アーフィ:こんばんは、今夜はGINZA SIXにやってきました。
インジェ:こんばんは、『AI Conference 今のAIと、未来のAIの話』が開催されています。
アーフィ:はい、昨年10月に開催した第1回が大好評で、今回はその第2回となります。
第1回のイベント内容やレポート記事(前編、中編、後編)はこちらです。
インジェ:AI研究の最前線でご活躍中の理化学研究所 革新知能統合研究センター長の杉山教授をはじめ、AIソリューション開発のKICONIA WORKS社の書上様、AI教育のプラットフォームを運営するスキルアップAI社の田原様のお話を聞くことのできるという、まさに千載一遇の大注目イベントです。
アーフィ:さっそく最初の講演が始まるようですよ。
イントロダクション
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インジェ:最初の講演は、「AIプロジェクトを成功に導くために」。KICONIA WORKS社の代表取締役、書上拓郎様にお話いただきます。
アーフィ:書上さんのキャリアは、最初はぬいぐるみやカジノマシンを作られたりなど、エンジニアとは程遠いところから始まりました。その後、前職で所属された株式会社ABEJAで一気にAIに近づきます。事業責任者を務められたそうです。
インジェ:そして2018年の5月に、KICONIA WORKSを設立されました。このあたりのお話は、書上さんのブログ(「AI業界の新米経営者ブログ」)に詳しく書かれています。
アーフィ:ちなみに、「しょがみ」さんは世界で10名ほどしかいらっしゃらない珍しいお名前だそうですよ。
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インジェ:KICONIA WORKS社のウェブサイトはこちらですね。
アーフィ:会社名の「KICONIA」は、コウノトリ目コウノトリ科の鳥、シュバシコウ(朱嘴鸛、学名はCiconia)に関係するのでしょうか。
インジェ:AIを中心とした最新テクノロジーを用いた開発支援事業を行っています。設立からまだ半年ほどですが、すでに多数の会社で実施した約30件のプロジェクトの大半を成功に導いた実績があるそうです。
アーフィ:すごいですね。「わたログ」のAIシステムも話題になりました。
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インジェ:KICONIA WORKS社のミッションは、「テクノロジーを顧客価値に変換する」ことです。
アーフィ:新しいテクノロジーがあるからビジネスで使ってみようということではなくて・・・。
インジェ:ビジネス課題がまずあって、その解決に最適なテクノロジーを導入しようということですね。
アーフィ:必ずしもAIにこだわらず、AIを使わない提案(BPRなど)をされることもあるそうです。
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インジェ:KICONIA WORKS社は、顧客企業様の業界が幅広いですね。
アーフィ:いわゆる大企業が多く、業界がばらばらなのは、あえて戦略上そうしているそうです。
インジェ:構築したAIモデルもさまざまですね。画像処理、音声処理、構造データ解析など。
アーフィ:それぞれのAIモデルがどの業界に対応するものなのか、ちょっと考えてみると楽しいかもしれません。
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インジェ:KICONIA WORKS社の業務内容です。システム開発において、コンサルティングからアルゴリズム・モデル構築、システム開発まで行っています。
アーフィ:珍しいのが、開発したシステムを丸ごと顧客にお渡してしまうところです。「自分たちが所有権を持ってもしょうがない」という考え方をされています。この部分は、最後の質疑応答で詳しく説明していただけました。
インジェ:一緒にプロジェクトに参加するクライアント企業のメンバーに、このあと登壇していただく田原さんの会社であるスキルアップAI社の講座を受講してもらうこともあるようです。
1.AI導入時によくある失敗事例
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アーフィ:さて、ここからが本題です。
インジェ:AI導入時によくある失敗事例ですか。
アーフィ:実際、KICONIA WORKS社がこれまでに手掛けたプロジェクトの中で、残念ながらあまり思わしくなかったものもあるそうです。本日はそういった事例から得られた教訓のようなものをお話いただけます。
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インジェ:とりあえずAI問題。AIがブームになり始めた2、3年前は多かったそうですが、最近は少なくなってきました。
アーフィ:AIが何なのか、どこにどのように使うのかもよくわからない段階で、「流行みたいだから、日経新聞にも載っていたから、何となくすごそうだから、自分の会社でもやってみよう」ということで発生してしまう問題です。
インジェ:ビジネス側としては競合に遅れをとりたくないでしょうからね。AI開発側にとっても、そういった状況は案件や顧客を獲得できるチャンスではあります。
アーフィ:そうして、見切り発車のようなプロジェクトが生まれてしまうことがあると。
インジェ:ただしその結果は・・・。
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アーフィ:「とりあえずAIやってみた」結果は・・・やはり芳しくないようですね。
インジェ:ひとまずシステムができたことに満足する、データ不足で使い物にならない、そもそも何がやりたかったのかわからなくなる・・・。
アーフィ:手段が目的化してしまうんですね。AIという技術ありきで始まって、ビジネスの視点が欠けているという。
インジェ:もう一度、プロジェクトの始まりから考えてみましょう。
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アーフィ:上司や顧客の「思いつき」から依頼や指示があり、それをエンジニアやDS(Data Scientist)がそのまま受けてしまうと・・・。
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インジェ:失敗することが多く、怒られてしまいます。
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2.失敗を防ぐために
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アーフィ:このような失敗を防ぐためには、どうしたらよいでしょうか。
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インジェ:まず、AIを導入する前に、お客様からやりたいことや課題を全て出してもらって整理します。
アーフィ:そして、必要なデータの有無、実現手法の選択、課題達成時のインパクト、達成難易度、の4つについて検討するんですね。
インジェ:最後に総合評価です。例えば、ある企業で課題AからDがあるとします。このとき、課題Cは達成時のインパクトが大きいですが、データが無い。一方、課題Bはデータもあり難易度も高くないので、最初にとりくむべきなのは課題Bであるといえます。
アーフィ:最初にいい結果を出しておくと、稟議を通しやすくなったり上司を説得しやすくなったりして、次の課題に取り組みやすくなるんですね。
インジェ:実際に書上さんたちがコンサルティングをされる際に使っておられる手法だそうですよ。
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アーフィ:AIシステム開発のプロジェクトに取り組む前に、ビジネス面についてじっくり考えておく必要があります。
インジェ:ビジネスでの課題や、課題達成時のインパクトですか。
アーフィ:そうですね、本当にAIを導入すべきなのか、どんな手法を使うか、解決すべき優先順位はどうかなど。より本質的なことを検討したうえで、ときには顧客からの要望を断ることもあるそうです。
3.エンジニアやデータサイエンティストに求められること
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インジェ:失敗しないために、エンジニアやデータサイエンティストに求められることがあります。
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アーフィ:結局、経営層側の課題・要望と、エンジニア側の理論・手法がかみあっていないことが問題なわけです。
インジェ:技術と課題解決が結びついておらず、隔たりがあると。
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アーフィ:経営層とエンジニアの間に、「翻訳」が入る必要があります。
インジェ:書上さんは「経営層の人たちの歩み寄りは難しいので、エンジニアの方から経営層に寄り添うことが大事」とおっしゃっておられますね。
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アーフィ:「課題の分解」という考え方も大切です。
インジェ:課題の達成のためにどんなアプローチをしていったらよいのかを、分解して考えていくわけですね。
アーフィ:はい、例えば「スーパーで在庫の最適化をしたい」という要望があったとします。これを、来店人数予測、購入カテゴリ予測、購入商品予測、そして適性在庫の算出へとブレイクダウンしていきます。
インジェ:このようにすると、不具合があったときにどこに原因があるかを究明しやすくなります。
アーフィ:分解していく中で、より詳細な状況やそれに対する処理方法が見えてきたりすることがあるかもしれませんね。
4.AIプロジェクトのよくある失敗例
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インジェ:最後は、AIプロジェクトのよくある失敗例です。
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アーフィ:よくある失敗例の1つ目は、精度問題です。
インジェ:人間とAIの比較や対立になってしまいがちな問題ですね。認識精度を上げる部分にばかりフォーカスしてしまうと。
アーフィ:人間の作業量を100として、AIの利用で完全自動化までできなくても、それが40か50になれば、業務負荷が減ったことになります。
インジェ:AIの精度ではなく、業務改善率で考えたほうがいいんですね。
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アーフィ:よくある失敗例の2つ目は、本格導入を考えずにモデルを構築してしまうことです。
インジェ:精度だけを追い求めると、仕組みが複雑で、処理に時間がかかり、コストがかかりすぎるなど、とても実用的とはいえないAIモデルをつくってしまうんですね。
アーフィ:実際に導入されたときのことを考えて、モデルを作る必要がありそうです。
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AIプロジェクトを成功に導くために
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インジェ:「AIプロジェクトを成功に導くために」のまとめです。
アーフィ:このスライドの内容は、何度も見て覚えておきたいですね。
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インジェ:最初から大きなものではなく、1ヶ月から3ヶ月程度の小さいプロジェクトで結果を出すところからスタートしたほうがよいようです。
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アーフィ:AIとSI/DataとHardwareの単独ではなく、それらを全て鑑みた共通部分がValue、つまりビジネス価値になります。
インジェ:AI分野だけではなく、関連する複数の分野に興味を持つ必要がありそうです。
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アーフィ:別角度から数式形式で、ビジネス価値を表しています。
インジェ:これらの加算や掛け合わせによって、ビジネス価値が生まれると。
アーフィ:エンジニアリングだけでなく、ビジネス側の理解も必要です。
インジェ:特に上流工程であるコンサルティングにおいては必須でしょうね。
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アーフィ:以上で書上さんのお話は終わりです。KICONIA WORKS社の皆さんの、現場での経験を通じて得られた貴重な知見を教えていただけました。
インジェ:KICONIA WORKS社にご興味を持たれた方は、ぜひコンタクトを取られてみてはいかがでしょうか。
質疑応答タイム
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インジェ:この後、質疑応答の時間が設けられました。slido.comというシステムを利用し、会場の参加者の皆様からの質問を受け付けました。
Q1 クライアントから、問題を難題を無茶振りされたときの対応のノウハウを知りたいと思います。
書上さん:私たちの方から無理な提案をしない、というのがあります。結果が出そうにないものについては、「やらないほうがいいです」という回答をします。
プロジェクトが始まった後に変更されないよう、開始する前にキックオフのMTGで要件を確認し、ある意味でエビデンスを取っておくことも心がけています。
Q2 2019年のトレンドになりそうな技術などがありましたら教えていただきたいです。
書上さん:最近KICONIA WORKS社内で少しはやりはじめているのが、データが無いときに3Dなどで仮想的にデータを作って学習させて実運用に回す、というのがあります。データを作成したりかさ増ししたりして使う、ということです。
Q3 作ったアルゴリズムごと顧客に渡すとはどういう意味ですか?所有権ごと渡すと、新規案件に過去のモデルが使えなかったりして色々不便だと思うんですが。
書上さん:知的財産の対象には、ノウハウ、アルゴリズム(計算手法やフレームワークを含む)、学習済みモデルが考えられます。ノウハウは私たちの頭の中にありますので所有権に縛られません。アルゴリズム(計算ロジック)は、99.9%同じコードでも、全く同じでなければ(1文字でも違えば)異なるモデルであると考えています。
ただ、「競合企業では同じものを使ってはいけない(そことは仕事してはいけない)」と約束させられることもあります。
アーフィ:AI特許に関する記事( AI特許のオープン化と囲い込み、相反するテック大手の戦略の真意|WIRED )がありました。ご興味があればご覧ください。
インジェ:AIシステム開発の第一線でご活躍中のKICONIA WORKS社の書上さんの貴重なお話をお伺いすることができました。ありがとうございました。
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