今回は、株式会社High Linkで執行役員CTOを務める野川 賢二郎さんのインタビュー記事をお届けします。学生時代からWebサイトやSNSを作り、新卒でLINEに入社された野川さん。現在は、株式会社High Linkで執行役員CTOとして、会員数60万人を突破した香りの総合プラットフォーム「カラリア」の開発に携わられています。そんな野川さんがCTOとして大切にしていることは、「会社をエンジニアリングすること」。そう思われるに至った、野川さんのキャリアや価値観に迫ります。
インタビュー概要
お話を伺った企業さま
会社名 :株式会社High Link
設立 :2017年6月
資本金 :100,000,000円
代表者 :南木 将宏
所在地 :東京都港区
フィロソフィー:わくわくで、あらゆる枠を超えていく
事業内容 :香りのサブスクリプションサービス「カラリア」/ 香りのメディア「カラリアマガジン」/ ソーシャルギフトサービス「カラリア 香りのギフト」/ ブランド向けサービス「coloria for business」の開発・運営
サービスURL :https://coloria.jp/
お話を伺ったご担当者さま
部署 / 役職:執行役員CTO
氏名 :野川 賢二郎
大学・大学院在学中に複数社でインターンを経験後、LINE株式会社にてサーバーサイド開発に従事。
2018年よりHigh Linkに参画し、「カラリア」の初期開発に従事。
組織・技術の観点から「香り×テクノロジー」をリードしている。変化に強く働いていてわくわくが止まらないプロダクト開発組織を目指している。
キャリアについて
エンジニアの父親の影響でエンジニアの道へ
私がエンジニアになる最初のきっかけは父親です。父親は経営者だったのですが、元々は機械系のエンジニアでした。その影響で、小学生くらいからエンジニアに対して憧れがあったんです。当時はちょうど流行り始めたオンラインゲームで友達と遊ぶくらいでしたが、オンライン通信を実現しているネットワーク技術はすごいなと思っていました。中学時代には、コンピューターの裏側が全て「0」と「1」で表現されているという事実を知り、とても驚いたことは今でも印象深く覚えています。最初は「まさかそんなはずがない」と思いましたが、実際に調べてみると本当に0と1の電気信号だけで動いていました。一見複雑そうに見えるシステムが、裏側ではすごくシンプルな仕組みになっていてすごく興味深かったです。その後高校生になり、C言語を用いて初歩的なプログラミングを始めました。最初は何も分からず何度も挫折しましたが、諦めずに取り組んでいるうちに裏側の概念がわかるようになりました。
映画『ソーシャル・ネットワーク』への憧れ:本格的にプロダクト開発を始めた大学時代
その流れで大学も情報系に進みました。当時、マーク・ザッカーバーグがFacebookを創設する物語を題材とした映画『ソーシャル・ネットワーク』を観て、プログラミングの持つ可能性の大きさを感じました。プログラミングという手段を使い、何億人もの人々に自分が作ったサービスを使ってもらえることはすごいことだなと。私もそういったサービスを作ってみたいという憧れから、大学時代はWebサイト制作のアルバイトをしたり友人とSNSを作ってみたりと、本格的にプロダクト開発に取り組みました。実はこの時期に、High Link代表の南木と友人の紹介で知り合ったんです。最初は南木の持つ事業アイディアの壁打ち相手をするという関係性でした。そんな中、カラリアの原型となる「香水のサブスク」にたどりつき、おもしろそうだと感じたので立ち上げを手伝いました。
新卒でLINEに入社:多くの人に使われるサービスを作りたい
大学卒業後はLINEにサーバーサイドエンジニアとして入社しました。LINEを選んだ理由は、多くの人に作ってもらえるサービスを作りたかったからです。大学時代にリクルートのインターンを通して、地方の交通課題を解消するプロダクトを作りました。こういった経験で小さいサービスを作る経験ができたのですが、多くの人に使って喜んでもらえる経験はできなかったんです。そこで、グローバルにサービスを展開している会社でものづくりがしたいと思い、LINEに入社しました。LINEでは、LINE LIVEやLINE MUSICを開発。大きなサービスの開発に携わることはできたのですが、規模が大きい故に手触り感を持って開発できない側面もありました。サービスを設計する人と私のような開発者の距離が遠かったんです。そんな思いを抱えている時に、南木からHigh Linkへの誘いをもらいました。スタートアップ環境でより手触り感を持って開発したいと思い、LINEで2年働いたタイミングでHigh Linkにジョインしました。
High Linkでオーナーシップを発揮し、大きく成長
High Linkでは当初、開発責任者として開発全体を見ていました。組織づくりの一環として採用も担当しましたが、経営への関わりはそこまででした。その後、プロダクトの戦略や方向性、MVVの考案などの領域も携わるようになり、入社して半年後にCTOに就任することに。現在は、経営メンバーの1人として会社全体の意思決定に携わっています。開発・データ・デザイン組織全体の統括や組織づくり、技術戦略の立案が主な業務なので、コードを書く機会は減っています。今まで様々な経験をしましたが、High Linkへジョインして間もない頃にカラリアのシステム全体の開発・運用を任された経験が一番の成長ポイントでした。例えば、当時はちょうどテレビの取材が重なったタイミングだったこともあり、このままだとインフラが落ちてしまう恐れがあったんです。その課題に対して自分がオーナーシップを持たざるを得ない状況で取り組み、短期間でオートスケール可能な形でリプレースすることで、なんとか解決することができました。このように、わからないことだらけでも「自分がなんとかしないといけない」という強いオーナーシップを持って行動することで、成長できることを実感しました。また、学習サイクルが長い設計の失敗を何度も経験することも成長に繋がりました。1年前に作ったデータベース設計に対し、今思えば1〜2週間遅らせて違う設計にすればよかったと思うこともあります。当時の設計の答え合わせを1年後くらいにするイメージです。このように長くオーナーシップをもって開発に取り組むことで、様々な学びを得ることができました。
プロダクト目線でなく、会社目線でエンジニアリングをする
仕事面での今後の目標は、自分が抜けても持続的に成長できる会社を作ることです。プロダクトというよりも会社目線で物事を見ており、かなりチャレンジング、かつ大胆ではありますが「会社の成長をエンジニアリングしたい」と考えています。そうすることで、最終的に自分が想像もできなかった規模に大きくなるのではと思っています。とは言うものの、将来のキャリアについてはそれほど具体的に考えていません。いい仲間といいものを作り、おじいちゃんになった時に「あれは良いサービスだったよね」とみんなで振り返るようなキャリアにしたいです。プライベート面での夢は、湖近くの家でまったりプログラミングをすることですかね。
考え方・マインドについて
事業を深く理解し、課題の解像度を上げる
エンジニアとして大切にしていることは、「事業を深く理解した上で開発を進めること」です。設計は、未来の要件がわかっていればすごく簡単です。未来の姿が100%見えていれば、100点の設計ができると思います。しかし、実際に先々のことを正確に予想することは困難です。だからこそ、事業理解の深さが重要になります。事業の方向性を理解できていると、100%正確ではないにせよある程度の未来の要件を予想できますよね。また、事業を深く理解することで、課題の解像度も上げられます。解くべき価値のない課題に向かっても意味はないので、課題を深掘りして真の課題を見つけることが重要です。良い課題を良い形で解くことが大切だと思います。
エンジニアにとって必要な能力は「しなやかさ」
私の中で継続的に価値を発揮できるエンジニアは、「しなやかさ」を持った方です。「しなやかさ」とは、目的思考があり、学習し続けられ、常に変化できる姿勢のことを意味しています。技術は、数年単位で流行り廃りがあります。そのため、アウトカムを出し続けるには、今までのやり方にとらわれずにアンラーニングして、変化していかなければいけません。またハードの部分だと、LLMの台頭によって「価値あるエンジニア」は2極化していくのではと予想しています。1つが、特定領域のプロフェッショナル。汎用的な知識を持ったエンジニアではなく、例えば、大規模トラフィックをさばくエンジニアなどです。こういった知見はどこにでも落ちているわけではないので、その領域のプロフェッショナルとして重宝されると思います。もう1つが、プロダクトづくりのプロです。ただの開発者ではなく、プロダクトを長期的に成長させるプロダクトマネージャーの役割を一部担うようなエンジニアも引っ張りだこになるのではないでしょうか。
雇用形態は関係ない:チームやプロダクトにどれだけアクティブに貢献できるかが重要
現在、エンジニアの正社員採用は非常に難しくなっています。そのため、フリーランスエンジニアの方々の力をお借りすることも企業の成長には欠かせません。実際に弊社でもフリーランスの方々に入っていただいています。大切なのは、チームやプロダクトに対してアクティブに貢献できるかどうかです。正社員やフリーランスという雇用形態の違いは、それほど気にしていません。
High Linkで働きたい方へ
香りの総合プラットフォーム「カラリア」を展開
弊社は、「香りで世界を彩る」をミッションに香りの総合プラットフォーム「カラリア」を提供しております。2023年12月現在、会員数60万人を突破しました。香水は比較的高価なので失敗したくないという心理が働きますが、「カラリア 香りの定期便」では1ヶ月の使い切りサイズ(4ml)の香水アトマイザーでお届けするため、気軽に試すことができ、香水購入のハードルを下げています。また、独自の診断サービス「香水診断」を受けていただくことで、香水選びに不安を覚える方でもオンライン上で自分好みの香りを選んでいただけます。香りのタイプベースで趣味趣向の分析ができるので、これまで自分でも明確に把握できていなかった香りの好みを知ることができるんです。カラリアマガジンでは、香りに関するコンテンツを多数掲載しています。月間平均150万PV、Instagram・X・Tiktokの総フォロワー数が45万人と多くの方々に見ていただいています。また、2023年10月に「カラリア 香りのギフト」をローンチしました。香りの好みはひとそれぞれで、プレゼントとして選ぶには少しハードルが高いですよね。そこで当社のギフトサービスでは、受け取り側が好きな香水を選べる仕様にしています。こうすることで、贈り手は気兼ねなく香水をプレゼントでき、受け手は好みの香水をもらえるので、双方がハッピーになれるんです。
カラリアで香りの領域をDX
カラリアのサービスのビジョンとして「香りとの出会いを最適化する」というものを掲げています。インターネットが普及して、さまざまなものがオンライン上で購入・体験できるようになりました。例えば、洋服やレストラン、映画や音楽などの五感に関わるあらゆる領域がDXされています。しかし香りは目に見えず、体験しづらい性質があるので、嗅覚の領域だけアップデートされていないままでした。そこでカラリアでは、1ヶ月使い切りサイズのサブスクや香水診断といったサービスを提供することで、オンラインで香水をはじめとする香りアイテムを購入しやすいようにしています。嗅覚領域にはまだまだ伸びしろがあるので、カラリアで嗅覚領域のDXを実現していきたいです。
マルチプロダクト戦略でサービスを拡大していく
カラリアは現在、60万人を超えるユーザー様に使っていただいているtoCサービスです。ユーザーが増えてくるとイシューがどんどん増えますし、領域を広げるために今後も新たなサービスを作っていく予定です。マルチプロダクト戦略の考え方がベースにあるので、今あるサービスとどういったシナジーを出せるかというところまで考えて作っていけるのは非常におもしろいと思います。また、目に見えない香りをオンライン上で購入していただくためには、データやUI/UXの工夫が欠かせません。ユーザーが購入しやすいサービス体験を実装できるように高速で開発・改善を進め、本質的な価値提供を追求するおもしろさもありますね。
小さなチームで大きなプロダクトを作る
弊社には現在、業務委託の方を含めて約20名のエンジニアが在籍しています。それぞれの担当プロジェクトにアサインされるチーム体制を取っており、各チーム内でデザイナーなどとコミュニケーションを取って開発を進めています。大切にしていることは、「スピードと質の両方にこだわること」です。一見矛盾しているようにも聞こえますが、イテレーションの中でPDCAを素早く回し、検証要素あるものは早く、後戻りできないものはしっかりと検討するといったように分けて考えることで、スピードと質を担保しています。開発実務の特徴としては、プロダクトマネージャーとの距離が近く、「What」まで踏み込んで開発ができます。エンジニアは言われたものをただ作るのではありません。小さなチームで大きなプロダクトを作るべく、各々が主体的に考え、オーナーシップを持って開発に取り組んでいます。そのため、「サービスを作るスキル」がかなり身につくと思いますね。プロダクトを伸ばすためにデータにも大きく投資を行っているので、データアナリストやアナリティクスエンジニアリング、機械学習エンジニアリングといったデータ人材の成長機会も申し分ないです。
技術を大切にしながらプロダクトを伸ばしたいエンジニアを募集!
弊社のフィロソフィーは、「わくわくで、あらゆる枠を超えていく」です。将来的には、「香り」という枠を超えて様々なチャレンジをしていきたいと考えています。イメージとしては、サイバーエージェントさんのような多方面で事業を展開する企業を目指しています。そんな成長の一端を担っていただけるエンジニアを募集中です。当社のエンジニアチームは、技術とプロダクトづくりの両方を大切にしています。技術を大切にしながらプロダクトを伸ばすことに興味がある方は、ぜひ一度お話しましょう!
取材を終えて
インタビューを通して、野川さんの頭の回転の速さや思考力の深さに感銘を受けました。質問に対してもほとんど詰まることなく理路整然とお話しされていました。これも、急速に成長するHigh Linkさんで様々なイシューにオーナーシップを持って対応し、その過程で膨大な思考を積み重ねてきた賜物なのでしょうか。エンジニアとしてでなく、いち経営者のCTOとして「会社をエンジニアリングする」という言葉は、非常に印象深く心に残っています。そんな野川さんであれば、一見実現困難な「香りのDX」を実現させる最高のサービスを作ってくれるだけではなく、人々を「わくわくさせる」あらゆるプロダクトを生み出してくれるのではと期待が膨らみます。