今回は、カバー株式会社で取締役CTO福田 一行さんのインタビュー記事をお届けします。現在、最も勢いのある業界の1つであるVTuber業界。その領域で急成長を遂げているのが、カバー株式会社です。福田さんは、CTOとして創業期からバーチャルという先端技術を用いたカバーの成長を牽引してきました。本インタビューでは、そんな福田さんのキャリアや価値観をご紹介します。

インタビュー概要

お話を伺った企業さま

会社名  :カバー株式会社

設立   :2016年6月

資本金  :973,000,000円

代表者  :谷郷 元昭

所在地  :東京都港区

ミッション:つくろう。世界が愛するカルチャーを。

事業内容 :VTuberプロダクション運営事業 / メディアミックス事業 / メタバース事業

URL   :https://cover-corp.com/

お話を伺ったご担当者さま

部署 / 役職:取締役CTO

氏名   :福田 一行

慶應義塾大学環境情報学部を卒業後、2005年からソニー株式会社にて放送局向けシステムの設計を担当。2008年から、アジャイルメディア・ネットワーク株式会社にてCTOとしてソーシャルメディア向けの広告システム、キャンペーンシステムなどを担当。2016年からカバー株式会社にて、VTuber配信アプリの開発を担当。

キャリアについて

インターネットに魅了され、プログラミングにのめり込んだ学生時代

私がエンジニアを目指すきっかけになる原体験は、中学時代に遡ります。当時はちょうど、Windows95が出始めてインターネットが世の中に普及し始めた時期でした。学校でHTMLを用いて自分のホームページを作成する授業があり、自分が作ったものをいろんな人に見てもらえて嬉しかったのを覚えています。高校では、部活の掲示板を作成したりしました。これらの経験を通じて、インターネットのおもしろさや可能性を感じ、大学は慶應義塾大学の環境情報学部に進学。プログラミングを本格的に学び始めました。授業以外にも、Web系のベンチャー企業でエンジニアとしてアルバイトをするなど、学生時代はプログラミングにのめり込んでいましたね。

「世の中に大きな影響を与えたい」と思い、ソニーに入社

大学卒業後は、ソニーにエンジニアとして入社しました。世の中への影響力の大きさを考えた時に、ハードウェア・ソフトウェア・サービスの全てに強みを持つ日本有数の企業であるソニーで働きたいと思ったんです。入社後は、放送局のシステム開発に携わりました。ソニーと言えばBtoCのイメージが強いと思いますが、実はBtoBも結構な市場シェアがあります。当時は地デジへの移行期間だったこともあり、地デジ化を実現するためのハードウェア開発・ソフトウェア開発を行いました。学生時代のシステム開発に比べるととても大きな規模のプロジェクトだったので、良い経験になりました。

BtoCサービスに関わるため、ソニーからベンチャー企業のCTOに

ソニーでは、ハードウェア・ソフトウェア開発の良い経験が積めました。しかし、BtoCサービスには携われませんでした。私としては、BtoCのサービス開発をやりたいという思いが強かったんです。そこで、アジャイルメディア・ネットワークというソーシャルメディアの会社にCTOとして入ることにしました。学生時代はずっとWeb系の開発をしていたので、得意領域に戻った感覚でした。具体的には、ブロガーや企業向けに広告システムやTwitterの拡散システムを提供。某大手企業が実施した広告キャンペーンでは、数十万人のユーザーに参加していただけたりと、すごくやりがいがありました。

VRに将来性を感じ、カバーを創業

ソーシャルメディアはすごくおもしろかったのですが、就活生時代から持っていた「ハードウェア・ソフトウェア・サービスの開発がやりたい」という思いを実現するために、独立しました。IoTを用いたスマートホームの開発や、ドローンのシステムの開発・研究などを行いました。そんな中、今のカバー代表である谷郷とイベントで何度か会う機会があったんです。お互いVRに興味を持っており、「AppleやGoogleに続くプラットフォームを日本で作りたい」という思いが一致し、カバー株式会社の創業に至りました。

VRプラットフォーム事業で苦戦

創業当初は、バーチャル空間でコミュニケーションができるVRのプラットフォームを作りました。このサービスに着手した背景には、当社の社名が関係しています。「COVER(カバー)」とは、「​​Communication」と「Virtual」を合わせて名付けたものなんです。その頃はまだVR自体が新しい技術で何が正解かわからなかったので、とにかくたくさんのプロトタイプを作って検証しました。しかし当時は2016年。いくらプラットフォームを作っても、肝心のVR向けヘッドセットが一般に普及するにはすごく時間がかかると感じました。別事業へピボットするか悩んでいたところ、「キズナアイ」という2次元キャラクターが海外で受け入れられ始めたんです。これがきっかけとなり、VTuber領域に目をつけました。

VTuber事業「ホロライブ」が大ヒット

その後、独自のVTuberアプリである「ホロライブ」を開発しました。バーチャル女子高生「ときのそら」などのタレントを作ってホロライブでライブ配信を実施したり、ニコニコ動画でもキャラクターを動かした番組を配信した時は、大きな反響を得ました。「VTuber」というワードも世の中に広まって来たタイミングで、フェイストラッキング技術を用いたVTuber向けアプリをリリースして、誰でも簡単に自宅からVTuber配信ができる環境を提供しています。2020年には、ホロライブプロダクション全体のライブも開催しました。私自身も現地でファンの熱量を肌で感じました。このあたりからホロライブがぐんと伸びた感覚がありますね。2021年にはメタバース事業も始め、サンドボックスゲームを開発しています。日本の得意領域であるアニメと相性のよい、アニメルックなアバターをベースとして、誰もが自身のアバターを使って同一の世界での生活を体験できるサービスを目指し、開発を続けています。また、会社の成長とともに様々なサービスを展開する中でも、3Dをリアルタイム配信できる技術は当社の強みで、2023年にゲーム会社で使われている機材を参考に他社には真似できない高いクオリティの光学式のモーションスタジオを設立しました。

Web・VR開発の経験を用いて新しいサービスを創る

ホロライブが軌道に乗るまでは、私自身がアプリ開発を全て担当していました。その後、サービスが拡大する中で3Dチームやエンジニアチームを作り、分業化を進めました。3D関連の開発やスタジオ運営は別のメンバーに任せており、私はメタバースやモーションキャプチャーの技術基盤開発やR&Dを担っています。Web開発とVR開発は180度違う領域ですが、Web開発時代の経験が活きることもあります。急激なトラフィックをさばいたり、高負荷状態でのサーバー運用の経験は今でも役に立っており、サーバーとクライアントサイドをセットで動かすことで新しいことを生み出すことができています。例えば、VRをモーショントラッキングに使うことや、ARをフェイストラッキングに使うことは、前例がありませんでした。開発までの過程はチャレンジングでしたが、非常におもしろい経験でした。

世界中のクリエイターが使うサービスを創りたい

今後の目標の1つとして、クリエイターに利用してもらえるサービスを作っていきたいです。現在当社が提供しているメタバースサービスの「ホロアース(https://holoearth.com/)」では、バーチャル空間で家を建てたり、アバターの服装を変えることができます。多種多様なものづくりができるサービスなので、クリエイターのみなさんが作ったコンテンツを多くの人に見てもらえるような世界観にしていくことも目指しています。また、サービスの成長に伴って、組織もアップデートしていかなくてはなりません。当社のエンジニア組織は複数チームに分かれており、それぞれにミッションがありますが、会社としてはグローバル展開を目指しています。すでに海外拠点も作っているので、組織のグローバル化とともに会社横断的に全チームのパワーアップを実現していきたいです。

考え方・マインドについて

チームで「今までにない体験」を創っていく

私が仕事をする上で大切にしている価値観は2つあります。1つ目は、「仕組みを提供すること」。自分たち自身でコンテンツを作ることももちろん重要ですが、私は、他のクリエイターがコンテンツを生み出すための仕組みを作ることに価値を感じています。2つ目は、「1人ではなく、みんなで作ること」。当社では、「今までにない体験」を創り出すことを重要視しています。それを実現するには、1人の力では限界があるので、部署や役職を越えて組織一丸となって「ともに取り組む」ことを大切にしています。

ユーザー目線で考え、自分から行動できるエンジニアは強い

私が考える価値あるエンジニアの条件の1つに、「ユーザー目線で動けるかどうか」があります。「自分がやりたいから」ではなく、ユーザーニーズや課題を深堀りし、何を提供するかを考えられるエンジニアです。また、専門性を高めながらも、これまでの経験を組み合わせて「何か新しいことができないか」と試行錯誤して自ら行動できるエンジニアも重宝されると思います。その時に、実際に開発するだけでなく、チームを巻き込んで環境を整えたりすることで、より強いエンジニアに育ってほしいとも考えています。

カバー株式会社で働きたい方へ

バーチャル領域は可能性が無限大

当社は、「VTuberプロダクション運営」「メディアミックス」「メタバース」の3つを柱に運営しています。「VTuberプロダクション運営」では、業界トップクラスの規模を有するホロライブプロダクション所属のタレントが日々の配信のほか、ライブやイベントなどを通じて活動の場を拡大させています。「メディアミックス」では、VTuberのグッズ販売やライセンス、タイアップ等を展開することで、VTuberの横展開を進めています。「メタバース」はVTuberに次ぐ新たな事業として進めており、世界中の人がバーチャル空間で交流できるメタバースプラットフォーム「ホロアース」を開発・運営しています。バーチャル領域はまだまだ大きな可能性を秘めた領域なので、今後も様々な技術を用いて「今までにない体験」を提供していく予定です。

熱量高く挑戦を続けるエンジニア集団

当社では、これまでお話したように、「今までにない体験」を実現するために、関わる事業や領域によって多種多様な経験ができます。例えば、ホロライブプロダクションの公式アプリ「ホロプラス」ではFlutter、メタバースではGoやQUICといった環境で開発をしているので、多様なエンジニアが所属しています。その他にも3D技術など、モダンな技術を取り入れて「新しい体験」の創造に取り組むために、新たな発想も求められています。また、アニメやゲームなどのコンテンツが好きなメンバーが多く、サービス開発に対する熱量も高いため、新しい技術の習得にも積極的です。最近だと、メンバー同士が自主的に生成AIを触って情報交換をするなんてことをやっており、エンジニアが活き活きと活躍できる環境になっていると感じています。

「新しい体験」をともに作ってくれるメンバーを募集!

当社は絶賛エンジニアを募集中です。「新しい体験を提供する」というミッションがあるので、受け身ではなく、あらゆることに興味を持って主体的に動けるエンジニアに来て欲しいですね。そのような理念や新しい技術、開発手法への挑戦に興味がある方は、ぜひお話しましょう!

カバーの募集ページ

取材を終えて

取材を通して、「新しい体験を提供する」という福田さんの想いの強さをひしひしと感じました。新しい体験を生み出すことは、そう簡単なことではないはずです。しかし福田さんは、それを心の底から楽しんで追求されています。自分が楽しんでいるからこそ、世の中があっと驚くような楽しい体験を提供できるんだなと納得させられました。最も将来性がある領域の1つと言っても過言ではない「バーチャル技術」を用いて、私たちの世界にどのようなインパクトを与えてくれるのか期待が膨らみます。

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