今回は、株式会社TOKIUMでCTOを務める西平 基志さんのインタビュー記事をお届けします。西平さんは、大学時代にプログラミングにのめり込み、学生起業という形でBearTail(現TOKIUM)を共同創業されました。当初の家計簿アプリから経費精算サービスへのピボット、そして現在進行中のAIエージェント化まで、常に時代の変化を先読みしながら価値創造に取り組まれています。「お客様に成果をなるべく早く届ける」ことを第一に考え、既存の知識をリセットしながら新しい技術を吸収し続ける西平さん。AIエージェント時代の到来を見据えた組織づくりや技術開発への思い、エンジニアとしての成長観について伺いました。
インタビュー概要
お話を伺った企業さま
会社名 :株式会社TOKIUM
設立 :2012年6月
資本金 :100,000,000円
上場市場 :未上場
代表者 :黒﨑 賢一
所在地 :東京都中央区
ミッション :未来へつながる時を生む
事業内容 :支出を最適化する法人支出管理プラットフォーム「TOKIUM」の開発、運営
URL :https://corp.tokium.jp/
お話を伺ったご担当者さま
部署 / 役職 :取締役 CTO
氏名 :西平 基志
筑波大学(情報学群)卒。在学中は情報可視化を研究。2012年にTOKIUMを共同創業。オペレーター入力システムの構築等、すべてのwebサービスを担当。
キャリアについて
寝食を忘れてプログラミングに没頭した大学時代
私のエンジニアとしての原体験は、小学生時代に遡ります。小学生の頃から中学生まで、メモ帳でWebページを作って公開していました。ただ、本格的にプログラミングを始めたのは大学に入ってからです。情報系の学科ではあったのですが、実はエンジニアになりたくて選んだわけではありません。もともと動画や3DCGに興味があり、デジタルコンテンツの作成が学べることに魅力を感じていたんです。中高生の時にゲームのCMを見て「こんなものを作りたいな」と思ったのがきっかけです。
最初の1年間は3DCGの勉強をしていましたが、周りにはより才能がある人がたくさんいました。一方で、授業でやっていたプログラミングなら周りよりもできるようになるかもしれないと感じたんです。その後はプログラミングに多くの時間を割くようになり、当時は寝食を忘れてずっとプログラムを書いていました。
学生起業、そしてCTOへ
大学3年生の時に、プログラミングの学内発表会がありました。そこで現在のTOKIUMの代表である黒﨑さんの目にとまり、起業の誘いを受けたんです。当時の大学の優秀なプログラマーは、みんな自分たちでフリーランスやインターンの仕事を持っていました。私も仕事としてコードを書きたいと思っていたので、率直に「やってみたい」と感じ、挑戦してみることにしたんです。
2012年に起業し、当初は創業メンバー4人でコードを書いて、サービスを立ち上げました。最初は特に役職を設けていなかったのですが、創業後間もなく黒﨑さんからCTOを任されることになりました。
創業当初の主な事業は、家計簿アプリです。事業として立ち上げて数年でユーザー数は100万人を超えましたが、その数字に対してマネタイズが上手くいかず、スケールさせられませんでした。この頃は、リーダー的な立ち位置でずっとコードを書いていました。その後、家計簿アプリで培ったオペレーションの知見などを活かし、BtoBの経費精算サービスにピボットをします。最初は苦労をしましたが、お客様の声を聞きながらプロダクト開発を進めたことで、徐々に拡大をさせることができました。事業成長とともに組織も大きくなり、私の業務内容としてもマネジメントにより多くの時間を割くようになりました。現在は、エンジニアとプロダクトマネージャー組織のトップを担っており、プロダクトロードマップの作成やサービスのデリバリーに責任を持っています。
売上を意識した開発経験が自分を成長させてくれた
これまでの経験で特にエンジニアとして成長できたと実感したのは、サービスが伸び始めた頃です。PMF(プロダクト・マーケット・フィット)をするかしないかのタイミングでは、様々な機能が足りていませんでした。つまり、プロダクトを売るためには、自分がコードを書かないといけないという状況だったんです。お客様に直接価値を届けるために開発をし、プロダクトを利用してもらうことで売上を立てる。この一連の経験を通して、エンジニアとして大きく成長できました。
「経理AIエージェントのTOKIUM」という認知を作っていく
弊社では、開発組織全体としてAIエージェントの開発に大きく舵を切っていく意思決定をしました。お客様にとって一番良い価値を届けられるよう、AIエージェントをどのように作っていくのかを試行錯誤しています。そのため現在の私の目標は、「経理AIエージェントのTOKIUM」という認知が得られるような開発チームを作っていくことです。この領域は、まだまだベストプラクティスが固まっていません。だからこそ、私たちが業界の先駆者として道筋を示していきたいと考えています。
考え方・マインドについて
お客様への価値提供とアンラーニング
私が大切にしている考え方は2つあります。1つ目は、「お客様に成果をなるべく早く届けるためにはどうしたら良いかを常に考えること」です。特に事業の立ち上げ期は、開発をしてもうまくお客様に成果を届けられないこともあり、不安になってしまうこともあります。そのような状況を突破するためには、「このプロダクトでお客様のどういった課題を解決できるのか?」「お客様はこういう機能が欲しいと言っているが、本当は何が課題なんだろう?」これらの問いに対する答えを見つけるためには、お客様に実際に製品を使っていただき、直接フィードバックを得ることが最も効果的です。素早く成果をお届けし、そのフィードバックからお客様の真の課題を発見し、解決できるプロダクトを開発する。このプロセスが重要だと考えています。
2つ目は、「アンラーニングをしながら新しいものを吸収していくこと」です。技術の革新により、これまで学んだ開発手法や組織論などの知識は、今後それほど価値を持たなくなる可能性があります。私たちが起業した時は、ちょうどiPhoneやAndroidが出てきたタイミングでした。知識も経験もない私たちのような「学生」が起業をしてある程度戦えた理由は、新しい技術が出てきたタイミングで、「大人」と横一線で戦えたからだと感じています。今はAIが出てきて、私たちが「大人側」になっています。そのため、今の学生や若手に負けないためには、アンラーニングしながら新しいものを吸収していく姿勢が重要だと考えています。
AI時代に必要とされる「越境人材」
これからの時代に価値あるエンジニアの条件は2つあると考えています。1つ目は、「自分の専門分野にとどまるのではなく、越境していける人」です。今後は、AIによって1つ1つの業務にかける時間が少なくなっていくでしょう。そうすると、自分が担っていた業務の周辺分野にしみ出せるようになります。例えば開発エンジニアだと、プロダクトマネジメントやQAなどの領域です。逆にプロダクトマネージャーやQAエンジニアが開発領域に手を広げる事もあるでしょう。少ない人数で多くの業務をこなせるようになれば、コミュニケーションコストが下がり、効率化に繋がります。そのため、複数の役割を1人でこなせる人材は価値が高くなっていくと考えています。
2つ目は、「好奇心を持ってAIを積極的に活用できる人」です。日々のアップデートスピードがかなり早いので、キャッチアップするのは大変ではありますが、やらないと時代に取り残される危険性があります。技術の進歩があまりにも早いため、圧倒されてしまう事もあると思いますが、チームとして前向きに楽しんで取り組めるよう心がけています。
フリーランス活用とチーム体制
弊社では積極的にフリーランスを活用しています。エンジニアの人材不足で採用は難しく、短期的に多くの開発工数を確保するにはフリーランスの活用が有効な選択肢なんです。個人のスキルや特性に応じて社員との垣根なく業務をお任せしており、特に急成長や特定の短い期間のプロジェクトでは、重要な戦力となって活躍していただいています。
TOKIUMで働きたい方へ
法人支出管理プラットフォーム「TOKIUM」
弊社は、法人支出管理プラットフォーム「TOKIUM」というSaaSを提供しています。主要プロダクトは、「TOKIUMインボイス」と「TOKIUM経費精算」の2つです。
TOKIUMインボイスは、請求書をお客様の代わりに受け取ってデータ化していくサービスで、受け取りから支払いまでの手間を軽減します。TOKIUM経費精算は、レシートをスマホで撮影して経費精算ができる完全ペーパーレスの経費精算システムです。
経費精算や請求書は全社員に関わる業務なのにも関わらず、アナログな処理をされている企業がまだまだ多いので、そのような企業の課題を解決できるプロダクトを作っていきたいと考えています。
SaaSから「経理AIエージェント」への進化
実は現在、このTOKIUMを「経理AIエージェント」として進化させようとしています。5月末に経理AIエージェントの構想を発表し、お客様がプロダクトを操作せずに業務を回せるような世界を目指しています。
今までは、SaaSの上でできることが自動化されてきました。それがAIの発達によって、今後はSaaSの運用自体が自動化されていくことになります。SaaSを導入したものの運用に手間と時間がかかっているというお客様が多いのが現状です。例えば、出張における手間が例として挙げられます。出張前の経費申請や、交通手段やホテルの予約など、出張手配はかなりの手間を要するんです。こういった領域を自動化し、お客様の負担を減らすことで、さらなる価値をお客様に提供したいと考えています。
1人につき10万円/月のAI関連予算を設定し、AIの活用を推進
TOKIUMで働いていただくメリットは大きく3つあります。1つ目は、AIエージェントの開発に関われることです。ベストプラクティスが固まっていない領域で、新しいチャレンジができます。
2つ目は、積極的にAIを取り入れていることです。フリーランスの方々を含め1人につき10万/月の潤沢なAI関連予算を支給しており、AI開発に没頭していただけます。数年前からGithub Copilotを社員に配っていますし、今はDevinやClaude Codeも取り入れて開発自体もAI化を進めており、勉強会の開催やSlackでの情報共有など、全社でAI活用の推進を進めています。
3つ目は、SaaS領域でリアーキテクチャに取り組んでいる点です。複数のプロダクトを組み合わせてプラットフォーム構想を実現するため、同時に複数のプロダクトを開発しないといけません。そのためには、ソフトウェアのアーキテクチャをスケーラブルにしていく必要があり、SaaS領域においては非常にチャレンジングな業務です。ビジネス的には今後プロダクトを増やしていきたいので、開発スピードを早めないといけません。そのためにはリアーキテクチャが必要なので、ビジネス側の要求と技術的な要求を一致させながら進めている状況です。
未経験採用も実施中:成長機会の多さが魅力
弊社のエンジニア組織は、スクラム開発で少人数のチームを作り、アジリティの高い開発をしています。良い人が多く、TOKIUMの志である「自ら調べ、考え、挑戦する」ことを体現するメンバーが集まっているのが特徴です。特にBtoBサービスはお客様に長く使っていただく必要があるので、1〜2年後を見据えて開発できる人が向いていると思います。若手も多く、エンジニアキャリア1年目のメンバーもいます。エンジニアスクールの卒業生から、現在では複数チームのマネジメントをやっていたり、プロダクトマネージャーをやっているメンバーもいるので、豊富な成長機会は魅力の1つですね。
成長意欲の高いエンジニアを募集中!
弊社では、現在エンジニアを積極募集中です。仕事を通じて自ら学び、成長していける人がマッチしています。AIエージェント時代において、好奇心を持って取り組める人。そして、アンラーニングをして新しいことに柔軟に取り組める人。そのような姿勢を持った人と一緒に働きたいですね。ご興味をお持ちいただけた方は、ぜひ一度お話しましょう!
取材を終えて
西平さんのお話からは、技術の変化を恐れず、むしろ積極的に取り入れていこうとする姿勢が強く感じられました。学生起業から現在まで一貫して「お客様に価値を届ける」ことを軸に、アンラーニングを繰り返しながら成長してきた軌跡は、多くのエンジニアにとって参考になるはずです。現在はAI領域において、毎日のようにイノベーションが起きています。西平さん率いるTOKIUMであれば、その荒波を乗りこなし、「経理AIエージェント」という革新的なサービスで多くの企業の課題を解決してくれると、期待が膨らみます。