今回は、株式会社グリッドにてCTO / 執行役員を務める梅田 龍介さんのインタビュー記事をお届けします。梅田さんがITエンジニアを目指されたのは、就職後のこと。海外留学での学びをきっかけに、データサイエンティストとして未経験でグリッドに転職し、今ではCTOとしてご活躍されています。そんな梅田さんが仕事をするうえで大切にされていることは、「お客様の顔を思い浮かべること」。お客様目線で社会インフラのイノベーション創出に挑む、梅田さんのキャリアと価値観に迫ります。
インタビュー概要
お話を伺った企業さま
会社名 :株式会社グリッド
設立 :2009年10月
資本金 :52,103,923円
上場市場 :グロース市場
代表者 :曽我部 完
所在地 :東京都港区
ミッション :社会インフラにイノベーションを起こし、暮らしを豊かに
事業内容 :人工知能を用いたシステムの開発・販売・コンサルティング・保守・運用サポート業務
URL :https://gridpredict.jp
お話を伺ったご担当者さま
部署 / 役職 :CTO / 執行役員
氏名 :梅田 龍介
東京大学卒業。グローバル石油会社にて現場の安全リスク管理を担当。留学で統計分析スキルを身につけ、データの取得から計算、解釈の経験を積む。現在は、主に電力最適化プロジェクトをリードし、業界内で重電メーカーの独占状態だった需給計画最適化の社会実装に導く。チームメンバーからの信頼も厚く、エンジニアリング部長として会社全体の技術力向上および組織作りにも力を注いでいる。
キャリアについて
3.11がきっかけでエネルギーに興味を持つ
私がITエンジニアを目指したのは、比較的遅いタイミングです。大学院終了後は、エネルギーに関心があったので石油会社に就職しました。3.11の際に電力が止まり大きな問題になったことで、「将来は何かしらのエネルギー問題の解決に繋がるような仕事に就きたい」と思うようになったんです。就職後はセーフティエンジニアとして、データを用いて将来の事故の発生リスクや確率の計測を担当しました。この仕事をより専門的に学ぶべく、会社から海外大学への留学の機会を頂きました。この留学中の学びが、データサイエンティストを目指すきっかけになります。
未経験のデータサイエンティストとしてグリッドに転職
留学では様々な学びがあったのですが、特に大量のデータを扱って示唆を出す「データサイエンス」の仕事に興味を持ちました。そして、留学から戻り半年経ったタイミングで、データサイエンティストとしてグリッドに転職することにしたんです。最初はひたすらにプログラムを書きました。当初は、未経験で何もわからない状態。プログラム以前に、ITプロジェクトの進め方もわからなかったので、すごく苦労しました。
入社から4年でCTOに就任
私が早く独り立ちできるよう工夫したことは、「わからないことがあったらためらいなく聞く」と「ドメイン知識をつける」の2つです。特に後者に関しては、プログラムができないぶんドメイン知識でカバーしようと必死に努力をしました。すると、入社半年後にPMを兼務するようになり、その半年後にはグループマネージャー、さらにその1年後には部長を任されるようになったんです。そして2024年7月に現職のCTOに就任しました。役職が上がるにつれて見るプロジェクトの範囲や数、マネジメントの業務比率が増え、現在は経営陣と連携を取って技術組織の管理や将来の戦略を立てることに多くの時間を割いています。コードを書く機会はほとんどありませんが、今でもPMとして個別の案件には入っています。
PMの経験が自分を大きく成長させてくれた
前職も含めて、社会人としてこれまで様々な経験をさせていただきました。中でも一番成長できたと感じたのは、グリッドで初めてPMを任された時です。その際は、PM兼データサイエンティストというポジションでした。お客様と会話をしながら業務の内容やプロジェクトの進む方向を考えた上で、自分で手を動かしてコードを書く、といったようにプロジェクトの一連の流れをすべて担当したんです。この経験を通して一気にお客様の業界理解が進み、加えて、プロジェクト管理やお客様目線でのシステム構築といった様々な学びを得ることができました。
CTOとして技術と経営のバランスを取る
今後の目標としては、より経営に関わっていきたいと思っています。しかし、経営に寄っていくと技術から遠ざかってしまう可能性があるので、そこの距離感は見定めたうえで学んでいきたいです。プライベートではテニスと将棋が趣味でして、テニスではシングルスの大会で優勝できるよう、現在週2くらいのペースで練習に励んでいます。将棋はアマの初段を持っているので、次は2段を取りたいなと思っています。
考え方・マインドについて
長期的かつお客様目線で仕事を進める
私が仕事において大切にしている考えは、「お客様の顔を思い浮かべること」と「今やっている仕事が長期的にどこに向かっているのかを考えること」の2つです。
前者で「お客様の顔」という表現をしましたが、つまりは「お客様が本当にやりたいことを考える」ということです。これはPMを担うようになってから意識するようになりました。お客様が求めていることを正確に理解することは意外に難しいです。理解したつもりになっていても伝言ゲームの過程でずれが生じることもありますし、時には、お客様自身が正しく理解していないケースもあります。そのため、できる限りお客様の視点で物事を考えてプロジェクトを進めていくことが重要なんです。
後者に関しては、CTOになってから特に重要だと感じています。昔の私は、短期的な視点で大きな案件をこなすことが良いことだと思っていました。しかし現在は、「今やっているプロジェクトが終わったら、次はどのようなプロジェクトに繋がるのか?その結果、会社がどこに進んでいくのか?」という長期的な視点で考えられるようになりました。そのため、5年後、10年後にどうなっていたいかを考えた上で、戦略的に短期的に採算性が相対的に高くないプロジェクトを進めるという選択肢もありだと思っています。
“利他的なメンタリティ”があるエンジニアは強い
私が考える優れたエンジニアの要素は、3つあります。1つ目は、「常にプロジェクトのゴールを認識しながら仕事ができる人」です。例えば、振られたタスクを単にこなすだけではなく、そのタスクがプロジェクト全体の中でどのような位置づけかを理解することなどです。これができると、そのタスクを振られた時に適切なプラスアルファをつけてアウトプットができますし、残りのタスク状況を見て適切なタイミングで周囲のサポートに回ることもできるようになります。
2つ目は、「お客様の業務を解像度高く理解できていること」です。これができていないと、例えば、お客様のニーズから逸れた要件定義をしてしまう危険性が出てきてしまいます。先述の通り、お客様でさえも求めているものを正しく理解していないケースもあります。そんな中で、お客様の業務を解像度高く理解することで、お客様の矛盾にも気づけ、適切な要件定義に繋がると考えています。
3つ目は、「利他的なメンタリティ」です。これは、私自身が組織を作るなかでも大切にしていることです。例えば、各メンバーが勉強会を積極的に開催し、参加できなかった人にも共有をしています。他の人に何かを教えるという行為は利他的じゃないとできないことです。また、何かを教えることで自分自身も新たな学びを得ることができます。利他的なメンタリティのある人は、組織だけでなく、自分自身もどんどん成長させられる貴重な存在なんです。
グリッドで働きたい方へ
社会インフラにイノベーションを起こし、暮らしを豊かに
当社は、インフラ領域にて「最適化ソリューション」をお客様にご提供しています。ソリューションの提供方法は、プロジェクトとしてのものやプロダクトとしてのものなど様々です。私が携わっているものでいうと、電力会社様向けのプロジェクトがあります。電力会社は、全国各地に火力・水力・原子力など様々な発電所を持っており、それらすべての運用計画を日々頭を悩ましながら作っています。しかし、人の頭だけで最適な運用計画を考えるのは、複雑性が高すぎて不可能なんです。そこで、利益率が一番高くなる運用計画を作成するために、当社の最適化ソリューションを導入していただいています。結果的に、今までExcelやその他のシステムを用いて管理していた頃と比べて、年間で数十億円規模の経済効果が出ている企業様もいらっしゃいます。
最適化・機械学習の技術を総動員してアルゴリズムを作っていく
当社の特徴として、「最適化」に力を入れています。AI系の会社だと機械学習を使うことが多いですが、予測部分で終止しており、その後の意思決定の部分に携わる機会は多くありません。実際には、「そのデータを用いてどのように動いていくのか?」ということがビジネスにおいては重要であり、当社ではここまで踏み込むことができます。
現在の開発組織は、エンジニアリング部とR&Dの2つあります。エンジニアリング部は、業界ごとに4つに別れています。その中でプロジェクト体制を取っており、各部にPMが3〜4人ほどいる状況です。
社内の雰囲気としては、柔らかい人が多いですね。心理的安全性も高い環境で、未経験の方も含めてみんなで頑張っていこうというカルチャーがあります。勉強会も積極的に実施して教え合う文化があるので、いろんなテーマに触れられるという魅力もあります。また、大学の研究室との連携や、海外を含む学会に出ての論文発表を推奨するなど、アカデミアとも関われる点もおもしろいポイントです。
社会に大きなインパクトを!
当社はインフラを対象としている会社です。電力や車など、それがないと生活が成り立たなくなるような領域です。そのため、社会的に大きなインパクトを与えられる仕事に携わることができます。社会をがらりと変えられるような、影響力が大きく意義のある仕事に興味のある方を募集しておりますので、ぜひご応募をお待ちしております!
取材を終えて
取材を通して、梅田さんの「お客様目線」に感銘を受けました。お客様目線とひとくくりに言っても、簡単に体現できるものではありません。それを梅田さんは、1歩2歩踏み込んでお客様の理解に努め、真の価値提供をされてきたからこそ、4年という短い期間でCTOを任されるようになったのだと実感しました。私たちの生活に欠かせない電力などのインフラ基盤。そんな社会的影響力の大きい領域で、今後もイノベーションを起こすであろう梅田さんをはじめ、グリッドさんのご活躍が楽しみです。社会に大きなインパクトを与えられるお仕事に興味がある方は、ぜひグリッドさんの門を叩かれてみてはいかがでしょうか。そこには素晴らしい環境があるはずです。