今回はタビアン株式会社の取締役・東出 忠昌さんがご登壇し、現在フリーランスとして活躍されている、又はこれからフリーランスとして活躍されたい方々に向けた講義をレポートします。コンフライアンス強化によるアサイン先でのトラブル回避から社会で生き抜いていくノウハウを聞いてきました。3回に分けてお送りします。

Yasu&Ken:こんばんは!

Yasu:本日の講義(https://techcareer-events.connpass.com/event/176007/)はリモートで参加しています。

Ken:前回に引き続き、今回は「基礎レベル」を発展させた契約と法律のお話です。フリーランスなら是非知っておくべき、自己防衛を兼ねた内容でもあります。

働く時の指示系統と気をつけた方がいいこと

今更聞けない契約と法律と発生しやすいトラブル

Yasu:はじめに、フリーランスのエンジニアが仕事を受けるときは大企業から中堅企業やベンチャー企業まで様々ですが、契約は3種類しかありません。ここでは、それぞれの特性を聞きました。

Ken:請負契約、派遣契約、準委任契約ですね。

Yasu:請負契約は、1ヶ月後の納品でお願いされましたが、1週間で作ってしまい、残りの期間は遊んでいても300万円は入る契約です。ただ、成果物を納品してこれならOKとならなければ、いつまでたっても払われません。成果物、成果に対してコミットするものなので、少し怖いです。

Ken:他にも事業規模によって受注額に上限があるみたいですね。一般的に、1人でフリーランスとして請負で受けられる限界は、200〜300万円だそうです。小規模なHPやスクリプトを納品する案件や、社内用の小規模なシステムです。SIerが受ける何千万の仕事は、それ相応の会社じゃないと受けられないとのこと。個人では責任をもてませんよね。

Yasu:次に派遣契約は、派遣社員のことです。これはA社というところに皆さんが登録され、そこから契約されている会社に派遣社員として派遣されます。A社からB社に派遣された場合、B社の指揮命令に従います。

Ken:また要求レベルの低い仕事として発注される場合が多いそうです。B社はA社に「こういうスキルセットの方を5人ください」とオファーされ、A社はB社に5人連れていきます。原則、B社は取捨選択をできず、そのまま雇わなければなりません。フリーランスのエンジニアといいつつオペレーターや作業者など比較的難易度の低い開発要員となります。フリーランスの方で経験のある方、ハイスキルの方は業務委託として入ることが多いようです。

Yasu:こう聞くと請負契約と派遣契約はかなり違うものですね。

Ken:そして準委任契約です。準委任契約は作業が定められ、業務委託として受け、その会社で仕事をします。本来であれば委託先に指揮命令はありません。ここは派遣契約とは違いますね。

それぞれの契約形態における発生しやすいトラブル

Yasu:次はそれぞれの契約形態における発生しやすいトラブルの話ですね。

Ken:先ほど、請負契約で少し触れていたリスクも聞けます。

請負契約の場合

Yasu:請負契約はフリーランスを労働者として扱う偽装請負と呼ばれるものが頻繁にあり、トラブルも起こっているそうです。それ以外にも請負契約は完パケで納品し「これでいいね」と了承を得てお金が支払われます。ここが、怖いところです。

Ken:やはり、いいがかりをつけて無料で修正させるケースが頻繁に起こっているみたいです。ここはYasuの想像通りですね。

Yasu:あと有名な話で、スルガ銀行とIBMの話もゾッとしました。請負契約にて開発失敗を巡り法廷闘争になり、IBM側が何十億円を支払うということがあったそうです。

派遣契約の場合

Ken:こちらも多そうですね。話によると、C社がA社に派遣社員として派遣し、それをC社が黙ってA社の社員かのようにB社(大手企業)に「当社の社員です」と装い、連れて行くのが横行しています。そしてB社からA社に80万円払われ、それをB社に60万円払い、本人には40万円しか払われないとのこと。これが二重派遣のようです。

Yasu:原則、派遣は派遣元、A社の社員が前提にありますからね。実態としては「お金は払われているし、仕事はある」というところがダメと指摘していました。

Ken:多くの企業がそれに従っている現状を東出さんは嘆いていましたね。

Yasu:実際、本人に40万しか支払われないとい現状の中、B社としては「80万払っているから、それだけの仕事をしてよ」となります。そう見舞われた場合どうするか? 気になりますよね。

Ken:これには明確な罰則規定はないそうです。そこは皆さん自身で判断する必要があります。気をつけてくださいね。

SES契約(≒準委任契約)の場合

Yasu:SES契約(≒準委任契約)は発注先からの指示は違法です。これは先ほど触れましたね。トラブルになりえます。一方でそれが横行しているのが事実で、実態と法令に乖離が出ているそうです。

Ken:これも曖昧な感じですね。何とかしてもらいたい。

駆け出しエンジニアが巻き込まれやすいトラブル

Ken:次に法律面を取り巻くトラブルのお話です。

Yasu:「知らなかった!」では済まない問題もあるからちゃんと聞きましょう。

知的財産権の保護

Yasu:知的財産権とは、アイデアや財産的な価値を持つものを保護する権利のこと。特許や商標です。

Ken:ロゴやソフトウェアのソースコードも含まれるみたいですね。「これは俺が書いたソースコードだ」と主張するフリーランスの方がいるみたいですが、違うようです。業務委託で入った場合、ソースコードはその会社のものとなります。他にはソースコードを丸パクリして納品し、元々そのソースコードを作っていた会社から訴えられるケースがあるそうです。

Yasu:もちろん受託した会社からも二重で訴えられますよね。気をつけないといけません。

営業秘密の保護

Ken:営業秘密の保護は、企業の研究・開発活動の過程で生み出された様々な営業秘密を指します。ソースコードや機能は営業秘密とのことです。

Yasu:「あの企業ってこういう機能なんだよね」と軽く話すと、どこかで誰かが聞いていて、訴えられたというケースもあるそうです。

Ken:それは、営業秘密は不正競争防止法によって保護されているからですね。

ワンポイント:不正競争防止法違反となってしまった場合、差止請求・損害賠償請求・信用回復措置 請求を受ける可能性だけでなく、10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金の刑事罰 が科される可能性があります。

Yasu:他にも、実際に起きたベネッセ個人情報漏洩事件などを挙げられていました。

下請法に基づくコンプライアンス

Yasu:下請法は皆さんを守ってくれる法律です。発注側が立場を利用し、条件の悪いものを押し付けること、代金の減額、突然の契約打ち切りなど、皆様の不利益になることは禁じられているとのことです。

Ken:ついに出ましたね! 少し落ち着きました。トラブルにならないために、例え口約束でも、契約は成立するため、委託後は直ちに契約書を交付してもらえれば、防げるようです。

Yasu:まだまだ油断は大敵ですよ。次のお話を聞きましょう。

フリーランスエンジニアが巻き込まれやすい甘い罠

Yasu:次に発生しやすい契約面でのトラブルをみてみましょう。前述の契約形態の話とは違います。

直契約におけるトラブル

Ken:直契約は紹介会社を通さない契約ですよね。一般的にフリーランスの方々は当社のような紹介会社経由で企業のプロジェクトに従事頂きます。企業から100万円をいただき、5万円を紹介料、手数料として、皆さんに95万円を渡しています(これはあくまで例です)。一方で企業から「97万円あげるから直接契約しよう」と持ちかけてくる人がいます。企業としては3万円割引され、皆さんは95万から97万円と上がるそうです。

Yasu:しかしこのような直契約を裏でやると十中八苦バレると警告していましたね。これは意外と上で繋がっているからで、社長同士が知り合いなんていう事もあったりするそうです。

Ken:もし、直契約を持ちかけられたら「どのタイミングで直契約していいか」と紹介会社の営業に聞けば良いみたいですね。

引き抜きにおけるトラブル

Yasu:優秀な人材は確かに引き抜きたくなるものですね。会社側も業務委託契約よりは社員にした方が安くなるみたいです。

Ken:一方でトラブルも深刻みたいですね。例を挙げていました。飲み会で「うちの社員になりなよ」といわれ承諾したが「本社じゃなくて関連子会社の契約だった」というケースや年収1000万で提示されていたが、700万だったというケースは多いみたいです。

単価アップにおけるトラブル

Yasu:確かに、フリーランスの場合、一旦入ってから単価アップするのは非常に難しいですよね。お話にあった、途中で単価100万円を110万円にすると「10万円UPすることで、あなたは何をしてくれるの?」と必ず聞かれます。

Ken:こちらも良い方法は、紹介会社の営業に交渉してもらうことだそうです。「金の話しするなら、いらないよ」とリリースされる等のトラブルを防げます。

Yasu:いずれも契約内容は契約時に詳細まで確認するようにすれば防げますね。

守ってくれる法律と守ってくれない法律

Ken:先ほども下請法の話がでましたが、それも含めフリーランスエンジニアが知っておくべき法律の話を聞きました。

労働法

Yasu:労働法によるとフリーランスは労働者ではありません。事業者です。そのため、「労働基準法」や「労働組合法」の対象外となるそうです。

Ken:ただし契約上はフリーランスでも、複数の要素から「実態は労働者である」と判断された場合、発注者は残業代支払や最低賃金、法定労働時間や有給休暇などの規定に従う必要が生じるそうです

Ken:つまり「守ってくれたり、守ってくれなかったり」とのことですね。

独占禁止法

Ken:独占禁止法は、企業側に「優位的地位の乱用」を禁じているので「これ下請法じゃないけど、独占禁止法で対応できる気がする」というものがあるそうです。

Yasu:こちらは、フリーランスを守ってくれているとのことです。

下請法

Ken:先ほども出ました下請法です。独占禁止法の補足として、特に企業側の「優越的地位の乱用」を取り締まることを目的としているそうです。

Yasu:こちらは心強いですね。フリーランスを守ってくれています。

Ken:こういった法律や契約関係を学べば業務に集中できるし、「フリーランスは守られていない」という幻想もなくなりますね。

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