AIを活用した自動売買のCtoCプラットフォームQUOREA(クオレア)を開発・提供している株式会社efit。
今回は、そんなFintechというホットな領域で成長を続ける同社CTOの飛田さんにお話をお伺いしました。
SIer→フリーランス→システム会社設立→CTOとして創業と、エンジニアが通りうる幅広い領域で経験を積まれている飛田さん。
“自由” になるための手段としてエンジニアをされてきた飛田さんの経験や考え方は、みなさんの人生に新たな選択肢を与えてくれるかもしれません。
週間タスクを1日で完成させた駆け出しエンジニア時代
―まずは飛田さんがエンジニアになろうと思ったきっかけを教えていただけますか?
きっかけというほどのきっかけはなく、いよいよ就活しなきゃなとなった時、 “SE” という響きがかっこいいなと思って選考を受けてみたら受かったのでエンジニアになりました。就活を始めるのも遅く、周囲が大学3年の夏あたりから就活を始めていたのに対し、私は4年になってから始めるといった有様でしたね。
正直、学生時代から今に至るまで「働きたい」と思ったことは一回もなく、ただただ「自由になりたい」と思っていました(※自由の定義は後述)。端的に言えば人生なめてたんですね(笑)
―では、全くの未経験でエンジニアとして就職されたのですか?
はい、未経験で就職しました。大学では理工学部の物理情報工学科に所属していたので情報系の授業も受けていたのですが、プログラミングに興味を持つことはなかったですね。必要もなかったですし。
強いて言えば、卒論が振り子の力学をプログラミングして解析するというものだったのでそこで少し触りましたが、教授がかなりサポートしてくれたこともあり、実務スキルとしてはほとんど身につきませんでした。
―未経験で入られた1社目では、どのような開発をされていたのですか?
東証一部上場のSIerに就職し、金融のミドルウェアの開発に携わりました。
具体的には、基本的なソフトウェアとアプリケーションの中間に位置するミドルウェアの開発です。
ATM等を想像されるとわかりやすいかと思いますが、金融のシステムは基本、24時間365日、何があっても絶対に誤作動や停止などあってはならないシステム(ミッションクリティカルなシステム)です。
そのようなシステムに対し、業務処理の負荷を分散させることで障害を起こしにくくしたり、それでも万一障害があった際にその影響を極小化するようにしたりするのがこのミドルウェアの役割です。
―学生時代には興味を持てなかったプログラミングですが、社会人になって心境に変化はありましたか?
特になかったですね(笑)
冒頭の通り、今でも働きたいとは思っていませんから、当然今でもプログラミングは好きではありません。ただ、プログラミングは自分に向いているなとは思いますね。
例えば新入社員の頃、上司から言われたタスクはだいたい1/5とか1/10の日数で終わらせていました。1週間で渡されたタスクを1日とかですね。
手前味噌ですが、私は幼い頃から頭の回転は早いほうと言われていました。これがプログラミングをする上では武器になっているのかなぁと。
プログラムは組めばその通りに動くものなので、ロジックを頭の中で組み立てて、時には設計書に落とした上で実装するわけなんですが、その組み立てるスピードなり能力なりがもともと優れていたのかなと。
ちなみに、タスクを渡されれば「これは1日とかだな」というのも最初から割と正確に見積れていたので、それ以外の時間はまずサボって(1週間で渡されたタスクは最初の4日サボるなど)、最後に仕上げ、さもちょうど終わったかのように装って上司に報告するとかしていましたね(笑)
フリーランスに転向し、仕事の厳しさを知る
―その後フリーランスになっていますが、仕事に対する向き合い方に変化はありましたか?
勉強をするようになりました。せざるを得ない状況に追い込まれたといった方が正しいかもしれません。勉強も仕事同様好きではないのでなるべくしたくなったのですが。
会社員であれば良くも悪くも収入はある程度保証されていますが、フリーランスはそのようなものはありません。こちらも良くも悪くも、自分のスキルに応じて収入が全く変わる世界です。当然現場では即戦力として期待されますし、それに応えられなければ淘汰されていきます。
自分が今まで経験しなかったような難しいタスクも否応なしに降ってきました。
当時は今ほどネットになんでも書いてある時代ではなかったので、書籍とかを読んだりもしましたね。ちなみに本を読むのも好きではありません(笑)
―多くのエンジニアがフリーランスになる理由の1つに「収入アップ」があります。飛田さんは、フリーランスになって収入は上がりましたか?
かなり上がりましたね。転向して間もない25歳の頃には、すでに一般的な新卒社員の3、4倍の収入はあったと思います。
また、フリーランスとして仕事を請け負う一方で、個人事業主として直で仕事を受けていました。こちらの単価もかなり良かったです。正社員の時と違い、5倍の速度で終わらせられれば時給換算5倍ですからね。
その後システム受託会社を設立したりして、結果的に稼ぎとしてはよい状態が続きましたが、同時にそのスタイルには限界を感じてもいました。
このままずっとプログラミングをやり続けたとしても、私の目指す「自由」には到達できないとわかっていたんです。今のスタイルではスキルがあがれば確かに時給換算ではあがるけれど、それって結局、時間の切り売りでしかないですからね。
それを打開するのは何か。起業して自分のプロダクトを作り、それをスケールさせることだと考え、それに向けて動き始めたんです。
“自分にないもの” を持っている宮原さんと出会い、efitを創業
―起業を決意してすぐにefitを立ち上げたのですか?
いえ、起業すると決めたはいいものの、まずはともに事業を行うパートナーを探さねばなりませんでした。私はものを作ることにはそれなりに自信も自負もあったものの、それを広めるという意味においては全く知見がなかったですから。
そしてそのパートナー探しは難航しました。定期的に起業家や起業を目指している人が来る集まりに参加したものの、フリーランスや前述した自身の会社の案件で多忙だった時期でもあり、片手間ではなかなか難しいもので。
efit創業前に、その活動の一環で出会った方と事業開始しようとしたこともあったんですが、事業の将来性など諸般の事情で、プロトタイプのプロトタイプぐらいのレベルまでいったかいかないかくらいで頓挫していました。
そんな中、宮原と出会ったんです。彼は私と逆で、大手証券会社で営業をやっていたこともあり、私にない “ものを人に広める力” が抜群でした。逆にエンジニアとして見たらアレな感じでしたが(笑)彼の責任感ある人柄に魅力を感じたこともあり、彼がCEO、私がCTOとして、ともにefitを創業する決意をしました。
―宮原さんと飛田さんは、お互いにないものを補完し合う関係なのですね。efitではどのようなプロダクトを作っているのですか?
AIを活用した自動売買のCtoCプラットフォームQUOREA(クオレア)を開発しています。
QUOREAには、「人間の判断は間違うことがある」という前提があります。「今の価格は間違っているかもしれない」という前提ですね。
今の株価はもしかすると本当の価値よりは高いかもしれないし、逆に安いかもしれない。高ければ売るべきだし、安ければ買うべき。
このような「まだ市場に発見されていない価値」を、過去の膨大なデータを紐解くことで見つけようとするのがQUOREAです。
―なるほど。プロダクト作りは苦労もあるかと思いますが、起業されてからプロダクトの成長曲線はどのようなものでしょうか?
順調な成長曲線を描いています。特に、昨年末から今年のはじめにかけて仮想通貨の価格が大幅に上昇したタイミングでユーザー数も大幅に増加しました。
しかし、まだまだPMFしたとはいえないレベルですので、今後さらにスピード感をもって成長させていかねばならないと感じています。
フリーランスから自社サービス開発になり、プロダクトへの愛が芽生えた
―エンジニアとして成長したなと感じた期間やプロジェクトはありますか?
そういう意味では、現efitでの経験をおいて他にないかなと思います。
私がそれまで行っていた受託開発は、作る側からしてみれば「発注者の要望」というはっきりとした正解があります。それが本当に必要なものか、それ以外にソリューションはないのか、それは本当にエンドユーザーに喜ばれるものなのか等々、受注者の立場では考える必要は極論、全くありません。
一方、efitでは真逆で、上記のことをユーザーの視点・立場に立って考え続けなければなりません。むしろそれしかしないでもいいくらいです。
efit以前の私と今の私をエンジニアという観点で比べた時、両者の間に越えられない価値の差を生むほどに、efitでの経験は私を成長させてくれた(ている)と思っています。
―ユーザーファーストの姿勢ですね。作っているシステム(プロダクト)に対する見方も変わりましたか?
大きく変わりました。愛情を持っているというか、例えるなら自分に子供がいたらこんな感情なんだろうなという感じです。
常に「自分がこの機能を使うユーザーであればどう感じるか?」「ユーザーからどう思われるのか?」「どうすればユーザーに愛され、みんなに使ってもらえるようになるか?」といった目線でプロダクトを見ています。
―自社サービス開発になったことに加えて、大きく立場が変わっていると思います。そのあたりでの変化はありますか?
個人としては変わっていませんが、弊社に出資してくださった株主各位、ともにefitを立ち上げた宮原、社員含め、ステークホルダーが圧倒的に増えたことで自身が感じる責任感は大きく増しました。自身の一挙手一投足がもたらす影響が圧倒的に大きくなっていますし、ステークホルダーにはいつも大変助けられていますので、少しでも恩返しをするつもりで日々死ぬ気で業務にあたっています。
飽くなき探求心と折れない心が、エンジニアには求められる
―続いて、エンジニアとしての習慣、大事にしていることをお伺いします。習慣の一つとして、学習についてお聞かせください。飛田さんはどのように学習していますか?
前述した通り、正直に言うと、勉強はそこまで好きじゃありません。
それでも、何か作らねばならないものがある、あるいは解決すべき問題がある時、「何が課題か?」を考えます。課題から、技術的にどう解決できるのか?を徹底的に調べます。
私の場合は、“必要に迫られて徹底的に追求する” タイプです。結果的に技術的な学習につながっていると思います。
―なるほど、エンジニアとして大事にしていることってありますか?
今も昔も、私が目指していることは「自由になること」ただ1つです。そして、そこへ最短距離で突き進みたいと思っています。
そう思った時に、未知度が高いタスクはなるべく優先的に排除すべきと考えています。
―やるべきことでなく、今後障壁になりそうなことを先に潰すという考え方ですか?
もちろん、法的な対応など、優先順位が明らかに高いものは先に片づけますが、優先順位がおおよそ同じくらいなのであれば、自分がよくわかっていないタスク、未知度が高いタスクを先に片付けようとします。
わからないというのはすなわち、リスクの塊だからです。わからないものには手を出したくないのが人情ですし、私もご多分に漏れず「面倒くさいな」などと思うのですが、そういったものに限って、放置していると往々にして会社の存在すら揺るがしかねない大きな爆弾となったりするので、可及的速やかに対応するようにしています。
―これからのエンジニアに求められることってなんだと思いますか?
今後に限らずかもしれませんが、「飽くなき探究心」と「折れない心」この2つだと思います。
エンジニアの仕事は、どこかに必ず「やったことがないこと」が含まれます。
仮に、過去に全てやったことがある仕事なのであればコピーするだけでよく、最早それはやる必要すらないことだからです。
そんな「やったことがないこと」「未知なこと」に相対する原資があくなき探究心なんだろうと思いますし、それをもってトライ&エラーを繰り返し未知を片付けていく日々において、必ず出てくる「全く光が見えない問題」を解決まで導くための必要条件が折れない心なのだろうと思います。
今は正直、エンジニア業界は需要過多で、昔よりもはるかにいい条件で仕事につくことができます。
しかし、上記の2つを持ち合わせていないエンジニアは仕事につけても遅かれ早かれ淘汰されてしまうと思いますし、運よくそうならなかったとしても「企業にとって、いてもいなくても大差ない人材」にしかなりえないと思います。上記2つを持ち合わせることが、エンジニアとしての自身の市場価値上昇にもつながるのではないでしょうか。
自由になりたい。そのために、責任を果たす
―飛田さん個人としての夢はありますか?
何度かお話ししていますが、“自由になること” が私の唯一絶対のゴールです。自由って、曖昧な表現なのですが、「好きなことを好きな時に好きなだけやる」というのが私なりの定義です。
―なるほど、その状態ってどうなると達成するとお考えですか?
少なくともお金も人脈も、時間も豊富にないといけないかなとは思っています。
何をするにもお金は必要ですし、仕事をやめるためにも必要ですよね。仕事をやめることで、時間の創出にも繋がります。
ただ、それだけでもだめで、自分だけで出来ることには限りがあるのは純然たる事実なので、自分の知らないことを知っている人、自分には出来ないことが出来る人とのコネクションも絶対に必要になります。
それらを達成するための私なりのソリューションが、efitを成功へ導くことなので、今死ぬ気で仕事しています。将来仕事をしないために(笑)
―自由には責任がつきものですが、まさに大きな自由のためにこれまで責任を果たしているなという印象です。
仰る通りかもしれません。
個人的にも、自由にはその大きさに比例した責任がついて回ると思っています。私の場合きっと、目指す自由が大きいものであるからこそ、大きな責任もセットでついてくる。私の求める自由は、その大きな責任を果たさねば手に入らないものなんだろうな、と常々感じています。
自由のカルチャーの中、爆発的成長のできる組織をともに創りあげたい
―エンジニアの職場としては、どのような雰囲気でしょうか?
個を認める文化があります。
極端な話、私は「会社は個がそれぞれ思い描く最高の自分を追求するための手段」でしかないと思っているのですが、その意味で、その人の目指す自分、なりたい自分をefitを使って実現してもらえればいいかなと思っています
とはいえ、会社と個人がともにパフォームすることは必要なので、個は個を追及してもらいつつも、その上で会社の目指す方向とマッチさせるというのがCTOとしての私の役割なんだろうなと考えています。
―具体的にはどんな方に参画してほしいですか?
自分自身に責任がもてる方、自発的に動ける方です。
仮に、私の指示は完璧にこなしてくれるけれど、それ以外は一切何もしないという人材がいたとします。
もちろん、「言われたことをできる」というのは素晴らしいことですし、完璧にできるとなると希少価値は非常に高い、稀有な人材だとは思います。
ですが、それでは私の能力の範疇でしか組織は成長しません。だって私の指示しかしないのですから。
私は、自らで自らを成長させることのできる開発組織を目指しています。きっとそれでしか爆発的な成長はないと思っていて、そのために私にないアイディアやアプローチを出せる方、冒頭のような人材をすごくすごくすごく!求めています。
爆発的な成長のできる組織を一緒に作っていってくださる方、お待ちしております。
インタビューを終えて
「自由になりたい」と仰ったり、「サボりたい」と仰ったり、一見変わった人と見間違うかもしれません。それでも、あくまでも責任を果たして自由になる、成果は出す上で楽したいという飛田さん。お話を聞くと、戦略的に自由を目指している印象を受けました。自由と戦略的と少し相容れない2つの要素が魅力的です。自由な組織は、魅惑的な言葉ですが、実現のハードルは高いと思います。それでも飛田さんなら、やってくれるのではという期待が大きく膨らみます。
プロフィール:飛田剛
大学卒業後、大手SIerに就職しエンジニアとなる。その後フリーランスを経て独立し、数億円規模のシステム開発マネジメントを複数経験。現在は株式会社efitのCTOとして、自由を目指しつつも業務に邁進する日々。