多くのオフィスではWindowsが主流なのに、なぜか、“ノマドで働くプログラマー”や“第一線のITエンジニア”といえば、持っているパソコンはMacBookというイメージを持っている方が多いと思います。

IT業界の中でも、特にWeb系やスマホアプリ業界では、MacBook Proを愛用している方が非常に多いです。先代は“ゴミ箱”、現行モデルは“cheese grater(チーズおろし器)”などと揶揄されているMac Proが存在感を放っている開発現場に遭遇することもあります。

では、なぜITエンジニアといえばMacBookなのか、その秘密を解き明かしていきましょう。

ITエンジニアは本当にMacBookを使っているのか?

そもそも論ですが、「ITエンジニアといえばMacBook」というイメージは、半分正解・半分間違いというのが実態です。

ITエンジニアといっても、プログラマー、アプリ系SE、インフラエンジニア、クラウドエンジニア、AIエンジニア、オペレーターといった風に、担当する領域ごとに、様々な区分が存在します。

IT業界という言葉も同様です。冒頭で“Web系”や“スマホアプリ業界”という言葉を使いましたが、他にもSI業界(SIer)、ゲーム業界も存在します。

なにが言いたいかというと「ITエンジニアといえばMacBook」というイメージ通りの、“職種×業界”もある一方で、別の職種と業界の組み合わせの場合、「ITエンジニアと言えどもWindows」です。

例えば、筆者は主にSI業界を主な縄張り(?)としつつ、ときどきWeb系案件にも助っ人的に参画するネットワークエンジニアですが、ネットワークエンジニアの方で、業務でMacBookを使っている、という方は非常に少数派の印象です。

理由は明らかで、日本生まれの定番リモートログオンクライアントであるTeraTermや、やはり日本生まれのフリーのSNMPマネージャ(ネットワーク監視ソフト)のTWSNMPはWindowsでしか動きません。この手のソフトが動かないため、MacBookを業務で使うのは難しい、と考えいるネットワークエンジニアが多いのです。

※TWSNMPの最新有料版はMacBookでも動くらしいですが、依然フリー版はWindowsOS専用です。

では、どういう方たちが、MacBookを好んで使うかというと、プログラミングする方たちになります。特にP系言語(Python、Perl、PHP)の利用が多いWeb系や、Swift、Objective-Cなどを使うことの多いスマホアプリ業界のプログラマーは、Unixの系譜であるmacOSを搭載したMacBookの方を好む方が多いです。

なお、SI業界はMicrosoftからリリースされている統合開発環境(IDE)のVisual Studioを使うことが多いなどの理由もあってか、圧倒的にWindows率が高いです。少なくとも、筆者が新卒で入社した中堅SIerには、今でもMacBookは一台もないそうです。

このように、「ITエンジニアといえばMacBook」というのは、ケースバイケース、というのが真実です。

MacBookを開発環境として選ぶメリット

Web系やスマホアプリ業界のSE・プログラマーの方が、MacBookを選ぶ理由は、おおむね、以下の四点だと思います。

  • ①macOSはUnixなのでLinux系のアプリが使え、Web系の方には、Windowsより開発環境として使い勝手が良い
  • ②iOSアプリ開発で使われるプログラミング言語、SwiftやObjective-Cは、基本的にWindowsで扱えない
  • ③UIが扱いやすく、フリーズが少ない
  • ④モチベーションが上がる

ひとつずつ、詳しく見ていきましょう。

macOSはUnixなのでLinux系のアプリが使え、Web系の方には、Windowsより開発環境として使い勝手が良

①ですが、Webシステムの構成パターンとして、OSにLinux、WebサーバーソフトウェアとしてApache、DBサーバーソフトウェアとしてMySQL、開発プログラミングとしてP系言語を使う“LAMP”と言われるパターンを利用されることが多いです。

いずれもオープンソースの技術であり、Windowsでももちろん開発可能です。しかし、LAMPのLがLinuxであることからも明らかなように、これらの技術は、業務サーバー用OSとして利用されることの多い、Linuxサーバー上で動作することを基本としています。

macのメリット

そのため、Linuxとは“血縁関係”のないWindowsよりも、Linuxと“血縁関係”のあるMacBookの方が、標準でLinux用のシェルスクリプトが使えるなど、 環境面で都合が良いのです。

②iOSアプリ開発で使われるプログラミング言語、SwiftやObjective-Cは、基本的にWindowsで扱えな

②について、他に方法がない訳ではありませんが、Objective-Cを使ってWindows上で開発することが現実的になったのは、2015年にVisual Studio2015が登場してからです。

Swiftについては、2020年5月現在でも、Windows Subsystem for Linux (WSL)という「WindowsにLinuxの振りをさせて、Linux向けサービスを動かすツール」を使うという荒業でしか、Swiftを使ってWindows上で開発することができません。一応、Swiftの開発者からは、2020年中盤以降に登場予定のv5.3から、Windows 10が公式サポートに追加される予定である旨が周知されましたが、あまりに遅すぎる印象です。

いずれにせよ、iOSアプリ開発するなら、開発環境はMacBookしか選択肢がない、という状況が長く続いていたのです。

③UIが扱いやすく、フリーズが少ない

③は、好みの問題といえば好みの問題なのですが、シンプルでわかりやすいアイコン、画面いっぱいに広がるアプリケーションランチャー、そして、高解像度を誇る「Retinaディスプレイ」も含めて、Windowsよりも、UIが操作しやすいという理由から、MacBookを選ぶ方も多いです。

④モチベーションが上がる

④は本当に自己満足の世界といえば、自己満足の世界ですが、MacBookの美しいデザインは所有欲を満たしてくれますよね。また、自身がITギークになったような気持ちになれます。仕事を行うモチベーションが高まるので、MacBookを選んだ、という方もいらっしゃいます。

MacBookを開発環境として選ぶデメリット

逆に、MacBookのデメリットについて見ていきましょう。

  • ①高い。中古でも良い値段がするし、ハードウェアのコスパが悪い
  • ②プログラムを書く以外のところで不便さあり

①高い。中古でも良い値段がするし、ハードウェアのコスパが悪い

単純なハードウェアスペックだけで比較するのはナンセンスな考え方かもしれませんが、同じCPU、メモリ容量、画面サイズを搭載したWindowsPCとMacBook Proだと、WindowsPCのメーカー次第ですが、MacBook Proの方が倍くらい高いこともあります。

会社からマシンを支給される方であれば、意識することもないと思いますが、フリーランスの方など、自分でパソコンを用意する必要がある方には、気になるところだと思います。

②プログラムを書く以外のところで不便さあり

②については、実際に筆者が体験した話です。

SEからPMに昇格したばかり、という、MacBook Proを使っている新任PMと打ち合わせに行ったところ、急遽、お客様から「プロジェクターとHDMIケーブルを用意したので資料を投影してプレゼン形式で説明して欲しい」と言われました。

ところが、MacBookにはHDMI端子がありません。しかも、彼にも変換ケーブルの用意がありません。仕方がないので、いったん筆者のWindowsPCに資料を送付して、そちらで投影することに決めたのですが、PMも慌てていたんでしょうね。

MacBookとWindowsでは文字フォントが異なるので、気を付けないと文字化けしてしまうことがあります。やはりというべきか、投影された資料は見事に文字化けしており、新任PMは大恥をかいていました。

よくよく聞くと、お客様からメールで送られた資料がWindowsで作成されていたために文字化けしていたなど、PMになってから「MacBookだからこその困りごと」に直面していたようで、「ポジションも変わったことだし、これを機に、HDMI端子付きのWindowsマシンも用意したら?」と提案したところ、翌週には、HDMI端子付きのWindowsマシンに乗り換えていました。

MacBookで開発するなら入れておきたいオススメツール3選

ついでと言ってはなんですが、MacBookで戦っているプログラマーに教えてもらった、MacBookで開発する方が入れておきたい便利アプリについてもご紹介しておきましょう。

①CopyClip

同じ変数をコピー&ペーストする、というシーンがあると思いますが、コピー履歴をストックできるツールです。つまり直前にコピーした以外の文字列、例えば、二つ前、三つ前にコピーした文字列を再度、コピーし直すことなく、ペーストできるようにしてくれるのが、CopyClipです。

プログラミングだけでなく、報告書やパラメータシート作成でも活躍する、便利なツールです。

②HyperSwitch

Windowsの「alt+tabで作業中のウィンドウを切り替えられる機能」をMacBookでも使えるようにするツールです。

デバッグの時など、いくつものソースコードを開いて、あっちのソースコードを見て、こっちのソースコードを見て、を繰り返しながら、被疑個所を探るというシーンがありますが、HyperSwitchが入っているのと、そうでないのでは、ストレスが全然違います。

③iTerm2

iTerm2とはターミナルアプリです。

そもそもターミナルアプリとは何かですが、Windowsでいうところのコマンドプロンプト(CMD)だと思ってください。コマンドを入力して、高度な設定を行うためのインターフェイスです。

MacBookには標準で、ターミナル.appというターミナルアプリが用意されているのですが、iTerm2の方が貼り付け履歴一覧表示や、ウィンドウの半透明化など、より使い勝手を高めることができて、非常に便利です。

まとめ:業務用パソコンは業務に合わせたものにしよう!

郷に入っては郷に従え、ということわざがありますが、業務用PCについても、業界や職種のトレンドに合わせるのがベターのように思います。

MacBookを使っている人が多い業界には、MacBookを使った方が良い理由があるはずです。その逆にWindowsを使っている人が多い業界には、やはりWindowsを使った方が良い理由があるのです。

いずれにせよ、業務で使う機材については「業務に向くものを用意する」のが大原則です。

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