IT業界では様々な種類のエンジニアが働いており、業種・職種で呼び名が変わってきます。まず、IT業界ではインターネット・Web業界、情報処理サービス業界、ソフトウェア業界、ハードウェア業界の4つに分類することができます。
インターネット・Web業界では、Webエンジニアと呼ばれる方が働いている場合が多く、Webサービスの設計・開発を行います。また、Web系エンジニアの中でも、インフラエンジニア・バックエンドエンジニア・フロントエンドエンジニアなど様々に分かれています。
一方で、情報処理サービス業界では開発したシステムをお客さん先に導入していく場合が多く、客先常駐の案件が多くなっています。客先常駐で働くエンジニアの方はSESエンジニアと呼ばれており、Web系エンジニアとよく対比で説明がなされることが多いです。
というのも、Web系エンジニアは自社サービスの開発を行い、SESエンジニアは他社のシステム開発をメインで行っていくからです。巷では、SESエンジニアよりもWeb系エンジニアとして働く方が良いという評判が多く、SESエンジニアは批判の対象となることが多いです。
このような評判が先行している印象を持ちますが、Web系エンジニアが良いのか、SESエンジニアが良いのかという判断は個人の適性や目的によって異なってきます。そのため、それぞれの給与や転職難易度、メリットやデメリットを比較検討した上でどちらの転職に向いているのか決めるべきでしょう。
今回はWeb系エンジニアとSESエンジニアについて比較検討し、転職するならどちらが良いのか見ていきます。
SESとWeb系エンジニアの転職事情:給与、難易度等
まず、SESとWeb系エンジニアの転職事情を給与と難易度を絡めて見ていきます。
まず、給与に関してですが、SESの年収を時系列で見ていくと、一年目が300万円、三年目が350万円、5年目が400万円、7年目が450万円と年数ごとに昇給していくことが一般的です。
SES企業であれば、500万円〜600万円が年収の限界とも言われています。優良企業のSESであればもちろんこの年収を超えることもあるでしょう。
一方で、Web系企業は大手企業とベンチャー企業では給与に差が出てきます。大手企業では1年目から400万円〜500万円ほど貰える会社もあり、人工知能などの重要の高い領域で学生時代のうちに成果を出していれば1年目から1000万円貰える会社もあります。
特定の領域での成功や、高い技術力を持っていれば大手企業へは入りやすいでしょう。一方でベンチャー企業ではSESと同じく1年目300万円からスタートし、SESと同じような昇給スピードであることが多いです。
SESとWeb系エンジニアにおいて転職難易度を見ていくと、SESはエンジニア未経験でも入社できる企業が多いですが、Web系エンジニアは高い技術力を求められる事が多く、エンジニア未経験の方を募集している企業は少ないと言えます。
そのため、入社難易度としてはWeb系の方が難しく、SESの方が入りやすいと言えるでしょう。
SESのメリット・デメリット
SESのエンジニアとして働くことは良いことなのか?悪いことなのか?を見ていくためにはメリット・デメリットを比較する必要があります。メリット・デメリットについては、SESとWeb系エンジニアという2軸で比較して見ていきます。
SESのメリット
まず、SESののメリットですが、常駐することによって、お客様とのコミュニケーションロスやミスが起きる可能性を減らせるため、システム開発において常駐という形態を取る企業は多くなっています。
そのため、働くエンジニア側からしてもお客様の要求に柔軟に応える姿勢やお客様と会話するためのコミュニケーションスキルが身につきやすいというメリットがあります。
また、自社開発をする企業にてエンジニアとして働くことと異なり、プロジェクトごとに仕事をするため、プロジェクトが終われば新しいプロジェクトへ参加ができます。そのため、様々な経験が積めて、様々な技術が手に入るというメリットがあります。
また、SESに開発をお願いする企業は自社でエンジニアを束ねる人材・環境が不足している場合が多く、SES開発ではマネージメントやリーダーとしての活躍を期待され、裁量を持って仕事出来る場合は多いです。成長を望むエンジニアには大きなメリットと言えるでしょう。
SESのデメリット
ただ、Web系エンジニアの場合と異なり、企業のシステム開発の一部に携わることが多いので、プロジェクトを最後まで見届けるということができない事がデメリットになってしまいます。
また、様々なプロジェクトに参加ができるため、様々な経験と技術は身につきやすいですが、特定の領域の経験や技術が身につけづらいということがデメリットになってきます。
プロジェクトごとに仕事をするため、プロジェクトが終われば新しいプロジェクトへ参加ができますが、プロジェクトが終わるごとに再び新しい環境に入ることが嫌な人にとってはSESはデメリットとなるでしょう。
また、SES契約と派遣の区別がつかない担当者が、SES契約のエンジニアに指示を出してしまい、偽装請負化するリスクがあります。
その他には特定の開発が終わるまで帰ってはいけないという圧力がお客様からかかる場合があります。SESでは、契約において業務完遂を保証しておらず、集合時間・終了時間などの「拘束時間の決定」も業務上の指示となっており、クライアント企業が命令する権限がありません。
これはSESとの契約内容を無視している発言であるので、しばしば問題として取り上げられることがあります。
Web系エンジニアのメリット・デメリット
続いてWeb系エンジニアとして働くことは良いことなのか?悪いことなのか?を見ていくためにはメリット・デメリットを比較する必要があります。メリット・デメリットについては、SESとWeb系エンジニアという2軸で比較して見ていきます。
Web系エンジニアのメリット
Web系エンジニアのメリットとしては、特定の技術を習得できるという大きなメリットがあります。
SESの場合では、プロジェクト毎に仕事をするため、次のプロジェクトでは前回とは違った技術を使う場合があります。一方で、Web系では一貫して一つのプロダクト開発に携わることが多いので、使う技術は変わらず、特定の技術のスキルを高めることができると言えます。
一つの技術力が高ければ、その技術力を欲する企業から引く手が数多となるので、転職市場では安定したポジションを保てると言えるでしょう。
また、Web系エンジニアはSESエンジニアに比べてホワイトであることが多いです。ホワイトの定義は人それぞれ違うかも知れませんが、例えば勤務時間で見ると、フレックス制を導入してある企業や残業がほとんどない企業も多いと言えます。
SESではお客さんに成果物を納品することが目的なので、お客さんの意向によって納期が短いという場合もあります。その場合には勤務時間が長くなる傾向がありますが、Web系エンジニアでは一つのプロダクトの開発・改善をするという点でお客さんに縛られず、自分たちで勤務時間を管理しやすいという特徴があります。
また、労働環境でみても、Web系ではリラックススペースや高級チェアを使っている企業もあるため、エンジニアが勤務しやすい環境がある企業が多いと言えるでしょう。
Web系エンジニアのデメリット
続いてWeb系エンジニアのデメリットですが、様々なプロジェクト・顧客に関われないという点が挙げられます。
どの技術のスキルを高めるか決まっていない、そもそも技術力以外の部分のスキルも高めたいという方はWeb系エンジニアでは特定の技術力に特化してしまう傾向があり、様々なプロジェクト・顧客に関わって視野を広げるということが出来なくなってしまいます。
そして、様々なプロジェクト・顧客に関わることができないので、Web系エンジニアとして勤務するとお客様との距離が遠く、お客様とのコミュニケーションの取り方が学べないという点もあります。
今後、ITコンサルタントとしてキャリアアップしたい、プロジェクトマネージャーとしてクライアントを動かしたいと思っている方にはWeb系エンジニアとして働くことはデメリットになってしまいます。
自分はどちらに向いているのか? チェックシートで判断
項目 | ○ or ☓ |
将来はコンサルタントとして働きたい | |
様々なプロジェクトに携わりたい | |
コミュニケーションをとることを重視したい | |
クライアントと近い距離で仕事をしたい | |
エンジニアとしての経験が短い・無い | |
多くのプログラミング言語に触りたい | |
自社よりも顧客の元で常駐したい | |
社外でのコネクションを作りたい |
こちらがSESエンジニア、Web系のエンジニアどちらに向いているのか?ということがわかるチェックシートです。
こちらに○が多く付くほどSESエンジニアに向いているということになります。逆に☓が多く付くほどWeb系エンジニアに向いているということになります。
是非チェックシートで適性を判断してみてください。
まとめ:メリットとデメリットを比較
SESかWeb系エンジニアか? 転職するならどちらがいいのか? お悩み解決します というテーマで今回はお伝えしました。いかがだったでしょうか? 今回お伝えしたかったことは以下のとおりです。
- 様々な経験を積む・顧客とのコミュニケーションを重視したい場合はSESエンジニアが向いている
- より特定の技術力を高めたい・自由な環境で働きたいという場合はWeb系エンジニアが向いている
- エンジニアとしての経験が少ない人はSESとWeb系エンジニアでは給与は大きく変わらないものの、入社難易度はSESの方が入りやすいと言える
この記事を読んで、SESとWeb系エンジニアどちらに向いている・向いていないという適性が自分の中で落とし込むことができたでしょうか。どちらにも良さ・悪さがあるので、メリットとデメリットを比較した上で、それぞれのエンジニアとしての道を検討してみてください。