そもそもSEの転職で資格は必要か?

結論から言うと、システムエンジニア(SE)は資格がなくても転職することが可能です。

なぜならば、SEは弁護士や税理士、医師などのように、“特定の資格をもっていないと名乗れない職種(名称独占資格)ではない”ためです。

従って、転職時にも“基本的には”資格の取得が応募条件に含まれているなどの問題もありません。

ただし、どんな分野・業界・職務領域でも資格なしで転職可能かと聞かれると、残念ながら、一部、不可能な企業もあります。

例えば、近年注目が集まっているセキュリティ分野に特化したSEであるセキュリティエンジニア。

確かに資格なしでもできる仕事です。

しかし、国家資格として「情報処理安全確保支援士(RISS)」という制度が整備されたことによって、「情報処理安全確保支援士」の保有者、あるいは認定試験合格者であることを、セキュリティエンジニア募集要項の必須条件に加えている企業も出てきています。

「情報処理安全確保支援士」以外にも、情報処理技術者試験という国家試験制度がありますが、“社員の中にその試験の合格者が一定数以上いること”が官公庁の発注する案件への入札条件になることもあります。

そのため、一部の大手企業(特にエンタープライズシステム開発を行うSIer)などでは、それらの資格の有無を中途採用者の採用基準として重視、必須項目としていることもあります。

そのため、資格がなくてもSEとして転職できますが、特定の企業の場合、採用活動が厳しくなる可能性が事実としてあります。

これらのことから「SEに資格が必要か?」と現職SEに聞くと、その方の在籍する業界や職域分野、企業の考え方などによって「資格はまったく不要」という方もいれば「資格はとても重要」という方まで、人さまざまです。

ただ、転職活動という意味では、企業に興味を持ってもらうために、資格欄が空白よりは、なにか一つでも書いてある方が良い、というのは間違いありません。

SEの転職で有利な資格は?

SEが持っておきたい資格として、とくに有名なのは、上でも触れた情報処理技術者試験です。

国家資格、つまり日本政府が主催する資格試験なので、その知名度は折り紙付きです。

特に日系企業であればIT企業はもちろん、非IT企業でも重視されることが多いです。

アジア圏の他国が行っているIT系国家資格との相互認証制度も順次導入されており、今後、海外でも通じる資格になるかもしれません。

なお、情報処理技術者試験は、「情報処理技術者試験」という名前の試験があるのではなく、いくつかの試験の集合体です。

2019年4月末時点では、4つの難易度に分けられた12の試験で構成されています。

SEとして転職を考えている方は難易度が上から二つ目の“応用情報技術者試験”を取得していることが好ましいです。

さらに、一番難易度が高い“高度情報技術者試験”に分類されている8種類の試験(ITストラテジスト試験・システムアーキテクト試験・プロジェクトマネージャ試験・ネットワークスペシャリスト試験・データベーススペシャリスト試験・エンベデッドシステムスペシャリスト試験・ITサービスマネージャ試験・システム監査技術者試験)のいずれか、自分の強みとなる部分の資格を持っていれば、資格不足で書類落ちはまずあり得ません。

国家資格

また、「情報処理安全確保支援士(RISS)」も国家資格であり評価されやすいです。

「情報処理安全確保支援士」は情報技術者試験と異なり、取ったら終わりではなく、期限付きの資格になっています。

つまり、一度、資格試験に合格して「情報処理安全確保支援士」を習得した後、所定の教育を受けて更新手続きを行わなければ、資格抹消となるのです。

ちなみに、「情報処理安全確保支援士」は“高度情報技術者試験”の一つだったセキュリティスペシャリスト試験の後継試験として発足した経緯があり、「情報処理安全確保支援士」に合格した方のことを“認定セキスぺ”と呼ぶこともあります。

他にSEの取得が推奨される資格としては、アメリカの(プロジェクトマネジメント協会)が実施している、PMP(プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル)試験というものがあります。

PMPはPMBOK(Project Management Body of Knowledge)と呼ばれる、プロジェクト管理に関するガイドライン(教本)の理解度を問う試験で、世界で通用する資格試験です。

ただ、受験資格として、最終学歴が大卒以上の方の場合で4500時間以上のプロジェクトマネジメント経験があること、しかも、そのときの業務内容を英語でレポートにして提出する必要があるため、受験難易度が高いとよく言われます。

なお、プロジェクト管理に関する国際的な資格試験としては英国生まれのPRINCE2(PRojects IN Controlled Environments)というものもあります。

PRINCE2はロンドンオリンピックのマネジメントに利用されるなど、欧州ではPMBOKと同じかそれ以上に有名ですが、日本語で試験が受けられないということもあり、日本企業内では知名度が低いです。

ただ、業務経験を問われないという意味で受験難易度が低いため、外資系企業への転職を考えているのであれば、大変おススメです。

そのほかの資格としてはITIL Foundationに始まる、ITサービスの運用に関する知見集であるITILの内容を問う資格や、Microsoftやネットワーク機器のCISCO、クラウドサービスのAWS(Amazon Web Service)など業務に直結するベンダー資格もおススメです。

結局、資格を取得することで何が評価されるの?

IT関連の資格をたくさん紹介すると、資格欄を埋めた方が良いという思いが強すぎて、資格をいっぱい取ることが目的になってしまう“資格マニア”となる方がいらっしゃいます。

そうならないためにも、資格を取得して履歴書に記載する意義について改めて確認しておきましょう。

資格欄に資格を書く目的は究極的には二つです。

これまでの経歴を裏打ちするエビデンスとしての役割と、次のステップに進む準備をしていることの証明です。

「プロジェクトマネージャとして案件推進を行った」とだけ書いてある応募書類と、「プロジェクトマネージャとして案件推進を行った」と書いてあるのに加えて、高度情報技術者試験の一つであるプロジェクトマネージャ試験をパスしていることが分かる応募書類、どっちの方が、評価できますか?というところです。

確実に資格取得済みの応募書類の方が良いに決まっていますよね。

あるいは、今までプログラマーとしてのキャリアしかない方が、応用情報処理技術者をパスしていると、「この人、上流工程に行きたいと思って勉強しているようだ」と好感を持つ採用担当者は多いです。

このように目指すべきキャリアに向けて必要な知識・スキルセットを構築していることを示す材料としての意味もあるのです。

そういう意味では、上記で紹介したようなIT資格だけでなく、社内SEへの応募を考えている方であれば、宅建こと宅地建物取引士などの業界資格もアピール材料として有用になります。

まとめ:資格取得はキャリア戦略

最後にいうとことではないかもしれませんが、SEと一言で言っても、現場で開発に関わる方だけでなく、運用保守系の方もいれば、プロジェクトマネジメント(PM・PMO)系の方など、役割が様々です。

また、IT企業で案件を進めるタイプのSEだけでなく、非IT企業の社内SEの方もいれば、CIOやCTOなど経営層に所属するSEだっています。

ポジションによってスキルセットも変わるように、目指すべき地点によって好ましい資格も変わります。

“この資格の組み合わせが鉄板”というものはなく、「こういう資格があると転職に有利かも」と希望する業界・会社、そして自分の状況を分析することから、転職活動の成否が決まっているのかもしれません。

今すぐシェアしよう!
今すぐシェアしよう!