IT業界に属するエンジニアが、(副業や趣味で企業分析の専門家を目指すのであればともかく)IT業界に属する企業について、すべての情報を事細かに知っておく必要はまったくありません。

しかし、一言でIT業界と言っても、様々な企業が存在しているため、最低限の業界知識がないまま、漠然としたイメージだけでIT業界に飛び込むと、「思っていたのと違う」「やりたいことじゃない」などといった、不平不満が高確率で発生します。

そこで今回は、最低限のIT業界知識を身に着けていただくために、IT業界の企業分析における重要キーワードの一つ“独立系”を解説したいと思います。

独立系のIT企業とは?

Web系、組み込み系、SIerといった開発領域、つまりは「会社で作るシステム」に合わせたカテゴリー分けがIT企業分析ではもっともポピュラーのように思います。

しかし、今回注目する“独立系”というキーワードは、まったく、それらと観点が異なるもので、“資本関係”に注目してIT企業を分類分けした際に使われるものです。結論から言えば、資本的に独立している、つまり、他の企業(通常、非IT企業)の子会社や系列企業ではないIT企業のことを“独立系のIT企業”と呼びます。

そもそも、IT企業の成立や立ち位置には、大きく分けて三種類のパターンがあります。

例えば、金融機関やメーカーといった非IT企業のIT部門や商品開発部門など“社内のある部門”が独立して一つの会社になったIT企業です。金融機関の子会社など、いわゆるユーザー系SIerや、富士通〇〇、東芝××といった名前を持つ、メーカー系SIerの大半(すべてではない)やメーカー系組み込み系IT企業のいくつかは、こうした経緯で発足した会社です。

他にも、もともとは大手企業と資本的な繋がりはなかったものの、会社を大きくしていく中で、取引先など関連のあった他の大手企業から出資を受けて系列化、場合によっては子会社となったIT企業も存在します。ユーザー系SIerやメーカー系SIerやメーカー系組み込み系の中には、こうした歴史を持つIT企業も少なからず存在します。

このように、上で見たように、資本的に独立していないIT企業が存在している一方で、他の企業の系列や子会社にならず、資本的に独立しているIT企業もたくさんあります。そうしたIT企業を指して“独立系のIT企業”と呼ぶわけです。

なお、現在は資本的に独立しているものの、会社の長い歴史の中で、立ち上げ時など、一時的に、他の企業の系列や子会社になっていた時期のあるIT企業も少なからず存在します。このようなIT企業も現在は資本的に独立しているのであれば、“独立系のIT企業”にカテゴライズされます。

Web系IT企業は、大半が独立系のIT企業です。少なくとも自分が知る限り、非独立系のWeb系IT企業は思いつきません。そのため、「独立系なのか、非独立系(どこかの子会社や系列)なのか」というカテゴリー分類すら話題に上りません。

一方で、SIerや組み込み系など、独立系と非独立系企業が混じっている領域では、非常に重要なトピックとして扱われます。つまり、SIerや組み込み系IT企業への就職を考えて企業研究を行う際は、「独立系SIer」or「非独立系SIer」、「独立系の組み込み系IT企業」or「非独立系の組み込み系IT企業」と分類分けして整理しておいた方が良いでしょう。

独立系のIT企業のメリット

独立系のIT企業のメリット

系列や子会社である非独立系IT企業との比較で指摘される独立系IT企業のメリットは、やはり独立系IT企業には親会社や関連会社が存在しないので、非独立系IT企業のように振り回される心配がない、という点でしょう。

非独立系IT企業の場合、どうしても親会社や関連会社との兼ね合いという「政治的なパワー」が働くことが多いので、システム開発の自由度が独立系IT企業よりも低いです。

技術力についても、非独立系IT企業で勤務していると、親会社など決まった取引先向けに特化した、汎用性のないスキルに偏りがちです。ずっと同じ現場で保守業務をしていて、新しい技術に触れられない、という方もいるでしょう。一方で、独立系IT企業の場合、新たな取引先、様々な現場で、これまでと異なる技術に触れられる機会が増えます。

年収面でも、あくまで親会社に対する子会社・格下の系列会社として、親会社より給与体系やボーナスの支給額が低めに設定されていることもあります。さらに、親会社からの依頼が売り上げの大半を占めている非独立系IT企業の場合(100%関連会社の仕事で、営業部署がないところもあります)、親会社など関連会社の景気に自分たちも景気が非常に左右されることになります。

その一方で、独立系IT企業であれば、親会社という概念がないので、親会社の状況で給与やボーナスが増減したり、そもそも、上限にリミットがある、ということはないです。

独立系のIT企業のデメリット

非独立系IT企業に対する独立系IT企業のデメリットとして、真っ先に言われるのが福利厚生面で劣っていることが多い、という点です。

大手企業グループの一部である非独立系IT企業は、監督官庁からの監視が厳しいなどの事情もあると思いますが、会社としてコンプライアンス意識が高い傾向にあります。退職金や家賃補助などの制度整備はもちろん、子育て支援に積極的な企業に交付される『くるみんマーク』の取得など、優良企業と認定されている会社の割合が、独立系IT企業よりも高いです。

あるベンチャー系IT企業を退職した友人から「制度として退職金制度があるけれど、退職金の算出方法が明確には決まっておらず、自分にいくら退職金を支給するべきか、社内ですごい揉めたらしい」と聞いたことがありますが、福利厚生の制度設計自体が不十分だったり、基本給をある程度高い水準にすることで、通勤代などの福利厚生制度自体を持っていない新興の独立系IT企業もあるそうです。

また、非独立系IT企業の場合、親会社の景気に左右されるといえども、どれほど不景気であっても、親会社から優先して仕事が受けらます。しかし、独立系IT企業は、景気が悪いとまったく仕事がなくなるリスクが絶えず付いて回ります。

独立系IT企業の将来性は?

実のところ、非独立系IT企業よりも、独立系IT企業の方が、はるかに会社数が多いです。有力な独立系IT企業もあれば、零細独立系IT企業も存在します。そのため、単純に「非独立系IT企業と独立系IT企業で、どちらの方が将来性があるか」という議論はあまり意味がありません。

一つ言えるのは、「寄らば大樹の陰」という、“頼るならば、より強い勢力に頼った方が良い”という意味のことわざがありますが、基本的には、より資金力のある大手企業の方が将来性は高いと考えておくべきです。

理由としては、クラウドやAI(人工知能)など新たな技術への対応が昨今のIT企業には求められていますが、資金力に余裕のある企業ほど、人材教育を含めた研究投資で有利になりやすいと想定されます。

まとめ:独立系IT企業かどうかは企業研究の重要観点

今回は、IT企業の「独立系」とは、なにを意味するかを見てきました。

繰り返しになりますが、資本的に独立しているかどうか、ひいては他の会社の子会社や系列なのかどうか、その会社の立ち位置でIT企業をカテゴライズするときに使う重要キーワードです。

業務の方向性や、いわゆる企業風土や文化などを推測する一つの参考情報になります。独立系IT企業・非独立系IT企業が入り混じる業種の企業を研究する際は、ぜったいに押さえておきましょう。

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