業務を行う上では必須の知識ではありませんが、知っていると現場で一目置かれたり、環境理解の助けになる、IT雑学というものがあります。

今回は、そうしたIT雑学の一つである「様々なOSの種類」について、簡単にですが、ご紹介したいと思います。

そもそもOSとは?

まずは、基本ソフトとも呼ばれるOS(Operating System)の役割と機能について見ていきましょう。

Operatingには、「運用上の」という意味がありますが、簡単にいうと、“コンピューター全体を制御するためのソフトウェア”です。

たとえば、パソコンで音楽を再生しつつ、Webブラウザで調べながら、Wordでレポートを作成している大学生がいますよね。このように同時に複数のタスクを行うことができるのは、OSのおかげです。OSがCPUやメモリなどのリソースの割り当て配分をコントロールしてくれているおかげで、一台のパソコンで同時に複数のタスクを走らせることができるのです。

他にも、Intel製のCore iシリーズのCPUを搭載したパソコンでも、AMD製のRyzenシリーズのCPUでも同じようにChromeブラウザが使えるのは、OSが、そうしたハードウェアの差を吸収してくれているからです。

パソコン・サーバー用OS

「知っているOS言ってみて」と聞かれたら、だいたいみなさんが思いつくのは、パソコンやサーバーに使われるOSでしょう。ということで、まずは、パソコンやサーバーでよく見るOSから行ってみましょう。

⇒Microsoft Windowsシリーズ

Net Applicationsというアメリカの調査会社によると、全世界で使われているコンピューター・サーバー用OSの実に約9割がWindowsだそうです。圧倒的です。

ご存じの方も多いと思いますが、WindowsにはWindows7やWindows10などの、普通のパソコン用の系統と、Windows Server2016やWindows Server2019などのサーバー用の系統があります。

しかも、Windows10などのクライアント系にも、Home・Pro・Enterpriseなどのいくつかのエディションが存在します。Windows Server2019にもEssentials・Standard・Datacenter というエディションが存在します。Microsoftの営業でもないのに、これら全部を正確に知っている人がいれば、とっても優秀なエンジニアか、それともよっぽどのマニアなのかのどちらかです。

ちなみに、過去には、Windows Serverの廉価版的な位置付けのWindows Home Serverというラインナップもありました。また、WindowsファミリーのOSには、Windows CEや、Windows RT、Windows Phoneというパソコンやサーバー向けではないものも存在していました。

今後も、IoT向けに、新たなWindowsが登場するかもしれません。

⇒UNIX(macOSやAIX、Solaris、BSDなど)

「世界で初めて高水準言語で書かれたOS」と呼ばれることも多いOSです。そのため、歴史上の人物ではありませんが、「過去の存在で、今は使われていない」と思っている人も少なくないと思います。

しかし、AppleのmacOSをはじめとして、IBMのAIX、ORACLEのSolarisなど、現在もUNIXの系統に連なるOSは現役です。

一つややこしいのが、「UNIX系OS」と「UNIXと名乗れるOS」には厳密に違いがあります。それは、IEEEなどで『Single UNIX Specification(SUS)』という「UNIXと名乗れるOS」の仕様規格書が作成されており、それを満たしていると認められたOSだけが、「UNIXと名乗れるOS」ということになっています。とっても、興味深いルールです。

⇒Linux(Red Hat、Debian、Slackware、Ubuntu、CentOSなど)

『Single UNIX Specification』ではUNIXと認められていないものの、「UNIX系OS」の代表的な存在と言えるのがLinuxです。

かなりの確率でOSなどのインフラ周りに詳しくない方に、Linuxの話をすると、「Red Hat、Debian、Slackware、UbuntuなどLinux系OSやLinuxディストリビューションと言われているものの違いって何ですか?」と聞かれるので、簡単に解説しておきましょう。

簡単に言うと、共通のコア部分(Linuxカーネル)に、それぞれの開発者が、自分の目的に合わせて扱いやすいように、UIや機能を追加して一つのパッケージにしたのが、Linuxディストリビューションです。

Linuxカーネルがオープンソフトであることもあって、単にLinuxディストリビューションといっても、GUIのものもあればCUIのものもあります。あるいは、CentOSのように特定用途に特化しているものなど、多種多様です。コストが低額で、しかも柔軟性が高いため、サーバー用OSとして、LinuxはWindowsと双璧を成す存在です。

ちなみに、日本の調査会社であるIDC Japanがまとめた日本国内でのサーバー用OSのシェアを見ると、Windowsの方がLinuxよりシェア率が高いのです。しかし、Q-Success社(W3Techs)の調査した世界でのシェア率比較を確認すると、Linuxの方がWindowsよりも利用率が高くなります。

スマホ・タブレット用OS

次は、多くの皆さんにとって、生きていくうえで必需品となりつつある、スマホやタブレット端末のOSを見ていきましょう。

⇒android

世界で一番稼働している端末が多いOSがandroidです。Googleが開発したスマートフォンOSと言われますが、「androidの開発をしていたAndroid社をGoogleが買収。その後、開発を継続させてGoogleからリリースした」というのが正しいようです。

このandroidもLinuxカーネルがベースになっているため、Linux系OSともいえます。また、android自体、フリーライセンスとなっているため、例えば中国メーカーOPPOが提供するColorOSや、あるいは有志で開発したLineageOSなどの“カスタムROM”や、“普通のパソコン用android”など、様々なサードパーティー製androidも存在します。

⇒iOS

ご存知の通り、iPhoneやiPadなど、Apple製品に搭載されているOSがiOSです。UIはまったく異なりますが、macOSと同じDarwinというOSをベースにして開発されています。ただし、挙動の軽快さが求められるスマホ用OSということもあり、UNIXの機能がいくらかオミットされています。

そのため、Darwinや兄弟といえるmacOSと異なり『Single UNIX Specification』には登録されていません。従って、iOSはUNIX系OSではありますが、UNIXではないのです。

⇒その他

スマホやタブレット用OSというと、androidとiOSというイメージが強いですが、この二つ以外にも存在します。

最近、話題になったのは、アメリカから輸出規制を受けたHUAWEI(ファーウェイ)が独自OSの存在を公表したことです。その名もHarmonyOSと良い、2020年から市場投入される予定です。

また、スマホでもLinuxが使いた人向けにUbuntu TouchというOSの開発が続けられています。

過去に存在していたOSとしては、Firefoxで知られるMozillaが開発していたFirefox OSやMicrosoftのWindows Phone とその後継であるWindows10 mobile、ノキアのSymbian OSあたりが有名でしょう。日本ではあまり知られていなかったSymbian OSですが、2010年頃には、世界で一番シェアのあるスマホ用OSで、一部のフューチャーフォンにも搭載されていました。

また、元米国大統領のオバマ氏が愛用していたことで知られていたBlackBerryもBlackBerry OSという独自OSでした。

その他

そのほかにも、様々なOSがあるので、ついでにご紹介いたします。

⇒z/OS

IBM製メインフレーム(ホストコンピューター)用のOSがz/OSです。何気に、『Single UNIX Specification』に登録されている、UNIXでもあります。ちなみに、zは「ダウンタイム ゼロ(Zero)」、つまりWindowsなどと違って、一瞬たりともハングアップしない、ということを意味しています。

ちなみに、NEC製のメインフレームのOSはACOS、日立はVOS、富士通はMSPといった風に各メインフレームメーカーは、オリジナルのOSを展開しています。

⇒ITRON(μITRON)

「TRONプロジェクト」という日本で進められた、組み込み機器向けのOS開発計画から生まれたOS(厳密に言えばOSの仕様)がITRON(μITRON)をはじめとする、TRON系OSです。日本をはじめ、東南アジアでの利用例が多く、電化製品はもちろん、車やNintendo SwitchのコントローラーにもTRON系のOSが搭載されています。

近年、組み込み機器のハードウェア性能も向上したため、Linux系OSなどの搭載例が増えています。それでも、トロンフォーラムの発表によると、2018年時点の国内での組み込みOSの利用率調査ではTRON系が約60%で一位の座をキープしているそうです。

実は「TRONプロジェクト」では、クライアントパソコン用OSの仕様(BTRON仕様)についても制定していました。日本国内で教育用PCとして導入する話も持ち上がったものの、アメリカ政府の横やりもあって、実現することはありませんでした。

ただ、BTRON仕様は「B-right/V」という仕様になり、最終的に多くの字体を扱えることに焦点を当てた『超漢字』という製品名で発売もされました。漢字の専門家やお寺関係者に大変、喜ばれたそうです。

⇒IOS

iOSの誤植ではありません。IOSはCISCO製のネットワーク機器に搭載されたOSです。現在は後継OS(?)であるIOS-XE搭載機器が増えてきました。

なお、CISCO製品でもNexusシリーズはNX-OSというものになります。微妙にコマンドが違っていて、現場のネットワークエンジニア泣かせだったりします。とうとう“write memory”が廃止されたのは、個人的には大変ショックでした。

なお、ネットワーク機器は基本的に、各社ごとにオリジナルのOSを搭載しています。しかし、上記のCISCO製品群やJuniper社のJUNOSなど、一部例外はありますが、特別な名称を持っていないOSの方が多いです。単に「ヤマハのルーターOS」といった風に呼ぶことが多いです。

まとめ:OSの歴史も面白い

OSの歴史やプログラミング言語の歴史を学ぶと、技術の進歩や時代のニーズを理解することができます。

組み込みエンジニアであれば、組み込み機器のOSの種類や特徴、スマホエンジニアであれば、androidとiOSの機能的な違いなど、専門とする領域のOSについて、ビジネス上の教養として最低限は知っておいた方が良いでしょう。

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