客先常駐とは?
客先常駐とはある特定の技術を有するエンジニアを必要としている企業に対して派遣されて働くことを意味します。
自社ではなくあくまでもクライアント企業であるお客様先で働くため客先常駐と呼ばれています。
また客先常駐は正社員か契約社員など雇用形態を問わずにお客様の現場で働いている場合は客先常駐と呼ばれるため、正社員として転職できた場合でも客先常駐の現場で働いているケースは珍しくありません。
自社開発の企業へ転職した場合は客先常駐の現場となることはほぼありませんが、SIerやSESを提供する企業へ転職した場合、客先常駐の現場へ配属される可能性があります。
客先常駐のメリットについて
一般的に客先常駐は悪く言われることが少なくありませんが、客先常駐にもメリットが存在しています。
では具体的に客先常駐にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
新たな技術の習得や成長の機会となる
客先常駐の現場は一定期間が経過すると次の現場への異動となるのが一般的です。
つまり一つのSESやSIerの企業で長く働くことは、それだけ多くの現場で働く機会が生まれることも意味しています。
複数の現場に携わることは新しい技術や製品に触れるきっかけにもなります。
そのため客先常駐として働くことは、エンジニアとしての成長にも役立つといえるでしょう。
煩わしい人間関係や出世競争に巻き込まれない
客先常駐で働くと現場で働いている他の社員とは雇用されている会社が違うため、一定の距離が自然と生まれます。
そして出世にも関係がない立場となるため、出世競争に巻き込まれることもなくなります。
このような立場の違いから煩わしい人間関係が少なくなる、というのも客先常駐のメリットの一つだといえるでしょう。
ホワイトな現場で働けることもある
客先常駐の企業でも出社時間はコアタイムのみで残業が少ないなどホワイトな現場も存在しています。
そういったホワイトな現場では人間関係も良好になる場合が多く、快適に働ける可能性があります。
未経験者でも比較的転職しやすい
客先常駐のエンジニアを採用するSIerやSESの企業は教育制度が整っている場合が多く、未経験者や経験が浅いエンジニアでも積極的に採用しているケースが少なくありません。
そのため全くの異業種からエンジニアを目指す場合や、エンジニアとしての経験が浅く色んな現場を経験したいと考えている場合、客先常駐のエンジニアは狙い目の転職先の一つとなります。
客先常駐のデメリットについて
客先常駐のメリットは先に述べた通りですが、客先常駐にはデメリットがいくつかあります。
ここからは客先常駐のデメリットを見ていきましょう。
キャリアを自主的にデザインできない
客先常駐のデメリットはキャリアを自主的にデザインすることができないことにあります。
フリーランスエンジニアであれば、高めたい分野のプロジェクトを選んでエントリーしていけば自分自信でエンジニアとしてのキャリアをデザインすることができます。
また自社開発の企業に転職していれば、キャリアプランが見えている場合が多くエンジニアとしての方向性を決めやすい環境だといえます。
しかし客先常駐の場合、一つのプロジェクトが終わった後次はどのような現場になるのかは、次が決まるまで分かりません。
たとえば様々なプログラミング言語を習得してキャリアの幅を広げたいと考えているにも関わらず、ずっとJavaをメインで扱うプロジェクトへのアサインが何年も続くケースなどがあります。
所属する会社に対する帰属意識が薄くなる
客先常駐で就業する場合、基本は直行直帰となります。
そのため報告書の提出などを抜きにすれば、所属する会社の担当者とは一言も話をせずに業務が終わることも珍しくありません。
このような生活が何年も続くと、自分が所属している会社への帰属意識は薄くなってしまいがちです。
所属する会社に対して積極的にコミュニケーションをとる姿勢を持たなければ存在感が薄くなってしまうため、客先常駐の場合は所属する会社に対する立ち振る舞いにも配慮が必要だといえるでしょう。
現場で孤独を感じやすい
客先常駐の場合、自分以外は全てクライアント企業の社員で自分ひとりだけが派遣されるような現場もあります。
また複数の企業からエンジニアが派遣されている現場だと派遣元の企業名を明かせないような、特殊な事情がある現場に配属されるケースもあります。
このような現場では派遣されてきた人と社員で明確に対応が分かれているケースがあります。
ミーティングや業務外の飲み会などは社員だけが参加するに決められているケースもあります。
またボーナスの有無など現場の社員との収入の格差が大きい場合にも、別会社の所属であることや孤独を感じやすいものです。
そのため客先常駐の場合は、ある程度孤立することも受け入れる姿勢が重要になります。
上流工程を担当できる可能性が低くなる
客先常駐の場合、上流工程は就業先企業の社員が担当していることがほとんどです。
もちろん客先常駐として派遣されるエンジニアが上流工程を担当するケースもゼロというわけではありません。
しかし自社開発企業で順当にキャリアを積み重ねていくことに比べると、上流工程を担当できる可能性は低くなります。
パワハラが常態化したブラックな現場も存在する
客先常駐として派遣される場合、いい現場もあれば悪い現場も存在しています。
実際にパワハラやサービス残業を強要されるブラックな現場に配属されてしまう可能性があります。
大手SIerであれば法令遵守を徹底している企業が多いため、そういったブラックな現場にあたる可能性は低いといえるでしょう。
しかし客先常駐として就業する限り、ブラックな現場への配属となる可能性がゼロになることはありません。
結局、客先常駐を転職先に選ぶエンジニアはどんな人?
ここまで紹介してきたように、客先常駐にはメリットとデメリットの両方が存在しています。
ではここまで見てきたメリットとデメリットを踏まえた上で、結局どのような人が客先常駐に向いているのか、その特徴について見ていきましょう。
柔軟性/柔軟に物事に取り組む姿勢がある人
柔軟性がある人は客先常駐の現場が向いています。
なぜなら客先常駐のエンジニアは各現場のルールに合わせて仕事をしなければならないからです。
例えばAという現場では絶対的だった業務上のルールがBの現場では御法度であることもあります。
このような状況に遭遇した際に、前の現場はこういうルールだったと押し通そうとしても軋轢が生まれるだけです。
客先常駐のエンジニアとして転職を目指すならどんな現場にも柔軟に対応できる姿勢は重要な資質の一つだといえるでしょう。
社交性がある人
先に述べた通り、客先常駐のエンジニアは孤独になってしまいがちです。
特に派遣されている社員が自分しかいないような場合は、派遣先のクライアント企業の社員からいずれいなくなる人として適当な対応をされてしまうこともあるからです。
このような状況になった場合、状況を打開するためには所属している企業とは派遣先企業の社員と積極的にコミュニケーションをとり人間関係をつくる姿勢を持つことが大切です。
受け身の姿勢では何も情報が入ってこないこともあるため、客先常駐のエンジニアとして転職を目指すなら最低限の社交性が必要です。
孤独を好む傾向がある
孤独を好む傾向がある人も客先常駐のエンジニアに向いている可能性があります。
なぜなら客先常駐のエンジニアは派遣先の社員とは所属が違うため、周知される情報に違いがあるなど普通に業務に取り組んでいても孤独を感じる場面が少なくないからです。
このような時にそもそも人と違う扱をされることや孤独を好む傾向があれば、ストレスを感じることはありません。
その逆に周囲と同じように扱ってほしいという思いが強いと客先常駐のエンジニアには向いていない可能性があります。
新しいことへの関心が強い
客先常駐のエンジニアとして転職すると、就業年数が増えるに従って多くの現場を担当することになります。
もちろん、5年以上の複数年一つの現場で就業することもありますが、基本的には10年~20年とキャリアを重ねていくと多くの現場を担当することになります。
新しい業務に取り組む際は覚えることが多く、大変な思いをすることも少なくありません。
そういった苦労も楽しめるほどの新しいことへの関心を持てるなら、客先常駐のエンジニアとして転職して快適に働ける可能性が高いといえるでしょう。
【まとめ】客先常駐エンジニアの転職はあり。ホワイトな大手SIerも存在する
ここまで紹介してきた通り、客先常駐への転職にはメリットだけでなく多くのデメリットが存在しています。
それでも客先常駐のエンジニアとして転職活動することは決して無意味なことではありません。
なぜなら客先常駐のエンジニアはIT業界が未経験のプログラミング初学者や経験が浅いエンジニアの採用にも前向きなケースが少なくないからです。
もちろん自社開発企業でも未経験者を採用しているケースもありますが、一定以上のレベルのポートフォリオや年齢、競争率の高さなど転職へのハードルは高くなりがちです。
またある程度ホワイトな体質の大手SIerに所属することができれば、現場で理不尽な思いをすることがあったとしても、基本的には所属する会社からは守られるため安心して働くことができます。
恵まれた派遣先に客先常駐エンジニアとして派遣されることになれば、数年の業務経験でエンジニアとして飛躍できる可能性もあります。
このようなことを考慮すれば客先常駐のエンジニアは、IT業界への転職活動において検討する価値はある職種の一つだといえるでしょう。