今回は、株式会社Globee取締役兼CTO上赤 一馬さんのインタビューをお届けします。インターン生として猛烈に働き、新卒でソフトバンクに入社。2年半後に同期の幾嶋さんが創業したGlobeeにCTOとして参画されました。常に主体的に働くことを意識してきた上赤さんが大切にされてきたことは、「恥ずかしいものは作らないこと」。エンジニアとして「良いプロダクト」を作ることを追求されてきた上赤さんのキャリアと価値観に迫ります。

エンジニアインターン生として過酷な環境で必死に食らいつく

ー上赤さんがエンジニアを目指されたきっかけを教えてください。

学生時代にエンジニアとしてインターンを始めたのがきっかけです。ただ、もともとエンジニアに興味があったわけではありません。飲食店のバイト面接に落ちてしまい、何をしようか考えていた時にたまたま誘われて始めてみることにしたんです。そのため、その飲食店のバイトの面接に受かっていたら、エンジニアになっていなかったかもしれません。

ーインターンではどのような開発をされたんですか?

ITコンサル会社の問い合わせ対応システムの改修を行いました。それ以外には、ExcelやPowerPointでの資料作成なども担当しました。しかし、エンジニア業務が未経験だったということもあり仕事でなかなか成果を出すことができず、4、5ヶ月働いた時に精神的にもかなり追い込まれてしまい、その会社と繋がりがあった別のシステム開発会社に移動することになったんです。その開発会社も、毎日決められた業務を時間内にこなす必要があったのですが、そこでは非常に楽しく働くことができました。その日の業務が終わらず怒られることがあっても、業務後に飲み会が毎回あったので、そこでリセットされました。結局2年半ほどその会社には在籍しましたが、フロントエンドとバックエンドを含むWeb開発やアプリ開発など、幅広い経験をさせてもらいました。

ー未経験からどのようにしてキャッチアップされたのでしょうか?

ひたすら実務をこなしてキャッチアップをしました。もちろん最初は、プログラムのことは全く理解できません。しかし、毎日がむしゃらに働いていると徐々に理解できるようになったんです。「このプログラムを変えたらこうなった。じゃあこっちはこう変えてみよう。」とやりながら学んでいったんです。1年ほど働くと、ある程度プログラミングのことがわかるようになり、自分でもサービスを1,2個作ってみました。野球が好きだったので、野球記事のキュレーションサイトを作ってみたのですが、毎月3,4万円は広告収入があったと思います。

ー自分でサービスを作って良かったと思うことはありますか?

サービスの全体像を知れたことは良かったです。「なぜここがこう動くのか」といったことを1つ1つ理解していけます。また、障害対応の良い経験にもなりました。大きい会社・サービスだと、障害が起きそうな箇所は事前に潰されていることも多いです。しかし、個人サービスの場合は誰も助けてくれないので、全て自分で対応する必要があります。この経験を通して、自分で問題を解決する力が身についたなと思います。

より主体的に働きたいと思い、エンジニアとしてソフトバンクに新卒入社

ー大学卒業後は、エンジニアとして働かれたのでしょうか?

はい、エンジニアとしてソフトバンクに入社しました。インターンでエンジニアとしてきつい経験をしたので、社会人でも活かしたいと思ったんです。また、シンプルにプログラミングのことが好きになったという理由もありますね。

ーたくさんの企業がある中で、なぜソフトバンクを選ばれたのですか?

より主体性を持って働けると考えたからです。インターンでは、誰かにつきっきりで教えてもらうというよりも、主体的に動いたことで成長できた感覚がありました。そのため、エンジニアがあまりいない環境で働きたいと思ったんです。もちろん、開発体制が充実している方が体系だって学べるという良さもあります。しかし、自分でなんとかする力は充実していない環境の方が身につくと考えました。実際にこの経験は、現職の立ち上げフェーズでも活きています。また、インターン先経由での紹介、選考であった為、ある程度、内定時点で配属先が確定していたことも入社の決め手の1つです。配属は不確定要素がある中で、入社前から自分のやることや一緒に働く人達を把握できたことは安心材料になりました。

ーソフトバンクではどのような開発に携わられたのですか?

主にサーバーサイドの開発を担当しました。当初はアプリエンジニアとして入社予定だったのですが、入社前にサーバーサイドの担当者が退職してしまい、「サーバーサイドをやってくれないか」と頼まれたのがきっかけです。実はこの時、サーバーサイドの知識はほとんどなかったので、入社まではインターン先でサーバーサイドの経験を積ませてもらいました。入社後は、ビッグデータを収集・解析する部署に配属され、部署内での新規サービスを立ち上げる際のサーバーサイドやデータベース構築を担当。サーバーサイドのタスクが落ち着いているときにはアプリ開発を担当することもありました。

ー正社員として働き始めて、苦労はありましたか?

学生時代のインターンでかなり苦労した分、技術面ではあまりなかったです。一方で、人間関係で悩むことは何度かありました。当時の私は柔らかい表現でコミュニケーションを取るのが苦手だったんです。技術に自信があった分、少し尖った表現になってしまっていました。「何でこんなこともわからないんだ」と思うこともありました。しかし、様々なことを経験していく中で、全てのエンジニアが開発力に強みを持っているわけではないことに気づいたんです。マネジメントに強みを持っている人もいれば、仕組みづくりに強みを持っている人もいます。そのため、良い意味で技術への期待値を下げることで、適切なコミュニケーションができるようになりました。

Globee代表の幾嶋さんと何度もぶつかるも、最終的にCTOとしてジョインを決意

ーその後のキャリアについて教えてください。

現職のGlobeeにCTOとしてジョインします。代表の幾嶋とはソフトバンク時代の同期なんです。新卒研修時に幾嶋が「一番できるエンジニアは誰だ?」と聞いて回っていたので、「俺だ」と答えたのが出会いのきっかけです。ソフトバンク在籍時から幾嶋のアイディアを形にするため、サイドプロジェクト的に今のabceedの原型となるサービスを開発しました。その後は仕事上での意見のぶつかり合いなどが原因で、離れてはまた一緒にやってを2回ほど繰り返しました。お互いがabceedの開発に本気で向き合っていたこともあり、よく衝突したんです。

ー何度か離れられた中で、なぜ最終的にGlobeeへの参画を決意されたのですか?

「自分ならこのサービスをもっと良くできる」と思ったんです。参画する直前は私がGlobeeから離れており、幾嶋が開発を外部に委託していたのですが、コードの質は低い状態でした。私が最初に作ったものということもあって一定の思い入れもあり、もっと良くしたいという想いがありました。また、その頃は幾嶋ともお互いにリスペクトを持ってコミュニケーションが取れる関係になっていました。様々な経験を経て、伝え方などに気を使えるようになったんです。何度も衝突した分、CEOとCTOの関係性としては仲が良い方だと思います。起業してから最初の2年間ほどは、毎日一緒に昼食と夕食を食べていましたから。

ーソフトバンクという大企業からスタートアップにジョインする怖さはなかったんですか?

なかったですね。当時は独身で若かったので、リスクを取ってチャレンジするなら今しかないと考えていました。また、インターンとソフトバンクでエンジニアとして一定程度の経験を積めたので、自分の力を試してみたいという想いもありました。そのため、1人目のエンジニアとして0からサービスを作っていける環境は魅力的だったんです。

ー当時の開発内容について教えてください。

AI英語教材abceedの開発全般を担当しました。アイディアを出して、プロダクトに反映してリリースするというサイクルを何度も実施。「自分がお金を払って使うか」「良いサービスだと思うか」ということを考えながらサービスを作っていきました。幾嶋は経営目線を持ちながら並行してUI/UXのデザインを担当していたので、当時はCEOというよりデザイナーと働いている感覚でした。試行錯誤の末、教材の単品購入機能をリリースしたタイミングで売上が急激に伸び、PMFをした感覚がありました。

ーGlobeeでの苦労はありますか?

入社当初は、幾嶋とのコミュニケーションに苦労しました。リスペクトは持っていたものの、幾嶋は経営者目線、私はエンジニア目線で話すことが多く、なかなか噛み合わなかったんです。ただ、一緒にやっていくうちにお互いの考えを理解できるようになりました。あとは採用ですね。業務の空き時間で採用業務を実施していたのですが、全然成果がでませんでした。そのため、幾嶋と2人でやっていた期間が長かったですね。

こだわりと責任を持って誇れるプロダクトを作る

ー上赤さんがエンジニアとして一番成長したと感じたエピソードはありますか?

学生時代のインターン先での経験ですね。とにかく猛烈に働いたということもありますが、時間制限がある中でやれたことが大きな要因だと感じています。若いうちは、時間が無制限にあると思ってしまいがちです。だからといって業務時間をいたずらに伸ばしても意味がありません。短い時間でいかに高いアウトプットを出せるかが重要です。インターンを通して時間の感覚にシビアになったことは、本当に良い経験でしたね。

ーエンジニアとして大事にしていることはありますか?

「恥ずかしいものを作らないこと」です。言い換えると、「一つ一つこだわりを持って作っていく」ということ。深夜など疲れている時は、「ここはこれでいいかな」と思ってしまうことも沢山あります。そういう時は一旦寝た方が良くて、次の日に改めて考えると「これではいけない」と思い直すことができます。もちろん、最初から多機能なプロダクトは作れないのでスコープを絞ることはありますが、その中では絶対に恥ずかしいものを作らないように心がけています。あとは、リスペクトを持ってコミュニケーションを取ることも大切にしています。高圧的になってしまう人もいますが、それでは適切なコミュニケーションが取れません。私にも尖った時期がありましたが、今ではきちんと人とコミュニケーションを取るようにしています。

ーCTOに必要な3つの要素は何だと思いますか?

1つ目は、「技術に対する責任感」です。CTOは技術に関わることの最高責任者であると考えています。「技術のことはあいつに任せれば大丈夫」と思ってもらえるような存在にならないといけません。私自身、技術面がボトルネックになって会社の成長を止めてしまうことがないよう、常に意識しています。2つ目は、私もまだできていないことなのですが、「会社の顔になること」です。仮に私にもっと外部との繋がりや発信力があればより早く会社を成長させることができたのではと感じています。3つ目は、「会社の成長に合わせて自分を変化させること」です。会社のフェーズによって求められるスキルは変わります。しかし、それに適用できないでいるとCTOとして責任を取ることができないですから。

英語学習の決定版となるサービスを作りたい

ー貴社の事業内容を教えてください。

AI英語教材abceedを開発・運営しています。ToC、ToB、ToS、利用するステークホルダーと幅も広く、年代も様々なため、機能単位にこだわりを持って開発しているのが特徴です。「ユーザーがこのように学習するから、こんな機能があった方が良いよね」「アプリを開いた時にここにボタンがあった方が良いよね」と、学習体験を最大化するための細かなUI/IXに気を配っています。ここまでは、ユーザーの声と自分たちの感覚の2本立てで開発を進めています。最初は自分たちの感覚で作ることが多かったですが、ユーザーが増えるにつれて、ユーザーの意見を聞いて改修することが多くなってきました。

ー貴社で実現したい目標はありますか?

abceedを英語学習サービスの決定版にしたいです。現状、どのサービスもまだ決定版にはなれていないと考えています。abceedはTOEIC®︎学習においては、選択肢の1つとして有力なアプリになってきています。今後はTOEIC®︎と一般英語学習の開発に力を入れ、「英語学習といえばabceedだよね」と言われるサービスにしていきたいです。

ー上赤さん個人の夢はありますか?

誰もが認めるような「自分の代表作」を作りたいと思っています。正直ここは会社の目標とかなり一体化しており、徐々に自分の夢になってきました。今では、会社に良いことがあると嬉しいし、悪いことがあると悲しくなります。目標達成のためには、組織面やプロダクト面でまだまだやるべきことがたくさんあるので、頑張っていきたいです。

「自分の代表作」を作りたい人を募集

ー貴社ではどのようなエンジニアを求めていますか?

自分と同じく、「自分の代表作を作りたい」と思っている人に来てほしいですね。「自分が作ったんだ」とみんなが胸を張れるプロダクトを一緒に作っていきたいと思っています。スキル面では、特定分野のプロフェッショナルを求めています。例えば、「iOSであれば自分に任せろ」といった頼もしいスタンスの方など。実際に、現在のエンジニアメンバーは、自分でプロダクトを作っている者も多いので、そういった気質の方が多いです。Globeeに興味をお持ちいただけた方は、ぜひ一度お話しましょう。

取材を終えて

「職人」という言葉が、取材をしてみて強く受けた印象です。それも頑固な職人というより、いいものをつくるために柔軟に様々なものを取り入れている上赤さん。恥ずかしいものを作らない、代表作を作りたいという言葉からは、エンジニアとしての矜持を感じざるを得ません。物腰が柔らかいのですが、「同期で一番のエンジニア」と言い切ってしまう尖った部分もまた魅力です。なにか代表作を作りたいと思っている方は、Globeeさんの門を叩いてみてはいかがでしょうか?

Globeeの募集ページ

プロフィール:上赤 一馬さん

2013年3月に東京大学卒業。その後、東京大学大学院卒業。新卒でソフトバンク株式会社へ入社。

 2017年8月、株式会社Globee 取締役CTOに就任し、現在はモバイル・フロントエンド・バックエンド・データ分析・インフラまで、横断的に開発を行う。

(趣味は漫画を読むこと、将棋。プライベートでは1歳児のパパ。)

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