様々なCTOにキャリアや原体験、これからの野望などをインタビューする、一般社団法人日本CTO協会とのコラボレーション企画「突撃!隣のCTO」。

今回は、ファインディ株式会社 取締役CTO 佐藤 将高さんのインタビューをお届けします。小学生からHTMLでゲームの攻略サイトを作成するなど、ものづくりに没頭し続けている佐藤さん。大学院を卒業し、グリーに新卒入社してから3年後には、ご現職代表の山田さんとともにファインディを起業されています。そんな佐藤さんに大きな影響を与えたのは、自身で工務店を立ち上げた祖父の存在。祖父のように信頼される人になりたいと感じた佐藤さんが大切にしていることは、「前向きさ」と「誠実さ」だそうです。信頼をベースにファインディの事業成長にコミットする佐藤さんの人物像に迫ります。

ゲームの攻略サイトで100万PVを獲得:Web上で人気者になった少年時代

ー佐藤さんがエンジニアを目指されたきっかけは何ですか?

小学生の頃にWebサイトを作ったことがきっかけです。祖父の仕事である工務店という仕事柄、自宅にパソコンがありました。興味を持った自分は、ホームページ・ビルダーで自分のWebページを作ってみることにしたんです。分からないことはネットで調べてHTMLをいじってみたりもしました。当時から今までずっとHTMLを触っていますが、全然飽きないですね。

ーその後もご自身で何か作られましたか?

小学生時代には、ゲームの攻略サイトを作成しました。いちユーザーとして攻略サイトを見ていたのですが、「もっと良いものを作ることができる」と思い自分で作ってみることにしたんです。ゲームソフトが発売された当日から自分でプレイして攻略サイトを立ち上げました。中学生時代には、「鬼武者」というゲームの攻略サイトで100万PVくらい出ましたね。

ーそこまでものづくりに没頭できた理由は何ですか?

おそらく、自己表現をしたかったんです。数ある実現方法の中でも、絵やスポーツはそれほど得意ではなく、ものづくりが一番熱量を持てました。純粋に、作ったものを実際に見てもらえることが嬉しかったんです。地元は田舎だったこともあり、小学校でどれだけすごい絵を描いても50人の全校生徒にしか見てもらえないですが、Web上だとたくさんの人に見てもらえます。ゲームの攻略サイトで100万PVを達成した時は人気者になった感覚があり、満足感がありました。ここで、自己表現をする上での「人気者になりたい」といった目標は叶えたので、今は全く執着がないんですけどね(笑)。

ー中学・高校時代もものづくりを続けられたのでしょうか?

中高はバレーボールの部活で忙しかったこともあり、時間を確保するのが難しかったです。しかし、PHPで音楽アーティストのファンサイトを作るなど、時間を見つけてものづくりは続けました。中学時代には自分のホームページが、2チャンネルで強く批判された過去もあります。ネットの怖さを知った一方で、何か辛いことがあった時は「その時以上に辛いことはない」と思えるので、今となっては良い経験ですね。もちろん良くない部分は反省しています。その後、大学・大学院でも所属サークルのホームページを作ったり、コミュニティーサービスを作るなど、ものづくりは続けていました。

日本発のグローバルなWeb企業になる可能性を感じ、グリーに新卒入社

ー大学・大学院時代のものづくりについて教えてください。

大学では、情報系の授業を受けながら、所属サークルのホームページ制作やブログの執筆活動をしていました。このあたりから自分に合うのは情報系の世界だと感じ始めました。しかし就活時期に自己分析をしてみると、「ものづくりをしたい気持ちはあるが、このまま就職しても技術を知らない企画者になってしまうのではないか」と思ったんです。そのため、まずはちゃんと技術に対する理解を深めたいと思い、情報系の大学院に進学することを決意しました。当時大学を卒業後に大学院受験のために浪人をしたのですが、毎日何時間も勉強して東京大学大学院に合格できました。大学院時代は、研究だけでなくインターンでもエンジニアリングを学び、卒業後はグリーにエンジニアとして入社しました。

ーグリーさんを1社目に選ばれた理由はなんですか?

日本のWeb系企業の中で、グローバルに進出できると感じたからです。当時のグリーは、ソーシャルゲームで急成長を遂げていました。そんなグリーの選考を受ける中で、将来性や優秀なエンジニアが多い環境に魅力を感じたんです。最も大きな決め手は、とある社員の方からの「君の理想とする会社ってうち以外思いあたらないんだけど」という言葉でした。その方は自分も知っているぐらい有名な方だったということもあり、「その通りだ」と納得感がありました。

ーグリーさんではどのような開発に関わりましたか?

グリーのゲームを紹介するWebページの開発など、ゲームプラットフォームづくりに携わりました。基本的には、企画してもらったものに対してフロントエンドとバックエンドを実装するといった役割です。3年目からは、新たなチャレンジとしてQAエンジニアとして働くことになりました。外部の方との折衝やツールの導入判断など、対人コミュニケーション能力を身につけられましたね。

ー学生時代は1人でものづくりをされていましたが、職業エンジニアとして働きはじめて感じた学びやギャップはありますか?

大規模サービスの開発や運用に携われたことは、学びになりました。グリーで使用したPHPは入社前に経験があったのですが、大規模サービスの運用経験はありませんでした。個人でやっていた時はトラフィックもそれほど多くなかったので、技術よりも企画が重要だったんです。しかし、大規模なサービスになると、小さなサービスではそれほど問題にならない1つのコード抜けが大きな障害に繋がることもよくあります。チームで大きなシステムを開発する経験を積めたことは、今の仕事でも活きています。

ファインディを創業:世界で戦っていける日本のWeb企業の成長に貢献したい

ーその後のキャリアを教えてください。

現代表の山田さんに誘われ、ファインディを起業しました。山田さんは、学生時代のインターン先の社員で、ある日突然、「六本木近くのカフェにいるよ」と連絡が来たんです。人材業界で起業したいという話を聞き、二つ返事で「ぜひ」と言いました。実は、自分自身も学生時代から人材業界は気になっていた業界の1つでした。就活生時代に対面での逆求人イベントがあったのですが、「もっとオンラインでのやり取りを活用しても良いのでは?」と感じるほど、アップデートできることはたくさんありそうだと思いました。

ー起業することに対して不安はなかったのですか?

ほとんどなかったです。山田さんから聞いた事業の方向性はとても面白そうでした。また、育った環境にも要因があると思います。祖父は、大工を経て自身で工務店を立ち上げ、一級建築士だった父はその工務店を引き継いでいます。小さな頃から「会社経営」というものが身近にあったので、昔から「自分もいつかは起業するんだろうな」と思っていたんです。

ー起業したときの課題とこれまでの道のりを教えてください。

起業当初はCTOとしてフルスタックにプロダクト開発に没頭していました。最初は、山田さんが企画した「求人票の採点サービス」を私がコーディングしました。しかし、当時は利用ユーザーがあまり増えることなく、結果は上手くいきませんでした。自分はこれまで30〜40個のウェブサイトを作ってきた経験があるので、「また次のプロダクトを作りましょうか」と声をかけました。その後、人事や採用担当者の悩みをヒアリングする中で、「エンジニアの求人票が書けない」という課題感に着目しました。エンジニア未経験の人事・採用担当の方は、エンジニアに対してどのように求人をアピールすればよいか分からないといったものでした。一方のエンジニアも、「職務経歴書の書き方が分からない」「不要なスカウトがいっぱい来る」といった悩みを抱えていたので、このギャップに着目したんです。ここから、現在の主力サービスであるエンジニアの採用サービス「Findy」の着想に至りました。

ー佐藤さんが「技術責任者」として取り組まれていることと、これから取り組みたいことを教えてください。

「挑戦するエンジニアのプラットフォームをつくる。」というファインディのビジョンを、プロダクトを通してどう実現するかを日々考えています。現在、エンジニア向けの4つのプロダクトを開発・運営していますが、いつかは全てを繋げて、エンジニアやエンジニア組織の課題を包括的に解決したいと思っています。ビジョン実現のために、足りないピースを埋める必要があり、柔軟にロールを変えて動いていくつもりです。一番得意な領域は、何かを実現するためにゼロベースでプロダクトを作ることですが、営業や採用の経験もあるので職種にこだわりはありません。直近はプロダクト開発組織を見ながらも、会社の体制自体をアップデートしていきたいと考えています。

ー佐藤さんが「経営者」として取り組まれていることと、これから取り組みたいことは何ですか?

CTOとして取り組んでいることとほぼ同じですが、挑戦したいエンジニアが大きなチャレンジをできる仕組みを作りたいです。そのために、ファインディで実際に取り組んだ組織づくりの事例を各社に伝えていきたいと思っています。諦めることが悪いことではありませんが、そこで一度挫けて再チャレンジしないのはもったいないと思います。エンジニア自身やエンジニア組織が失敗した時に当社のフォローがあれば、何度も次の一歩を踏み出すサポートができるのではと考えています。

前向き・誠実な姿勢で、石を積むように信頼を積み重ねる

ーこれからあるべきエンジニア像はどのような方だと思いますか?

前提として、エンジニアのキャリアを一方的に決めつけたくはないので、いろんな考え方を尊重したいと思っています。それを踏まえた上で自分は、「エンジニア部門のマネージャー」「特定分野のエンジニアスペシャリスト」「起業家・事業責任者」の3つのキャリアを推奨しています。1人で開発を進め、サービスを継続的に拡大させようとするとどうしても限界がやってきます。その限界を突破するには、チームでの開発が必要なんです。そんな中、自分が推奨する3つのポジションにいるエンジニアは、自分の技術力にレバレッジをかけてより大きなインパクトを生み出すことができます。チームでスケールするものを作っていくと、何倍もの価値を生み出せるんです。多くのエンジニアは2つ目に挙げた特定分野のエンジニアスペシャリスト、いわゆるテックリードを志望される方が多いなと感じます。しかし個人的には、起業というチャレンジをしたことで、事業に主体的に取り組めたりチームワークを体現することで視野が広がった経験から、エンジニアリングマネージャーや起業家・事業責任者の面白さを伝えていきたいです。とはいえどんなエンジニアのキャリアに対しても大事なこととしては、知見や視野を広げるための学習意欲を持って、自分に合うキャリアを見つけていただくことかなと思っています。

ー佐藤さんが大切にされている信念や価値観はありますか?

「前向きさ」と「誠実さ」です。ビジネスや人間関係において重要なことは「信頼関係」です。しかし、信頼関係はこちらのスタンス次第で全て崩れる可能性があります。だからこそ常に前向き・誠実な姿勢で、石を積むように信頼を積み重ねていく必要があると思っています。組織の共通認識として、この2つはファインディのバリューにもなっています。またこの姿勢は人間関係だけでなく、技術に対しても活きてきます。技術負債は負債だけど、それも資産と捉える前向きさ。システムの信頼性を担保するために、良くない仕組みを作らないようにする誠実さ。このように様々な解釈ができるはずです。自分自身、会社にいるいない関係なく、前向きさと誠実さが体現できているか日常的にセルフチェックを行っています。会社のスタンスが変わってもこの信念だけは貫き通したいですね。

ー「前向きさ」や「誠実さ」を大切にしようと思ったきっかけはありますか?

祖父の葬式で、ある参列者から「この葬儀場がこんな人だかりで埋め尽くされてるのは見たことない」と言われたことがきっかけです。祖父は常に誠実な姿勢を大事にしていたので、多くの人から慕われていました。思考に柔軟性を持って、祖父のような誠実さを貫きたいですね。

ー佐藤さん個人のこれからの目標や野望はありますか?

ファインディで、挑戦するエンジニアのプラットフォームを作りたいです。今では、「ファインディのビジョン=自分の目標」になっていますね。日本のWeb企業が世界に挑戦していく中で、もっと多くの挑戦者を生み出したいと考えています。そこに至るまでの、課題を1つ1つ潰し、世界で戦えるエンジニアを増やしていきたいです。現在、この目標を実現するための露出を強化しています。具体的な取り組みとしては、日本CTO協会の広木さんやゆのんさんとのポッドキャスト・EMFMなどがあります。エンジニアリングマネージャーの魅力がまだまだ伝わっていないと思うので、それを伝えるための活動をしています。様々な形で露出を増やしながらエンジニアのみなさんに少しでもEMは面白いと思ってもらえる機会を提供するなど、エンジニアにとってのキャリアや考え方の可能性を広げる状況を作っていきたいと考えています。

「挑戦するエンジニアのプラットフォーム」を共に作ってくれる仲間を募集

ー貴社の紹介と、どのようなエンジニアを求めているかを教えてください。

当社は、「挑戦するエンジニアのプラットフォームをつくる。」をビジョンに掲げ、エンジニア向けの4つのプロダクトを開発・運営しています。全てのプロダクトに共通することは、エンジニアやエンジニア組織の課題を解決するものであるということ。しかし今後、更に多くの価値を提供していこうとする中で、まだまだ人数が足りていないという課題があります。ビジネスサイドと開発サイドは良い関係性を保ちながら、組織一体となってサービスの開発を進めています。既存事業の拡大だけでなく、大きな柱となる新たな事業の開発なども視野に入れているので、興味がある方はぜひ一度お話しましょう。

取材を終えて

今回の取材を通して、佐藤さんが大切にされている「前向きさ」と「誠実さ」を実感しました。こちらからの質問に対しても常に明るい表情で丁寧に回答していただき、まさに「前向きさ」と「誠実さ」を体現されている方でした。加えて、事業に対する熱意もひしひしと伝わってきました。「挑戦するエンジニアのプラットフォームをつくる。」というファインディさんのビジョンを、まるで自分のビジョンかのように自分ごと化して語る佐藤さんだからこそ、多くの人に信頼されてここまで事業を大きくしてこられたのだと感じました。そんなバイタリティ溢れる佐藤さんであれば、グローバルにも挑戦するエンジニアがたくさん生み出されるのではと期待が高まります。

ファインディの募集ページ

プロフィール:佐藤 将高さん

東京大学 情報理工学系研究科 創造情報学専攻(*)卒業後、グリーに入社し、フルスタックエンジニアとして勤務する。2016年6月にファインディ立上げに伴い取締役CTO就任。大学院では、稲葉真理研究室に所属。過去10年分の論文に対し論文間の類似度を、自然言語処理やデータマイニングにより内容の解析を定量的・定性的に行うことで算出する論文を執筆。

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