今回は、株式会社AppBrew(以下、AppBrew)で取締役CTOを務める堀江 慧さんのインタビュー記事をお届けします。美容系の専門学校に進もうか迷った末に東京大学に進学し、そこからエンジニアの道を歩み、美容・コスメ領域で国内をリードするAppBrewのCTOを担うに至ったストーリーなどを語っていただきました。

インタビュー概要

お話を伺った企業さま

会社名  :株式会社AppBrew

設立   :2016年2月

資本金  :2,760,000,000円(資本準備金含む)

代表者  :深澤 雄太

所在地  :東京都文京区

ミッション:ユーザーに求められるものを再現性をもって作る

事業内容 :国内最大級の美容クチコミプラットフォーム「LIPS」の企画・開発・運用

URL   :https://appbrew.io/

お話を伺ったご担当者さま

部署 / 役職:取締役CTO

氏名   :堀江 慧

東京大学総合文化研究科修了(修士)。当時の専門は大規模データ処理と人工知能による意思決定理論。その後、株式会社 Murakumo で分散 RDBMS・分散ジョブ処理系のフルスクラッチ開発プロジェクトに従事し、2019年に AppBrew に入社。LIPS の検索やレコメンド、レーティングやランキングなどのアルゴリズムの企画・開発を担当。主な著作として “Block-Parallel IDA* for GPUs”(2017)、翻訳書として「みんなのデータ構造」(2018)など。

キャリアについて

「教養学部」からエンジニアの道へ

エンジニアといえば「工学部」や「理学部」などの出身の方が多いイメージがありますが、私はそういった学部出身ではありませんでした。私が在籍していた東京大学では「レイト・スペシャリゼーション」という制度を採用しており、大学3年生になるときに学部を選択します。好奇心が旺盛で「いろんなことを学んでみたい」というタイプだった私は、他の学部の講義も受けることができる教養学部に進むことにしました。実際に、元々好きで興味があった応用数学だけではなく金融、経済、コンピューターサイエンスなどを学ぶために経済学部、工学部、理学部などの講義も受けていました。その中で、一番楽しむことができ、かつ適性があると感じたのはコンピューターサイエンスでした。そして大学在学中にソフトウェアを書く仕事を始め、私のエンジニアとしてのキャリアがスタートしました。実際にエンジニアとして働いてみると、エンジニアという仕事に対して「楽しい」「好き」「得意」「知的に興奮できる」「人の役に立てる」「評価される」「お金がもらえる」というポジティブな感情を抱きました。

初めて開発したのはWebサイトではなく…

初めて触った言語は、大学ではじめに受けた講義で使用したRubyでした。当初はおもちゃと言っていいようなものばかり開発していましたが、初めて「独自性があり、人が活用できるもの」を開発した経験は、大学の研究室の教官に頂いたアドバイスがきっかけでした。

エンジニアとして仕事を受けるために、初めての開発に挑む

エンジニアとしてキャリアを積んでいくため、まずはインターンをしようと考えたのですが、「実績がないのでインターンができない→実績を作るためにインターンをしたい→実績がないのでインターンができない…」というニワタマ論に悩み、研究室の教官に相談をしました。そこで頂いたアドバイスを元に開発したのが初めての「独自性があり、人が活用できるもの」でした。本来、新しいコンピュータを立ち上げて必要なライブラリを入れる際には、パッケージマネージャというものを用いて「これを入れます」という指示を1つずつ順番に出していきます。私が開発したものは、最終的に必要なライブラリを整理した上で、「これらを入れる時、最も効率的な入れ方は何か」を計算してくれるソフト(※)でした。エンジニアとして初めて開発したものがWebサイトである方は多いかと思いますが、教官のアドバイスや得意な数学を活かすという点で、このようなものを開発しました。また実際に、そのソフトを開発したという実績を元に3社でインターンをし、経験を積むことができました。

※非エンジニアの方向けに、どのようなソフトを開発したのかわかりやすく解説していただきました。

例「カレーと味噌汁を作りたい時」。カレーを作るために必要な人参が2本、味噌汁を作るために必要な人参が1本だったとします。1つずつ順番に指示する場合には2本の人参と1本の人参を別々で購入しますが、最終的に必要な人参が合計3本であると整理されていれば、「3本入りのお得なパック」を購入するという選択ができます。私が開発したソフトは、そのような計算をしてくれるものです。

AppBrewに入社した経緯

AppBrewに入社した経緯をお話しするために、すこし過去に遡ります。

母の影響で美容に興味を持つも、当時の美容領域はまだまだ女性の世界だった。

母が美容関係の仕事をしていたため、幼い頃から日焼け止めを塗らされていたりなど、美容に触れる機会が多くありました。そのような環境でしたので、自ずと美容に興味を持つようになり、高校生の頃の将来の夢は「美容に携わる仕事」でした。結構本気で考えており、当時一番最初に取り寄せた学校案内は美容師などを目指す方が通う資生堂美容専門学校のものでした。しかしながら、当時の美容領域といえばまだまだ女性の世界だったことから、自分がマイノリティになる環境に飛び込むのが怖いと感じてしまい、直接的に美容領域に関わることを辞め、薬学部に進学して化粧品の研究者になろうと考えました。気づいたらコンピューターサイエンスの領域に進んでいましたが。(笑)

ずっと持ち続けてきた美容領域への思い、そしてAppBrewとの出会い

コンピューターサイエンスの領域に進み、エンジニアとして働いていくなかでも、やはり美容に携わる仕事をしたいという思いはずっと持っていました。そんな時、大学の友人から「教養学部の後輩(共同創業者である松井 友里)がコスメのサービスを始めたらしい。しかも、結構流行っているらしい。」という話を耳にし、オフィスへ遊びに行ったのがAppBrewとの最初の接点です。

退職→無職→AppBrewに入社

1社目から転職をするにあたり、持ち前の好奇心から「せっかく初めての転職だし、無職や失業手当の受給などを経験してみたい」と考え、実際に1社目をやめた後は無職になり、失業手当を受給していました。その後、外資系のIT企業に興味を持ち選考を受けたのですが、そのような会社は面接回数が10回弱ほどあり、選考期間が半年ほどにもなります。さすがに長いので、失業手当が受けられる期間内でお金を稼ぐため、選考期間が短く柔軟な働き方をしやすいスタートアップも受け始めました。その中で、「元々会社自体に興味があった」「興味のあった美容領域」「条件面」「業務内容」などが決め手となり、AppBrewへの入社を決めました。

これから挑戦したいこと

男性美容文化の日本における浸透

美容業界にもAppBrewにもLIPSにも強い愛着があるので、今の環境に腰を据え、多くの人に愛されるものを作り、育てたいと考えています。また、今の環境で挑戦したいこととして「男性美容文化の日本における浸透」というものがあります。先程述べたとおり、以前の美容領域は女性の世界という色が強く、私のように美容領域に進みたいけど怖くて辞めてしまった男性は少なくないのではと考えています。そのような背景もあり、男性美容文化を日本でもっと浸透させていきたいという思いがあります。最近、AppBrewでも男性の美容に関する「LIPS HOMME」というプロジェクトがスタート(※)したので、個人的にはとてもワクワクしています。

※プレスリリース

株式会社AppBrew – 本日2023年7月20日(木)より、日本のメンズ美容を盛り上げる『LIPS HOMME』プロジェクトが本格始動

何かで尖り、世界一になる

持ち前である好奇心の旺盛さは今も衰えていないので、「まだ体験していない、ワクワクするようなこと」をしたいと常に考えています。特に、「世界一」という経験はまだしたことがないので、「何かで尖り、世界一になる」ということにも挑戦してみたいと考えています。

プロゲーマーチームの一員として世界一位になる

元々ゲームが好きなので、昨今の「ゲーマーがご飯を食べられる時代」には大変興味がありますし、ぜひ携わってみたいと考えています。本当はプレイヤーとしてもやってみたいのですが、動体視力という点で若い方々に劣ってしまうと思うので、マネジメント経験やデータ分析のスキルを活かし、プロゲーマーチームの監督やブレインといった役割を担うことで、チームの一員として世界一を目指してみたいです。

世界で一番早く「ポーカーAIは人間を超えているという証明」をする

ゲームAIにも興味があります。中でも、ポーカーAIには大変注目しています。ポーカーは運も勝敗を左右する要因となるゲームなので、「ポーカーAIが人間を超えているという証明」をするのは非常に難しく、まだ成し遂げられていません。プロとのエキシビションマッチや、シンプルなルールでは既にポーカーAIが人間に勝利しているのですが、「ポーカーAIが(最もポーカーが強い)人間を(本格的なポーカールールを用いた勝負でも)超えているという証明」が次なるマイルストーンとして残っています。なので、世界で初めてその証明をするための検証などもやってみたいです。が、今はAppBrewにフルコミットしたいと考えているので、その間に誰かが成し遂げてしまうんだろうなとも思っています。

考え方・マインドについて

「CTO」から「CPO」や「VPoE」に変わる可能性?

私がAppBrewに入社した当時はまだメンバー数も少なく、誰も役職や肩書を持たないフラットな組織でした。その後、組織の拡大に伴い組織再編が行われ、私は開発組織全体をリードする「リードエンジニア」を担うことになりました。その後の組織再編ではリードエンジニアとして担っていた業務を「技術」「組織」「プロダクト」の3つに分け、それぞれにマネージャーを設けることになり、各チームのマネージャーをマネジメントする役割としてCTOというポジションを担うことになりました。今後、更に組織が拡大していったときに、私が担っている「各チームのマネージャーをマネジメントする役割」を分業し、「CPO」「VPoP」「VPoE」など、CTOと並列のポジションができていくのかなと考えています。

※インタビュー内容を元に作成。

※あくまで組織再編の変遷を表したものであり、セクションの人数は正確なものではありません。

もしそうなった場合、私は「プロダクト」のチームに特化する「CPO」や「VPoE」といった役割になるのかなと考えています。私の中で「CTO」といえば「技術のトップ」という意味合いが強いと考えているのですが、技術に関しては「この分野なら私よりもこの人のほうが分かっているな」という方が社内にもいたりしますし、現在の業務の比重として「プロダクト>組織>技術」となっているためです。どうなっていくかはまだわかりませんけどね。(笑)

エンジニアとして成長できた理由

「成長している組織」かつ「何でもやらせてもらえる環境」で、「何でもやりますという気持ち」をもち、「実際にやって成果を出す」ということを繰り返してきたことが、今のポジションに繋がっていると考えています。好奇心が旺盛なのは昔からですが、AppBrewに入社するまで本格的なプロダクトマネージメントやリードエンジニアリングをやったことがなかったですし、CTOというポジションを担ったこともありませんでした。なので、先に述べたことを繰り返していくことが成長につながると思います。

問題を解決するだけでなく、「問題を発見して定義すること」も重要

私がマネージャーではなくプレイヤーとしてエンジニアリングをしていたときに大切にしていたことは、「問題を発見して定義するところから、解像度を高くして取り組むこと」です。もちろん、定義された問題を解くということは大切なのですが、「仕事で成果を出す」「より多くの人に価値を届ける」ということをしたい場合は、「本当に大事なのはこの問題なのか」「もっと重要な問題は無いのか」「この解き方で本当にユーザーに価値が届くのか」ということを常に考えることが大切です。組織によっては企画と開発が分業されていることもありますが、本当に価値あるものを作りたい場合は、自分で裁量と権限を掴みにいく必要があります。そうすると、自分が違和感を覚えた時に提案し、意思決定できるようになります。初めのうちは定義された問題を解くことで精一杯だと思いますが、エンジニアとして仕事で成果を出して評価されたいという方は、どのようなレイヤーの方であっても意識すべきです。

フリーランスエンジニアに対する考え方

AppBrew内にもフリーランスエンジニアの方はいらっしゃいます。前提として、働き方の選択肢が多いというのはとても良いことだと思っています。

AppBrewで活躍するフリーランスエンジニアの特徴

「そういえば、フリーランスだったんだね。」という方が活躍しているイメージがあります。つまり、組織や事業に対するコミット力の高い方が活躍しているイメージです。AppBrewは「問題解決は頭からしっぽまで面倒を見る」という文化の組織であるため、「業務委託なので、言われたことのみやります」という方の場合だとそれが難しくなってしまいます。なので、正社員と同じような距離感で仕事に臨んでいただけるとワークするかなと考えています。

バイブル

好きな本が多いので、「一番」をつけるのが非常に難しいのですが、クリティカルな影響を最も受けたのは「SOFT SKILLS」という、エンジニア向けのソフトスキルに関する本です。

エンジニアの技術に関する本は世の中にたくさんありますが、技術的なトピック以外で「これを読めばOK」といえる本に出会ったことがありませんでした。一方で、この本はエンジニアのキャリア、コミュニケーション、マネジメント、技術など、一通りのトピックが入っています。読んだ当時、初めて「決定版」と呼べる本に出会えたと感じました。

AppBrewで働きたい方へ

AppBrewについて

主事業として、「LIPS」という美容やコスメに関するプラットフォームを企画・開発・運営しています。LIPSは、AppBrewの共同創業者である松井 友里が大学生時代に「Twitter(現:X)やInstagramではコスメを探しづらい。」と感じたことから生まれました。マーケットに入る際の軸としてもその背景を取り入れており、当初は若い女の子向けサービスという色が強かったです。しかしながら、最近では美容・コスメ領域で国内最大級のサービスとなり、アプリとWebをあわせて月間UU数は1,000万前後となっています。日本の人口を1億人で計算すると、オンラインで1ヶ月に1回以上コスメや美容について検索する若い女性にはかなり浸透したと言える状態です。なので、今は更に上の年代や、男性にもマーケットを広げていこうとしている段階です。

AppBrewで働くメリット

先程も述べましたが、「問題解決は頭からしっぽまで面倒を見る」という文化が根づいているので、プレイヤーレベルからレイヤーを上げていきたいという方にとってはチャレンジできる環境であるかなと考えます。

AppBrewの募集ページ

取材を終えて

取材内容とはあまり関係のない内容ですが、非常に肌が綺麗でいらっしゃったことから、美容・コスメ領域を本当に愛していらっしゃる方であると感じました。ポイントは、「日焼け止め」と「保湿」とのことで、海外の研究結果などをもとに肌をきれいに保つ方法を教えてくださる姿には圧倒されました。また、好奇心が旺盛なだけでなく、それを行動に移し、さらに成果を上げ続けていらっしゃるという点で、美しい見た目とは裏腹にアグレッシブな一面も持っていらっしゃるのだろうと感じました。そんな堀江さんの下で働きたいという方や、美容・コスメ領域で国内最大級となった今でも成長を続けている組織で働きたいと感じた方は、ぜひAppBrewの募集に応募してみてはいかがでしょうか。

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