一社でずっと頑張るエンジニアも多いですが、キャリアアップやステップアップを目指して転職していくエンジニアも多いです。人によっては複数回、転職経験のある方もいるでしょう。

このように、能力と意志さえあれば、転職は何歳でも何回できます。しかし、キャリアステージ、もっと言えば年齢で企業側の転職者への期待が変わっていきます。従って、転職希望者側も“転職戦略”を変えていく必要があります。

そこで今回は、エンジニアの転職と年齢について考えていきたいと思います。

エンジニアの転職 何歳までが限界?

詳しくは後述しますが、50代や60代でも転職できる方もいらっしゃいます。

ただし、40代以上で転職できる人は、基本的には高スキル人材です。例えば、特定分野で、社内一の人材として社内外で知られているとか、課長や部長、あるいは役員など、就任できる人材の数が限られているポストに就いて、実績を出したといったセールスポイントがないと、ちょっと厳しいです。

そうした役職者としての実績などセールスポイントがなく、あくまで“実作業者”レベルの経験しかない方の場合、30代が限界のように思います。実際問題として、転職サイトなどに掲載された求人票に、応募条件として「長期的なキャリア育成のために35歳以下までの方」と明示されたものも多いです。

35歳以下の転職と、それ以上の年齢での転職では、そもそも次元が違うのです。

その理由について、ひも解いておきましょう。

大卒・院卒を主な対象者とした新卒採用の場合は、いわゆる“ポテンシャル採用”です。やや語弊がありますが、「この人、うちの社風にあっていて、能力的にも良いものを持ってそうだな」という、割と漠然とした基準です。また、「どこの部署で、どういう風に働いてもらうのかは、採用後の研修などで適性を見定めてから判断すれば良い」と考えている企業も多いです。

しかし、中途採用者の場合、新人研修で適性を見定める、といったフェーズはありません。最初から「このポジション、この立ち位置で働ける人が足りないから、外から連れてきたい」という理由で行われています。そもそも研修で基礎を教えなくても即戦力として働けることを前提とした、“実績採用”が基本なのです。

とはいえ、最初から“ドンピシャな人材”が採用できる保証はありません。採用してから、中途採用者が思っていたよりも能力やスキルが低かったということも考えられます。その場合、別の部署への異動を含めて、改めて教育を施すことになります。

そういう意味で、35歳以下の転職者は、基本的には“実績採用”と“ポテンシャル採用”が入り混じっています。

一方で、35歳より高齢の方の場合、10年近いキャリアを持ち十分に実績があることを前提にして、ほぼ100%“実績採用”になってしまいます。つまり、「幹部候補など、具体的な役職へ登用できる人材でないと要らない」と企業側は考えています。また、そうした重要ポジションに社外の人材を登用すると、社内の生え抜きたちの士気が下がるリスクもあるため、本当に欲しいスキルを持った「わかりやすく有能な人材」しか採用しない傾向があります。

結果、35歳より高齢の方が転職しようとすると、そもそも自分に合った求人票が見つからない、見つかっても採用が厳しい、という事態になりがちです。

高年齢でもエンジニアの転職はあるのか? 職種や業界

結論から言えば、経験・スキル、そして職歴によってですが、50代でも転職できる人はできます。

例えば、私の知り合いで、現在50代半ばで、5回転職したエンジニア(もともとは、Javaプログラマ。現在はデータサイエンティスト)がいます。その方の最初の転職は20代半ば、二回目の転職が30代前半、三回目の転職が30代後半、次の転職が40代半ば、そして最後の転職が50代前半だったそうです。

その方は、ずっとIT業界内での転職ですが、40代、50代で非IT業界へと転職するエンジニアも少なくありません。

私が新人サラリーマンSEだった際に受けた新人研修は、社外のIT教育専門会社によって運営されていましたが、講師は50代で大手ベンダー系システムインテグレーター(SIer)から、その会社に転職した方でした。

他にも、非IT企業の情報システム部の部長やCIOなど、IT関連の責任者クラスや、その方を支える立場(部長代理など)の方の中に、元IT企業(SIer)のエンジニアだったという方がしばしばいらっしゃいます。

ちなみに、少子高齢化の影響もあり、そもそも若者が少なく採用が難しい。また、せっかく若い人を採用して育てても転職していくリスクが高いということで、エンジニア職など専門性の高い人材に関しては、敢えて40代50代のベテランを欲している企業も増えています。

また、人生100年時代ということもあり、定年年齢を引き上げる一方で、役職定年(ポストオフ)を導入する企業が増えており、幹部経験のある高齢な方が転職活動を開始する例が増えています。

そうした社会背景もあり、近年、シニア層向けの転職サイトが登場するなど、かつてよりも、高齢な方でも転職しやすい状況となっています。

限界を過ぎたエンジニアがとる道は? フリーランスもあり

限界を過ぎたエンジニアがとる道は? フリーランスもあり

ここまで、「目立つセールスポイントがあれば、高齢でも転職はできるよ」という話をさせていただきましたが、ここでは「現在、40代で転職を考えているけれど、管理職経験などのセールスポイントがない!」という方がどうすれば良いか見ていきましょう。

方策は4つと思います。

①ハンディキャップを背負っていることを自覚して、諦めて今いる会社で頑張る。

②セールスポイントを見つけ出して(場合によっては、そこから実績を作り出して)、挑戦する。

③給与や待遇が悪化するのも仕方がないとして、ハンディキャップを気にしない会社に採用してもらう。

④リスクも覚悟して、フリーランスになる。

個人的な意見ですが、②の実績作りに取り組もうと前向きになって、実際、実績作りに成功できる方は、間違いなく④のフリーランスになっても成功できます。逆に③の待遇悪化を覚悟できない人は、フリーランスという生き方は年収保証がありませんので、④のフリーランスになる、という選択肢は取らない方がベターです。

経験豊富なベテランエンジニアこそ、フリーランスとして活躍できるというイメージを持っている方も多いでしょう。実際、そのイメージは正しいです。しかし、一部のクライアント企業によっては若い人を好む傾向があるため、年齢が上がるにつれ、そもそも応募できる案件が減っていくのも紛れもない事実です。

なお、フリーランス協会がまとめた『フリーランス白書2019』では全フリーランス(エンジニア以外の人も含む)のうち40代29.8%、50代が23.6%となっています。実に、約半数のフリーランスが40代~50代ということになります。

そういう意味では、40代50代でフリーランスになっても、仕事はあるのです。

エンジニアにはどのようなキャリアプランが理想?

そもそも、エンジニアのキャリアプランは、「ずっと現場でエンジニアとして働き続けるパターン」と「現場のエンジニアからプロジェクトマネージャーなど管理の方へと進み、最終的には会社の重役へと立身出世するパターン」の二種類があります。

どちらに進みたいかで、キャリア戦略も変わります。例えば、会社の重役に進みたいのであれば、基本的には、「一社で頑張る」という意識で働いた方が良いでしょう。どうしても転職すると、社内政治力がリセットされるので、“これ以上の栄達が難しそうだ”、“他社に魅力的な求人がある”という場合以外は転職しない方がベターです。

逆に、ずっと現場エンジニア主義の方は、職場は“技術習得の場でもある”という考えのもと、「学ぶものがなくなった時点で適宜、転職してキャリアアップしていくのだ」という意識をもって、普段から社外にもアンテナを張っておきましょう。

ちなみに上で紹介した、現在50代半ばで5回転職したエンジニアは完全に後者の考え方で転職を繰り返しているそうですが、「結果として、転職のたびにレベルアップしているので、年収やポジションは転職のたびに、上がっていった」とおっしゃっていました。

まとめ:転職の理由ははっきりと

これまで見てきた通り高齢でも転職したり、フリーランスとして活躍できます。

ですが、やっぱり高齢でのキャリアチェンジは、若いときのキャリアチェンジよりもリスクがあります。“なぜ転職するの?”、“転職してどうなりたいの?”、“なぜ、今なの?”は明確にしておきましょう。

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