日本CTO協会が主催を務め、2024年7月16日・17日に開催された大型カンファレンス「Developer eXperience Day 2024」。
「Developer eXperience(=開発者体験)」をテーマとし、その知見・経験の共有とそれに関わる方々のコミュニケーションのために計30以上のセッションが行われました。
本記事では、「Developer eXperience AWARD 2024 表彰式・受賞者による特別トークセッション」の様子をお届けいたします。
エンジニアが選ぶ「開発者体験が良い」と感じる企業ランキング表彰式
Developer eXperience AWARD 2024では、企業が「開発者体験」に関してどれくらい魅力的な発信をしているかを示す「開発者体験ブランド力」について、ソフトウェアエンジニアなどの技術者を対象に調査・集計し、ランキング形式での公開・表彰が行われました。本記事では、上位ランクを受賞した企業さまのコメントを紹介します。
引用:一般社団法人日本CTO協会.「 エンジニアが選ぶ「開発者体験が良い」イメージのある企業「Developer eXperience AWARD 2024」ランキング上位30を発表 」.https://cto-a.org/news/developer_experience_day_2024_release
4位(同率):株式会社ゆめみ
担当者さまコメント
執行役員CCO/妹尾 福太郎氏
この度はこのような賞をいただき、ありがとうございます。
昨年は6位を受賞し、「非常に高い評価をいただいた」「これ以上はもう無理ではないか」と社内で話しをしていました。しかし、上位企業さんの合併による順位の繰り上げといった要素も重なり、今年は4位という栄えある順位をいただくことができて大変嬉しく思っています。
ゆめみは「社会の実験室になる」というパーパスを掲げており、全員CEO、給与自己決定、有給取り放題などのクレイジーな制度を設けています。そのような制度が注目されがちではありますが、根底には、「自学力が高い同僚やエキスパートから教わり、開発者がより成長できる環境を作ること」という思いがあり、それを大事にしています。
今回の受賞にあぐらをかくことなく、引き続き開発者が成長できる環境を高めていこうと頑張っていきますので、これからもよろしくお願いいたします。
4位(同率):日本マイクロソフト株式会社
担当者さまコメント
ご都合により欠席のためコメントなし
3位:LINEヤフー株式会社
担当者さまコメント
技術管理グループ本部長/西 磨翁氏
弊社にはDeveloper Relations(=DevRel)専門のチームがあり、10年以上前からDevRelに近い活動を行ってまいりました。10年以上積み上げてきたことでこのような栄えある賞をいただき、大変ありがたいと思っております。
LINEヤフーは、2023年10月にLINEとヤフーなどが合併することで設立されました。先ほどゆめみさんから「合併もあり順位が上がった」という話があり、もしかしたら私たちのことかなと思って聞いておりました。昨年、LINEは3位・ヤフーは4位という順位で、合併によって順位が上がるかなと期待しておりました。しかしながら、業界全体で開発者体験が向上しているということもあり、さらに上に上がるのは難しいなと実感しました。そんな難しい領域だからこそ、ここから先も皆様と情報共有をしながら、どのような開発者体験向上がされていくかという点を一緒に善処していければと思います。
2位:Google
担当者さまコメント
Google Developer Ecosystem / 松内 良介氏
この度はこのような栄誉ある賞をいただきありがとうございます。
Googleという会社と、今回の受賞と、Developer eXperience AWRADにはおそらく2つの接点があると考えております。
1つ目は、Google社内でエンジニアが活躍できる環境を作るという点。2つ目は、Google以外の企業・開発者の方がGoogleのテクノロジーを使って、より優れたものを作る環境を提供できているか。という点です。
1つ目に関しては、より優れた製品を提供できるように、優れたエンジニアやその環境を作るためのマネージャーたちが、日々努力を重ねております。2つ目に関しては、さまざまなAPIや資料・Google I/O、そしてGoogle Cloud Nextのようなイベントの提供を通じて、日本で活躍されている開発者の方たちがより価値を提供できるように、より活躍できるようにお役に立ちたいと思っております。そのため、この日本社会の中で開発者がより良い環境で活躍できるように、今回の賞を通じたコミュニティにこれからも貢献できればと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
このGoogle Cloud・Android・ChromeなどのさまざまなAPIの提供、そして社内でもより優れたエンジニアの方たちの活躍を通じて、Googleも日本のお役に立ちたいと考えております。
1位:株式会社メルカリ
担当者さまコメント
執行役員CTO / 木村 俊也氏
まずはじめに、栄誉ある賞をいただきありがとうございます。
このような賞をいただくことや、継続的にエンジニアから良い認知を得られていることは、弊社のエンジニアたちが自律的かつ継続的に自社の開発者体験を改善して、誇りに思えるサービスを作り、そして社外にシェアしてきた賜物だと感じており、改めて弊社のエンジニアにも感謝を伝えたいと思っています。
開発者体験について、中長期に改善をしていくことが重要だと思っており、特に短期と中期で組み合わせていくことが重要であると考えています。
短期ですと、弊社のエンジニアに対してAnnual Tech Survey(年に1度、メルカリの全エンジニアに向けて実施している開発環境・開発体験などの調査)を行った結果、浮かび上がった問題点を改善し、開発者体験を継続的に向上させられるようにしています。
また中期の場合、「開発者体験」という武器を使い、ビジネスを改善していける状態になることを目指しております。現在、弊社のサービスに大きな変化があったことに伴い、開発者体験の改善に対しても大きくプロセスを変化しなければならないフェーズにいます。このフェーズの中で他社さんの例を大変参考にさせていただいております。また参考にするだけでなく、我々の事例も社外にもシェアしていきたいなと考えています。業界全体でシェアをし合うことで、開発者体験の改善に協力していきたいと思います。
トークセッション 〜エンプロイヤーブランディングについて〜
表彰式の後はトークセッションとして2つのプログラムに分けて講演が行われました。
はじめに日本CTO協会から「開発者体験」につながる新たな視点として「エンプロイヤーブランディング」について、お話しいただきました。
登壇者
株式会社Jストリーム / インキュベート室Mgr / 吉田 武志氏
エンプロイヤーブランディングとは、求職者など「従業員候補者」と「従業員」の両方に対して発信される、雇用によってもたらされる便益が投影されたものであり、企業アイデンティティを特徴付けるものです。これらは、従業員候補者への「動機づけ」「惹きつけ」に効果を及ぼし、従業員に対しても「定着率アップが期待できます。そして従業員は「ブランド構築を行う当事者にもなり得る」ため、企業価値を内在化した存在とも言えます。
近年では「エンプロイヤーブランディング」の検索数が世界中で上昇し続けており、1億3000件のヒット数があります。ハイテク産業など知的集約型エコノミーでは、高度な熟練スキルを持つ従業員が不足することが多く、有能な従業員を惹きつけるために、各社の差別化がより必要になってきています。
また、エンプロイヤーブランディングが確立されている組織は、他と比較し26%低コストで人材を惹きつけることができ、平均離職率も10%と全体平均離職率より6%低いことが判明しています。日本CTO協会では先ほど発表した「Developer eXperience AWARD」と「DX Ctiteria」の2軸で外側と内側の評価を調査し開発者体験の向上の支援をしています。
トークセッション 〜受賞企業が語る、結果につながる技術広報戦略〜
続いて、4名によるトークセッションが行われました。
各社の「開発者体験」や技術広報体制等が語られました。
登壇者紹介
日本CTO協会 理事 /株式会社BuySell Technologies取締役 CTO / 今村 雅幸氏(モデレーター)
株式会社タイミー VPoE / 赤澤 剛氏
株式会社はてな CTO / 大坪 弘尚氏
ファインディ株式会社 取締役CTO / 佐藤 将高氏
※画像左から順
テーマ1:
Developer eXperience AWARD 2024受賞の感想と1年間の技術広報活動の振り返り
タイミーについて
赤澤 剛(以下、赤澤):Developer eXperience AWARDを受賞でき、とても嬉しく思っております。さらに上位を目指すため、もっと頑張りたいと思います。
私がまだ入社して半年のため、1年間の振り返りは「内部から見たタイミー」と「外部から見たタイミー」の両面でお話します。
内部から見たタイミーは、開発者体験が実際に良いなと感じています。また、外部から見たタイミーは、「タイミーって良さそう」と認知・想起いただくために様々な施策を打ち出していると入社前から感じていました。
内部においては例えば、開発者体験の改善施策の浸透度を高めていくために、会社として名称含め制度のパッケージングを推進しています。例えば「TDE10(Timee Dev Enable10)」という10個の制度をまとめたものを発信しているのですが、その中の制度として「文豪待遇制度」という、エンジニアの方もコンテンツに集中できるように執筆のフォローや表記の揺らぎ、構成のチェックなどのサポート体制を作り、内部でも積極的に使ってもらえるように制度の強度を高めています。
今村 雅幸(以下、今村):私自身もタイミーさんのブログを前から参考にしており、かなり面白い施策や業界をザワつかせるような施策を作っているイメージがありました。
そのようなアイデアはどのように生まれているのでしょうか?
赤澤:エンジニアがペイン(悩みのタネ)に感じていることや、行動したいと思っているけど特に変えられていないことをヒアリングし、それを元に生みだしています。
今村:現場の声を聞き、Dev Enableチームと協動することで制度を作っているんですね。
タイミーさんは今年、インターネット界隈を大いに騒がせ、注目されておりましたので、今回入賞されていて納得しました。
はてなについて
大坪 弘尚(以下、大坪):はてなは2022年にランクインし、2023年はランク外となってしまったものの、2024年は再びランクインすることができ、ひとまずほっとしているところです。
これからもランクインを維持したいと思いますが、3年分の活動を振り返ってみると、返り咲くために新たな施策を行うなどはしておらず、継続してきた施策を再度評価していただいた結果であると感じております。例えば、ポッドキャストやテックブログの企画記事は2,3年前に始め、今に至るまで続けています。一方、明確に変わったポイントとして、エンジニアがカンファレンスに参加する数が増えたという点が挙げられます。オフラインカンファレンスが増えた影響もあり、各地のイベントに参加・登壇する機会が増えたことで、弊社を目にしていただく機会が増えたのもランクインにつながったと感じております。
今村:ランキング外になったことを受けて、意識的に参加・登壇を増やしたのでしょうか?
大坪:「ランキング外になったこと」を強く意識していたわけではなく、何事も継続的に続けることが大事だと思い、その延長線上で参加・登壇が増えたという感覚です。
一方で、世の中にエンジニアという仕事をする方が増えてきていることから、発信の機会をもっと増やし、はてなの認知拡大をしたいという思いがあります。そのため、エンジニアメンバーの登壇をサポートするために実施していた、「プロポーザルをみんなで書く」という施策などによって、発信の増加に繋がったと感じます。
今村:体感的にはどれくらい増えましたか?
大坪:登壇の数は3割増しぐらいですが、イベントに参加した数で言うと5割増し以上になったと感じます。
今村:全員が一丸となって登壇や参加などを増やしていったことが積み重なり、返り咲いたんですね。
ファインディについて
佐藤 将高(以下、佐藤):Developer eXperience AWARDを受賞できて、感無量です。ランクインできたことを心から嬉しく思い、改めて感謝したいです。
この1年間を振り返った時、最もインパクトがあった技術広報活動として、DevRel組織にてエンジニア向けイベントを開催したことが挙げられます。イベント回数は、オフライン/オンライン合わせて361回にも登ります。それだけの数開催しているにも関わらず、1回あたり平均300人ほどの方に参加いただいています。元々100人集まればとても多いと思っていたところが、リピーターの方も増えた影響で300人まで達しました。また満足度アンケートは平均4.4(5段階)と、大半の方が満足していただけている状況です。この満足度や参加人数は、エンジニアの見たいイベントが何かを考え続けてきたことが繋がったと思います。
2023年と2024年6月末に開催した「開発生産性カンファレンス」は、2,000人ほど申込があった中で、満足度は4.6でした。私も驚くレベルの出来だったと感じます。来ていただいた方を満足いただける状態で帰せる組織がファインディかと思ってます。
今村:各社がどれくらいイベントを行っているか調べたことがあるのですが、4〜5年前のメルカリさんで360〜370ほど行っていた記憶があり、そのくらいの頻度で行っているんですね。
佐藤:他にも、スポンサーをさせていただいているイベントであっても、セッション等で話す機会があるため、数字以上に何かやっている可能性もありますね。
今村:本日参加いただいている方の中にも、ファインディさんのイベント参加経験がある方は多いと思います。色々な場で認知をあげていたんですね。
イベント回数含め今回の受賞はさすがだと感じました。
今村:3人のお話を伺っていると、Developer eXperience AWARDで受賞している企業は圧倒的な行動量で広報活動に取り組まれており、それが受賞につながっているのだろうと感じました。
テーマ2:各企業で自社の特徴を踏まえて工夫している技術広報施策
タイミーについて
赤澤:広告や口コミなどでタイミーというサービスを知ってもらうことはありますが、それを作っている開発組織の認知という観点ではまだまだです。そのため、実際にエンジニアチームが行っていることを認知拡大していきたいと考えています。先ほど佐藤さんからお話があったイベントに絡めると、我々もイベントのスポンサーをさせていただくことにかなり注力しています。実際にメンバーが登壇する回数も大事ですが、エンジニアたちに国内・国外問わずカンファレンスへ参加してもらうことを目指して「Kaigi Pass」という制度を用意しています。例えば、Androidエンジニアとしての業務・スキルがメインであるものの、サーバーサイドにも興味がある方がいた際、外部のRubyKaigiに参加し学べる機会を作るなどして、スキルや知識の横断性・越境性を高められるようにしています。エンジニアにとってプラスであるのはもちろん、様々な場所に弊社のエンジニアが出席することで、タイミーの認知を上げられるので、会社にとってもプラスです。
また、キャラクターが知名度を獲得できている点も弊社の強みと感じています。
今村:あのキャラクターはすごく引きが強いですよね。
赤澤:キャラクターを起点に興味を引き、現場が思う「タイミーの好きなところ」などを発信していくことで、より深い興味を持っていただき、そして採用にもつなげる。といった流れを作ることができています。第一想起の獲得と採用のための接点創出にはキャラクターのパワーやブランドのパワーを使わせてもらっていますね。
今村:実は、弊社内でも何かキャラクターを作れないのかと議論していました。
エンジニアに限らず、「タイミーを使って働いてみた」という記事を見ることが増えたと感じておりまして、認知の部分で「いいサービスを提供しているんだ」「このようなパラダイムシフトを起こしているんだ」という広報ができていると考えています。社外の人たちにも発信やブランディング形成を手伝ってもらっているのかなと思っています。
赤澤:(候補者の)ご家族・ご友人から「タイミーのサービスってすごくいいよね」と言ってもらえることが多いなと感じることも多く、採用で非常に追い風になっているなと感じます。
エンジニアやプロダクトに関係する方だけでなく、その周囲の方がブースターとなる状況は、ここまで作ってきたブランドの強さだと思います。
今村:前提として、サービスが良いからこそ、できる戦い方なんだなというところですね。
はてなについて
大坪:はてな全体のブランドアップとしては、「各エンジニアが個々のブランドを上げられるように頑張っていく」というスタンスを取っています。テキストを書くことが好きという方が多いので、会社として運営しているテックブログだけでなく、個人ブログにも精力的に取り組んでいただいている方が多いです。
はてな全体の発信を技術記事の数や反響で計測しているのですが、テックブログのKPIだけでなく個人ブログの反響や記事数も合わせて見ています。10年前からこのKPIで行っていたので、現在までの積み重ねが強いと思っています。
企業のオウンドメディア運用支援を行っている部署からは「継続することが大事」と常に言われており、「自分たちの身の丈に合わないことを頑張ることではなく、継続できることをやりましょう」と意識づけています。
今村:テックブログとして数字を追うだけでなく、個人のブログとして発信しているものを合わせて評価する。また、継続して発信していくことを大事にしているんですね。
テックブログを書きたいという人が多くいる中で、書くこと自体が大変という課題もあるかと思いますが、何か工夫されている部分はありますか?
大坪:いいネタを持っているエンジニアでも「こんな記事面白くないかも」と消極的になってしまうことがありますが、周りのシニアエンジニアの方が「面白いから書きなよ」とアドバイスすることや、登壇のプロポーザルを一緒に書くなど、初めて書く人の背中をうまく押してあげるというのが大事だと思います。
今村:みんなで声かけを積極的に行う文化があるということですね。
大坪:また、はてなが提供しているサービスに対してエンジニアの皆さんに良い印象を持っていただいているという点も、ブランドアップに繋がっていると考えています。
「Mackerel」というクラウド管理サービスや、「はてなブログ」というサービスを展開しているのですが、最近だとGithubワークフローと連携してブログ記事を公開できる「HatenaBlog Workflows Boilerplate」というサービスを公開しました。これらのサービスも、エンジニアの皆さんに良い印象を持っていただいているのかなと思います。
ファインディについて
佐藤:大坪さんの話に絡めると、弊社は2024年2月から「はてなブログ」さんでテックブログを始めました。
元々は、「月に1本投稿するかどうかの頻度であればやらない」「個人のnoteとかで書けば良いのではないか」と思い、私が止めていました。しかし、テックに関する発信をしたいというメンバーが意外と多いことに気づき、会社としてテックブログを始めました。
毎週1〜2本は投稿するようにしている中で、平均ブックマーク数は30〜40ほどいただいています。ブックマークしていただくということは、読者に「この記事には価値がある」と感じていただけたということだと考えています。これは、書き手であるメンバーにとって嬉しいことなのはもちろん、技術広報という観点で会社としてもハッピーです。
また、弊社には「エンジニアの知恵袋」というグループチャットがあります。「エンジニアの知恵袋」は、ビジネスサイドのメンバーがエンジニア向けにカジュアルに気になることなど質問できる場所なんですが、エンジニア向けのイベントを担当するDevbRelチームも、エンジニアに対して「こんなイベント企画、どうですか?」など質問をしています。回答率は非常に高く、1つ質問をすると、参加しているエンジニアのほとんど全員から回答がもらえます。そうすることで「エンジニアが本当に見たいもの」を作り上げることができるため、多くの方から高評価をいただくイベントが実施できていると考えています。
テーマ3:現在注力している‧これから注力したい技術広報施策
ファインディについて
佐藤:2024年7月11日に出版した「開発生産性の教科書」という本のテーマである「開発生産性とはそもそも何か」を広めるとともに、ファインディの認知を広げていきたいです。そのために、イベントやテックブログの頻度を増やすなどしていきたいと考えています。
今村:開発生産性に悩んでいる開発組織は多いのではないかと思います。「開発生産性の教科書」や、CTO協会が監修・編纂している「DX Criteria(企業のデジタル化とソフトウェア活用のためのガイドライン)」などを読んでいただくと、なにかヒントを得られるのではないかと思います。
はてなについて
大坪:引き続き、全てのエンジニアメンバーに対して、技術に関する発信ができる場や、外部とのコミュニケーションの機会を提供できるようにしていきたいと考えています。
これはエンジニア自身の成長だけでなく、はてなにとってもプラスになることなので、ぜひやってほしいですし、会社として推進すべきであると思っています。また現在、はてなのテックブログは技術に関する記事が多いのですが、もう少しプロダクトに関する記事も増やしていきたいと考えています。弊社は「はてなブログ」などのtoCプロダクトで認知していただいていることが多いですが、最近はtoBプロダクトにも力を入れているので、その認知も広げていきたいです。
今村:テックブログを推進していくにあたり、「発信するメンバーを増やす」という点で多くの企業が悩まれていると思います。なにか実践していることはありますか?
大坪:まずは社内に発信してもらう。ということを大事にしています。いきなり社外に発信するのはハードルが高いと思うので、まずは社内に発信していただき、発信のトレーニングをしてもらっています。
今村:ちなみに、社内のエンジニアメンバーのうち「発信をしているメンバー」は、どのくらいの割合いらっしゃいますか?
大坪:はてなでは、50%くらいかなと思います。
赤澤:タイミーでは、30〜40%くらいかなと思います。「50%に到達している」という感覚はまだ持てていないです。
佐藤:ファインディでは、同じく30〜40%ぐらいかなと思います。50%はまだ到達できている感覚がないですね。
今村:各社発信しているメンバーの割合が非常に高いですね。
BuySell Technologiesでは10〜20%くらいの感覚です。Developer eXperience AWARDで受賞されるような企業のエンジニアだと、そもそも「発信したい」という方が多いのかなと感じました。
タイミーについて
赤澤:「外部の方からの認知」という点を強化していきたいです。
特に、「開発者体験が良い会社であるというブランディングの確立」「エンジニアひとりひとりにブランド力がある状態」の2つを目指し、外部からの認知を徹底的に強化していきたいと思っています。
開発組織づくりをしていく上での最重要ミッションは、「どんな企業からも求められる優秀なエンジニアを育成し、その上で「タイミーにいたいな」と思ってもらえるような組織をつくること」だと思っています。だからこそ、タイミーで活躍することによって、エンジニア個人のキャリアアップにつながるような組織づくりを意識しています。自社の開発組織ではハイパフォーマーなのに、自社以外の人がそのエンジニアのレジュメを見たとき、「あれ?」となってしまうのは、エンジニアリングマネジメントの罪であると考えています。個のエンジニアが発信し、個のブランド力を向上させることは大切ですし、発信を促進させるためにも、社内で発生した発信に対して称賛するようなカルチャーづくりを大事にするべきだと思います。私は、「ええやん」という言葉が好きだったりします。一方で、言葉としての「ええやん」だけでは正当な評価をしているとは言えないです。正当な評価として「ええやん」を伝えられるのは、会社からの「評価・待遇・予算」だと思っています。「発信してくれてありがとう」という言葉だけでなく、待遇につながる評価や予算支援など、会社としてのサポートをすることで、「発信」という行為が個人の自己犠牲に頼らざるを得ない状況を打破できると考えています。
今村:そのあたりは経営陣を巻き込んで検討する必要があると思いますが、どのように進めているのでしょうか?
赤澤:現在もCTO・CPO・VPoEで様々な議論をしているのですが、まだまだ足りていないと考えています。
しかし、足りていないからこそ、私たちがこのようなポジションについているし、経営課題と技術課題を分離させずに考えることに努めています。言語化する際に丸めることがあったとしても、エンジニアの良さをしっかりと経営陣に認識してもらうこと、もしくは現場に一任させてもらえるような信頼を得ることを、中長期で醸成していくことが自分の役割だと思います。
今村:経営陣とコミュニケーションというところも引き続き行っていく必要があるということですね。
Developer eXperience Day 2024 イベントレポート一覧
エンジニアが選ぶ1位の企業は?表彰式の様子をご紹介!【Developer eXperience Day 2024】イベントレポートVol.1
開発文化と組織づくり:メルカリ、LINEヤフー、ゆめみが語るDevEx向上戦略【Developer eXperience Day 2024】イベントレポートVol.2
組織作りに「プロダクト開発のエッセンス」を取り入れ、不確実性に向き合い続ける / 竹田 祥【Developer eXperience Day 2024】イベントレポートVol.3