今回は、株式会社NoSchoolでCTOを務める「名人」こと丸山 裕介さんのインタビュー記事をお届けします。オンライン家庭教師マッチングサービス「マナリンク」などのEdtech事業を手がける株式会社NoSchool。CTOの丸山さんは、高専時代から教育系のプロダクト開発に取り組まれてきました。LIFULL時代には教育系の新規事業を立ち上げるも、1年間での売上が1万円と苦い経験をされたそうです。そんな丸山さんの目標は、「デファクトスタンダードな教育サービスを創ること」。教育事業に心血を注がれている丸山さんのキャリアや価値観に迫ります。

インタビュー概要

お話を伺った企業さま

会社名  :株式会社NoSchool

設立   :2018年5月

資本金  :62,990,000円

代表者  :徃西 聡

所在地  :東京都文京区

ミッション:活躍すべき人が活躍する社会をつくる

事業内容 :オンライン家庭教師マッチングサービス「マナリンク」の開発・運営

URL   :https://corp.noschool.asia

お話を伺ったご担当者さま

部署 / 役職:CTO

氏名   :丸山 裕介

2016年に奈良高専情報工学科を卒業後、新卒でLIFULLにWebエンジニアとして入社。不動産情報サイトHOME’Sの開発と社内新規事業責任者を経て、2019年にスタートアップ企業NoSchoolのCTOとして転職。以後、創業事業のクローズやピボットを経てオンライン家庭教師事業「マナリンク」を立ち上げ。2024年現在、600人以上の先生を直接指名できる唯一無二のサービスとして事業・技術ともに成長を続けている。

キャリアについて

プログラミングのおもしろさに触れた高専時代

私は高専時代の授業で初めてプログラミングに触れました。最初はJavaで簡単なゲームを作ったのですが、これがとてもおもしろかったんです。4年生時にはプログラミングのインターンに参加。そこで初めてプログラミングを仕事にしているエンジニアという職業を知り、本格的にエンジニアを目指し始めました。そのエンジニアに「複数言語を学んでおいたほうが良い」とアドバイスを受けたので、C++を独学し、個人で勉強用のアプリを作ってみたんです。当時はネットワークを使ったプログラミングを習っていなかったので、クラスメイトのPCにUSBをさしてアプリを配布していました(笑)。

LIFULLで教育事業を立ち上げるも失敗に終わる

高専卒業後は、「ホームズ」などの不動産事業を手がけるLIFULLにエンジニアとして就職しました。入社を決めた理由は、積極的に新規事業に取り組んでいた環境に魅力を感じたからです。制度として3ヶ月間のうち数日間は新しいことにチャレンジできる日があり、半年に1回くらいのペースで新規事業が採択されます。当時から、将来的には教育系の事業をやりたいと思っていたので、「自分が新規事業を立ち上げてやろう」という気概でいました。

入社後は、ホームズの開発をやりながら新規事業の開発も進めました。そして新卒3年目の時に、オンラインでブレインストーミングができるサービスの事業案が採択されたんです。そこからは開発だけでなく、営業や事業計画の作成など収益化を目指してなんでもやりました。今でこそオンラインブレインストーミングのサービスはありますが、当時はコロナ前ということもあって苦戦しました。最終的に1年間で売上は1万円に留まり、事業はクローズ。自分の力不足を痛感する日々でしたが、すごく良い経験になりました。

代表からのTwitterDMをきっかけにNoSchoolにジョイン

LIFULL在籍時に、NoSchool代表の徃西からTwitterDMが来ました。内容は、「教育系の事業をやっており、開発を任せられるエンジニアを探している」というものでした。当時は新規事業をやっていたので、正直かなり忙しかったんです。しかし、私自身かねてから教育事業に興味があったので、週末に時間を作って手伝うことにしました。最初は、ヤフー知恵袋の勉強版のような「勉強質問サイト」を開発。その数カ月後に、NoSchoolにCTOとしてジョインしました。LIFULLに入った時から「教育事業を立ち上げるかCTOになる」という目標があったので、同時に実現できるこの環境でチャレンジをしたいと思ったんです。しかし、1年くらいやった頃にコロナ禍に入りました。事業方針を再考する中で、オンライン家庭教師事業「マナリンク」へのピボットを決め、現在に至ります。

入社当初は、バックエンド・フロントエンド・インフラ問わずひたすら手を動かして開発をしていました。1〜2年ほどでマナリンクが徐々に軌道に乗り出し、正社員のエンジニアを採用し始めてからは、マネジメントも担当。メンバーとの1on1などを通して会社の方針をすり合わせをし、勉強会も頻繁に開催するなど技術力の強化にも力を入れています。現状エンジニアは5名いるのですが、実は今でも結構な時間手を動かしてプログラミングをやっています。代表も「エンジニアなら手を動かさないとつまらないでしょ。やりがいがなくなったら生産性落ちるよね。」と、理解をしてくれているんです。とはいえ、なんでもかんでもやるわけではなく、テックリード的な立ち位置で難易度の高い開発を優先的に対応するようにしています。もちろん、創業当時から資金調達などの重要な経営判断にもかかわっているため、技術的な観点だけでなく、経営観点も踏まえた意思決定を心がけています。

“教科書通りの開発” から逸脱することも必要

NoSchoolのCTOとなってからの2〜3年は、私がエンジニアとして特に大きく成長できたと感じる期間でした。スピード感が求められるスタートアップ環境で、ほぼ1人で開発を担当。ありがたいことに社外の繋がりも多くあったので、外部からノウハウを取り入れながらトライアンドエラーを繰り返す日々でした。

具体的に伸びたスキルとしては2つあります。1つ目は、「クオリティの見定め力」です。事業課題に対する実装案がある状況で、事業課題の大きさを見定めながら優先順位や実装のクオリティを判断できる力です。若い頃は、開発をするためにまずはしっかり設計しないといけないと思っていました。しかしこれはあくまでも理想形であり、その時の状況に応じて開発の進め方は変えても良いんだと学びました。教科書通りの開発をやっていたら、スタートアップ環境ではついていけないと思います。2つ目は、「フロントエンドの技術」です。前職では、jQuery一本でフロントエンドの開発をやっていましたが、NoSchoolに入社してからはVue.jsやReactなどモダンな技術を取り入れています。フロントエンドの学習にかなり力を入れたこともあり、上達も早かったです。その過程でZennに記事を掲載していると、Reactの記事で2,000もの「いいね」をもらえました。これがきっかけとなって周囲のエンジニアからは、「あのReactの記事を書いた人だ」と認識されるようになり、全く予期していなかったようなフロントエンドの上級者に会うことができました。

「マナリンク」で教育業界にイノベーションを起こす

今後の目標としては、マナリンクを立派な事業に育てて結果を出したいと考えています。いずれはデファクトスタンダードと言われるような教育サービスにしたいですね。そうなれば、私たちに投資をしてくれた投資家たちへのお返しにもなると思います。

また次の目標として、自分が今まで関わってきた事業とは違う、「新しい性質」のプロダクト開発に関わりたいです。マナリンクやホームズといったサービスは、教育コンテンツや物件情報など、Webサービスの上に乗っているコンテンツの価値も重要です。しかし、SlackやNotionといったサービスは、そのプロダクト自体に価値があります。このような「ITだけに特化している事業」には携わったことがないので、将来的にチャレンジしてみたいですね。

考え方・マインドについて

コミュニケーションの取り方で学びの機会を最大化する

私が仕事をするうえで大切にしていることは2つあります。1つ目が、「あらゆる状況を想定すること」。1つの機能をリリースする時に、1通りしか想定できていない場合の学びは1つです。しかし、10パターン想定したうえでリリースした場合は、10倍の学びがあります。そのため、メンバーには「その実装で良いと思うけど、このパターンは想定した?」とよく聞くようにしています。たとえその選択が正解だとしても、他のパターンを考えられているかどうかで、中長期的なアウトプットの質は大きく変わりますから。

2つ目は、「あえて無駄なコミュニケーションを取ること」です。コロナ禍以降、世間的にはリモートワークが進みましたが、当社は出社制です。直接会って話すことを重要視しており、一見無駄に見える論理的じゃないコミュニケーションを取るようにしています。テキストコミュニケーションの時に、表現を柔らかくするために絵文字をつけたりすることがありますが、それだけで仲良くなれると考えるのは本質的ではないと考えています。普段から対面で会話をし、信頼関係ができていれば絵文字の有無を気にせずコミュニケーションを取れるはずです。実際に当社のメンバーは、会って話すことが大切だという価値観のメンバーが多いですね。

“痛い目”を多く見ているエンジニアは強い

私が考える「強いエンジニア」の条件の1つ目は、「手段を目的化しない人」です。意識的に難しい技術を経験して経歴書を分厚くしようとするのでなく、目的を達成するために難しい技術を経験し、気づいたら経歴書が分厚くなっていたというのが理想だと思います。幅広い選択肢を出して、最適な選択をできるエンジニアは強いですね。

2つ目は、「自分がやった実装で痛い目を見ている人」です。これは私自身何度も経験しています。しかし、”痛い目”を見ているからこそ改善しようという気になるので、結果的に成長に繋がります。自分が担当した実装の運用を他の人に任せていたら、痛い目を見る機会も少なくなりますし、その分学びの機会損失にもなるはずです。これに関しては、NoSchoolのメンバーから言われて嬉しかった言葉があります。それは、「名人さんのここの実装めっちゃきたないですね。でもGitの改修履歴見ていると納得しました。」というものです。この言葉には嫌味は一切感じず、むしろ「じゃあこうしてリファクタリングしていこう」と前向きな気持ちになりました。実装後も自分のコードに責任を持って仕事ができるエンジニアは、自ずと成長して活躍する傾向にあるのではないでしょうか。

創業期のフリーランス活用は有効

現在、弊社はメンバーの教育に力を入れていることもありフリーランスの活用はしておりませんが、創業期はお世話になりました。専門性の高いフリーランスは、参画してすぐに成果を出してくれるので、スピード感を求められる創業期には大変助かりました。2年ほど前に手伝っていただいたフリーランスの方は、今まで会ったエンジニアで一番すごかったです。その方に書いていただいたコードは、未だに一度もメンテナンスをしておりません。これは、手が追いついていないというわけではなく、完璧すぎて手を付ける必要がないという意味です。また、フリーランスの方々とはある意味お互いドライに仕事ができるというメリットもあります。初期のスタートアップはいつキャッシュがなくなるかわからないことが多い中で、特定の企業に依存しないフリーランスの存在は重要なんです。

NoSchoolで働きたい方へ

生徒と家庭教師のマッチングプラットフォーム「マナリンク」を開発

弊社は、「マナリンク」というオンライン家庭教師のマッチングサービスを開発・提供しています。先生を直接選べるという特徴が他社との差別化のポイントです。先生は600名ほど登録があり、保護者と生徒が先生の顔やプロフィール、レビューを見て一緒に選ぶことができます。そのため、生徒の目に付くようにあえてスパルタな部分を押し出したりと、尖った打ち出しをされている先生も多いという特徴があります。

現在は5名のエンジニアがおり、わいわい開発をしています。意味のわからない名言など、変なSlackスタンプをつくる人がいたり、仕事中に変顔をしてくる人がいたりとおもしろい人が多いです。私が教育志向が強いこともあり、勉強会も積極的に開催しています。普段はSlackで技術に関する情報交換をしたりと、メンバー全員がスキルアップに前向きです。4月にはEMも入社し、マネジメントにも本格的に力を入れ始めました。私はどちらかというとテックリード的な立ち位置で、EMがピープルマネジメントを担っています。

“メディア要素” と “SaaS要素” の両方の観点で開発ができる

エンジニアリングの話でいうと、表側から見えている部分は先生を選んで授業を受けるといった機能ですが、実は裏側の開発に半分以上のリソースを割いています。例えば、授業のスケジュール管理機能やリマインド機能、規定の授業数を実施していない場合の警告機能などがあります。マナリンクの開発には、パフォーマンスやSEO対策が重要なメディア的な要素と、カレンダーや決済、売上管理機能などのSaaS的な要素があるんです。1つのサービスで両方の観点から開発ができるのは、エンジニアとして良い経験になると思います。

また、フルスタック指向​​という特徴もあります。当社には専任のPMがおりません。機能単位でそれぞれのメンバーがPMとしてオーナーシップを持って開発に取り組んでいます。そのため、プロジェクトの優先度づけや進め方、リリースの順番はすべて各メンバーの裁量にゆだねられることが多いです。他責になりづらい環境なので、単なるフルスタックエンジニアよりも視野の広さが求められますし、これはいちエンジニアにとっても良い経験になると思います。

「大変そうだけどなんとかなるでしょ」というマインドで挑戦できるエンジニアを募集!

現在弊社では事業拡大によりエンジニアを積極的に募集しています。スキル面では、いわゆる「T字型人材」を求めています。特定の領域に専門性を持ちつつも、幅広く対応できる人ですね。私の場合は、フロントエンドに強みを持ちながらもバックエンドもインフラもやっています。当社には教え合いの文化があるので、お互いの強みを活かして相互補完的に開発を進めていきたいと考えています。また、マインド面でいうと、「ある種のPMとして働ける覚悟がある方」を採用したいです。先述の通り、現状は各エンジニアがPMのような動きを取っています。難易度は高いですが、それをポジティブに捉えてチャレンジできる人に来て欲しいです。もちろん1人ですべてやらないといけないわけではなく、困ったときは助け合いながら仕事を進めています。スタートアップは大変そうだというイメージがあると思いますが、そこを「大変そうだけどなんとかなるでしょ」と前向きなマインドで取り組める人が、当社には合っていますね。興味を持っていただけた方は、ぜひお話しましょう!

NoSchoolの募集ページ

取材を終えて

インタビューを通して、丸山さんのバイタリティの高さに感銘を受けました。LIFULL時代での営業経験など、「目標を達成するためにやるべきことは何でもやる」という姿勢は、全ビジネスパーソンの参考になると思います。一方で、数々のチャレンジをしてきたぶん、多くの失敗をされてきたところも丸山さんの魅力の1つだと感じました。丸山さんはそれを“痛い目”と表現されていましたが、痛い目を見るということは、チャレンジをしているということでもあるので、その回数が多いほど「強い」という考えには納得がいきます。マナリンクは、まさにこれから伸びていくサービスです。しかしその過程には多くの障害が立ちはだかると思います。しかし、丸山さんが率いるチームであれば、何度も壁にぶつかりながらも乗り越え、「デファクトスタンダードな教育サービス」を創ってくれるであろうと期待させてくれます。そんなNoSchoolでのチャレンジに興味がある方は、ぜひ門を叩いてみてはいかがでしょうか。

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