日本のエンジニアは海外と比べて地位が低いと言われることがよくあります。特に年収面で恵まれていないとの話題が多く、海外のIT企業への転職を考える人も少なくありません。中にはフリーランスとして海を渡り、特定の会社に雇われることなく活動する人もいるようです。

ここでは海外のエンジニアを例にとって、日本のエンジニアとの給与を比較していきます。

アメリカのエンジニアの給与は?

シリコンバレーのような地域をイメージすると、海外で働くエンジニアは日本と比べて非常に多い報酬を手にしているように思えるものです。GoogleやApple、Facebook、Amazonといった「GAFA」とも呼ばれる世界的なIT企業は、アメリカに本社を置くものがほとんど。

日本の数倍、数十倍という年収を得ていても不思議ではないように思えますが、実態はどうなっているのでしょうか?

アメリカのITエンジニアの給料を考えるにあたって、参考になるデータが経済産業省から出ています。平成28年6月に発表された『IT人材に関する各国比較調査』によれば、米国のIT人材の平均年収は1,157万円に達するとされています。

同調査では、日本のIT人材の平均年収が598万円とされているので、およそ2倍の開きがあることになります。もちろん物価や為替レートの影響も考慮する必要があるでしょうが、働く国が変わるだけで2倍の報酬を手にできる可能性があるとなると、海外勤務のエンジニアに魅力を感じる人が多くなるのも納得できる話ですね。

なお、日本の場合も米国の場合も、それぞれの国内全産業の平均年収に比べて、ほぼ2倍程度の水準となるようです。日本は300万円程度、米国は600万円前後がIT業界を含めた全産業の平均年収となるわけです。

アメリカのIT人材が桁違いに高い給料を得ているのは、やはりIT先進国であることが大きな理由でしょう。アメリカの大学や大学院では、高度な専門性を身につけられるコンピュータサイエンスを学べる機会が多くあるため、それらを修了することで高いスキルを持った即戦力として活躍できる可能性が高くなります。

また、ベンチャーキャピタルによるIT企業への投資も活発なため、高額な出資を受けたITベンチャーで働くエンジニアの待遇が向上し、平均年収の上昇に寄与していることも考えられます。

日本とは異なり実力主義の傾向が強い国でもありますので、経験年数や役職に関わらず高い給料を狙えることも、IT人材の高年収の理由の1つかもしれません。

他国のエンジニアの給与は?

IT人材に関する各国比較調査』では、インド・インドネシア・ベトナム・タイ・中国・韓国の年収データも報告されています(ベトナムのみn=300、その他はn=500)。それによれば、以下のような年収データが得られます。

インド:533万円
インドネシア:192万円
ベトナム:85万円
タイ:195万円
中国:354万円
韓国:498万円

特にインド・韓国のIT人材が、日本とほぼ同等の年収を手にしていることは意外に思われるかもしれません。さらに注目したいのが、国内全産業の平均年収との比較です。

国内全産業の平均年収ともっとも差があるのはインドネシアで、およそ10倍という驚くべき水準です。物価が安いインドネシアでは、IT業界の仕事に就くだけで平均的な社会人の10倍豊かな暮らしができると考えることもできます。

同じようにインドも約9倍ほどの開きがあり、日本・韓国・中国を除いた国々で給料に対する満足度が高いと回答していることも注目すべきでしょう。

調査対象の国々の中で、給料金額だけで見れば米国に次いで第2位の報酬水準の日本。国内全産業の平均年収の約2倍を手にしているにも関わらず、給料に対して「満足している」「どちらかと言えば満足している」を合わせても5割に達していないことは興味深い結果ですね。

日本のエンジニアの給与は高いのか?

海外企業

『IT人材に関する各国比較調査』の結果を見ると、自分の給料額に満足してはいないが、日本国内の平均年収よりは高い水準にあり、アメリカ以外の他国と比べても決して見劣りするわけではありません。

その意味では、客観的に見れば日本のエンジニアの給料が低いというわけではないと言えそうです。あくまでも主観的に給料が低いと感じているだけであり、世界全体で見れば日本のITエンジニアの給料は高い水準を維持しています。

インドやインドネシアの場合、国内では相対的に給料が高い水準となっていますが、それでも絶対的に見れば年収200万円足らず。この金額で日本で暮らそうと思えば、かなりの無理を強いられるはずです。

向上心の高い人であれば、活躍の場を日本国内から米国などの先進国に移すことで、さらに高い年収を得ようと考えることもあるかもしれません。しかし海外にはその土地ならではの文化があり、食生活や住環境も大きく異なるのが普通です。

異なる文化に対応する時間的・体力的なコストを考えれば、日本のIT企業で働き続けるというのも悪い手段ではないはずです。

海外で活躍にするには何が必要か?

「それでも、やっぱり海外で自分の腕を試したい」という場合には、次の3つのスキルを重点的に磨くことで、世界で通用するITエンジニアを目指すことが可能になります。

○英語力
海外でエンジニアとして活躍したいと考えるなら、まず一定の英語力は欠かせません。日系の海外企業で働くのであれば、日常会話レベルの英語力があればビジネスでもプライベートでも、十分にコミュニケーションをとることが可能です。

一方で外資系の海外企業で働く場合には、ネイティブスピーカーと同等レベルの英語力が必要とされます。開発業務以外にも、会議や打ち合わせも含めてすべて英語を使わなければいけませんので、ビジネスレベル以上の英語力が不可欠です。

ただし英語力に関しては、海外で暮らす期間が長くなるにつれて、自然と身についているケースが多くなります。まずは日系の海外企業で働き、英語力も含めて現地の文化に馴染むことができたら、外資系の海外企業へ転職するというキャリアパスを選ぶことで、不自由することなく現地のエンジニアとコミュニケーションがとれるようになることでしょう。

○実務経験
日本で転職活動する時と同じ考え方で、「まずは履歴書に書ける資格を取ろう!」と考えてしまう人は少なくありません。しかし米国のように実力主義の傾向が強い国では、応募書類に書かれている資格よりも、実務経験が重視されます。

どんな資格を持っているかではなく、「どんなことができるのか?」がエンジニア採用の指針となっているわけです。したがって海外で働きたいと考えるのであれば、資格の取得よりも実務経験を重ねることに力を注ぐべきです。

○ビザ
意外と見落とされがちなのが、ワーキングビザに関する問題です。私たち日本人が海外で働くためにはビザの取得が不可欠ですが、ビザを手に入れるためにはまずビザスポンサーとなる受入企業を探さなければいけません。

ビザスポンサーは、海外の外資系企業でなければならないというわけではありません。日系の海外企業を見つけて、スポンサーになってもらうことがビザ取得の近道です。

もちろん現地企業にスポンサーになってもらう方法もありますが、そのためには企業に評価されるだけの高いスキルを持っている必要があります。世界に通用する人材としての自身がない方は、まずは日系企業を探すのがベターです。

まとめ:英語力や実務経験を磨く

海外のITエンジニアの年収を調べてみると、日本の報酬水準は米国を除いた多くの国々よりも高い数字となっていることがわかりました。海外に移住することでさらに高い報酬を手にできる可能性は高いものの、日本でITエンジニアとしてのキャリアを歩むことも決して悪い選択肢ではありません。

それでも海外で自分の腕を試したいという場合には、英語力や実務経験を磨き、ビザの問題をクリアしてから渡航するようにしましょう。

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