ブラック企業で働きたくない、という思いを持っている方は、たくさんいると思います。少なくとも、進んでブラック企業で働きたい、という方はいないかと思います。
そこで今回は、主にエンジニアの方向けにブラック企業と関わらないで済む方法、万が一、かかわってしまった場合の対応をお教えしたいと思います。
そもそもブラック企業とは?
“ブラック企業”という言葉は有名ですが、人によって、「その企業はブラック企業と認めるかどうか?」観点が異なることが多いです。
残業が多い ブラック企業か?
例えば“残業が多い会社はブラック企業”というイメージを持っている方も多いと思いますが、残業時間に対して、それ相応以上の給料が支払われているとすれば、あるいは、残業した分、別の日に休暇をとれているとすれば、ブラック企業とはいえないのではないでしょうか。
実際、企業情報の口コミサイトであるOpenWork(旧Vorkers)が公表している「約6万8000人から分析した“残業時間”に関するレポート」によると、コンサルティング・シンクタンク業界がもっとも残業時間が長いという結果になったそうですが、「確かに忙しそうだけど、給料も良いんでしょう?」と思うだけで、あまりブラック企業というイメージはないですよね。
実際、ブラック企業問題に精通した弁護士さんに聞いたのですが、「うちの会社、ブラック企業なんです!」ということで、話を聞いてみた結果、たしかに問題はあるけれど、“ブラック企業として、法的に戦うのは難しい”と感じるケースも少なからずあるそうです。
そこで今回は、ブラック企業大賞がブラック企業の判断基準としている、以下の11項目について、法律に抵触している企業、法律に抵触しかけている企業が“ブラック企業”ということにしたいと思います。
【ブラック企業を見極める指標】
●長時間労働
●セクハラ・パワハラ
●いじめ
●長時間過密労働
●低賃金
●コンプライアンス違反
●育休・産休などの制度の不備
●労組への敵対度
●派遣差別
●派遣依存度
●残業代未払い(求人票でウソ)
※ただし多くのブラック企業が上記の問題を複合的に持っているので、判断する際も総合的に判断する
エンジニアにとってブラック企業とは?
一口でブラック企業といっても、抱えている問題が異なりますが、IT業界のブラック企業の多くは、おおむね、“長時間労働の問題”と“低賃金の問題”のどちらか、または両方を抱えていることが多いです。
「長時間労働の問題」と「低賃金の問題」
この二つの問題の根は同じで、“労働単価が安い”という点に尽きます。労働単価が安いので、企業利益を確保するために長時間働かせられることになったり、低賃金になってしまうのです。
しかも、長時間労働、あるいは低賃金のため、転職活動もままならない。なんとか転職活動を行えても、労働単価が安い仕事しかしたことがないので、エンジニアとしてのスキルが育っておらず、なかなか良い条件で転職できない、というジレンマに陥りがちです。
まさに、ブラック企業で働くエンジニアは「見えない鎖で繋がれた奴隷」というイメージがぴったりです。エンジニアにとって、“極力、ブラック企業でキャリアを汚さないこと”が重要です。
ブラック企業の特徴は?
ブラック企業にうっかり入らないようにするために、気を付けたいポイントを確認しておきましょう。
やりがい搾取
最近、IT業界でも「やりがい搾取」が横行しているように見えます。「IT人材が不足しているので、この会社でスキルを磨こう」という割に、技術力アップに繋がらない仕事しか回ってこない、という話も聞きます。求人票を見て、具体的になにができるのかイメージができない会社は、気を付けた方が良いです。
求人票も要注意
また、様々な福利厚生情報が書いてある求人票も要注意です。先ほどと同じ弁護士さん曰く、求人票には書いてあったものの、会社の規則を盾に実際は支給しない、というケースもあるとのことです。
実際に企業名をインターネットで検索してみて、どんな情報が出てくるのか確認するのも有効な手です。労働組合やユニオンと揉めていることが読み取れる会社は、避けた方がベターです。
ちなみに、安全衛生優良企業マーク推進機構(SHEM)が公開している「優ジロウ ホワイト・ブラック企業検索」から、厚生労働省の認定マークを取得している企業、逆に労務問題で指導を受けた企業が検索できるようになっています。
ブラック企業に入ってしまった場合のメリット・デメリット(リスク)は?
ブラック企業での就労経験にも一つメリットがあります。なにか、というと、ブラック企業で底辺の職場環境を見て、そこから抜け出してきたエンジニアたちはやっぱり“強い”と私は思います。
精神的にタフなだけでなく、どんな状態でも、よりよい状況に持っていくために考え抜く力、そして、実際に努力して成し遂げるハングリーさは、ブラック企業での経験が少なからず関係していると言えるでしょう。
ただ、デメリットやリスクの方がはるかに多いのは言うまでもありません。
上でも触れましたが、“長時間労働の問題”と“低賃金の問題”の結果として、十分なプライベートの時間が確保できず、心身に支障を来す人がたくさんいます。IT業界にはうつ病患者が多いと言いますが、私の周りにも複数人います。うつ病ではないけれど、“ストレスが原因とされる難聴”を発症している方もいらっしゃいます。
年収が低いために結婚できない若い人が多いとも言われていますが、将来、十分な貯蓄のない一人暮らしの老人の存在が、無視できない社会問題になっていくでしょう。ブラック企業から、そういう老人が大量に生まれてしまうリスクがあります。
さらに年収面について深堀りすると、“労働単価が安い仕事しかしていないため、業務でスキルアップやキャリアアップすることが難しい”うえに、“業務外のプライベートの時間で勉強する余裕もなく、技術力のブラッシュアップができていない”となると、加齢とともに労働できる時間や生産性が低下し、さらに労働単価が下がる可能性があります。つまり、ますます経済的な面で貧窮する可能性が高まるのです。
うっかりブラック企業にかかわってしまった場合は、一刻も早く抜け出す方法を考えるべきです。
ブラック企業から脱出する方法は?
というわけで、ブラック企業から抜け出す方法ですが、まずは勤務実態を正しく記録をつけておきましょう。何時から何時まで働いた、といったことがわかれば、日記でも良いです。
特にサービス残業を行っているのであれば、自身がつけた勤務実態を根拠として、弁護士や労働基準監督署に相談することで、未払いになっていた給与の支給につながる可能性があります。
さて、実際にブラック企業を辞める場合ですが、簡単です。「会社を辞める」としかるべき立場の方に宣言すれば良いのです。身に危険を感じる、拒否されそうだ、ということであれば、ICレコーダーを仕込んだうえで会話し、どういう風に申し出が取り扱われたのか、後から証明できるようにしておいたうえで、退職届けは内容証明郵便で会社に送るのが良いでしょう。
なお、退職の申し出は最終勤務日の一か月前(遅くても二週間前)までに申し出るのが基本です。内容証明書を送った後の報復が怖い、という場合は、その時点で弁護士や労働基準監督署に相談するのがベターかと思います。
また、次の仕事が決まっていない場合は、失業保険が受給できるよう「雇用保険被保険者証」の有無を確認するなどの準備をしておきましょう。
まとめ:ブラックに関わることなかれ
ブラック企業で、低賃金・長時間労働をしていても得られるものは、ほとんどありません。
極力、ブラック企業に入らないようにするべきですし、万が一、入ってからブラック企業であることに気が付いた場合は、速やかに抜け出した方が良いでしょう。