今回は、株式会社Sales Markerにて取締役/CTOを務める陳 晨さんのインタビュー記事をお届けします。陳さんは、日本生まれ中国育ち、大学・大学院時代はアメリカで過ごされるなど、グローバルなバックグラウンドをお持ちです。卒業後は、ビッグデータを扱いたいという思いからLINEに就職されました。その後、日本マイクロソフトとスタートアップを経て、Sales Markerを共同創業。そのSales Markerはサービス開始後約2年半でARR(Annual Recurring Revenue:年次経常収益)25億円を達成するなど、国内で最も勢いのあるスタートアップ企業となりました。日系/外資、大手/スタートアップと様々な環境に身を置き、Sales Markerの飛躍的成長を支える陳さんとはどのような方なのか。これまでのキャリアや価値観をお伺いしました。
インタビュー概要
お話を伺った企業さま
会社名 :株式会社Sales Marker
設立 :2021年7月
資本金 :100,000,000円
上場市場 :未上場
代表者 :小笠原 羽恭
所在地 :東京都渋谷区
パーパス :全ての人と企業が、既存の枠を越えて挑戦できる世界を創る。
事業内容 :インテントセールスSaaS「Sales Marker」の開発・運用
URL :https://sales-marker.jp/corporate/
お話を伺ったご担当者さま
部署 / 役職 :取締役/CTO
氏名 :陳 晨
アメリカワシントン大学セントルイス校修士課程終了後、LINE株式会社に新卒入社。全社横断ビッグデータプラットフォーム構築プロジェクトに従事後、日本マイクロソフト株式会社に転職し、AI&ビッグデータ部門にて世界中のお客様に対しシステム設計から開発、運用までシステム全般をサポート。その後株式会社スタンバイにてリアルタイム分析基盤の構築をリードする。テクノロジーの力で社会課題の解決に貢献すべく、株式会社Sales Marker(旧:CrossBorder株式会社)を共同創業し、CTOとしてインテントセールスSaaS「Sales Marker」開発のリードおよびグローバルエンジニア組織の立ち上げ・全体指揮を行う。
キャリアについて
航空エンジニアを目指すも挫折を経験
私は幼い頃からものづくりに興味があり、大学では飛行機やドローンの製造を学ぶような学科に進学しました。そのため当時は、航空エンジニアを目指していました。授業にも精力的に取り組み好成績を残したのですが、「アメリカ人ではないから」という理由でボーイングのインターンに行けなかったんです。理由は、国家機密を扱うため。自分ではどうすることもできない無力感を感じました。
ビッグデータの可能性に衝撃を受ける
そんな中、アメリカではソフトウェアエンジニアリングの流れが来ていました。私自身も、全授業の半分くらいはソフトウェアエンジニアリング関連のものを履修していました。それらの授業の1つで「ビッグデータ」に出会ったんです。「ビッグデータがあればすべてのものに相関関係をつけられる」ということに衝撃を受けました。ビッグデータに未来を感じ、今後大きなブレイクスルーを起こすと思ったので、その後2年ほどの間はひたすらソフトウェアエンジニアリングを学ぼうと決心しました。当時はすでに院生だったのですが、学部生の授業に潜り込んだりもしていました。
日本で一番データを扱っている会社「LINE」に就職
大学院修了後はLINEに入社し、ビッグデータ部門に配属されました。LINEを選んだ理由は、日本で一番データを扱っている会社で経験を積むことで、キャリアとしてどこでも通用するスキルを身につけられると考えたからです。給与ベースだと、アメリカの会社からは倍くらいのオファーがありました。しかし、入社しても確実にビッグデータを扱う仕事に就ける保証はなかったんです。LINEはスペシャリティコースで内定をもらったので、ほぼ確実にビッグデータに携われることが、入社の決め手となりました。
将来的な起業を視野に、日本マイクロソフトへ転職
その後しばらくしてコロナ禍に入ってしまいます。そんな中、大学時代のインターンで知り合った現Sales Marker代表の小笠原、取締役の渡辺とデリバリーアプリを作ることに。ハッカソンに応募してみると、アジア大会で優勝できたんです。以前から3人で将来的な起業の話をしていたのですが、これを機に本格的に話を進めるようになりました。LINEでもすごく良い経験をさせてもらっていましたが、大企業なのでどうしてもビジネスとは距離が遠くなってしまいます。しかしこの経験を通して、0→1でのサービス立ち上げのおもしろさを実感しました。当時のLINEはオンプレ環境だったので、起業するためにはクラウドの知識を身に着けないといけないと思い、日本マイクロソフトへ転職。その後スタートアップを1社挟んで、小笠原、渡辺、荻原とSales Markerを共同創業しました。
創業者CTOとして、開発含む社内のあらゆる領域を管轄
Sales Markerでは、創業者CTOとして多岐の職務を担当しています。具体的には、経営、プロダクト開発、エンジニア採用、組織づくり、情シス、総務、労務、人事、社内のコンサル、社内システムなど、「会社にまつわることは全て自分のこと」と思って業務を遂行しています。創業当初は自らコードを書いていましたが、ありがたいことに多くの優秀なエンジニアを採用できたので、今ではほとんど手を動かすことはありません。中でも今一番力を入れていることは、エンジニアの採用です。最強のプロダクトを作るためには、最強のエンジニアチームを作らないといけないですから。
ビジネスに触れた時に一番大きく成長できた
LINEでは、素晴らしい環境でとても良い経験をさせてもらいました。エンジニアとしての基礎はLINEで身につけられたと思っています。マイクロソフトでは、クラウドの基礎を学ぶことができ、起業後も非常に役に立っています。
中でも一番大きく成長できたと実感したのは、起業後にビジネスに触れた瞬間です。このタイミングを機に、視点がエンジニアから経営者に切り替わりました。起業前は顧客との接点がなく、自分が作ったものをユーザーがどのように使っているのかが見えていませんでした。もちろん、どのように価値提供ができていて、売上形成に繋がっているのかもわかりません。しかし、Sales Markerで自ら営業をして顧客からフィードバックをもらうことで、ものづくりの解像度が一気に上がりました。いくら良いシステムを作っても、ユーザーのことがわからないと結局は使ってもらえません。本当の意味でのユーザー目線でプロダクトを見れるようになったことは、大きな成長だったと感じています。
Sales Markerを日本一、世界一のプロダクトに
私の夢は、Sales Markerを日本一、世界一のプロダクトにすることです。今は組織を作ることにモチベーションが湧いています。そのため、Sales Markerに入って一緒に戦ってくれているメンバーみんなにも幸せになって欲しいと思っています。スタートアップは厳しい環境です。だからこそ、みんなで成長をして目標を達成し、幸せになっていきたいですね。
考え方・マインドについて
私が仕事をするうえで大切にしていることは4つあります。1つ目は、「オーナーシップと自責思考」です。人間は基本変わりません。そのため、何事も自分ごとと捉え、自分を動かそうと意識しています。プロダクトのバグに気がついても放置する人だっています。このような時に、まずは自分で何とかしようと動けるかどうかが重要です。特に今は、スタートアップの0→1フェーズでサービスを提供しているので、私にはその責任があると思っています。
2つ目は、「仕事を楽しむこと」です。人生の3分の1は仕事しているはずです。その仕事を楽しむことができれば、人生もより充実したものになると思います。
3つ目は、「学び続けること」です。スキルが停滞している人の多くは、学んでいない人です。つまりは、衰退を意味します。AIの変化が激しい昨今において、エンジニアは特に学び続けないといけない職種だと考えています。
4つ目は、「リスペクトを持つこと」です。大前提として、各々がリスペクトを持てないとチームとして成り立つはずがありません。先ほども申し上げた通り、私は組織が好きでメンバーみんなが幸せになって欲しいと思っています。社内ではエンジニアチームの出社率が一番高く、毎週のランチ会にはほぼ全員が参加します。このようにお互いにリスペクトを持って大切にする組織を今後も作っていきたいです。
ソリューションを考えられるエンジニアは強い
今のエンジニアに求められる能力は、レベルによって違うと思います。リーダー未満のエンジニアには、技術力はもちろん、長期的な視点でスケーラビリティのあるプロダクトを作ることができる人が活躍できるのではないでしょうか。リーダー以上の場合は、どれだけユーザーの課題を解像度高く把握し、ソリューションとして提供できるかが重要だと考えています。ユーザーはそもそも、プロダクトを欲しているわけではありません。ソリューションを求めているのです。つまり、ユーザーの課題を解決できるソリューションとして、プロダクトを提供しないといけません。その上で、エンジニアが一番最新技術を知っているはずです。
従来は、経営者やプロダクトマネージャーが「ソリューション」を考えて、エンジニアが「システムを作る」という役割分担が多かったと思います。しかし当社では、経営者やプロダクトマネージャーが「課題」を持ってきて、エンジニアが「ソリューションを考えて作る」ことが多いです。エンジニアとして何でも作れる技術力ももちろん大切ですが、それ以上に「ユーザーのことを知ること」が重要だと考えています。
Sales Markerで働きたい方へ
「インテントデータ」を用いて営業に革新を
弊社は、インテントデータ(※ユーザーや企業の意図や興味関心を示す、Web上における行動履歴データ、またそこから読み取れるデータ)を用いて、企業の営業活動を支援するサービス「Sales Marker」を提供しています。
私はエンジニアだということもあり、当初は営業のことが全くわかりませんでした。COO荻原に1日の営業活動について尋ねたところ、衝撃を受けました。営業リストを作って上から順番に5〜6時間かけて電話をかけ、アポが取れたら訪問するというのです。率直に、すごく非効率だなと思いました。元キーエンスの荻原でさえ、100件電話をかけて取れるアポは5件ほど。つまり、95件分の電話が無駄になってしまっているのです。アポ率5%は営業としてはすごく優秀なのだと思いますが、営業の知識がなかった分、私としてはお世辞にもすごいと思えませんでした。
しかし、5件のアポが取れるということはマーケットがあることも意味します。このニーズをあらかじめ知ることができたら、10件の電話で5件のアポを取れるように、アポ率を大幅に改善できると考えたんです。つまり、無駄な業務時間を減らし、より生産的な営業活動ができるのではと感じました。これを実現できるのが、「Sales Marker」です。今では様々な機能で幅広いソリューションを提供していますが、人の興味関心データである「インテントデータ」が根幹で一番ユニークなポイントです。Sales Markerで、企業の営業活動に革新を起こしたいと思っています。
英語が社内公用語:グローバル環境でチャレンジをしたいエンジニアを募集!
弊社には現在、60名ほどのエンジニアが在籍しています。2023年頭には1人も正社員エンジニアはおらず、その年の4月から採用を始めて急拡大中です。フルリモートOKな環境ではありますが、出社するメンバーも多いです。
最大の特徴は、社内公用語が英語なこと。そのため、ほとんどのエンジニアが日本語を話せません。Googleなどに所属している日本在住の外国人トップエンジニアは、日本語が話せないために次のキャリアの選択肢が少ないという実情があります。そういった人たちの1つの選択肢にもなるように、英語を社内公用語としています。技術力と言語力のトレードオフの状況で、技術力を選んだということです。
エンジニアとしては、自分でプロダクトを使って課題を見つけ、ソリューションを提供するスキルを伸ばせる環境があります。言われた通りに作るのではなく、ユーザー目線で自らプロダクトをより良くしようと動けるメンバーが多いです。そのため、単なるエンジニアスキルだけでなく、ビジネススキルを身につけることができます。スタートアップなので、多種多様な経験ができる環境が魅力です。
技術力やマインドセットも大切ですが、最後はカルチャーマッチだと考えています。私は、一緒にチームビルディングをして楽しいと思えそうかということを採用の際には大切にしています。弊社は現在絶賛採用中ですので、興味を持っていただいた方は、ぜひご応募お待ちしております!
取材を終えて
インタビューを通して、陳さんの仕事に対する姿勢には感銘を受けました。365日仕事のことを考えて、あらゆることにオーナーシップを持って取り組む。ご本人は、「仕事を仕事と思っていない」と仰っていましたが、この「熱中状態」に勝るものはないと実感させられました。「Sales Markerを日本一、世界一の企業にする。」少しの迷いもなく発せられたこの言葉は、とても印象的でした。現在、日系IT企業はグローバル環境で苦戦を強いられています。しかし、創業当初からグローバルを目指し、「インテントセールス」という新しい領域で急成長を遂げるSales Markerさんであれば、長年の苦境を打破してくれるのではと期待させられます。そんなグローバルでの挑戦にご興味を持たれた方は、ぜひ話を聞いてみてはいかがでしょうか?