今回は、レジル株式会社で執行役員/情報システム本部長を務める伊与田 陸さんのインタビュー記事をお届けします。伊与田さんは、NTTなどのSIerを数社経たあと、レジルに入社されるまで23年フリーランスとしてご活躍されていました。そんな長いキャリアの中で大切にされてきた想いは、「新しい環境に積極的に飛び込むこと」だそうです。世間一般のエンジニアと比較すると特異なキャリアを歩まれている伊与田さん。これまでのご経験や価値観をお伺いしました。
インタビュー概要
お話を伺った企業さま
会社名 :レジル株式会社
設立 :1994年11月
資本金 :3.5億円(2024年5月27日時点)
上場市場 :東京証券取引所グロース市場
代表者 :丹治 保積
所在地 :東京都千代田区
ミッション:脱炭素を、難問にしない
事業内容 :分散型エネルギー事業 / グリーンエネルギー事業 / エネルギーDX事業
URL :https://rezil.co.jp/
お話を伺ったご担当者さま
部署 / 役職:執行役員/情報システム本部長
氏名 :伊与田 陸
豊田工業高等専門学校卒業。1995年日本電信電話株式会社に入社。1999年に独立し、2022年までソフトウェア開発を主軸として活動。株式会社Cygamesの立ち上げやソフトウェアエンジニア組織の運営サポートに携わるほか、企業の技術顧問やコンサルタントを務める。2022年12月にレジルへ入社。情報システム本部長として、ソフトウェアエンジニア組織を統括。エンジニア組織の採用強化とプロダクトライフサイクル維持のための施策作りを行う。既存プロダクトの開発サイクル改善と生成AIを使ったソフトウェア開発ツールの導入を主導。
キャリアについて
高専のコンピューター部でプログラミングに没頭
私がエンジニアを目指すことになったきっかけは、中学生時代に親からPCを買ってもらったことです。当時はインターネットがない時代でしたが、独学で簡易なゲームやシステムを作っていました。その後、高校は豊田高専に進学。専攻は土木工学でしたが、コンピューター部に入ってプログラミングを学びました。周りには小学生時代からプログラミングをやっている子がたくさんおり、その子たちに教えてもらっていました。高専は20歳まで通うので、プログラミング経験を積んで卒業の時点で企業に納品できるレベルになる人もいます。私もプログラミングは好きだったので、楽しみながらやっていました。
NTTなど複数のSIerでエンジニアスキルを磨く
高専卒業後はNTTに入社しました。専攻は土木工学だったのでゼネコンや土木系への就職も考えたのですが、ちょうどバブルが弾けたタイミングということもあってゼネコンの元気がなかったんです。そんな中、NTTはシステム系の仕事をやらせてもらえたので入社を決めました。NTTでは社内の情報システムの開発を担当。顧客情報の統合プロジェクトにて、基本設計を1年ほどやりました。高専で一定の経験があったので、それほど苦労はしませんでした。その後、エンジニアとしてさらにレベルアップしたいと思い、上京。SIerで主に業務システムの開発を担当しました。その後は、SIerを計3社渡り歩き、1999年にフリーランスとして独立しました。
Cygamesの立ち上げなど、フリーランスとして23年間活動
フリーランスとして独立したきっかけは、周囲に勧められたからです。付き合いのあった会社3社くらいから、「フリーランスとして手を貸してもらえたらもっと助かる」と言われました。その頃はちょうど最初のインターネットバブルの時期で、私も正社員として働きながら休日にメールサーバーやWebサーバーを立てたりしていました。いざやってみると、「これで稼げるんじゃないか?」と感じたことも独立を決めた1つの要因です。フリーランスになってからは、インターネットやWeb系のプロジェクトを中心に参画しました。特に、立ち上げ期のCygamesでのプロジェクトは、さまざまな苦労もあって特に印象深いです。私は特定の領域に限定せずに、依頼を頂いたらとにかく何でもやりました。未知の領域でもまずは飛び込んで、勉強しながらキャッチアップしていく。そうすると、自ずとできることがどんどん増えていきました。その後、レジルに入社するまで23年間フリーランスとして大小さまざまなお仕事をさせていただきました。
レジルで強い開発チーム作りに取り組む
レジル代表の丹治とは、フリーランス時代に2ヶ月ほど一緒に仕事をしたことがあったんです。その後は、年1〜2回食事に行って情報交換する関係性になりました。丹治がレジルの代表に就任したときに、私に「来て欲しい」と声をかけてくれたんです。丹治はすごく仕事ができる魅力的な人だと感じていたので、また一緒に働きたいと思い入社を決意しました。入社当時の中央電力は、システム開発を外部に外注しており、細かい部分をすぐに修正できないという課題がありました。そのため、技術領域のトップとして私に課されたミッションは、「システム開発の内製化」。採用活動を含めて開発チームを組成し、スピード感を持って開発できる環境づくりを進める必要があったんです。もちろん、すぐに全てを内製化することはできません。そのため、最初は私もGitHubのリポジトリを読んだり、AWSの環境をのぞいたりして、徐々に社内で対応できることを増やしている状況です。特に最近はプロダクト・ライフサイクルの管理を重要視しており、定期的にシステムの見直しを実施しています。苦労したことを再度やらないようにすることが自分の仕事だと思っているので、過去の経験を活かしてより速く・効率的に開発を進められる環境・強い組織を作っていきたいです。
困難から逃げずに向き合い続けたことで大きく成長できた
これまでのキャリアを振り返ると、フリーランスとしてCygamesで働いていた時期がエンジニアとして一番成長したのではないかと思います。実は私が社内で最初のプログラムを書き、プロダクトの初期設計を作ったんです。その後事業が拡大し、メンバーも増えていきました。すると、SVNコミットログにある私の名前を見て、システムに関する質問や苦情が来るようになりました。この対応は本当に大変でしたね。自分が作ったものを否定されている感覚になりますから。結果この対応は3年ほど続いたのですが、その間一切手を抜かず丁寧に対応し続けました。その過程で、「ドキュメントがあれば未然に防げたのでは」などと学びになることもありました。困難から逃げず、限られた時間の中で最善を尽くせた経験は自分にとってすごく良い経験になったと感じています。
「面白そうな環境」に積極的に飛び込んでいきたい
レジルに入るまでコンサルや採用、顧問等なんでもやってきましたが、今後のキャリアプランはそれほど深く考えていません。ただ、「面白そうなこと」には手を出していきたいですね。今でいうと、LLM(Large Language Models=大規模言語モデル)はかなり面白くなってきていると思います。LLMの発展によってお客様の要求も増えてくると思うので、技術的にキャッチアップしてうまく使っていきたいです。もともと私が長年フリーランスをやってこれたのも、この「面白い」という感情が密接に関わっています。フリーランスとして様々な環境で働いてきましたが、そのそれぞれで新しい発見や学びがあります。未知な環境であればあるほど、その発見や学びは新鮮で面白いんです。もちろん現時点でレジルを離れる予定はありませんが、次もし何か新しいことをやるとしたら、知り合いが誰もいないような環境で働いてみたいですね。
考え方・マインドについて
価値を届けて稼げるエンジニアが強い
私が考える価値あるエンジニアは、「稼げるエンジニア」です。現在の世の中での価値は、通貨で計るのが一般的です。そのため、エンジニアもエンドユーザーやミドルウェアを意識して「誰がどのように使うか」を意識してプログラムを書く必要があります。そうでなければ、使われないシステムを作ってしまい、価値提供ができない、つまり稼げない状況に陥ってしまいます。言われた通りのものをただ作るだけでなく、実際にユーザー目線で考えて開発ができる人は期待値を超えてくることが多いです。「なぜそのシステムを作るのか?」「それによって誰にどれだけの価値を届けられるのか?」を考えながら開発ができるエンジニアは強いと思います。
正社員とフリーランスの境界線が曖昧になりつつある
コロナ期を経て、働き方はかなり多様化しました。例えば、今は正社員でもリモートで働くエンジニアが増えましたよね。以前であれば、リモートワークはフリーランスの特権のようなものだったんです。しかし今では、特にエンジニア職においてリモートが標準になっている企業も多いと思います。レジルもその企業の1つです。私も今は、愛知で在宅ワークが半分、東京本社に出社が半分で、たまに大阪本社へ出張するといった働き方をしています。また、副業も一般化しつつありますし、レジルも副業OKで、東京本社内には副業専用スペースまであります。そのため、「正社員とフリーランスの違いってなんだったっけ?」と考える時があります。おそらく正社員の働き方変化は、しばらく続くと思います。その中で出社かリモート、副業の有無、どちらのほうがより企業成長に繋がるのかを知るのが楽しみです。
レジルで働きたい方へ
デジタルの力を駆使して脱炭素の実現に貢献
レジルは「脱炭素を、難問にしない」をミッションに掲げ、エネルギー領域を中心とした社会課題の解決に取り組むクライメートテックカンパニーです。当初は、2000年代初頭はインターネット事業に挑戦していました。その過程で「より電気料金を安くできないか」という思いに至り、2004年にマンション一括受電事業を開始しました。実は、一般家庭向けに先んじて法人向けの高圧電力が自由化されています。そのタイミングで、大口の需要家として高圧電力を割安でまとめ買いし、低圧に変電してマンションの各家庭に供給することで共有部や各家庭の電気料金を削減できることに目をつけたんです。このサービスを通して培ったノウハウやシステムを生かし、現在は、マンションやビルの電力を最適化する「分散型エネルギー事業」、電力調達代行の「グリーンエネルギー事業」、エネルギー企業の業務効率化を実現する「エネルギーDX事業」の3つの事業を展開しています。今後もデジタル技術を駆使して、エネルギー領域の課題解決に挑戦していく予定です。
※レジルの成り立ちや事業内容について、こちらの記事で解説しています。
テック企業列伝 – “電力のプラットフォーム”を作る クライメートテック企業の挑戦 【レジル株式会社 CSO 兼 情報システム本部ジェネラルマネージャー 田口 雄一さん】
変化に強いエンジニアを募集!
先述の通り、当社はシステム開発の内製化を進めているので、エンジニアを募集しています。現在はJavaとPHPで開発をしていますが、それらの経験に関わらず採用活動を行っています。なぜなら、この状況は今後5、6年後には変わっている可能性があるからです。そのため、「どのようなプログラミング言語、フレームワークでも大丈夫ですよ」といった姿勢をお持ちの「変化に強いエンジニア」を求めています。また、各メンバーには大きな裁量を持って働いてもらっており、チーム内で合意したことは私の決裁なしで進めてもらうことが多いです。採用や教育も現場のメンバーに任せているので、業務は多岐にわたります。働き方でいうと、フルリモート勤務OKなど働きやすい環境づくりも進めています。実際に多くのメンバーの評価は、働きやすいという声が多いです。また、外国籍の方も在籍しており、背景理解が違うことを前提に話が始まるので、誰でも理解できるようにドキュメントの整備にも力を入れています。こういった取り組みも働きやすさに繋がっています。あるメンバーが当社に入社する時に友人から「電力系はやめておけ」と言われたそうです。しかし、そのやめておいたほうが良い条件に当社は当てはまらなかったので入社を決めてくれました。その決断をとても嬉しく感じますし、多くの人にそのように思ってもらえるような環境をこれからも作っていきたいですね。本記事を読んで当社に興味を持っていただけましたら、ぜひ一度お話しましょう!
取材を終えて
今回のインタビューを通じて、伊与田さんのエンジニアとしての挑戦心やコミット力の高さが非常に印象的でした。学生時代の独学から始まり、NTT、フリーランス、レジルでの挑戦と、一貫して「面白そうなこと」に飛び込まれています。今でこそフリーランスという働き方が多くなってきました。しかし、まだそれほど一般的でなかった1999年から23年間も絶えずに仕事が舞い込むということは、伊与田さんがそれぞれの環境で価値を提供し続けたからだと推察できます。エネルギー領域は、まだまだ課題が山積みだそうです。それらの課題を1つ1つ解決し、持続可能な社会の実現に向けて挑戦を続ける伊与田さんの今後のご活躍が楽しみです。