今回は、ファストドクター株式会社で執行役員/CTOを務める宮田 芳郎さんのインタビュー記事をお届けします。大学時代は映画製作や音楽活動に勤しむも、新卒でエンジニアとしてベンチャー企業に入社。その後は、自身の学生時代の進学校で落ちこぼれたことを原体験に教育領域でのプロダクト開発に取り組み、現在はファストドクターのCTOとして医療のDXに取り組まれています。そんな宮田さんがCTOとして大切にされている価値観は、「文明目線を持つこと」。常に世の中に「新しい価値」を生み出してきた宮田さんのキャリアや価値観に迫ります。

インタビュー概要

お話を伺った企業さま

会社名  :ファストドクター株式会社

設立   :2016年8月

代表者  :菊池 亮・水野 敬志

所在地  :東京都渋谷区

ミッション:生活者の不安と、医療者の負担をなくす

事業内容 :医療プラットフォーム「ファストドクター」の運営

URL   :https://www.fastdoctor.co.jp/

お話を伺ったご担当者さま

部署 / 役職:執行役員/CTO

氏名   :宮田 芳郎

開成高校、東京工業大学情報系学科大学院卒。製造業系のコンサルティング会社である株式会社インクスに入社しソフトウェアエンジニアの経験を積む。2009年にインクスの同期4人で株式会社ガラパゴスを創業。株式会社COMPASSにて「Qubena」という小中5教科のアダプティブラーニング教材の開発責任者を経て、2021年12月、ファストドクター株式会社に技術開発部長として入社。2022年12月にCTOに就任。

キャリアについて

音楽家を目指した学生時代

私は、小さい頃からエンジニアを目指していたわけではありません。高校時代は文系だったのですが、歴史の勉強が嫌で理系に移ったんです。東大への進学者が多い開成高校に通っていたこともあり、私も東大を目指して勉強を頑張るも、結果は不合格。早稲田大学へ進学することになりました。入学後は、映画製作や音楽活動ばかりやっていたので単位が全然取れず。音楽家を本気で目指した時もありましたが、将来のことをより現実的に考えてITを学べる東京工業大学に入り直しました。当時はちょうどインターネットが一般消費者へ届き始めた時期だったこともあり、今後さらに伸びていくであろうITについて学びたいと思ったんです。東京工業大学でプログラミングを学んでいたので、その流れでエンジニアになりました。

「自分が考えたものを創りたい」という思いでベンチャー企業へ入社

大学卒業後は、インクスという製造業向けのコンサルティング会社にエンジニアとして入社しました。東京工業大学では、半導体や組み込み、通信などを学ぶ学科だったこともあり、大手メーカーに就職する同期が多かったです。しかし私には、「自分が考えたものを作りたい」という思いが重要でした。大手メーカーの場合だと、その機会が回ってくるのに最低でも10年はかかるでしょうから。そのため、「自分が考えたものを作る」チャンスが早く来そうな当時300名規模のベンチャー企業だったインクスへの入社を決めました。インクスでは、課題発見、要求定義から関与してひたすらコードを書く日々でした。プログラマーとしても技術者としても地力がかなり鍛えられたと思います。

子どもたちの未来のために教育・医療領域で挑戦

前職のCOMPASS社では、教育系のサービスを開発していました。背景には、開成高校時代に周囲と比べて勉強ができなかった私のコンプレックスがあります。当時からずっと「小学校の頃はスラスラわかったのに、中学からの自分はなぜ勉強ができなかったのか」という問いがあり、これから生まれてくる子どもたちには同じような経験をしてほしくないと思ったんです。結果、そのサービスは東京を中心に多くの自治体で採用され、日本の小中学生の10%に使われるようになりました。これは自分なりにはかなりの成功体験になりました。日本の状況下では教育だけをどれだけ頑張っても子どもたちの未来は明るくできないと感じたんです。医療・介護費で見ると、20年前は約15兆円だったものが今では約50兆円、2040年には約95兆円まで膨れ上がると言われています。一方、日本の国家予算は約114兆円で、そのうちの30%〜40%は借金です。2040年には約95兆円の医療・介護費がかかるのは、将来の子どもたちにかなり大きな負担を残すことになります。この状況をどうにかしないといけないと思ったのですが、当時の教育サービスを通じてこの状況を好転させるのは困難でした。そんな時に、ファストドクターに出会ったんです。ファストドクターは、DXを通じた医療の変革に直接アプローチできると思い、入社することに決めました。

直近半年でエンジニア組織が2倍に成長

ファストドクターへは、技術開発部長として入社しました。当初は、正社員エンジニア1名+業務委託数名と少数精鋭の組織でした。そんな中で私に課せられたミッションは、「正社員のエンジニアリング組織の立ち上げ」です。徐々に組織は大きくなり、入社から約1年後にCTOに就任しました。半年前までは約30名だった開発組織も、現在は60名規模と、直近半年で約2倍に拡大しています。業務としては、入社当初は私もコードを書いていましたが、今は開発メンバーにほぼお任せしてしています。私の一番大きなミッションは「組織づくり」で、開発組織の横断的なミーティングや経営陣とのすり合わせが主な業務です。最近では、R&D組織の立ち上げも行っています。

何でもやる精神でエンジニアとして大きく成長

これまでエンジニアとして様々な経験をしてきましたが、中でも大きく成長できたのは前職のCOMPASS社で教育サービスを作った経験です。例えば、それまでは1教科のサービスを作るのに2年かかっていた環境で、5教科9学年を1年で開発するというチャレンジングな目標を「設計の工夫」で達成しました。全教科対応するために、グラフデータベースとリレーショナルデータベースを統合した新しいデータベースを考えて、その上にスキーマレスに問題を作成できる環境を作るといった世の中にないやり方を考案したんです。このように創意工夫を凝らしながらスピード感を持って開発を進めました。時には、学校の先生へのインタビューやプロダクトのコンセプトを資料に落とし込むなど、プロダクトマネージャーのような動きもしましたね。その結果、10人もいないエンジニアチームで、全然シェアがない状態から国内10%のシェアを取ることができました。この経験でエンジニアとして成長しただけでなく、一気にキャリアの希少性が高まったと感じています。

優秀なCTOをたくさん育成できる環境を創りたい

私は、優秀なCTOをたくさん育成できる環境を創ることを今後の1つの目標としています。CTOになることはすごく非連続なんです。エンジニアとしてコードを書いてきた人がCTOになると、急にやることの幅が増えます。人材エージェントとのやりとりや予算計画の作成、経営への意見出しなど、全く別次元の仕事をしないといけなくなります。すると、プレイヤーとして成功してきた人が、CTOとしては機能しない可能性もありますよね。これは会社の成長に関わる大問題です。いきなりやれと言われてできる役割ではないので、長期的な育成が必要なんです。そのため、当社では私から各メンバーに「ミニCTO」として育成することを伝えています。ひとりひとりのエンジニアが最大限のポテンシャルを発揮できるよう、優秀なCTOをたくさん育成できる環境を創っていきたいです。

考え方・マインドについて

CTOに大切なのは「経営目線」よりも「文明目線」

私がCTOとして大切にしていることは、「文明目線」です。もちろん経営者としての「経営目線」も重要ですが、前者の方がより必要だと思っています。文明とは、社会課題とテクノロジーの進化をかけあわせたものだと考えています。例えば、教師の長時間労働は社会問題になっています。一方で、テクノロジーの進化によって今ではブラウザベースでも質の高いUXを提供できるようになり、Kubernetesなどの技術の登場によって一気にスケールしやすいサービスが作りやすくなりました。テクノロジーが進化することで、学校教育の現場で先生の働き方改革を実現できる何かを作れますよね。このように、社会課題とテクノロジーの進化をかけ合わせた考え方を日頃から大切にしています。

「出来事」が起こせるエンジニアは強い

エンジニアとして刀を研ぎ澄ます(スキルを伸ばす)ことは当たり前です。ではどこで差がつくかというと、「出来事を起こせるかどうか」だと考えています。エンジニアはただものを作るだけでなく、社会課題やユーザーにフィットするものを作らないといけません。そのため、時にはエンジニアも現場に出向いて直接ユーザーの声をヒアリングする機会を作らないといけないと思います。こういった出来事を主体的に起こせるエンジニアは、あらゆる環境下で重宝されるでしょう。

正社員とフリーランスの垣根をなくす

当社では、正社員とフリーランスの役割をあまり変えないようにしています。私自身、前職ではフリーランスとして2年間働き、その後に正社員、CAIO、開発責任者になりました。そういった実体験からも、正社員とフリーランスとは働き方の違いであるに過ぎないと考えています。書かれるコードに差はないですし、当社ではフリーランスの方々にも極力情報をオープンにして、一緒に考えられる環境を作っています。最近では業務委託から正社員に転換する方も多くなってきたので、当社では今後も正社員・業務委託問わず優秀なエンジニアさんを採用していきたいです。

ファストドクターで働きたい方へ

医療DXを通じて「生活者の不安と、医療者の負担をなくす」

ファストドクターは、全国に対応する日本最大級のプライマリ・ケア医療プラットフォーム「ファストドクター」を運営するヘルステック企業です。3,500名以上の医師が参加するこのプラットフォームは、患者のほか、医療・介護施設、自治体、公的研究機関、製薬や保険業界など、医療業界の多岐にわたるステークホルダーに利用いただくことで、地域医療を強化する新たな医療インフラの構築を実現しようとしています。

フィードバックサイクルが早い環境で成長できる

当社では、社会貢献性の高さに魅力を感じて来ていただけるメンバーが多いです。アプリのレビューはすでに何千、何万という数が集まっています。一つ一つが熱量の高い文章で書いてくださっているので、エンジニアとしてはすごく手応えを感じる事ができます。救急往診はドライバーと医師が患者のもとに出向き、その場で全ての医療行為を行うプレッシャーのかかる仕事です。(※)患者様に向けてはシンプルなUXを実現する一方で、オペレーションは複雑な業務プロセスになっています。改善は社内のオペレータに向けられたものも多く、社内のメンバーからもフィードバックをもらえます。新しい取り組みに対しても、翌週や翌々週には生々しいフィードバックを貰える環境にあるので、改善サイクルも早いです。人間の成長にはフィードバックが不可欠ですから、そのサイクルが早い当社では、いちエンジニアとしても早いスピードで成長していただけます。最近では新卒に近いメンバーが著しく成長しているので、テックリードとしての育成計画も作らないと考えているところです。このように当社でエンジニアとして働いていただくことで、やりがいと成長性を期待していただけます。

※医師による医療相談を含む医療行為は、ファストドクターが提携する医療機関所属の医師によって行われ、 ファストドクターが医療行為を行うものではありません。

子どもの将来や社会貢献に興味のあるエンジニアさんを募集

現在当社では、「スクアッド」という考え方でエンジニア組織を構築しています。「チームトポロジー 価値あるソフトウェアをすばやく届ける適応型組織設計」という書籍にも書かれた、Spotify由来の考え方で、ある目的に対してフロントエンド・バックエンド・デザイナー・プロダクトマネージャーをアサインし、一定期間はチームの入れ替えをせずに目標達成を目指します。スクアッドを導入することで、各メンバーが自律性を持ってプロダクト開発を進めることが可能です。こういった環境に魅力を感じていただける方や、子どもの将来のために何かいいことがしたいと思える方、成長意欲が高く、社会に対して意義のあることをしたいという思いをお持ちの方は、ぜひ当社にエントリーしていただけると幸いです。

ファストドクターの募集ページ

取材を終えて

宮田さんからお話をお伺いする中で、仕事におけるベクトルが常に「社会」に向いていることに感銘を受けました。エンジニアとしての単なるスキルだけでなく、子どもたちの将来のために日本の教育や医療を変えようとする強い意志と行動力があるからこそ、CTOというポジションを任されているのでしょう。タイトルにもある「CTOは文明目線を持て」という言葉も、宮田さんがおっしゃるからこそ説得力があります。医療を通して日本の未来を明るくしたい方は、ぜひファストドクターさんの門を叩いてみてはいかがでしょうか。

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