。

「メディカルフォース」で自由診療業界の成長を最大化:目標は業界全体の課題解決

ー貴社の事業内容を教えてください。

美容医療クリニック向けのSaaS「メディカルフォース」を開発・提供しています。自由診療の領域は今すごく伸びていて、これからもさらに伸びていくと予想されています。しかし、データの管理効率が最大化されていないために、本来の成長スピードにブレーキがかかってしまっているのが現状です。例えば、顧客データが整理されていないため、患者へのサービス提供に時間と労力が取られてしまうなど。そういった部分をメディカルフォースで効率を最大化し、本来の成長スピードにしたいと考えています。

ー今後、貴社で実現したいことは何ですか?

今は院内の不合理しか解決できていないので、今後は業界全体の不合理に向き合っていきたいです。クリニックと患者さん・卸売業者との関係性や融資など、まだまだ拡大できる領域はたくさんあります。業界は違いますが、実際に海外では飲食店をスコア化し、融資の参考情報にするサービスもあります。自由診療を取り巻く課題を1つ1つ解決し、メディカルフォースがないと業界が成り立たないぐらいの会社にしたいです。また、将来的には同様の課題を持つ他の業界にもアプローチし、日本の産業全体の成長に関わっていきたいとも考えています。

「顧客コミット力」と「パンクさ」を持ち合わせたエンジニアを募集中

ー貴社ではどのようなエンジニアさんを求めていますか?

弊社のコアバリューとも重なりますが、「顧客コミット力」と「パンクさ」を持っている人と是非一緒に働きたいです。もう1つのモデリング力に関しては、鍛えて身につけることもできるので、あえて外しています。弊社では、入社後に必ずユーザーの元へ出向いてもらい、現場ではどのような業務が行われているのか、どこが負担になっているのか、など実際にプロダクトが使われる現場を体験してもらうようにしています。そこで得た知見を通して、プロダクトに必要だと思ったことを貫き通してくれるような人は、良いエンジニアだなと感じます。

ーどのようなエンジニアが貴社に向いていますか?

SaaSはサブスクリプションモデルなため、継続的に価値を提供していかないとビジネスとして成り立ちません。本当に価値のあるものを作って提供していくことに熱量を持って取り組みたいエンジニアには面白い環境だと思います。さらに、自由診療の業界にまだまだ存在する課題を解決するための新規プロダクトをどんどん作っていける点も、当社のおもしろさの1つだと思います。

▼業界特化型SaaSの開発がエンジニアにとって面白すぎる理由
https://note.com/s_hatanaka/n/n034ab7786758

取材を終えて

物腰が柔らかく、非常にお話がしやすい畠中さん。若くしてCTOに就任し大型の資金調達も達成されています。その裏には、複数の仕事と学業を同時に進めることで、短期間に圧倒的な経験を積んだことがあります。徹底的に顧客や業界に向き合い、課題を見つけて技術で解決するということを突き詰めているエンジニア組織。ご自身が圧倒的な努力をしてきた一方で、押し付け感がない畠中さんと一緒に働けば急成長できるのでは?と強く思います。

プロフィール:畠中 翔一さん

学生時代からインフラの構築やWebアプリの立ち上げを多数こなす。2020年11月に株式会社メディカルフォースを設立し、現在のmedicalforceをフルスクラッチで開発する。開発の傍ら、深層学習を用いた研究が国際学会に採択されるなど、機械学習(AI)や最先端の技術にも精通する。

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