今回は、ゴールドマン・サックス→Googleというご経歴を持つ、株式会社Belong CTOの福井さんにインタビューを実施しました。グローバルな環境に身を置き、世界基準のエンジニアリングを学んできた福井さん。そんな福井さんが語る、“日本と世界のエンジニアリングにおけるギャップ” や “世界を目指すサービスを開発するための組織論” は必見です!

自分が勝てる領域としてエンジニアリングを選択

 ―エンジニアを目指したきっかけを教えて下さい。

大学で情報系の学問を専攻していたので、その流れでエンジニアになりました。情報系の学部に入った理由は、高校生当時に楽天などのIT企業が目立っており、高校生なりに将来を考えた時、今後伸びていくIT業界に身を置きたいと思ったからです。

―大学に入るまでにプログラミングに触れる機会はありましたか?

なかったです。大学生になって初めてプログラミングをしました。そこで、手元で記述したプログラムが思い通りに動く楽しさを実感しました。そして徐々に仕組みを理解していき、プログラミングが “好きで得意な分野” になりました。当時はエンジニアだけでなく、コンサルなど他の職業に就くことも考えていました。しかし最終的には、自分にとってソフトウェアエンジニアリングが一番の “勝てる領域” だと思い、エンジニアになろうと決めました。

― “勝てる” と思った理由をお聞かせいただけますか?

課題に直面した時にとにかく解決方法を見つけるという点で、周りの人より得意だと感じてました。要因として半分は諦めない根性(笑)、残りの半分は想像力と分析力ですね。問題が発生した時に「なぜ発生したのか?」と考えられる想像力と、多面的に状況を分析した上で、その原因を仮定できる強みを持っていました。プログラミングに置き換えると、問題発生時に目の前にあるコード、ネットワークやメモリなどの直接的には見えづらい周りの状況を分析したうえで原因を突き止め、最適な解を導くことです。あとは、その解をアウトプット表現するだけです。

グローバルな環境で金融×テクノロジーの知識を身につける

―楽天やライブドアなどのIT業界に興味を持っていたにも関わらず、なぜ金融業界のゴールドマン・サックスをファーストキャリアに選んだのですか?

理由は3つあります。1つ目は、企画開発からテスト開発まで一貫して携われるからです。SIerなどでは、上流から下流まで一貫して開発・テスト・運用と関わることが難しいので、一気通貫で開発出来る企業に絞っていました。2つ目は、もともと経営や金融の分野に興味があり、その知見を活かし高められると考えたためです。将来は会社経営に関わりたいと思っていたこともあり、経営をする上で必須の金融知識を身に付けたかったんです。3つ目は、英語力を鍛えられるためです。私自身、英語に対する苦手意識はなかったので、グローバルな環境で英語力をより伸ばしたいと思いました。

―具体的な業務内容を教えてください。

最初4年半は、デリバティブ商品に関わるシステムの開発・運用を行っていました。具体的には、定期的にイベントが起こるOTCデリバティブの情報管理・伝達をするためのシステムの開発などです。その後、部署異動を希望して、社内クラウドシステムの開発に1年ほど携わりました。異動した理由は、より汎用的な技術を身に付けたいと考えたからです。ゴールドマン・サックスでは超優秀なエンジニアが多く、いわるゆる “オレオレフレームワーク” と呼ばれる独自のフレームワークを作成して使用していました。これも本質的な考え方の部分では変わらないのですが、会社の外でもすぐに使えるスキルセットの方が望ましいと感じていました。今後クラウドが中心になることはわかっていたので、クラウド関連の技術を学ぶことが、どこでも通用するエンジニアになることに繋がると思いました。

―ゴールドマン・サックスで働いたことで、どのような学びがありましたか?

準備の大切さを学びました。入社してすぐ、現地のインド人と2人でプロジェクトを任されたのですが、言語や時差(時間的には3時間半違いだがあちらは遅く働き始める)に悩まされて残業続きの日々を過ごしていました。私自身、「遅くなってもやりきれば良い」と思っていたのですが、毎日20時までには帰っていく他のメンバーとガラガラのオフィスを見て、「生産性が低い」という危機感を覚えました。そこで、業務をより円滑に進めるために準備にこだわりました。具体的には、

・コミュニケーションで遅れを取らないように、必要な情報を集めておく

・資料を事前に共有してミーティングの時間を短縮する

などを実行しました。このような取り組みによって帰宅時間が早まり、毎日帰宅後3~4時間読書をする時間を確保することができました。また、先程申し上げたように独自のフレームワークを作っている優秀なメンバーから、0→1の開発を学ぶことが出来ました。

Googleでクラウドの専門性を磨く

―その後、なぜGoogleに転職されたのでしょうか?

クラウドの知識をさらに深め、開発の幅を広げたいと思ったからです。クラウドに携われる企業は他にも複数社あったのですが、働きやすさという観点でGoogleが一番良いと思い、入社しました。

―Googleでの業務内容や働く環境を教えていただけますか?

テクニカルソリューションエンジニアというポジションで、主に企業からのGoogle Cloud Platform (GCP) に関するお問い合わせの課題解決を行っていました。働く環境としては、ボトムアップのカルチャーが強かったです。ミーティングでの議論も盛んで、「既存のシステムや体制を変えていこう」といったマインドのメンバーが多く、それが受け入れられる環境がありました。同じ外資系企業でもゴールドマン・サックスはトップダウンのカルチャーが強かったので、ここは大きく違う部分だと思います。また、ソースコードやドキュメントが社内で公開されており、クラウド上のアプリケーションの仕組みを学ぶことも出来ました。GCPやGWSなどの自社サービスを、好きに使い倒せる点もありがたかったですね。おかげさまで充実した環境下でスキルアップできました。

技術力は負けていない。それでも世界と日本のギャップはある

―2社のグローバル企業を経験してみて、日本と海外のエンジニアリングにおける違いはありますか?

一般的なエンジニアの技術力でいうとそれほど差はなく、日本人も世界で十分通用するはずです。しかしコミュニケーションにおいては差を感じました。海外の人の方がより自分の意見を主張する傾向にあります。ただ主張するだけでなく、自分がどのように意見するかを常に考えながら相手の話を聞いているんです。私自身もよく経験するのですが、会議等で日本人は質問をしない傾向があります。私が昔言われて印象に残っていることが、「質問をしないのは内容を理解していないか興味がないからだ」という言葉ですが、主張に対する積極性や話の聞き方にギャップがありますね。また、失敗の捉え方も違います。日本だと失敗に対しては、マイナスのイメージが強いと思います。一方で海外では、失敗をしても「挑戦は評価する。この失敗を次にどうやって活かそうか?」とポジティブに捉える傾向があります。何も学べない失敗はやはり厳しい評価にはなりますが、基本的にはチャレンジを推奨する土台になっています。

なるべく英語でドキュメント化:世界を目指すBelongのCTOに

―GoogleからなぜBelongのCTOになったのですか?

学生時代から起業やCTOといった組織の立ち上げに興味があったからです。きっかけは、昔からの友人である現COO清水からの誘いでした。清水は、現在のBelongの事業である中古スマホ事業でCEOの井上と共に起業しようとしていたのですが、当時の上司らから子会社として設立しないかと打診を受けていました。その際に、CTO候補として私に声をかけてくれたんです。清水とは8年来の付き合いだったので信頼していましたし、そんな仲間と仕事がしたいと思いBelongにジョインしました。

―今までの2社は大手企業でしたが、スタートアップにジョインして感じた大変なことはありますか?

リソースが少ない中で業務を効率的に進めることが大変ですね。この状況下で最大限のパフォーマンスを発揮するために、“やるべきこと” と “やらないこと”、“やらないことによるリスク” を考えて業務を遂行しています。CTOとしてトップダウンで指示を出すこともありますが、ボトムアップの要素も取り入れてメンバーの意見や主体性も重視しています。採用にも力を入れており、半年間で10人のエンジニアチームに成長しました。

―CTOとしてマネジメント方法などで工夫していることはありますか?

2つあります。1つ目は、業務が属人化しない仕組みづくりをしています。具体的には、

・Infrastructure as Codeの採用

・ドキュメンテーションの徹底

・自動生成生ツールを使う

・手動での作業を無くしコマンドでの実行

などを実施しています。いかに簡単に再現性を持って業務を遂行できるかという点を大切にしていますね。2つ目は、英語の浸透です。私の実体験として、優秀なエンジニアは世界中にいます。彼らが、言語の壁を理由に当社に入社できないといった事態を防止するために、止む終えない場合以外は英語でドキュメント化しています。また、クラウドベンダーの公式ドキュメントの英語・日本語の差異からも分かる通り、IT業界の一次情報は英語で発信されるため、社員には英語に慣れて欲しいという想いもあります。実際にアメリカ人のエンジニアを採用できた実績もあるので、今後さらにグローバルな組織にしていきたいですね。

解ける問題の深さがエンジニアとしての希少性に

―エンジニアとしてスキルアップする中で、大切にされてきたことはありますか?

“正しいことを正しくやる” ということを大切にしています。これは、私が尊敬する元マネージャーの教えです。この言葉を言い換えると、“正しい問題を正しい手法で解く” という意味です。前提として、解く問題が間違っているとどんな素晴らしい方法を用いても意味がありません。また、解き方が間違っていても本質的な問題解決には繋がらないわけです。つまり問題解決においては、解く問題と解き方のどちらも正しい選択をする必要性があります。

―正しいことを正しくやるためにはある程度の知識が必要だと思うのですが、インプットをする際に気をつけていることはありますか?

情報収集は、目的に応じてインターネットと本を使い分けています。まず、何かわからないことに直面した場合はインターネットで調べたりその専門家にあたったります。これは、目の前の課題に対して単純に答えが得られる手軽な方法です。一方で本に関しては、自分では疑問にすら感じない、認知していない領域の知識を得るために使用します。自分の中に知識のインデックスを作るために読んでいる感覚です。また、有用な本は何度も読み返して理解を深めます。

―今後のエンジニアに求められるスキルは何だと思いますか?

クラウド技術と特定分野の専門性だと思います。クラウド環境では、PaaS的なアプリケーションロジックに集中出来るプロダクトが増えています。これらを使いこなすことで少ない人数でもスケーラブルで可用性の高いサービスを構築できる環境が整っています。また、「この分野なら誰にも負けません」という専門領域を持つことも大切だと思います。実際に採用活動を行う中で、専門性がある人は目に止まりやすいです。何でも出来るけど専門性がない人は、いたらいいけど替えがきく存在になってしまう可能性があります。解ける問題の深さがエンジニアとしての希少性になってくると思うので、得意分野を徹底的に伸ばすことが市場価値の向上に繋がるのではないでしょうか。

世界に通じる尖った技術者集団へ

―福井さんの夢は何ですか?

仕事とプライベートでそれぞれ夢があります。仕事では、世界に通じるグローバルな技術者集団を作っていきたいと考えています。将来的にはBelongのサービスをグローバルに展開していく予定で、必ず実現させます。プライベートでは、好きな時に趣味の魚釣りができる生活を送りたいです。費用対効果や納期を気にせずに、好きな時に自分が好きなプロダクトを作る生活も良いですね(笑)。

―自由な生活の中にも、エンジニアリングがあるほど、根っからのエンジニアなんですね。最後にどのような人と働きたいか教えていただけますか?

大前提、エンジニアリングが好きな方と働きたいですね。スキルの部分では、開発言語にGoを採用しているので、Goを用いた開発が好きな方やGoをこれから学びたいと思っている方を歓迎したいです。志向性の部分では、繰り返しの作業を良しとするのではなく、自動化して効率化しようとするマインドをお持ちの方が、当社のカルチャーにマッチしています。

取材を終えて

ゴールドマン・サックス、Googleと世界のトップ企業で仕事をされた経験をお持ちですが、すごく謙虚な姿勢でわかりやすくお話しいただきました。グローバルな環境で経験を積まれてきた福井さんのお話からは、世界標準の姿勢が見えてきました。コミュニケーションの課題は多く叫ばれていますが、常に疑問を持ち、それを口に出すことが重要なのだなと感じました。エンジニアの仲間を絶賛募集中とのことです。

・やらされるのではなく、自分で仕事を作っていきたい

・グローバル経験を持つCTOからスキルや考え方を学びたい

・世界進出を目指しているスタートアップで働きたい

と考えているエンジニアにとって、Belongさんには最高の環境があると思います。今後、より一層グローバル化が進む世界で市場価値を高めたい方は、ぜひBelongさんの門を叩いてみてはいかがでしょうか。

プロフィール:福井 達也

新卒で Goldman Sachs にソフトウェアエンジニアとして入社後、ニューヨーク・ロンドン・東京を主としたグローバルチームの一員として社内ソフトウェア開発・運用に従事。

その後 Google にテクニカルソリューションエンジニアとして転職し、 Google Cloud Platform のスペシャリストとして顧客に対する技術支援や社内で利用するソフトウェアの開発を行う。

Belong Inc. の立ち上げに伴い同社 CTO に就任。エンジニアリングチームをゼロから立ち上げ、技術戦略立案・サービス開発・エンジニアマネジメント等に従事。

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