今回は、株式会社primeNumber CTO鈴木さんのインタビューをお届けします。2021年12月には、シリーズBで約13億円の資金調達を実施されたprimeNumberさん。メインプロダクトの『troccoⓇ』は、約半年間で顧客数が2倍になるなど、今注目のスタートアップ企業です。そんな急成長中の同社を支えるCTOの鈴木さんが大切にされていることは、“ユーザーを徹底的に理解すること” 。ユーザーを通してエンジニアリングのおもしろさを感じ、成長してこられた鈴木さん。キャリアやプロダクト開発に対する向き合い方は、学びになること間違いなしです。

自分が作ったプロダクトを多くの人に使ってもらう喜びを感じる

ーまず初めに、鈴木さんがエンジニアになるきっかけを教えていただけますか?

幼少期からものづくりをしていたからですね。小学生の頃に父親から譲り受けたPCで、BASIC言語を用いて簡単な計算アプリを作ったことが、原体験になります。誰かに使ってもらうわけではなく、自分の興味本位で作ってみました。中学生になってからは、学校でプログラミングが流行っていた影響もあり、自分でWindowsのゲームを作って公開してみることに。Windowsアプリを簡単に制作するツールがあったので、コードをコピーして作れる部分も多かったのですが、自分なりに工夫したところもありました。すると、そのゲームがパソコン雑誌に取り上げられたんです。家に送られてきたその雑誌を見て、親も喜んでくれました。また、自分が作ったゲームでたくさんの人が遊んでくれた喜びも感じました。ものづくりのおもしろさを知るにあたって、この “ユーザー” の存在はとても大きかったですね。

ー高校や大学でもプログラミングをされていたんですか?

高校ではほとんどやっていなかったですね。大学では、機械工学を専攻していたので、授業でプログラミングに触れる機会はほぼありませんでした。一方でプログラミングへの興味はあったので、個人的にPHPを勉強してWebアプリを作ってみました。これがTwitterで話題になり、一時的に多くのユーザーが自分のサイトに訪れて使っていただけたんです。この経験を通して、「自分は、ものを作ること自体も好きだけど、何を作るのかを考えることも好きなんだ」ということに気づきました。そこで、ものづくりの “企画” と “開発” の両方ができるWeb業界で働くことを決意。新卒でエンジニアとして、リブセンスに入社しました。

結果が出ないとおもしろくない:失敗を糧に売上数倍増に貢献

ー数あるWeb系企業の中で、リブセンスさんを選ばれた理由は何ですか?

急成長企業の中身に興味を持ったからです。リブセンスは当時、メディアでもよく取り上げられていたので、どのような人がどのように会社を成長させているのか気になったんです。自分自身、“完成された大企業” ではなく、“発展途上の成長企業” へ就職したいと考えていました。そっちの方が、若いうちからいろんな経験を積んで成長できると思っていたんです。リブセンスでならそれが実現できると感じ、入社しました。

ー成長企業に入ってみて、いかがでしたか?

エンジニアリングの難しさを痛感しました。新卒社員として入社後、4人の新規事業チームに配属されました。しかし、この事業は約1年でクローズすることに。それまでの経験上、ユーザーの声を聞きながら作っていけばうまくいくと思っていました。ところが、実際に開発を進めていくと、自分のスキル不足を実感。今思い返すと、ユーザーの声も上辺しか聞けていませんでした。結果が出ない、つまり自分が作ったものが使われないと、こんなにもおもしろくないんだと強く感じましたね。

ーその後は別のプロダクトを開発されたのでしょうか?

その後は、口コミメディアを開発しました。私が入った時は5〜6人ほどのチームだったのですが、優秀なエンジニアやディレクターがチームにいました。詳細な数値分析をし、アイディアを出し、開発していくというPDCAサイクルを高速で回しました。すると大幅に目標を達成することができたんです。この時、自分がやりたかったのは、「これだ」と思えました。やはり、結果が出ないとおもしろくありません。口コミメディアは、2〜3年の間に売上もチーム規模も数倍以上になり、そのタイミングで私はprimeNumberに転職しました。

プロダクトを成長させるためにCTOとなる

ーprimeNumberさんに転職された経緯を教えていただけますか?

そもそも、転職前に副業としてprimeNumberに入っていました。当時、私の知人も同社で副業を行っており、その方に誘われて参画することになりました。リブセンスでの仕事に一定の満足感を覚えていたこともあり、もっと視野を広げたいと思ったんです。とは言っても、転職するつもりは全くありませんでした。しかし、実際に働いてみると、「自分がおもしろいと感じるのは、エンジニアが数名の企業フェーズでプロダクトを成長させることだ」と気づきました。リブセンスでの、“やればやるほど売上やメンバーの人数が増えた経験” を思い出したんです。そんな中、primeNumberで仕事をやるにつれて、周りのメンバーと一緒に働くイメージが湧いてきました。待遇面からも、エンジニアを大切にしてくれている文化を感じられ、正社員としてジョインすることにしました。

ー副業として参画されてからは、どのような開発に携わっていたのですか?

自社プロダクトである、汎用型データエンジニアリングPaaS『systemN ™』の開発を行っていました。具体的には、データ収集領域の改修やAWSの設定変更などです。その後は、もう1つの自社サービスである、データ統合自動化SaaS『troccoⓇ』の開発をリードしています。それ以外には、受託開発も行っていました。データ周りで困っているお客様の開発をご支援していました。

ー将来的にCTOとなる前提で、正社員としてジョインされたのでしょうか?

いえ、入社時点ではCTOになる予定はなかったです。CTOになったのは、入社してから1年半くらい経ったあたりでした。自分からなりたいと意思表示していたわけでなく、会社からの打診を受けました。ちょうどその頃は、シリーズAの調達完了前後で自社サービスの『troccoⓇ』を伸ばしていく意思決定をするタイミングでした。当時はCxO制度もなかったので、組織体制を強化していくためにCTOを新設することに。そこで、troccoⓇの開発リードを担当していた私に声をかけていただいたわけです。入社後、難しい開発で実績を残していたことを評価していただけたのだと思います。

ーCTOとしての打診を受けた時はどう思われましたか?

単純におもしろそうだなと感じました。それまでの私のキャリアは、プロダクトの開発リードというよりは、現場でいちエンジニアとして開発に関わる期間の方が長かったです。しかし、troccoⓇが成長する過程で出てくる、組織やプロダクトの課題を1つ1つ解消していくことも楽しそうだと思いました。また、troccoⓇが伸びるためであれば、ぜひやりたいという気持ちもありましたね。

ー鈴木さんがCTOになられて感じる、CTOに必要な3つの要素を教えていただけますか?

1つ目は、“信頼して任せる” です。これは自身の何でもやろうとしてしまう性格も影響しています。自分1人で抱え込んでしまうと組織としては上手く機能しないので、メンバーを信頼してお願いすることが大切だと思います。2つ目は、“誰よりも技術に対するキャッチアップをする” です。変化の激しい現代において、新しい情報にキャッチアップしていかないと時代に取り残されてしまいます。メンバーに信頼してもらうという意味でも、まずは自分がその姿勢を示すことを大事にしています。3つ目は、“仕事をとにかくがむしゃらにやり切る”  です。どんな高い壁にぶち当たったとしても、物事を前に進めようとする突破力がCTOには必要だと思います。

ユーザーの解像度を上げてプロダクトの意義を理解する

ー今までで一番エンジニアとして成長したと思う経験は何ですか?

先述した、リブセンスでの口コミメディアの開発経験ですね。特に、当時のプロダクトマネージャーの姿勢は大変勉強になりました。ユーザーのデータを細かく計測・分析してボトルネックを発見。企画を立てる時は、「何をもって達成とするのか?」まで定義する。その目標を達成するために、足りない指標を見つけて計測。そもそもこの施策で達成できるのかを考える。など、「ユーザーを理解して、ユーザーをどのように観測するか」といった企画の立て方を徹底的に叩き込まれました。ゴールまでの筋道を立てて、実行していくという、エンジニアとしてだけでなく、ビジネスパーソンとして基礎となる仕事の進め方を学びました。

ー様々な経験を通して成長してこられた鈴木さんが、エンジニアとして大切にしていることを教えていただけますか?

“ユーザーを理解して開発を進めること” ですね。ユーザーの解像度を上げて、「プロダクトが何のために作られているのか」「どういった機能を実装して、何を捨てるべきなのか」を理解しなければなりません。プロダクト開発における最終的なゴールは、最短距離でお客様に価値を届けることだと思います。その中で、工数がかかることや、将来的に負債になりそうなことは、できるだけ避けたいです。その判断基準として、ユーザーへの理解、つまり「ユーザーは何を求めているのか」といった観点が重要になってきます。

ーユーザー理解を深めるために工夫されていることはありますか?

CSチームと連携をとって、ユーザーからフィードバックを積極的に収集しています。toB系のプロダクトの特徴として、1人1人のユーザーとの距離が近い点が挙げられます。そのため、私達エンジニアもユーザーとの打ち合わせに同席することも。自分が作る機能に対するフィードバックを頂き、開発の参考にさせていただいています。各社から要望を聞いていくと、同じような要望が出てきます。そのため、それぞれの要望を抽象化して共通の課題を抽出し、プロダクトに反映させています。その他、n数の少ない要望に関しては、他のユーザーからも意見を頂いたうえで導入すべきかを検討。仮に要望にお応えできなかった場合は、正直にその理由をお伝えします。

分析基盤構築を支援するSaaS『troccoⓇ』で、分析業務に注力できる環境を実現

ー次に、貴社の事業内容について教えていただけますか?

当社にはいくつかプロダクトがあるのですが、ここでは、私が担当している『troccoⓇ』にフォーカスしてお話します。troccoⓇは、企業の分析基盤構築を支援するSaaSです。会社としては、「あらゆるデータを、ビジネスの力に変える」というミッションを掲げており、troccoⓇを通じて企業のデータ分析の速度を上げるご支援をしています。企業活動において、営業や広告、ユーザーなどのデータはどうしても別々の場所に蓄積されてしまいがちです。そのため、企業はこの散在したデータを、BigQueryなどのデータウェアハウスに統合して管理しています。しかし、データ転送を行うための “データパイプライン” は、フルスクラッチで開発されることが多いです。データの転送量が想定以上に増えてしまい、メンテナンスに多大な時間が必要になることもよくあります。troccoⓇは、そういったデータパイプラインの開発をまるっと請け負うSaaSです。データパイプラインの開発工数が大幅に低減されるので、データ分析に注力することができます。

ーtroccoⓇは現在、プロダクトとしてどれくらいのフェーズですか?

PMFは終わり、潜在顧客を中心にこれからさらにスケールさせていく段階です。これまではデータパイプラインを中心に機能開発を行ってきました。現在はデータカタログなど、データマネジメントの他の領域へも機能を拡大しています。今後も、解決できる領域をさらに拡大し、プロダクトの価値を高めたいと考えています。

ー開発チームはどのようなご状況でしょうか?

プロダクトオーナー1名、エンジニア5名、デザイナー1名、副業・業務委託の方数名の体制で開発しています。正直今は、プロダクトの規模に対してエンジニアが少ない状況です。その反面、お客様の声を聞きやすい環境なので、どんどんやることが出てきます。エンジニア体制の強化は、喫緊の課題ですね。

“プロダクトを信じられる人” と、世界で通用する分析基盤のプラットフォームを作りたい

ー今後、primeNumberさんで実現したいことを教えていただけますか?

まずは、今あるtroccoⓇの機能を磨きながら、接続先を増やしていきたいです。まだ取り組めていない分析基盤周辺の領域でプロダクトを作っていき、ゆくゆくは上場、海外進出を実現したいです。

ー鈴木さん個人の夢はありますか?

primeNumberを成功に導きたいと思っています。troccoⓇを多くの人に使ってもらい、良い評価を受けられたら嬉しいですね。自分の子どもや社会に対して、誇れるような仕事をしていきたいです。

ー最後に、貴社ではどのようなエンジニアを求めているか教えてください!

当社が定める “8 Elements” の中でも “プロダクトを信じる” に特に共感してくれる人と働きたいです。せっかく仕事をするのであれば、自身が可能性を感じているプロダクトで価値を提供できた方が良いと思います。また、浮き沈みが激しいスタートアップでは、沈んだ時にこそプロダクトを信じて前に進むことが必要です。当社のサービスは、すでに大手企業を含む多くの企業様にご利用いただいています。しかし、伸びしろが少ないどころかむしろ、これから何倍も伸びるフェーズです。先述したとおり、エンジニアの数はまだまだ少なく、体制も整っていません。プロダクトを信じて突き進めるエンジニアさんをお待ちしています!

取材を終えて

今回のインタビューを通して、鈴木さんのお話からは、 “ユーザー” というワードが頻繁に出てきました。少年時代のゲーム開発で多くのユーザーに遊んでもらえたことで喜びを感じ、リブセンスさんでは、ユーザーに向き合いきれずにサービスのクローズを経験。現職では、最短距離で価値を届けられるよう徹底的にユーザーと向き合って開発を進めていらっしゃいます。このユーザー指向こそが、鈴木さんの成長の源泉であり、リブセンスさんとprimeNumberさんにとっての成長エンジンになったのではないでしょうか。あらゆるビジネスの根底である、“ユーザーへの価値提供” を追究している鈴木さん。そんな彼の姿勢に共感し、データの可能性を信じている方は、ぜひprimeNumberさんの門を叩いてみてはどうでしょうか。

primeNumber 採用サイト:https://primenumber.co.jp/recruit/

プロフィール:鈴木 健太

東京大学工学部卒業後、株式会社リブセンスにてエンジニアとして同社WEBサイトの開発・企画・分析などに従事。primeNumberへは2017年に参画し、汎用型データエンジニアリングPaaS 「systemN ™」の開発を担う。データ統合自動化サービス「troccoⓇ」リリース後は同プロダクトの開発をリードする。

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