転職の理由は人それぞれです。

しかし、ネガティブな理由であってもポジティブな理由であっても、一番、普遍的な理由は「現職の年収への不満」や「年収アップ」といった年収面の問題ではないでしょうか?

そこで今回は、年収を軸にエンジニアの転職活動を考えていこうと思います。

各エンジニアの平均年収 高額な職種は何?

エンジニアに限らず、働く人の年収を決める要素は究極的には二つしかありません。それは、『雇い主の懐事情』と『本人の価値』です。

当たり前ですが、年間の売上が500万円しかない会社に、年収1000万円の人は絶対にいません。「その会社は、給与をどれだけ支払ってくれるのか?」は年収アップを目指す人にとって、とっても重要な企業選びの着眼点です。

その点については、この後に詳しく見ていきますので、ここではまずは『本人の価値』について見ていきましょう。

さて、本人の価値の決まり方ですが、基本的にはキャリア(過去の職歴や実績)、資格、学歴(学部卒と博士号所有者では、当然、給与が変わってきます)あたりが、キーとなってきます。しかし、今回はエンジニアの転職がテーマですので、複数の大手転職サイトの求人情報を「エンジニアの職種」ごとに分析し、上位三職種をご紹介いたします。

第一位: 人工知能(AI)エンジニア(700万円~800万円)

一番高年収なのは人工知能エンジニアでした。

人工知能開発に必要な能力を持つ人材はそもそも足りていません。結果、世界的な規模で人材獲得競争を行っており、例えば中国企業のハーウェイでは、新卒でも日本円で3000万円の年収を提示することがあるそうです。そうした世界的な情勢を考えると、800万円でも「安い」のかもしれません。

ちなみに、日本企業でも、ZOZOが「天才・逸材」について、最高年収1億円で採用すると発表して大きな話題になりました。他にも、NTTがスター研究者には1億円以上の報酬を提示する可能性を示唆しています。

今後、日本国内の人工知能エンジニアの年収も上がっていく可能性が十分ありまます。

第二位:データサイエンティスト(650万円~750万円)

一時期より、騒がれなくなったかもしれませんが、やはりデータサイエンティストのニーズも高く、平均年収も高水準でした。

大量のデータが日々発生して行き交う“高度情報通信社会”となった現在、それを分析し、ビジネスに利用したいと考える企業は多いです。

人工知能の登場でデータサイエンティストの役割は縮小する、という議論もありますが、当面は、データ分析の専門家であるデータサイエンティストのニーズは高いと考えられます。

第三位:プロジェクトマネージャー(650万円~700万円)

PMとも表記されるプロジェクトマネージャーも高年収の人材です。

プロジェクトを進めるためには、プロジェクトを管理するプロジェクトマネージャーが必要不可欠です。しかし、マネジメントスキルはコーディングといった純粋なITスキルとまったく別種のスキルです。しかも、マネージャーに必要なマネジメントスキルは一朝一夕で身に着くものではありません。

結果として、ITセンスとマネジメントスキルを両立した、理想的なプロジェクトマネージャーは人数が少ないため、年収も高くなる傾向にあるのです。

なお、近年、アジャイル開発にも注目が集まっているため、スクラムマスターなど、アジャイル型プロジェクトでマネジメントができる人材の年収がさらに上がっていく可能性があります。

狙うは大手、中小、外資系? それぞれのメリット・デメリット

狙うは大手、中小、外資系? それぞれのメリット・デメリット

ここまでは年収アップが目指せる職種について見てきましたが、ここからは雇い主、つまり、企業選びの観点から見ていきましょう。

今回は日系の大手企業と中小企業、それから外資系企業の三種類に分けて、メリットとデメリットについて見ていきます。

大手企業のメリット・デメリット

近年、状況が変わりつつありますが、日本の大手企業は比較的、年次に従って段階的に給与が上がっていく(=年功序列)ので、将来の年収見通しが立てやすいという点がメリットとして挙げられます。また、退職金や確定拠出型年金といったリタイア後に備えるための仕組みや、財形、持株会など、財産形成のための制度が整備されているところも多いです。

このような給与以外の支給があるため、“実質的な年収”が中小企業などもよりも高くなります。

デメリットとしては、役職に対して社員数が多く、生え抜きでも役職になかなか付けず、転職者はさらに出世しにくい、という企業も多いです。結果、給与の伸び率は低い傾向にあります。

近年、ポストオフ(役職定年)の導入で多少、新陳代謝が上がっている企業が増えてきました。しかし、この制度も、せっかく役職者になれたのに数年で役職から外されてしまい、やっぱり生涯年収を考えたとき、マイナスになる、というデメリットがあります。

中小企業のメリット・デメリット

大手企業などの比較で中小企業の魅力は、(会社の方針などにもよりますが)肩書き・役職に就きやすく、外れにくいという点が挙げられます。

大手企業だと、社員数が多いため、役職に就くのに出世争いが大変で、転職者が最初から責任あるポジションを与えられる可能性は低いです。しかも、せっかく手にした役職も、ポストオフ(役職定年)のために、定年を待たず離任させられる、ということが一般的になってきました。

その点、中小企業は、社員数が限られるなどの理由で、転職後、いきなり責任あるポジションを任されたり、役職を持ったまま定年を迎えられる可能性が大企業より高くなっています。

デメリットは、大手に比べて、ベースの給与が低い企業が多いという点です。鶏口牛後という言葉もありますが、長い期間働けば働くほど、中小企業と大企業で生涯年収の差が開いてしまいます。

外資系企業のメリット・デメリット

外資系企業のメリットは、広く言われている通り、年俸の高さです。日系企業の倍とまではいきませんが、それでも100万円~400万円程度の差が付くことがあります。また、転職後の働きぶりによって、いきなりポジションを与えられるなどして、大きく年収が上がる人もいます。

デメリットは、戦力外と思われた人材に対する、人員整理のスピードが速く、容赦がないということです。

いくつかの外資系の勤務者・元勤務者から「急に人事部に呼び出され、指定された会議室に行ったら、数人が集められていて、その場でICカードを取り上げられて解雇を宣言された」、「一緒に出勤した同僚のICカードが無効化されていて、ビルに入れなくなった。問い合わせたら、『解雇通知を彼の自宅に送ったよ』と言われた」という冗談みたいな話が出てきます。

正社員以外の転職はありか? フリーランスもあり

転職というと、他の会社に移ること、というイメージを持つ方が多いと思います。しかし、十分な技術力があれば、会社に属さなくても、フリーランスエンジニアとして活躍できます。

フリーランスの場合、本社部門・間接部門がない分、契約などの法律行為を自分で行ったり、専門家を手配するなど、サラリーマンエンジニアであれば、考えもしない手間もあります。しかし、会社組織にマージンを吸われないので、その分、同じ仕事をしていても、手取りははるかに増えます。

もちろん、会社に所属していれば、あまり忙しくなくても、極端な話、仕事がなくても、給与の形で生きていけるだけの程度が毎月入ってきます。それに対して、フリーランスは仕事がなくなってしまうと、収入がストップしてしまうリスクはもちろんあります。

しかし、昨今、ITエンジニア不足が叫ばれている通り、システム関係の仕事に対して必要なエンジニアが足りていません。今後、さらに社会のデジタル化が進むにつれ、この傾向はさらに強まるでしょう。十分なスキルを持つエンジニアが仕事に就けず、食いっぱぐれる可能性は極めて低いと言えます。

年収ベースで考えると、フリーランスエンジニアになるのも、有力な選択肢の一つです。

まとめ:お金はすべてではないけれど

お金はすべてではありませんが、生きていくためにはお金が必要です。ですので、年収を軸に仕事や働き方を考えることはまったく恥ずかしいことではありません。

働き方を考える上で一つ考えたいのは、日本を代表する企業と言われる東芝ですら、一時、会社の存続も危ぶまれるほどの瀕死状態に陥りました。シャープに至っては、外資系(台湾)企業の傘下に入って、大量の人員整理を実施しました。

もはや、サラリーマンも安定した働き方ではなくなりつつあります。

ご自身の状況や社会情勢なども見ながら、他の会社への移籍や、脱サラしてフリーランスになるなど、複数の選択肢を比較検討して、キャリアプランを組み立てていくべき時代なのは間違いありません。

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