今回は、株式会社Azoop CTO 庄司賢太さんのインタビューをお届けします。ゲームの作り手に憧れ、中学生の頃からゲーム作りを経験し、大学・大学院でさらに技術の知識を身につけられた庄司さん。エンジニアとして就職された後は、セオリー通りにいかない実践の難しさを感じ、失敗を繰り返しながら成長されてこられたそうです。そんな庄司さんがエンジニアとして大切にしていることは、「顧客を知ること」。アナログな部分が多く残っている運送業界をアップデートするために、顧客の課題解決に徹底的に向き合う姿勢に迫ります。

学び続けた原動力は、やりたいこと

ー庄司さんがエンジニアを目指されたきっかけを教えてください。

小さい頃からゲームが好きで、作り手に憧れたことがきっかけです。自分もゲームを作ってみたいと思い、「RPGツクール」で色々なゲームを作って遊んでいました。その後は、より自由度の高い「Hot Soup Processor」を使って自分で0からゲームを制作。このような体験からプログラミングに興味を持ち始め、高校卒業後は、ゲームの専門学校か情報系の大学どちらかに進学しようと考えていました。最終的には、ゲーム以外の部分でも役に立つことがあると思い、情報系の大学を選択。在学中に見たYoutubeの動画でARに興味を持ち、大学卒業後は大学院に進学しました。

ー大学院での研究はいかがでしたか?

楽しくもあり、厳しい世界でした。在学中に、研究で得た知識や経験を企業で活かしたいと考えるようになり、就職活動の一環として電通のインターンに参加。そこで、Flashを使った広告を初めて目の当たりにし、衝撃を受けました。Flashといえば、ブラウザ上でゲームを動かすための環境くらいのイメージでしたが、広告で上手く使われていたんです。そこから広告に興味を持ち、次はミクシィのインターンに参加。当時、SNSのmixiでは純広告と呼ばれる広告モデルが収益の主柱でした。次の一手として、「友人がこのような商品に興味を持っています」といった、人と人の繋がりを活用した広告商品を開発しようとしている構想を知りました。mixiをキッカケに広告の概念を変えられるのではと魅力を感じ、ミクシィに入社することにしました。

ー当初は、ゲームの専門学校と悩まれていたとの通り、実学志向の印象を受けます。結果的に、大学院まで進学された理由はありますか?

作りたいことややりたいことをやろうとすると、自然と学ばないといけないという状況でした。中学生の頃も、独学である程度はゲームを作ることができたんです。AR技術もなんとなく使いこなすことはできるかもしれません。ただ、「マーカーなしにするためにどうするか?」など、突き詰めようとするとどうしてもアカデミックな知識が必要になります。いろんなことをやりたいと思う中で、その手段として学んできました。

ミクシィに入社:チーム開発の難しさや、サービス作りの面白さを知る

ーミクシィ入社後の業務内容について教えてください。

入社後2年は、主力サービス「mixi」の開発を行いました。担当業務は、ソーシャルブックマークのようなウェブサイトを友人にシェアする機能の開発や、メッセージ機能のリニューアル。しかし、入社後からFacebookが本格的に日本に進出したことで、ミクシィの業績が厳しくなってしまったんです。会社として広告以外の収入源が必要だと判断し、新たに50個のアプリを開発することになりました。私もいくつかの新規アプリの開発に関わることになり、コスプレイヤー向けの名刺作成アプリや、SnapchatのようなSNSアプリを開発。この経験を通じて、新しいサービスをゼロから立ち上げる面白さを実感しました。

ーエンジニアとして働き始め、苦労されたことはありましたか?

いくつかありました。まず、社会人になって初めてコードサイズが大きいサービスに関わったので、コード全体を理解することにかなり苦労しました。私はもともと、オブジェクト指向型の言語を使用していたのですが、ミクシィではPerlが採用されていたんです。Perlには、自由度高く書けるという特徴があります。ミクシィでは、様々な人がコードをメンテナンスしていたこともあり、コードの書き方がファイルによって異なっていて読み解くのに苦心しました。一つの修正が及ぼす影響範囲の広さを把握することも難しかったですね。もう一つは、メンバーとのコミュニケーションです。エンジニア・非エンジニア関係なく、各々の前提知識を踏まえたコミュニケーションが必要になります。1人で開発していた時は、こういったことを全く意識する必要がなかったので、チーム開発の難しさを感じました。

ー学生時代の勉強が役に立ったことはありますか?

コンピューターサイエンスの知識は、重大なバグが発生した時の仮説立てや、莫大な計算量を伴う処理が発生する時の負荷の見積もり等の場面で役に立っています。また、ソフトウェア工学の知識があると、メンテナンスのしやすい設計も可能です。しかし、こういった知識は、実務では応用が効かないことも多々あります。データベースを例に挙げてみると、正規化したテーブルをジョインする時にデータ量が多くなりすぎてジョインが使えない、つまり、セオリー通りに正規化できないケースもあります。その場合は、正規化されていないテーブルをあえて作ったり、負荷の高い処理をDBで受け止めず、予め計算していた結果をキャッシュで返すなど、別の解決策が必要です。エンジニアとして働き始め、理屈通りに行かないということを実感しました。

What / Why の理解を深めるためにスタートアップの世界へ飛び込む

ーその後のキャリアについて教えていただけますか?

同期の紹介で、エモーシブというメンズファッションに特化したアプリ開発を行っているスタートアップに転職しました。代表の世界観へ共感したことと、私自身がファッションに興味があったことが主な転職理由です。入社当時は、代表ともう1人のエンジニアの3人体制。AWSの構築やAndroidアプリ、サービスサイトの実装など、開発領域全般を担当しながら、採用やインターン生の教育、洋服選びやユーザーへの接客など、幅広い業務を経験しました。

ー転職先としてスタートアップを選ばれた理由はありますか?

How(エンジニアリング)ではなく、What(ソリューションの提供価値)やWhy(顧客の課題)を深めたかったためです。ミクシィでもユーザーインタビューをする機会はありましたが、ロールが分かれており、エンジニアは「もの作り」がメインでした。技術力だけでなく、より抽象的なWhatやWhyを考えて開発がしたかったので、スタートアップが良いと思ったんです。また、スピード感を持って開発ができるといった点も、理由の1つです。

ーメンバー3人の状態から、サービスは順調に成長されたんですか?

サービスとしては成長を続けており、資金調達を検討していました。いくつかのVCや企業と交渉を進める中で、最終的にクルーズに売却することになりました。。ファッションECの「SHOPLIST」を運営しているクルーズであれば、エモーシブとしても良いシナジー効果が期待できると考えたんです。買収後もエモーシブでしばらく働き、その後レモネードというスタートアップにCTOとしてジョインしました。

ーレモネードさんへ転職した理由と、業務内容を教えていただけますか?

再度スタートアップでIPOを目指してチャレンジしたいと思い、転職しました。レモネードでは、インフルエンサーと企業のマッチングプラットフォームを開発。企業が自社製品を宣伝するために、インフルエンサーを探す手間や管理工数を削減するためのサービスです。IPOを目指していたのですが、最終的にUUUMに売却することになりました。IPOという目標を諦めきれず、Azoopに転職し、現在に至ります。

運送業界のDXを促進するスタートアップ「Azoop」のCTOに

ーAzoopさんに入社された経緯を教えてください。

Azoop代表の朴からスカウトメールが届いたのがきっかけです。最初は運送業界に馴染みがなかったので「トラック?」という感じでしたが、非常に熱心なスカウト文章だったので、一度話を聞いてみることにしました。すると、アナログな世界をデジタル化しようとしているところに惹かれたんです。運送業界では、今でもFAXやホワイトボードが日常的に使われており、今まで自分がいた世界とは対極でした。競合が少ない上に市場規模も大きく、アナログ過ぎて変わる部分しかない点に可能性を感じ、入社を決意。最初はいちエンジニアとして入ったのですが、1人目のエンジニアだったことと、ある程度成果が出せたことで、CTOになりました。

ーアナログ業界をデジタル化していく中で、難しいことはありますか?

顧客の業務理解ですね。私自身、運送業界は全く馴染みがありませんでした。現場の理解を深めるためにユーザーインタビューに同席させてもらったり、お客さまの会社を訪ねて昔から使われてる業務システムを操作する様子を見せていただいたりし、ユーザーが使いやすいシステム設計や機能を開発してきました。一方で、特定のユーザーに寄り過ぎると汎用性が損なわれるので、どこまで寄り添うかのバランスは常に意識していますね。

エンジニアとして大切にしていることは「顧客を知ること」

ーこれまでのキャリアの中で、エンジニアとして一番成長したと感じた経験は何ですか?

mixiのメッセージ機能をリニューアルした時ですね。それまで取り組んできた案件と比較しても、かなり大きな責任を任されました。多くの関係者を巻き込んでプロジェクトを推進し、自らも膨大な量のコードを書いたんです。バグを何回も踏んで失敗も繰り返しましたね。チームのメンバーや他部署の方々のサポートはもちろんありましたが、裁量を持って影響範囲の大きな仕事ができたことで、一気に経験値を得て自分自身の大きなレベルアップを感じました。

ーエンジニアとして大切にしていることを教えてください。

「顧客を知ること」です。作り手都合で作って満足するのではなく、顧客に価値を提供することを最も重要視しています。そのためには、顧客について深く理解しなければなりません。Azoopではエンジニアもユーザーインタビューに参加し、顧客が実際に使っているPC画面を見せてもらうなどの取り組みを実施しています。顧客の業務理解を深めた上で、プロダクトを通して最適なソリューションを提供できるよう努力しています。

ーCTOに必要な3つの要素を挙げるとすると、何がありますか?

1つ目は、「技術で経営を支えられること」です。そのために、外部環境に対して常に興味を持ち続けないといけません。最適な経営判断を下すためには、最新技術だけでなく、経済や法律、規制など幅広くキャッチアップする必要があります。2つ目は、「意思決定ができること」です。問題が起きている時は曖昧な状態にせず、誰に任せるのかを含めて自らが意思決定を行い、解決に導く必要があると思います。3つ目は、「問題の核心を発見する力」です。問題を解決するためには、問題をブレイクダウンしその核心を特定しなければなりませんから。

トラッカーズプラットフォームで運送業界のデジタル化を実現したい

ー貴社の事業内容を教えてください。

運送会社に向けて、「トラッカーズ」と「トラッカーズマネージャー」の2つのサービスを提供しています。「トラッカーズ」は、中古トラックの売買サービスです。運送会社にとって車の売却はコア業務ではありませんが、トラックは購入後約10年で手放します。乗り潰してしまうと、次のトラックを手に入れるのにブランクが発生してしまうためです。トラッカーズで車を出品すると、色んな会社から見積もりが入り、より高い値段で売却できます。「トラッカーズマネージャー」は、トラックやドライバーを管理ができるSaaSです。修理や整備、事故等のデータを一元管理して分析できるので、経営の意思決定に役立てていただけます。機械学習を取り入れており、車両情報と連携して想定売却価格を割り出せるといった機能もあります。

ー今後、貴社として実現したいことは何ですか?

現在は、2つのプロダクトを提供していますが、将来的には「トラッカーズプラットフォーム」を創りたいです。サービスの幅を広げ、運送会社のOSとして、運送会社の経営全体を支援したいと考えています。修理・整備の予定管理やドライバーの採用・教育支援、運転の安全性による保険料の変動や、会社のレイティングによる売買支援など、これからやりたいことはたくさんあります。

ー庄司さん個人の夢はありますか?

短期的には、Azoopを成長させてIPOを実現したいです。一方で中長期的には、自分でサービスを作ってみたいとも考えています。自分が「人生をかけて解決したい」と思える強烈なモチベーションを感じるものが見つかれば、チャレンジしたいですね。

顧客の課題を理解し、技術で解決できるエンジニアを募集

ーどのようなエンジニアを求めているか教えてください。

顧客に興味を持てるエンジニアを求めています。どれだけ技術が尖っていても、顧客の課題を理解していなければ、適切にその技術力を使うことは難しいと思います。「こういう課題があるから、こういう技術を使おう」という発想ができる方と働きたいですね。

ー最後に、未来のメンバーに向けてメッセージを頂けますか?

まだまだアナログな部分が多い運送業界は今、変革の時を迎えています。需要が増大する中、勤怠管理が厳格になり、いよいよ旧来のやり方では限界が露呈してきています。だからこそ、技術の力で業界に変革を起こし、「新しい運送のスタンダード」を作っていけるという面白さがあるんです。そのような大きな変革を一緒に起こしていける方をお待ちしています。

取材を終えて

庄司さんのキャリアをお聞きし、「技術志向」から「顧客志向」になっていく変遷を感じました。学生・ミクシィ時代は、自分がやりたいことを実現するために技術力を磨き、それ以降のスタートアップフェーズでは、「顧客の課題解決のために技術をどう使うか」を考えてこられています。物理的なオペレーションが多く存在する運送業界を、アップデートするには多くの困難が予想されます。庄司さんであれば、顧客に徹底的に向き合い、課題抽出しソリューションを提供してくれるに違いありません。その先にある「新しい運送のスタンダード」の世界が今から楽しみです。

Azoopの募集ページ

プロフィール:庄司 賢太

奈良先端大学院大学卒。2011年に株式会社ミクシィに入社。その後株式会社エモーシブ(現:CROOZ STYLING株式会社)に入社し、2018年に上場企業へ売却後、スタートアップのCTOを経て2018年11月よりAzoopに参画。

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