ゲームを作ってみたい、ゲーム業界に興味がある、というところから、プログラミングの勉強を始めた方は非常に多いと思います。しかし「新卒採用でゲーム会社から内定をもらえなかった」などの理由で、ゲーム業界以外に就職した方も多いのではないでしょう?

ですが、「いまもチャンスがあればゲーム業界で働きたい!」と思っている方も多いでしょうし、実際、ゲーム業界以外で働いていたエンジニアが、ゲーム業界に転職するケースは数多いです。

そこで今回は、エンジニアがゲーム業界に転職するために必要な知識を提供したいと思います。

エンジニアの転職 どのような技術が必要か 言語と職種を研究

そもそも論として、ゲーム業界あるいはゲーム関連のエンジニアといっても、プラットフォームや関わり方で職種がいくつにも分かれています。

極端は話、AAA (トリプルエー)タイトルと呼ばれるような、中堅~大手のゲーム会社がゲーム専用機やパソコン向けに開発するフルCG作画のアクション作品と、静止画主体でストーリーを楽しむことに主眼を置いた、スマートフォン向けサウンドノベルでは、同じ「ゲーム」のくくりでも必要とされるスキルは、同じなはずがありません。

ですので、まずは自分の作りたいゲームのイメージを明確にしておくことが重要です。

では、まずは多くの人にとって身近な存在となった、スマートフォン向けゲームの開発から説明しましょう。

スマートフォン向けゲームは本質的にはスマートフォンアプリと同じ仕組みです。

実はスマートフォンアプリには、スマートフォンにインストールすれば、ネットワークに接続されていなくても動作するネイティブアプリと、ネットワークに接続されていないと、動かないハイブリットアプリがあります。現在のスマホゲームは ハイブリットアプリ が主流ですので、 ハイブリットアプリ の仕組みを簡単に解説しておきましょう。

ハイブリットアプリ の仕組みは、Webと同じです。スマートフォンに“ゲーム”としてインストールしたものは、いわば、ゲーム専用のブラウザーで、ゲームの正味のデータはインターネットの先にある、ゲーム会社のサーバーから送られてきます。

ですので、スマートフォン向けゲーム開発のエンジニアは、スマートフォンにインストールするアプリ部分を作るスキル、ゲームコンテンツそのものを開発するスキル、そして、Web業界でいうところの「サーバーサイドエンジニア」のスキルが求められることになります。

具体的な言語や職種を指摘すると、「スマートフォンにインストールするアプリ部分」を作るのはプログラマーです。iOS向けならSwift、Android向けならJavaが長らく鉄板でしたが、近年、クロスプラットフォーム開発にも注目が集まっています。クロスプラットフォーム開発の代表的な開発環境としては、C#を使う「Xamarin」やJavaScriptを使う「React Native」などがあります。

「ゲームの正味のデータ」を作る際には、Webページを作る技術であるCSS・HTMLやJavaScriptなどが必要になります。また、バトルシステムなどがある場合、Pythonなどで内部ロジックを作っていることもあります。

「サーバーサイドエンジニア」志向であれば、JavaやP系言語など、いわゆるサーバーサイドのプログラミング言語であったり、データベースなどのミドルウェアについても知っておく必要があるでしょう。

続いて、AAAタイトルの開発に必要なスキルを見ていきましょう。

AAAタイトルの開発の中心になるのは、なんといってもUnityエンジニアです。Unityとは統合開発環境が内蔵されたゲームエンジンです。ゲームエンジンとは、ゲームを開発するためのツールがひとまとめになったキットだと思ってください。

Unityは特に3Dグラフィックの作成に強く、とてもリアルに作られたオープンワールド系のゲームでは、昨今、Unityで作られていないタイトルを探す方が難しいのかもしれません。Unityのスクリプト(ここでは、ゲームに動きを付けるために追加するプログラミングくらいに考えてください)はC#で記載する必要があるため、AAAタイトルの開発に関わりたいのであれば、C#を扱えるようになる必要があります。

ちなみに、誤解がないように補足しておくと、UnityはiOS版やandroid版もあり、「ゲームの正味のデータ」をUnityで作っているスマートフォンゲームも一部では存在します。

他にも、ゲーム業界に必要な職種として忘れてはならないのが、テスターや品質保証エンジニアです。スマートフォンゲームでも、AAAタイトルでも、作ったゲームが正しく動くかどうか動作確認を行う必要があります。ゲーム業界に必要不可欠な存在です。

ゲーム業界で将来性の高い職種は?

ゲーム業界で将来性の高い職種は?

ゲーム業界で将来性が高い職種の筆頭は、やはりUnityエンジニアでしょう。Unityにとって代わるゲームエンジンが登場すれば状況が変わりますが、そのようなゲームエンジンは今のところありません。

また、Unityエンジニアはある種、才能の世界です。日本を代表する某ファンタジーゲームの開発にも関わった、あるUnityエンジニアの講演を、セミナーで拝聴する機会があったのですが、次のようにおっしゃられていました。

「現実の物理法則を忠実にUnity上に再現しているから、精巧な CGができるんだ、と思っている方が多いですが、実は違うんですよ。現実の物理法則を忠実に適用して画面を作っても、リアルに見えないことも多いんです。ですので、様々な操作を加えて、リアルに見えるアンリアルを作っています。これは正直に言って、誰にでもできることではないです」

こうして聞くと、Unityエンジニアって難しそうな仕事だな、と思うかもしれません。しかし、逆に言えば、だれもが認めるUnityエンジニアになれれば、ライバルの存在など気にせず、高スキル人材として生きていくことが十分にできる、とも言えます。

もう一つ、注目職種を挙げるとすれば、今後のゲーム業界を考えたとき、クラウドに精通したインフラエンジニアのニーズが高まりそうです。

スマートフォンゲームの正味のデータはゲーム会社のサーバーから送られてくる、という話をしましたが、AAAタイトルも、いまどきはダウンロード販売が主流です。また、オンラインゲーム化や拡張パックの販売など、昔のように一度、売ってしまえば終わり、というものでもなくなりました。

さらに近年、クラウドゲームというゲームの提供形態も含めて、ゲームのクラウド化急速に進んでいます。主なサービスを以下に並べてみましたが、大手企業が本気でゲームのクラウド化を進めているのが、よくわかるかと思います。

・Sonyの「PlayStation Now」

・AWSの「Amazon GameLift」

・Microsoftの「Project xCloud」

・Googleの「Stadia」

・グラフィックボードで有名なNVIDIAが展開する「GeForce NOW Powered」

なお、ゲームのクラウド化はAAAタイトルだけでなく、スマートフォンゲーム市場にも大きな影響を与えると考えられています。

なぜならば、ゲームの処理はクラウド上で行い、あくまでスマートフォンはリモートデスクトップ接続して画面転送しているだけ、という構成にすることで、従来はゲーム専用機や高性能なパソコン所有者しかプレイできなかった、AAAタイトル級の処理が重たいゲームでも、スマートフォン上でプレイできるようになるためです。

今後、AAAタイトル・スマートフォンゲームという区切り自体、なくなる可能性すら秘めています。

ゲーム業界の年収は?

さて、最後は気になるゲーム業界の年収です。まずは、みなさんが聞いたことがあるような。日本の大手ゲーム会社について、2019年度に提出された有価証券報告書を使って平均年収を調べてみたところ、以下の通りになりました。

スクエア・エニックス:1,429万336円

任天堂:912万6,281円

カプコン:588万5,000円

有価証券報告書に書かれている平均年収は全社員、つまりゲーム関連のエンジニアではない人まで含まれているので、参考値でしかないですが、会社によって期待年収に大きな差があるのが一目瞭然ですね。

さらに、AAAタイトルにもなると、「自社の人だけでなく協力会社さん含めて、1000人ちょっとが、一つの部屋に集まって開発します」(先述の某ファンタジーゲームの開発にも関わったUnityエンジニアさん談)とのこと。

このように下請け企業の存在がある業界では、当然、発注元企業と下請け企業の間で年収格差ができてしまいます。そうした諸々のことを加味すると、実際のゲーム業界で働くエンジニアの平均年収は、他の業種で働くエンジニアの平均年収の450万円前後といわれています。

ただ、能力さえ認められれば、いくらでもキャリアップ、年収アップが果たせる業界です。また、ゲーム業界で働く人は、「年収ではなく仕事で選んだ人」が多いため、あまり年収面で不満を言う人は少ないそうです。

そして、上記のような業界特有の事情があるため「業界全体としてステップアップのための転職に優しく、転職ありきのキャリア相談をしても、親身に答えてくる上司が多く、まして退職を止められることはほとんどない」とゲーム業界で働く方から聞くことが多いです。

まとめ:ゲーム業界も変革の時?

今回はゲーム業界への転職を見ていきましたが、ゲーム業界の方とお話しすると「日本のゲーム業界は岐路に立たされている」という意見をよく聞きます。みなさんに共通しているのは、90年代、日本のゲームが世界を席巻していたのに、もはや、世界の売り上げトップ10位に食い込める日本生まれのゲームが、年に1本あるかないか、という状態になっている、という事実への焦燥感です。

クラウドゲームという新たなゲームの提供形態についても触れましたが、“スマートフォンゲームの台頭で、携帯ゲーム機が隅にやられたのと同じくらいのインパクト”があるかもしれない、という意見も聞きます。

これからの新しい時代に向けて、ゲーム業界として新たな人材を求めているので、ゲーム業界へ転職したい方には追い風が吹いていると言えるかもしれません。

ちなみに、私は新卒でシステムインテグレーター(SIer)に入社したのですが、その時の同期の一人でゲーム業界に転職した人もいます。彼は、エンジニア志望だったそうですが、SIer時代のマネジメント経験を買われて、外注先との窓口役(ポジション的には「コーディネータ」)として働いています。

いまはゲーム業界で働いていない方が、ゲーム業界で活躍する余地は十分にあるのです。

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