基本情報技術者試験とは?

IT系の資格として非常にポピュラーな資格である「基本情報技術者試験」。

意味がない資格なのか見ていく前に、どのような資格なのか整理しておきましょう。

そもそも論として、IT系に限らず、資格には大きく分けて二種類があるのをご存知でしょうか。

具体的には、国が認定する“国家資格”と、国以外の民間企業やNPOなどが実施する“民間資格”です。

MicrosoftやクラウドサービスのAmazon Web Services(AWS)、ネットワーク機器のCISCOなど、ベンダー各社が行う“ベンダー資格”といわれるものがIT系の民間資格の代表的な存在です。

ちなみに、ベンダー系の資格の特徴としては、大企業が実施していることが多く、日本はもちろん、海外でも実施されている資格が多いです。

それどころか、日本語版がなく、日本人であっても英語で受ける必要のある資格も中にはあります。

また、自社製品の仕様や自社サービスについての理解度を問う問題も多く、新製品の登場とともに、知識が陳腐化するため、更新制となっているものが多いです。

Microsoftの場合、更新制ではないものの、「Windows Server 2016試験」といった風に、バージョンごとに資格試験が設定されています。

続いて、国家資格ですが、日本のIT資格の場合、「情報技術者試験」という名前で実施されている試験群(情報技術者試験という名前の試験があるわけではない!)が該当します。

そして、情報技術者試験を構成する試験群の一つが基本情報技術者試験ということになります。

国家資格の特徴として、特定のベンダーに依存した知識ではなく、普遍的な技術の理解ができる点、そして「日本国が認めた資格」という意味で、(日本国内では)民間資格より信頼度が高い、という点が挙げられます。

さて、より詳しく基本情報技術者試験の概要について見ていきましょう。

情報技術者試験に含まれる試験は難易度ごとに4つのランクに分けられていますが、基本情報技術者試験は下から二番目である、スキルレベル2に分類されています。

「基本より下の資格があるのか」と思った方のために補足しておくと、難易度が一番低いとされる、スキルレベル1に属する“ITパスポート”、同じスキルレベル2の“情報セキュリティマネジメント試験”は、ITシステムを使う人のための試験です。

対して、基本情報技術者試験はITシステム開発・運用に関わるITエンジニアのための資格の中では、一番下位の資格という位置づけです。

合格するためには、四択問題の午前と、若干の記述を含んだ午後の二科目両方で、60点以上取得する必要があります。

実施回によって異なりますが、概ね20%前後の合格率となっており、下位の資格と言いながら、舐めてかかると返り討ちに合う程度の難易度です。

試験の実施時期は決まっていて、春期試験は、毎年4月の第3日曜日、秋期試験は10月第3日曜日です。

時期も時期ですので、春休みや夏休みを利用して勉強してきた学生の受験生も多く、意外と受験者層が若いのも、この試験の特徴です。

基本情報技術者試験はSI業界で必要とされている

調査

ITエンジニアであっても「基本情報技術者試験は必要ない」という人も確かにいますが、そのようにおっしゃる方は、キャリアの大半がWeb業界、あるいは外資系の方なのではないかと思います。

大半のITエンジニアは、「基本情報技術者試験はどちらかというと必要」以上の認識をお持ちだと思います。

実際、多くのIT企業では、報奨金の支給を含め、基本情報技術者試験を社員に取得させるための施策が実施されています。

組み込みシステム業界でも特定の会社の技術に偏らないITスキル育成という観点から、情報技術者試験は重視されていますが、特に重視しているのはSI業界です。

筆者自身、中堅ユーザー系SIerに新卒で入社しましたが、基本情報技術者試験をはじめとする情報技術者試験を持っていないエンジニア職の社員は皆無といえる状況でした。

なぜなら、等級制度を採用している会社でしたが、等級昇進の条件に基本情報技術者試験をはじめとする情報技術者試験が組み込まれており、どれだけ業績優秀な方でも資格を持っていない、という一点だけで昇進を見送られるシステムになっていました。

例えば、新人用の等級から次の等級に進むためには基本情報技術者試験(厳密に言うと、基本情報技術者試験よりスキルレベルが高い情報技術者試験)に合格していないと、ずっと、新人用等級から抜け出せないのです。

ここまで極端な資格重視主義を取っている理由は単純で、基本情報技術者試験を含めて情報技術者試験の合格者数が多いSIerほど、案件を獲得しやすいからです。

官公庁がどこの企業にシステム開発させるか決める際、入札という仕組みが使われますが、入札前の参加申請の段階で、情報技術者試験の合格者数を提示するのが当たり前になっています。

合格者数が一定数以下であれば、「この会社、技術力低そうだね」と入札にも参加させてもらえないかもしれません。

民間企業でも発注先を決める際の参考情報として、情報技術者試験の合格者数を意識するようになってきました。

このような背景もあり、SI業界では基本情報技術者試験をはじめとする情報技術者試験の重要性が高まっています。

ちなみに、公務員の場合、特定の技術職(例えば、自衛隊の技術曹や、警察のコンピューター犯罪捜査官など)になるための組織内試験を受けるためには、まず情報技術者試験を合格していること、という規則になっていることも多いそうです。

基本情報技術者試験のメリットは?転職の際に役立つ場合がある

基本情報処理試験の持つ最大のメリットは、論より証拠という言葉がありますが、わかりやすく自分のスキルレベルを理解してもらえる、という点だと思います。

「私、技術力あります」と100回繰り返すより、一枚の基本情報技術者試験の合格証明書の方が、遥かに価値があります。

しかも、国家資格です。

ITエンジニアはもちろん、ITエンジニアではない人事系部署の方でも、名前くらいは聞いたことがある試験名のはずです。

上でも書きましたが、情報技術者試験の合格者数が企業の売り上げに直結する恐れのあるSI業界では、特に意識されているはずです。

転職活動において強力な武器になるのは間違いありません。

基本情報技術者試験のデメリットは?外資企業での評価はイマイチ

日本国内では無敵な国家資格ですが、日本国外では基本的に通じず、外資系企業での評価も高くない、という点がデメリットでしょう。

近年、アジア各国にて実施しているITエンジニア向けの資格試験と相互認証制度が整備されてきましたが、対象国も少なく、まだまだ“海外でも通じる資格”とは言えない状況です。

ある外資系の元社員から「ベンダー資格は取得を推奨させられたが、情報技術者試験は推奨された記憶がない」と聞いたこともあります。

まとめ:基本情報技術者試験はITエンジニアの基本を作る

上でも書いた通り、自分のいた会社は基本情報技術者試験を取得しないと、新入社員は次の等級に進めない仕組みになっていましたが、この仕組みについて、OJTの先輩から含蓄のある見解を聞いたことがあります。

曰く「IT業界で生き残るには、日々勉強して、新しい知識やスキルを吸収していくことが重要なのだよ。三年目が終わるまでに基本情報技術者試験も取れない奴は、それができない奴で、きっとIT業界で生き残れない。新卒採用した連中が原石なのかクズ石なのか見分ける意味もあるんじゃない」とのこと。

学校の勉強で覚えたことの中に、直接的には社会で役に立たないものがあるのと同じで、基本情報技術者試験も直接的には業務と関係がない知識を問われるかもしれません。

しかし、マインドも含めた“ITエンジニアのベース”を作るための試験と考えると、よくできたもののように思います。

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