今回は、ENECHANGE株式会社でCTOを務める有田 一平さんのインタビュー記事をお届けします。大学の授業でプログラミングに魅了され、エンジニアの道へ進んだ有田さん。新卒で外資系証券会社に入社、そして事業会社を経た後に、なぜ「エネルギー領域」で起業をするに至ったのか。有田さんのキャリアと価値観に迫り、紐解いていきます。

インタビュー概要

お話を伺った企業さま

会社名  :ENECHANGE株式会社

設立   :2015年4月

資本金  :44,450,000円

上場市場 :東京証券取引所 グロース市場

代表者  :城口 洋平

所在地  :東京都中央区

ミッション:エネルギーの未来をつくる

事業内容 :エネルギープラットフォーム事業 / エネルギーデータ事業 / EV充電サービス事業

URL   :https://enechange.co.jp/

お話を伺ったご担当者さま

部署 / 役職:共同創業者 CTO

氏名   :有田 一平

 早稲田大学大学院理工学研究科修了。在学中には自然言語処理の研究を行う。JPモルガン証券株式会社で市場分析システムやリスク管理システムの開発、グリー株式会社で海外向けサービスの開発に携わる。その後、英国ケンブリッジにてケンブリッジ・エナジー・データ・ラボ社の共同創業者として発電、需要予測システムのアルゴリズム開発やソフトウェア設計を担当。2015年4月、ENECHANGE株式会社を設立し代表取締役社長に就任。現在は、CTOを務める。

キャリアについて

大学の授業でプログラミングに興味を持つ

 プログラミングに興味を持ったのは、大学生の頃でした。今から20年ほど前ですね。プログラミングの授業でPerlを用いたCGIの開発などに取り組んだ際に、とても面白く感じたんです。そして、コンピューターサイエンスやプログラミングを自分の専門領域にしたいと考えました。これがエンジニアになろうと思った原体験ですね。その後、言語処理の研究室に入ったり、プログラマーのアルバイトをするなどして、着々とエンジニアへの道を歩んでいきました。元々数学は好きだったのですが、小さい頃からプログラミングに触れていたというわけではなく、当時はサッカーとゲームばかりしている少年でした(笑)。

クレジットバブル前、好景気だったJPモルガン証券株式会社での新卒時代

 「グローバル領域」「自分で手を動かして開発ができる」などをキーワードとして就活し、2007年にJPモルガン証券株式会社へ新卒入社しました。金融業界は数理モデルを使ったシステム開発をすることが多く、これまでやってきた領域と親和性が高かったため、非常に興味深い業界でした。また当時はクレジットバブル直前だったので、外資系投資銀行の最盛期でしたね。給与水準も高かったです。直後にリーマンショックがおこり大変でしたが、今思うと生の現場で貴重な経験をすることができました。

「テクノロジー」と「日本」が主役を担う環境を求め、グリー株式会社に転職

 JPモルガン証券での仕事は非常にやりがいがありました。しかし、一方で「テクノロジー、そして日本が主役を担う環境で働きたい。」という思いもありました。今でこそ、証券会社でもテクノロジーの活用が進み、テクノロジーが主役になりつつあります。しかし、当時はセールスやトレーダーといったプロフィットセンターが主役で、テクノロジーはそれをサポートする役割という色が強かったんです。また外資系あるあるだと思うのですが、会社のトップ層は海外に拠点を置き、そこから日本を管理するという体制だったので、「日本が主役となり、世界に挑戦する。」というものに憧れがありました。そして2012年、その思いやあこがれを叶えるため、グリーに転職を決めます。

 当時、グリーは「Global GREE Platform」という事業を展開し、海外への展開を進めていました。「日本から世界に挑戦していくぞ!」というトレンドが強かったですね。その中で、オランダの会社と共同でLINEのようなメッセンジャーアプリを開発していたんです。まさに、思い描いていた「テクノロジー、そして日本が主役を担う環境」でしたね。そのプロジェクトにアサインされ、エンジニアとして働きました。

イギリスでケンブリッジ・エナジー・データ・ラボを共同創業

 これまでエンジニアとしてスキルを磨いてきた一方で、JPモルガン証券時代からエネルギー領域への興味を内に秘めていました。外資系の証券会社や投資会社は、「石油」や「天然ガス」といったエネルギー商材をコモディティ商品としてトレーディングしています。JPモルガン証券も例に漏れず、エネルギー商材を担当するコモディティデスクがあり、そこにすごく興味があったんです。また、金融業界で活躍された後に小説家となった黒木亮さんという方がいらっしゃるのですが、私は黒木さんの大ファンでして、黒木さんの本を読んでからエネルギー領域への興味が止まらなくなってしまいました。

 そんな中、ケンブリッジ・エナジー・データ・ラボ共同創業の話を頂いたんです。グリーでの仕事もやりがいに感じていましたが、「エネルギー領域」「海外でのビジネス立ち上げ」「アカデミックな分野」という点で、興味面でも経験面でもこれ以上無い条件だと感じ、2013年に共同創業しました。

日本法人として整備するため、ENECHANGEを共同創業

 ENECHANGEは、ケンブリッジ・エナジー・データ・ラボを日本法人として整備するため、2015年に共同創業しました。2016年から一般家庭向けの電力小売が自由化(いわゆる、電力自由化)されることとなり、日本に腰を据えてやっていこうとなったのがきっかけですね。

社長からCOO、そしてCTOとなった背景

 ENECHANGEを共同創業時に「城口:アドバイザー」」「有田:社長」という体制でスタートしました。当時、城口はイギリスでスマップ・エナジーというスマートメーターのデータを扱う会社をやっていたのですが、2017年にENECHANGEとスマップ・エナジーが統合し、「城口:会長」「有田:社長」という体制となりました。その後、上場準備を始めた2020年頃に「城口:CEO」「有田:COO」と整理し、今は「城口:CEO」「有田:CTO」となっています。実をいうと、社長(CEO)やCOOといった役割は会社が成功するための最適解として担っていましたが、常に自分の本来の領域はテクノロジーであると考えていました。今は、執行役員を始めとした従業員が増えてきており、僕に依存しなくても組織が回るようになってきました。なので、僕が最も熱中でき、パフォーマンスも出せるテクノロジー領域に特化するため、CTOという役割を担うことになりました。

「共同創業者」としての業務。「CTO」としての業務。

 僕が現在担っている業務は、大きく3つあります。

1.共同創業者として – 執行役員陣のメンター

 「CTO・有田」の業務ではないのですが、「共同創業者・有田」の業務として、執行役員陣のメンターを担っています。ENECHANGEの前身であるケンブリッジ・エナジー・データ・ラボ時代を知る数少ない人物として、ステークホルダーのトップ層と話をする際に同席したり、サポートを行っています。

2.CTOとして – R&D

 生成AIなどの新しいテクノロジーや電力データを用い、プロトタイピングや新しい仕組み作りなどのR&Dを統括しています。

3.CTOとして – 会社の顔

 CTOというタイトルを生かし、会社の顔として前に出る仕事も担当しています。このインタビューもまさにそうですね。学会やイベントに参加し、その内容を社内に共有するということなども行っています。

エネルギー領域を盛り上げ、社会にインパクトを与えていきたい。

 エンジニアとして「テクノロジーで社会にインパクトを与えていきたい。」という思いはあります。その点、エネルギー領域って社会的なインパクトがものすごく大きいので、面白いんですよ。「脱炭素」「ゼロカーボン」といったワードがトレンドになっていますが、今排出されている二酸化炭素のうち、全体の30%ほどは電力発電によるものなんです。電力エネルギーほど多くの方に使われるものって他にあまりないですよね。こんなにも社会的なインパクトが有るエネルギー領域なのに、特にエンジニアからあまり注目されていないと感じているんです。なので、ENECHANGEがパイオニアとして先頭を走り、世の中のエネルギー領域を盛り上げていきたいと考えています。

「紅の豚」の主人公のように、空を飛びたい。

 プライベートな夢として、「飛行機の操縦士免許が取りたい」というものがあります。僕、「紅の豚」が大好きなんですよ(笑)。特に主人公のポルコ・ロッソに憧れてまして、彼のように空を飛びたいんです。海外にいた頃、近くにあった飛行場でセスナの免許を取ろうと思っていたのですが、申し込もうと思った矢先に日本への帰国が決まったので、未だ取れずじまいです。オフロードバイクに乗ってカンボジアを一周してしまうくらいには乗り物が好きなので、いつかポルコ・ロッソのように自分が操縦する飛行機で空を飛びたいですね。(そういえば、カヌーでカナダのユーコン川を下ったこともありますし、スイスを自転車で一周したこともあります。)

 他にも、山登りやキャンプ、スノーボードなどのアウトドアが好きなことから「ログハウスを建てたい」という夢があったのですが、今はログハウスのような木造りの家を建て、住んでいるので満足しています。アウトドアも本当に好きでして、去年はヨーロッパアルプスの最高峰、モンブランに登頂してきました。

考え方・マインドについて

「まず、やってみる。」 – Done is better than perfect.​

 仕事をするうえで大事にしていることは「まず、やってみる。」です。Facebook創始者であるマーク・ザッカーバーグの「Done is better than perfect.」や「リーン・スタートアップ」という本で書かれている内容と同義ですね。とりあえずやってみると、「何がうまくいって、何がうまくいかないのか。」がわかりますし、ユーザーからのフィードバックが得られます。まずはコンパクトにスタートし、素早くPDCAを回していくということが、仕事の進め方として大事だと考えています。

「インパクトドリブン」で動けるエンジニアは、成長しやすい。 – 「3人のレンガ職人」

 ENECHANGEのバリューのひとつに、「IMPACT DRIVEN」というものがあります。「業務のすべてがエネルギーの未来につながっていることを、常に意識します。」というものなのですが、これを体現できるエンジニアは成長しやすいと考えています。「3人のレンガ職人」という話をご存知でしょうか?

─「3人のレンガ職人」あらすじ

 とある旅人が、道端でレンガを積んでいる3人の職人にそれぞれ「何をしているのか」と聞いた。1人目は「レンガを積んでいる。こんな辛い仕事はやりたくないよ。」と答え、2人目は「家族を養うために働いている。大変だけど、仕事があるのはありがたいよ。」と答え、3人目は「後世に残る大聖堂を建てている。誇らしい仕事だよ。素晴らしいだろう?」と答えた。3人のレンガ職人は同じ報酬で同じ仕事をしているが、目的意識の違いから仕事へのモチベーションにも違いが現れている。目的意識の違いがモチベーションの違いとなり、仕事への取り組み方にも違いが現れ、成果の違いに繋がっていく。だからこそ、目的意識を高めることは大切である。

 先ほども述べた通り、エネルギー領域は社会的なインパクトがものすごく大きいです。どんなに小さなタスクでも、それが脱炭素社会や電力の安定化・効率化につながる仕事だと意識し、「インパクトドリブン」で動くことが大事だと思っています。もちろん、これはENECHANGEで働くエンジニアに限らずですね。ご自身の仕事が社会にとってどんなインパクトを与えるものなのか、意識してみるのも良いかもしれません。

自分のパフォーマンスを最大化するために、自分で考えて動くべき。

 働き方という観点では、「自分のパフォーマンスを最大化するための最適解」であれば何でも良いんじゃないかなと思っています。ひとりひとり様々な背景・事情があると思うので、自分で考えて動くべきだと思います。ENECHANGEではあまり細かいところまで介入せず、評価は成果を見て行うので、自分のパフォーマンスを最大化するために、自分で考えて動いてほしいと考えています。

ENECHANGEで働きたい方へ

「エネルギーの未来をつくる」をミッションに、テクノロジーを使ってアプローチ

 ENECHANGEは、「エネルギーの未来をつくる」をミッションに掲げており、「プラットフォーム事業」「EV充電事業」「データ事業」の3事業を展開しています。エネルギーの未来をつくっていくうえで重視しているのが「エネルギーの4D」です。脱炭素化のためには「エネルギーの4D」によるイノベーションが不可欠であり、ENECHANGEは「エネルギーの4D」のDXを加速させるプラットフォームになるために事業を行っています。今はまだ3事業のみですが、新規事業創出はどんどん進めておりますので、ミッション実現のために拡大していきます。

出所:ENECHANGE株式会社 – ENECHANGEの事業
   https://enechange.co.jp/service/

ENECHANGEでエンジニアとして働くメリット

 繰り返しになりますが、「エネルギー領域」は社会的なインパクトがものすごく大きいので、やりがいがあります。これが、メリットとして最もアピールしたいポイントです。あとは、定量化・差別化が難しいですが「ベンチャーならではの自由度・スピード感」「働き方」「人の良さ」がアピールできるかなと思います。先程申し上げた通り、メンバーの細かいところまで会社が介入しないため自由度が高いですし、エンジニアに限らずリモートベースで働くことができます。また他社でCTOを経験していた方が在籍していたりするので、人が良いだけでなく技術レベルも高い環境で働くことができます。

エネルギー領域に魅力を感じられる方と働きたい。

 求める人物像としては、やはり「エネルギー」というものに魅力を感じ、面白そうと感じてくれる方ですね。そこが一番です。あとは、セルフマネジメントして自分のパフォーマンスを最大化できるような、自立している方と働きたいですね。

取材を終えて

 取材中、何度も「エネルギー領域は、社会的なインパクトが大きい。本当に面白い。」と語っていた有田さん。まさに「3人のレンガ職人」における「3番目の職人」です。目的意識を高く持ち、ご自身の専門領域であるテクノロジーを磨き続けたからこそ、今のCTOという立場があるのだと感じました。また、新卒で外資系証券会社に入社し、事業会社を経て起業するという、いわゆる「エリート」なキャリアを歩んできていらっしゃる有田さんですが、「紅の豚の主人公に憧れているんです。」と恥ずかしそうに笑うご様子から、お人柄も素敵な方だという印象を受け、いつの間にか筆者自身も有田さんのファンになってしまいました。

 有田さんのもとで働いてみたいと感じた方や、エネルギーを通して社会に大きなインパクトを与えたいと感じた方は、ぜひENECHANGEの募集に応募してみてはいかがでしょうか。

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