IT業界で働いていると、IT資格を持たなくても活躍しているエンジニアが多くいます。業界では「資格なんていらない!」「とにかくプログラミングで何か作っておけ!」という声も聞かれるほどです。

では、本当にIT資格は不要なのでしょうか。この記事では、IT資格を取得することのメリットと、不必要説について考察していきたいと思います。

IT資格とは

まずIT資格には、国家資格とベンダー資格の2種類があります。国家資格として代表的なのは、ITパスポート試験や基本情報技術者試験ですね。独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が実施する試験で、国内には全部で13の国家資格が認定されています。

IPAが実施する国家資格の場合、どれも知名度が高くて転職などで評価されやすいという特徴があります。受検者数や合格率も公開されているので、自分はどの資格を目指したらいいのかという目標が立てやすく、明確なゴールに向かって勉強できるのもポイントです。

ベンダー資格というのは、IT関連製品を開発しているベンダーが独自に実施している試験で、そのベンダーの製品についての知識・技術を保有していることを証明できる資格となります。

代表的なものとして、MOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)があります。WordやExcelといったOfficeソフトの操作スキルを問う試験で、ベンダーのマイクロソフトが認定している資格になります。

IT資格のメリットは?面談や企業採用側の視点

これらのIT資格を取得しておくことで、転職活動において有利になることはないのでしょうか?実際にはそんなことはありません。

確かに、資格を持っているかどうかよりもすでに開発したソフトウェアのソースコードなどを提示してもらったほうが、採用担当者としてはスキルを測定しやすく、評価アップにもつながりやすい傾向はあります。

しかし資格それ自体にも人物評価をあげるポイントはあります。資格の有無によってその人のスキルレベルを測定できるほか、仕事以外でも勉強に打ち込めるのかどうかを調べる要素にもなります。

人材を採用する側としては、仕事以外の面でもスキルアップに励んでもらって、どんどん結果を残せる人材へと成長していってもらいたいもの。独学で資格を取得して、普段から勉強する習慣がある人なら、どこの会社も積極的に採用したいと考えるものです。

また、国家資格の勉強を通じてITに関する基本的な知識を身につけることができたり、ベンダー資格の勉強によって専門性の高い技術を身につけることも可能なので、高いスキルを持った人材として迎え入れられる可能性も高くなるでしょう。

IT資格のメリットは?現場の視点

実際にシステム開発やプログラミングを行う現場からしても、IT資格の取得は大きなメリットがあります。なぜなら、IT資格を取得する過程で効率良く知識を身につけることができるからです。

IT資格を取得するためには、体系的で網羅的な知識を習得しなければなりません。テキストや問題集を利用して勉強を進めれば、実務を通じて知識を身につけるよりも、効率的かつスピーディにスキルアップすることができるのです。

もちろん、資格の勉強で習得した知識を、次の日から現場での仕事に活かすというのは難しいでしょう。一度身につけた知識であっても、それを実務で発揮できるようになるには時間がかかります。

それでも、資格を持っていないよりは持っているほうが確実に得になります。目標が定まらずやみくもに勉強を進めるよりも、「ITパスポート試験に合格する」というゴールを設定して勉強に取り組むほうが、最終的には身につくものが多くなるでしょう。

すでにエンジニアなら新たなアプリやサービスの開発に挑戦した方が良い

筆者自身の意見を述べさせてもらうと、すでに実務を経験していて活躍しているITエンジニアの場合は無理に資格を取得しなくても構わないが、未経験からIT業界に挑戦しようとしている人や、これから転職を考えている人の場合には、資格取得を目指すべきだと考えています。

すでに第一線で活躍しているエンジニアなら、他人にアピールできる成果や開発実績も豊富なはずです。それをアピールすることで、転職でも社内評価でも有利に進めることができるでしょう。

しかしこれからIT業界を目指そうとしている人の場合、ITに関するスキルを証明できるものがなにもありません。企業側としては、そんな人材を雇うのは躊躇してしまいますから、採用担当者を安心させるための材料としていくつかの国家資格を取得しておくのはアリだと思います。

また、他人にアピールできる成果や実績に自信がなく、これから始める転職に不安を覚えているという人の場合にも、資格の取得は大きな味方となります。客観的に自分のスキルを評価してくれる資格をアピールして、かつ独学で勉強し続けていることを伝えることができれば、スキル・熱意ともに備えた人材として高い評価を得られるかもしれません。

とはいえ、資格を取得する場合にも座学で知識ばかりを身につけていても即戦力の人材にはなれません。もし余裕があるのであれば、資格取得と同時にプログラミング言語の習得も進めて、他人にアピールできるようなアプリやサービスの開発を行うのがおすすめです。

実際にアプリやサービスを開発した実績は、IT資格と同じかそれ以上の魅力となります。資格取得のように明確なゴールが定まっていない分難易度も高まりますが、新たなアプリやサービスのアイデアがあるなら、ぜひ開発に挑戦してみてはいかがでしょうか。

IT資格の不必要説が出るのはなぜなのか?エンジニアの評価は実務経験や開発実績が最重要視されるため

IT資格の不必要説

最後に、IT資格がいらないという不必要説が誕生した理由についても考察していきましょう。

まずIT業界で人材を評価する際に、どのようなポイントが重視されれているのかを知ると不必要説の背景がわかりやすくなります。IT業界では、エンジニアを評価する際、第一に実務経験や開発実績をチェックします。

これまでにどんな経験を積んできたのか、どんなプロジェクトに携わってきたのかを最も重視して、採用するかどうか(昇進させるかどうか)を決めるわけですね。実力主義の色が濃いIT業界では、年齢や学歴よりも実績が優先される傾向にあるのです。

そのためIT資格の有無はどうしても優先度が低くなりがちで、場合によっては資格を持っているかどうかは関係なしに面接での合否を決めるケースさえあります。そうした状況を考えれば、「せっかく取った資格がムダになってしまった…」という経験を持つ人が、不必要説を唱えても不思議ではありません。

まとめ:ゴールを定めるのに役に立つ

IT資格を取得することは、転職や社内でのステップアップにはあまり役に立たないかもしれません。しかしITの勉強をする際のゴールを定めるのに役に立ち、体系的な知識を効率良く身につけるためには絶好の機会となります。

転職やステップアップを確実に成功させるためには、実際にアプリやサービスを作ってみて成果物をアピールしたり、過去に携わったプロジェクトの経験・実績を伝えることがポイントになります。

勉強のゴールとしては資格、転職などを成功させるためには成果物と、どちらもバランスよく取り入れることで卓越したエンジニア人材を目指すことができるはず。この記事を参考にして、ぜひ資格の取得を検討してみてくださいね。

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